心地よい朝だ。
ゴツゴツした地面で寝ているのがどうでもよくなるくらい、気温が良好。
天気はカラッと晴れていて、普通に過ごすなら、最高のコンディションだろう……
「そう!!普通なら!!」
エージェント•芥川は叫ぶ。
「うるさ……どうしたんですか……」
機動部隊(元)隊長エドガーは、芥川より早く起きていたようで、朝食の用意をしていた。
「どうしたもこうしたもねぇよ!スケジュール通りなら!明日!カイザーPMC襲撃の日だろ!時間なさすぎ!アアアアァァァァ!?!?」
「芥川君、夏休みの宿題溜め込むタイプでしょう?」
「いやコツコツやってたよ!?でも飽き性だからペース遅すぎて結果的に最終日地獄だった!!」
芥川が発狂するのも無理はないが、昨日の落ち着きはどこへ行ったのだろう……
今のストーリーの進み具合は、ホシノが黒服との契約を承諾し、拘束された頃。
時系列的には今日、カイザーPMCがアビドスを襲撃し、それを撃退。
そして次の日、カイザーPMCに殴り込みをかける……と言った流れ。
このまま進むと、「カイザーPMCに殴り込みをかける」フェーズに、ズレが発生する。
何故かというと、このフェーズでは、阿慈谷ヒフミの口利きにより桐藤ナギサが決断を下し、トリニティの生徒たちが砲撃でアビドス廃校対策委員会を援護してくれるのだが、財団がやってきたこの世界線では、SCP-019による騒動のせいで、対策委員会とヒフミが出会っていないのである。
これによりアビドスとトリニティの繋がりはなくなり、カイザーPMCに勝てるかが怪しくなっている。
「落ち着いて下さい、解決方法になりうる存在が見つかりましたから。」
「え?」
突然すぎるエドガーの勝利宣言に、思わずぽかんと口を開けてしまう芥川。
戸惑っていると、エドガーの後ろから、一人の少女が出てきた。
「お前は……!」
芥川は、そいつの顔を知らない。
声も知らない。
だが、そいつの
何故なら……その少女は、昔芥川がよく着ていたものと同じデザインの、【オレンジのつなぎ】を着ていたからだ。
「お前……Dクラス職員か?何故ここにDクラスが……エドガー、もしかして夜のうちに攫った?」
「しませんよ、そんなこと。Dクラスがいきなり出てきて、私もとても驚きましたが、調べてみたら、この記事を見つけたんです。」
エドガーは『SCP-2959』と書かれた記事を見せる。
「本当の事だ、
改めて、目の前にいる少女の姿をよく見てみる。
彼女は青色の長い髪を流している。
顔立ちは、多分いい方。つり目が特徴的。
背丈は、凡そ160cm後半程で、痩せ型のようだ。その割に胸はデカい。2次元的表現というやつだろう。
また、発見当時は大きなアサルトライフルを持っていた(エドガーが押収した)。
そして最大の特徴として、彼女の頭の上には大きな輪っか……そう、ヘイローがあったのだ。
人によってヘイローの色、柄、形は違うが、この少女の場合、白黒で、3つの出っ張りのある円の内側にまた円があり、内側の円に向かって3つの矢印が伸びている……まあ分かりやすく言うと、『SCP財団のロゴ』の形をしていた。
「で、なんでDクラスがここに?」
「私が説明する。」
少女はエドガーの前に出てきて、ぺこりとお辞儀をした。
「私はD-2。これからよろしく、博士。」
「よろしく。」
そして、二人は握手をした。
さて、既に汚染済のこのジャッカスに代わって、地の文が解説。
このDクラス職員『D-2』の正体は、『SCP-2959 かつての我らとその使命』の実体の一人、『SCP-2959-2』なのである。
このSCPについて、解説しよう。
SCP-2959は、財団全体を汚染しているミーム的災害である。
2959は人型の実体を持って現れる。この人型実体の構成要素は多種多様で、性別、経歴、身体的特徴、人種、年齢その他を持った通常の人間の集団として出現し、精神、身体的状態は標準偏差の範囲内に収まっている。
共通点として、財団職員を『博士』と呼ぶ。
また、大体が『厳重に警備された様々な刑務所におり、様々な国家の死刑囚または政治犯であったが、財団によって引き上げられた』と主張している。
財団に雇用されている人間がこの実体と話したときに、異常が発生する。
2959実体をヒト被験者(要はモルモット)とみなすようになり、その職員が暴力的な事を嫌いであっても、2959実体に対して、非道な実験を行う事に躊躇しなくなる。
勿論、個人差はある。が、些細なものだ。
簡単に説明すると、こんな感じ。
後書きに記事のリンクを貼るから、詳しくはそれをチェックしておくれ。
芥川達の所へ、視点を戻そう。
芥川は、D-2から先程の解説文と大体同じ事を聞いた。
「つまり俺達、汚染されたってこと?けどまぁ……どうでもいいか。」
「ええ、どうでもいいんです、そんなの。D-2の存在確認により、我々はこの世界でも、Dクラスを使うことができることがわかった。これは大きな進歩ですよ。」
「調月のAMASがあるとしても、やっぱり人は欲しいもんな。特性上、必ず人が死ぬオブジェクトもあるらしいし。」
説明読む感じ、こいつらは死んでも蘇るから使い倒せるしな。
と、芥川はスマホを掲げながら言う。
「それで、D-2。すぐに動員できるDクラスは何人いる?」
二人は大砲など持ってきていないし、基底世界で二人が所属していたサイトにも、大砲はない。
千石博士に連絡して、リオに頼ることも考えたが、エリドゥでは危険なSCPオブジェクトとの戦闘があったようで、AMASや武器の数々が壊されてしまったらしく、支援が出来ないとのこと。
なので、カイザーPMCの裏からこっそり侵入して、敵の頭数を減らすしかないのだが……
D-2は、少し得意げに見える表情で答えた。
「53人。」
「「………………」」
芥川は素早い動きでエドガーの肩を掴むと、秘密の会話を始めた。
「(53人って……どうなん?)」
「(……原作は確か対策委員会+便利屋+風紀委員+砲撃部隊で……ゲームなので、規模が縮小されている可能性があります。我々は大砲なしで、砲撃部隊のいない部分を補う必要があるので……50人は、流石に少ないと思いますね。)」
「(な〜にが『落ち着いて下さい、解決方法になりうる存在が見つかりましたから。(キリッ)』だよ。)」
「((キリッ)はやってません。)」
「(そこは重要じゃねぇよ。砲撃できない分、数で攻めなきゃいけないのに……」
「砲撃……大砲がいるんだな?」
「え?心読んだ?」
「声に出ていたよ。大砲なら、Dクラス宿舎にいくつかある。」
「マ?」
「マ。」
「あー……そういえば、Dクラス宿舎には、Dクラスの殺害用に沢山の武器があると、2959の説明欄に書いてありますね。」
その通り。SCP-2959には、Dクラス職員の生活から処刑まで、様々な事が大体できるだけの物がある。
その内の一つに、大砲もあるということだろう。
「それはナイスすぎる。砲撃部隊の真似できんじゃん!」
「大砲は10個くらいあるから、頑張れば50人でもできると思う。」
一般的に、迫撃砲を使うのに必要な人員は、一門につき五人らしい。
知識面は……どうにかしよう。
「兎に角、一気に希望が見えてきましたね。」
恐らく彼らはこれまでの人生で今が一番、Dクラスを頼りにしている。
「そうと決まれば……D-2、Dクラス宿舎は何処にある?」
「……こっちだ。」
D-2はついてこいと言うかのように、歩き出す。
芥川とエドガーはそれについていくのだが……D-2はすぐに足を止めた。
「まだ10mくらいしか歩いてないけど……」
「ああ、ここだからな。」
「「え?」」
目の前には、大きなアパートのような建物。
こんな建物は、昨日までなかった……
………というか、昨日まで914があった場所である。
「嘘だろ!?……いや、そういうもんか。」
「私らが寝た後に一瞬でできたと……まあ、不思議じゃありませんね。」
汚染された者は、Dクラス宿舎を『あって当たり前』と思うようになる。
恐ろしいことだ。明らかに以上なのに気づけないとは。
宿舎から、沢山の人……?が出てきた。
ヘイロー持ちの少女や、大きな犬の姿をした獣人、人型ロボット。そして、基底世界でよく見かけていた、人間の男女。
全体の共通点として、Dクラスのつなぎを着ている。
そしてヘイロー持ちの少女たちの共通点として『ヘイローがD-2と同じく財団のロゴ』というものがあったが、それ以外は特に共通点がない。
数えてみると、D-2を入れて丁度50人。
宿舎の大きさからして、50人分も部屋あるのか……?とは思うが、そこを疑問に思うことはできない。汚染されているから。
「この50人が、現状のDクラス職員の皆さんですね。」
感慨深い面持ちで、エドガーは言う。
「これから増えていくよ。」
D-2は笑顔で言うが、その笑顔はどう見ても作り笑顔だった。
「しかし、心強いな。人数がいるだけで、何にでも勝てる気がする。」
「そういう効果……明確には名前はないみたいですね。あ、そうだ。ヘイロー持ってる人とロボット、あと獣人。1人ずつ出てきてください。」
「お?」
「なんだ?」
「どうしました?」
エドガーの呼びかけに、3人のDクラス職員がやってきた。
エドガーは3人にそれぞれ布と耳栓を渡しながら言う。
「今から3人とも目隠しと耳栓をして……貴方はここに入ってきてください。2人は待機で。」
「?わかった。」
「「了解。」」
「……何するん?」
不審に思った芥川は、エドガーに質問を投げかける。
エドガーはそれに対し、
「……耐久実験です。」
と言い放ち、ヘイローを持つDクラス職員を、路地裏の空き家に連れ込んで……
ザクッ……ギャッ……グシャッ……ブチッ……
「ヒェッ………」
嫌な音が聞こえた。
タイトル: SCP-2959 - かつての我らとその使命
原語版タイトル: SCP-2959 - What We Did, What We Were
訳者: gnmaee
原語版作者: kinchtheknifeblade
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-2959
原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/scp-2959
ライセンス: CC BY-SA 3.0
出てくるDクラスの設定どうしようかな……