キヴォトスにてSCPを収容する!   作:勧悪懲善

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プロローグ 世界が異常ならば、相対的にお前が異常
019 導入その1


「健闘を祈る、D-83667。行って来い!」

 

博士の声が聞こえる。

目の前には、開いた大きなドア。中には暗闇が広がっている。

そして、俺は目の前に広がる暗闇の中に入り……真っ逆さまに落ちる。

幸運で不運な人生は、ここで終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぐあっ!?」

 

何かに頭をぶつけ、意識が戻った。

足がグワンと後ろに落ちる感覚から、ぶつけたのは多分地面だ。起きて、辺りを見回す。

何処だよここ……路地裏?

表に出て見渡す限りは……えーと……普通の街並みってとこだな。

 

「うっ……」

 

頭が痛む。

そりゃそうだ、頭から落ちたからな。

 

「お兄さん、大丈夫かい?」

 

「あ、いえ……うわっ!?」

 

腰を抜かしてしまった。

そりゃそうだろ。

ブルドッグが服着て二足歩行して、しかも人間の言葉を喋ってやがる。

どういうことだよ……

「あの事故」と同じくらいの衝撃を味わったぜ。

 

「どうしたんだい、いきなり大声だして……」

 

「あ、いや、本当に何でもないんです……これは、その……二日酔いで……」

 

咄嗟に言い訳をする。

 

「そうだったのか。てっきり撃たれでもしたのかと思ったよ。」

 

「え?どゆことっすか?」

 

「うん?キヴォトスじゃ、銃で頭を撃たれて気絶するなんて日常茶飯事だろう?特にここは治安の悪いブラックマーケットだし。」

 

そうなん?

なんなんだこの世界?

地獄にでも来てんのか?

 

「私もよく二日酔いになるよ。キツいよね。はい、水あげるよ。気をつけてね。」

 

「あ……どうも……」

 

そう言って、ブルドッグは去っていった。

わけが分からん…………

水は知らないブランドだ。飲めるかな?犬用とかじゃ……?

 

 

えー……どうしよう。

持ち物と……記憶の確認でもするか。

何か忘れているかもしれない。

何せ、脳みそをグチャグチャにされたからな。

俺の名前は……芥川シズル。よし、ちゃんと覚えてる。

えーと、特にあたりさわりのない毎日を生きてきて、あらゆることに興味がない無気力野郎。

で、ある日アメリカ行きの飛行機を奪って、イエローストーン国立公園に突っ込んで死ぬつもりだったんだけど、というか実際突っ込んで辺りを焦土にしたんだけど、俺だけ何故か生き残って……

警察に捕まって死刑になるはずが、「財団」と名乗る奴らに連れて行かれて、奴隷階級のDクラス職員になった。

で、『この世に存在するが、表向きには知られていないもの』に関する変な実験をやらされまくってて……まあまあ楽しかったな。

そして今日、あのドアの向こうに行くという実験で、落ちて……

今やこの場所でひとりぼっちか。

激動の人生だな。

 

『ザッ……ザザッ……お……D……ば……聞こ……返事……』

 

そうだ、「移動先でもしかしたら連絡が取れるかもしれない」と、財団からトランシーバーを持たされてた。

とりあえず、さっきあった事を報告するか。

 

「こちらD-83667。応答せよ!俺は生きてるぞ!」

 

路上だと変な目で見られるので、路地裏に戻って大声を出してみた。

 

「おーい!財団!博士!出ろ!応答せよ!おい!」

 

『ザザッ……あ、D……返事……聞…こ……える……ザッ………』

 

相変わらずノイズだらけで聞きにくい。

電波がいい所に移動するか……

 

『ザッ……お、いい感じ…………………よし、繋がった。D-83667、生きてるか?』

 

この声は……俺がいた支部の上司、千石博士だ。

 

「なんとか生きてる。さっきから話しかけてたぞ。」

 

『それはなによりだ。今どこにいる?お前につけたGPSが反応しないんだが……』

 

「ああ……うん。多分地球じゃねーよ、ここ。」

 

『地球じゃない?どういうことだ?』

 

「二足歩行の犬が服着て歩いて、しかも喋った。」

 

『マジ?』

 

「マジ。」

 

一般人なら「ふざけてるのか?」と言いたくなるであろう証言だが、財団の奴らは異常存在に関わりまくってるから、俺の言うこともあっさり信じた。

 

『どうぶつの森にでも転生したのか?』

 

「いや、多分違うと思う。二足歩行の犬と話したんだけど、『キヴォトスでは頭を撃たれて気絶とか日常茶飯事』とか言ってたし。犬が言うには、ここはキヴォトスのブラックマーケットという場所らしい。」

 

『え!?キヴォトスって言いました!?』

 

『うわビックリした!』

 

「うるっさ!」

 

博士以外が大きな声を出した。

多分、いつも千石博士と一緒にいる足立研究助手だ。

 

『いきなりなんだよ足立……』

 

『本当に、喋る犬が【キヴォトス】って言ったんですね?』

 

「……あ、ああ。そうだけど。」

 

『83667君、君がいるのは【ブルーアーカイブの世界】に違いありません!』

 

は?

ブルーアーカイブの世界?

 

『何それ?』

 

博士も同じ事を考えたらしい。

 

『あ、いきなり騒がしくしてすみません……【ブルーアーカイブ】っていう人気のスマホゲームがありまして、そのゲームの舞台になる世界が【キヴォトス】って言うんです。そこには83667君がさっき会ったみたいな喋る動物やロボット、後はヘイロー……天使の輪っかみたいなのがある女の子達が暮らしているんです。』

 

長い長い。後半聞きそびれた。

すぐ話聞くのをやめてしまうのは俺の悪い癖だ。俺のバカ……こんなんだから友達できなかったんだよ?

 

『なるほど……このワープゲートの先はゲームの世界だったわけか。また碌でもない組織が絡んでいそうだな……』

 

なるほど、あのドアはワープゲートだったのか。

 

「じゃあ足立くん、このブラックマーケットがどんな所で、俺はどうすべきなのか教えてくれよ。」

 

『僕も二次創作をよく見てるだけで、ゲームはやってないから詳しい流れとかはよく知らないんですけど……とりあえず、周囲の詳しい状況を教えてください。暑いとか、昼か夜かとか、周りに誰かいるかとか!もしかしたら、君が飛ばされた時系列を割り出せるかもしれません。そうしたら、ストーリーを調べてこちらから誘導します!今僕のスマホにゲームをインストールしているんですけど、時間はまだかかりそうです……』

 

長いって。とりあえずわからないんだな?

俺は辺りを見渡す。

 

「今は昼だ。日が当たると暑いけど、夏ってほど暑くもないから多分春頃。露店が多めの大通りで、周りには不良っぽい女の子と……あ、確かに天使の輪っかがあるな。あとは二足歩行の犬とロボットが数体いて……あ、あそこに一人だけ、輪っかの形が違う女がいる。」

 

『その子の特徴を教えてください!』

 

俺は目を凝らして、変わった格好の女の子を見る。

 

「周りと比べると身なりが清潔で、服も場違いに白い。なんかいいとこの子って感じだ。栗色の髪のツインテールで、輪っかは二重丸に羽がついてる。ピンク色の銃を持ってるな。種類は知らん。あと、変な顔をしたニワトリのキャラクターがデザインされたリュックを背負ってる。好き嫌い分かれそうなデザインだけど、俺は結構好きかもしれん。」

 

『白い服で、栗色の髪で、ヘイローは二重丸に羽……変な顔をしたニワトリのリュック……なるほど、わかりました。』

 

俺が適当に並べた情報をまとめ上げる足立。

幸いな事に、有名なキャラのようだ。

 

『そのキャラは阿慈谷ヒフミさんですね!でも、彼女は割と頻繁にブラックマーケットに来るので……時系列の特定は難しそうですね……』

 

足立が調べている間に、何やら異常な存在を発見した。

露店の後ろのドアから、小さな影が出てくる。

 

「あ、あれは何だ……?」

 

『D-83667……毎回これ言うの面倒だな。芥川!何を見つけたんだ?』

 

「ちょっと待て……小さい人間で、真っ黒な身体だ。服は着ていないが、生器は無いっぽい。そんで……あ、黒いヘルメットを被ってる女の子に後ろから噛み付いたぞ!」

 

俺の状況説明に、どうやら博士は何か引っかかったらしい。

 

『小さい人間だと……?おい足立、ブルーアーカイブの世界にはそういう存在がいるのか?』

 

『いえ、聞いたこともありませんし、調べてもヒットしません!芥川君、状況を詳しく教えて下さい!』

 

「おう……さっきの小さい人間は銃で撃たれて死んだ。あと、近くで爆発が起きたのか、大きな揺れがあった……ここの奴らは容赦なく銃ぶっ放すんだなぁ……」

 

『ええ、キヴォトスに住む人たちは、基本的に撃たれても少し傷を負うだけで、死にはしないんです。なので、ちょっとどつくくらいの感覚で銃を撃つんですよ。爆発についても、コンビニで手榴弾が買えるのでそれかと。』

 

改めてなんつー世界だ。

いくらゲームと言っても限度があるだろ。

呆れていると、さっき見た影がまた現れた。

 

「あ、ちょっと待て!小さい人間がまた出てきた。しかも…………6人だ!」

 

『増えたのか……?おい芥川、小さい人間が何処から出てくるんだ?』

 

「あ、そういえば、さっきの1体も、今の6体も、同じ店の中から出てきたな。揺れた直後だ。」

 

『もしかしてアレか……?芥川、店内を調べられるか?』

 

「今丁度、銃を持った奴らが逃げ出した。店内に入ってみる。」

 

こういう変な部屋の調査、怖いな。ジャンプスケア……だっけ?いきなり出てきてビックリってやつ。俺あれ嫌い。

都合よく近くの露店にあった懐中電灯を持ち、スイッチを入れる。

そして俺は素早く、半開きのドアを蹴破った。

 

 

 

そこには、大きな壺が横たわっていた。

陶器でできているようで、金持ちの家に置いてそうな気品がある。

特筆すべきはサイズだ。

俺の身長は173cmくらいだが、横たわった状態でも俺よりデカいとわかるくらいにはデカい。多分、3mは余裕である。

そして壺の口から、小さい人間が少しずつ出てきていた。

 

とりあえず報告する。

 

「デカい壺だ!壺から小さい人間が出てきている!」

 

『……ッ、マジか……!逃げろ芥川!そいつはSCiPだ!』

 

SCiP。よく博士たちが話しているのを聞く。

財団が知っている異常存在ということだ。

こっちの世界にもあるって事かよ!

飛びかかってきた小さい人間を避け、扉を閉めて外へ走る。

 

『SCiPって……キヴォトスにSCiPは無いはずなのに……!』

 

『芥川が演技の天才じゃないのなら、あるって事だろ!しかし、よりにもよってSCP-019とは……!』

 

「ハァ、ハァ……019って……どんな物なんだ!?」

 

怖い怖い……あぶねー、死ぬかと思った。

小さい人間は扉を開けるのに手間取っているようだ。

息を落ち着かせて、博士の指示を待つことにする。

 

『よく聞け芥川。そいつはSCP-019【化物瓶】という。お前が見たデカい壺と、小さい人間をセットでそう呼ぶ。壺はSCP-019-1、小人はSCP-019-2だ。壺……まぁ正確には花瓶なんだが……壺に衝撃が加わると、小さい人間が産まれると考えてくれ。』

 

「だからさっきの爆発で一気に産まれたわけか……というか、Dクラスの俺に異常存在の詳細を教えていいのか?」

 

『事態が事態だからな……もし生き残れたら、サイト長に掛け合ってお前をエージェントにしてやる。そうすりゃお咎めなしだ。多分な。』

 

何やら預かり知らない所で、俺の昇進が決まったらしい。

絶対に生き残らなくては。

もう奴隷は卒業だ!

 

「あ、ヤベェ!小さい人間がドアを破った!しかも数が増えてる!多分20とかそんくらいだ!」

 

『そこら辺に銃ないか!?あったら撃て!産まれたてならまだ銃で撃ち殺せる!』

 

「運が悪い事に、銃が無いんだなこれが!クソが!」

 

『仕方ねぇ、こうなったら俺が行く!』

 

『ちょ、博士!?』

 

逃げるしかねぇ!

こんな所で、何も知らないまま死んでたまるかってんだ。

この世界には、俺が満足できるものがあるかもしれないんだ!

 

「誰かああぁぁぁ!!」

 

その時、俺の呼びかけが届いたのか、天からの使いが来た。

いや、どちらかと言うと地獄からか?

 

突然現れた女の子が、次々と小さな人間を撃ち殺していく。

その表情はとても涼しい。強者の余裕ってやつなのかも知れない。

ついには、小さな人間……019-2はいなくなった。

 

「はぁ……はぁ……サンキュー……助かった……」

 

目の前の少女に礼を言う。

随分背が低いな。

それに悪魔のような角と翼が生えている。

キヴォトスにはこんな人間もいるのか。

 

「珍しいわね、ヘイローがない人間がここにいるなんて……」

 

『芥川君!どうなったんですか!?応答して下さい!』

 

足立ならこの子の事も知ってるかもしれない。

 

「あー……すまん、ちょっと電話だ。助けてくれてありがとう。ちょっと待ってて。こちら芥川。なんかめっちゃ強い子に助けてもらった。悪魔のような角と翼があって、髪は白くて長い。紫色の服を着ている。」

 

『その特徴でめっちゃ強いとなると、空崎ヒナさんしかありえませんね。よかった、彼女がいれば百人力ですよ!』

 

なんだこの絶対的信頼……

この子、作中最強とかそんな感じなの?

まぁ、今はどうでもいい。

この子に壺を破壊してもらおう。

 

「あの小さい人間たちは、あの店に転がってるデカい壺から出てきてるんだ。破壊してくれないか?」

 

空崎は壺があることを確認し、少し考え込むと、

 

「……まあ、こいつらを残しておくと更に面倒、か……あなた、名前は?」

 

と言った。

別に同校の生徒とかでもないのにいきなり名前とか聞くか?

疑問に思ったが、とりあえず答えることにする。

 

「俺は芥川シズルだ。君は?」

 

既に名前を知っているからな……ここで改めて聞くことで、つい名前が出てしまった時に疑われなくなる。

ラッキーだ。

 

「……空崎ヒナ。」

 

「よし……空崎、悪いが俺は戦えないから安全な所に逃げさせてもらうぜ。」

 

「わかった。」

 

ちょっと離れた路地裏に隠れて通信する。

 

「空崎ヒナが壺を破壊してくれるそうだ。」

 

『おお、それなら!』

 

「いや、それは怪しいぞ。」

 

「うわっ!?怪しい奴!」

 

俺の目の前にヌッと現れたのは、人間の男……の頭にタブレットがのっかってる怪生物。

俺が知る千石博士その人であった。

原理は知らんが、この男はいつも頭が人間ではない。

 

「そういや、博士が物を頭に出来る能力を持っていることをすっかり忘れてた。」

 

「おう、来たぜ芥川。ここがキヴォトスのブラックマーケットか。まさにスラム街って感じだな。お前に装着させてるGPSで場所が分かって来た。」

 

「そっか、GPS……まぁ今はいい。難しいってのは?」

 

「019は何故か破壊できないんだ。」

 

『あ、博士やっと合流したんですね。019が破壊できないって言うのは?』

 

「019を収容しているサイトによると、どんなに高火力の銃火器を使っても、鈍器を使っても、燃やしたり酸で溶かそうとしても、絶対に壊れず、傷つかなかった。見立てでは超硬度に加え、再生能力もあるのではとの見解だ。彼女が持つ銃は未知の形状だが、はたして破壊できるのかどうか……」

 

「ええ……途端に不安になってきたな。」

 

『ま、まあヒナさんなら……ブルアカには『神秘』という謎の力があって、それが019への特効になるかもしれませんし、普通にとんでもない火力かもしれませんし……ヒナさんが撃ってるのは明らかに銃弾じゃなくてビームだし……』

 

せめてお前は信じろよ。

この状況、彼女を信じるしかないんだから。

 

「頼むぞ……!」

 

「銃は一応2丁持ってきた、ド素人のお前じゃすぐには扱えないだろうが、一応持っておけ。俺は加勢してくる!」

 

博士は持ってきた銃で019-2を掃射し始めた。

 

「あなた誰!?」

 

「芥川の知り合いだ!小さい人間は俺に任せて、君は壺に集中してくれ!」

 

「……誰だか知らないけど、ありがとう。あの壺、とても硬い。力を込めないと壊せなさそう。」

 

博士と空崎は抜群のコンビネーションで019にダメージを与えている。

俺にも何かできないものか……

 

「ターゲットを確認した」

 

空崎が何やら、銃からビームを撃ち出した。

 

『まさかスキル!?終幕:イシュ・ボシェテ!?』

 

「足立くんうるさい」

 

通信を切る。

 

ガガッ!

 

エネルギーがぶつかり合い、大きな音が鳴り響く。

壺を見ると、なんとヒビが入っているではないか。

なんだよ、壊せるじゃないか。

 

「いける!」

 

だが、壺のヒビが消えていく。

ゆっくりと再生している様だ。

なるほど、確かに壊せない。

 

「再生能力か……!空崎ヒナ!さっきの攻撃、もっと撃ち込めるか!」

 

「なんで名前……ああ、芥川シズルから聞いたのね……さっきの攻撃にはタメが必要。一発撃ったら暫くは撃てないわ。」

 

「困ったな……一番もどかしいじゃないか。」

 

一旦引いて体制を立て直す2人。

壺……019-1からは、大量の019-2が出てくる。

傷つけられた事に怒っているようだ。

店も全壊し、様々な方向から019-2が襲ってくる。

博士が左を向いている間に、右から019-2が2体飛びかかってきた。

 

「博士!三時の方向に2体いる!」

 

「サンキュー!」

 

「空崎!六時に3体!」

 

「!」

 

そうか、指揮か。

敵の位置を教えるくらいなら、俺にもできる。

俺は近くの建物の屋根によじ登り、周囲を見渡した。

どうやら多少は賢くなっていても、019-2は馬鹿らしい。

建物を利用して回り込もうとする奴はいないようだ。

 

「博士!あいつらに有効な攻撃は他にないのか!」

 

「炎だ!炎なら効く!だが生憎、サイトに火炎放射器がなかったもんでな!しかも、研究によると火炎耐性を持つ奴らも出てきてるらしい!どうしよう!」

 

「見切り発車してんじゃねぇよ!」

 

よく考えたら、あっちの世界にいた時も、千石博士はノリで実験内容を変えるような人だった。

なんだかんだで結果を残すので、博士でいられるようだが……

 

「……あ、おい博士!」

 

「どうした!」

 

「向かい側の店にデカいガスボンベと、恐らく油の缶がある!投げ込んで火をつければ、有効打にならないか!?」

 

「取りに行きたい所だが、数が多すぎる!彼女一人ではこの数は捌ききれない!」

 

「く……手強い……!」

 

「なら俺が……うわっ!登ってきやがったのか!」

 

屋根に登ってきた019-2を撃ち落とす。

どうやら、俺の銃スキルは心配ないらしい。

とはいえ、大ピンチには変わりはない。

ここからどうする?

敵は着々と数を増やしている。

対して、空崎も博士も疲れが見えてきた。

このままではジリ貧。

どうにかならないか?

いや、どうにかなれ!

 

………

 

「!」

 

「逃げることは……できない……?」

 

俺がそう思った瞬間、大多数の019-2が消えた。

何ら不思議はない。

空崎が先程のビームで、019-2を一掃したのだ。

だがその空崎本人が一番驚いていた。

 

「なんだか銃がおかしい。普段ならこんな少ないタメで出ないのに……それに、私も力がみなぎる。最近忙しくて寝てないのに……」

 

「……………まあ今はいい。今ので小さい奴らが片付いた、続けて撃て!」

 

「え、ちょっと……」

 

博士の頭を見ると、いつの間にか頭がタブレットから銃に変わっていた。

持っていたものを付け替えたらしい。

 

「撃て!」

 

「っ……どれくらい耐えられるか見ものね」

 

空崎は驚きつつも、ビームを発射した。

 

バキッ!

 

といういい音とともに、019-1が割れて、穴が開いた。

019-1は危険を感じているのか、今までの比じゃない量の019-2を放出してくるが、もう遅い。

 

「燃えろォ!」

 

博士が持ってきた油の缶と大きなガスボンベを投げ、頭の銃で撃って爆発を起こした。

……片手でアレ持ったのか?あの人何者?

とにかく、019-2が火に弱いという情報は確かで、爆発によって多くの019-2が死に絶えた。

そして、その隙に空崎がもう一発。

その一発で、019-1がバラバラに砕けた。

 

「やったか!?」

 

「いや、やってない。見ろ、まだ集まろうとしているぞ。空崎ヒナ、もう一発頼む。」

 

見ると、019-1の破片が動いてまた一つになろうとしていた。

空崎は息を吸い込むと、

 

「逃さない」

 

最後のビームを放ち………

 

 

………ついにSCP-019は、完全に砕け散り、消滅したのだった。

 

「久しぶりに中々手応えのある相手だったわね。」

 

「助かったよ空崎。俺達だけじゃこいつは壊せなかった。」

 

「ええ、こちらこそ。」

 

そういえば、財団でない人間の前で思い切りSCiPの話をしたけど、大丈夫か?

 

「所で貴方、もしかして先生……」

 

シュッ。

博士が空崎の首筋に注射器を打ち込み、それで空崎は倒れてしまった。

 

「博士!?」

 

「これは記憶処理薬だ。1時間あたりの記憶を忘れる。これで、こいつは俺達のことを忘れるだろう……さ、離れるぞ。これからどうするか決めなくては。」

 

「ちょ、待てよ博士!」

 

情報が少なすぎるんだよ!




今回使用したSCPの記事です。

タイトル: SCP-019 - 化物瓶
原語版タイトル: SCP-019 - The Monster Pot
訳者: 訳者不明
原語版作者: Sophia Light
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-019
原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/scp-019
ライセンス: CC BY-SA 3.0
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