芥川とD-4、そして合流したD-1は、何故かお出かけをしておるシャーレの先生と久田イズナをつけていた。
「なんで当然のようにデートしてんだあいつら。好感度おかしくね?」
「そういう世界ですから。焼きそば美味しいです。」
「お祭りのラムネはウメェって相場は決まってるが、なんでその相場になるかは知らねーぜ!」
「普通に楽しんでんじゃないよ……あ、魑魅一座。」
先生はイズナと別れた後、魑魅一座に素直に拘束された。
凄く展開が早いように見えるが、デートシーンを端折っているだけである。
「依頼人の所に行くのかな……エドガーに連絡しとくか。」
芥川はエドガーに電話をかけるが、何コール経ってもエドガーが出る気配がない。
「…………お前ら、武器構えろ。エドガーは何かに巻き込まれているらしい。多分戦闘になるぞ。」
「「……了解。」」
先程までの浮かれモードから、一瞬で切り替え。
財団職員根性が染み付いているようである。
芥川とD-1は、エドガーが潜伏しているはずの依頼人のアジトへ。
D-4はこのまま先生達をマーク。
話数的には7話だが、クライマックスは近いかもしれない。
「こんなところに先生を連れてきて……まさか……!」
一方、イズナもまた、依頼人のアジトに来ていた。
「見つからないように天井に隠れて……」
この先で、一体何が起こるのか。
それは知らないが、先生の洗脳を解くため、イズナは天井裏を駆けるのd「痛った!?」………どうやら、ストーリーに歪みが発生したらしい。
「いたた……」
「D-4お前どこ見て…………あ」
「………ひぇ『叫ぶなバレるだろ!』むぐっ!?……ぐぅ……」
イズナは、同じく天井裏に潜伏していた芥川とぶつかってしまったらしい。
てっきり柱に当たったものだと思い確認したら、なんと人がいるではないか。
恐怖で叫びそうになるイズナだったが、芥川は彼女を咄嗟に羽交い締めにし、睡眠薬で眠らせたのだった。
「は〜……やっちまった……記憶処理するしかねーなぁ……」
「物語に介入しようとするとこうなる、いい相場を知ったぜ。」
「ま、まあまあ、記憶処理は万能ですから!足立先輩に連絡しましょう!」
「そうだな………………もしもし足立くん?記憶処理のシナリオ頼む。久田イズナと天井裏でぶつかったから、柱にぶつかって気絶したとか書いといてよ。」
『いきなり話を詰め込むのやめてくれません?何が何だか……』
足立は今のところ、芥川達のオペレーターではない。
彼はエリドゥにあるモニターと、それと繋がっている監視カメラの映像しか見れないため、オペレーターとして不向きなのだ。リオが基底世界と繋がるドローンなど作れれば、いずれオペレーターができるかもしれないが、そもそも基底世界と繋がるシステムすら謎なのだから、しばらく先だろう。
「あーごめん、端折りすぎた。今はイベントシナリオ『桜花爛漫お祭り騒ぎ』の最中で、先生が魑魅一座って奴らに捕まって、久田イズナがそれを追って天井に隠れたところ。偶然見つかっちゃって、咄嗟に記憶処理してしまったから、それ用のシナリオが欲しい。」
『はぁ……了解です。』
「いつものように文句言わなくて助かる。」
『なんかもう……仕方ないことなんでしょうね。世界を守るための人数が少なすぎますから。割り切ることにしました。それで、イズナイベ終盤ですね?そこでイズナちゃんを眠らせてしまったとなると、シナリオ進行は絶望的です。この失敗は今後のシナリオにも色々関わると思います。』
「やっぱそうなるかー……大体どこ変わるとかわかる?」
『そこら辺は細かい変化が色々と……出てきたら教えます。……シナリオ送りましたよ。』
「サンクス。ついでだけど、エドガー今何処かわかる?連絡取れないんよ。スマホに発信器ついてるから、足立くんならわかるだろ?」
『エドガーさんは……あ、その建物の最奥の部屋に居ますよ。座標送りますね。』
足立からエドガーの座標を受け取った芥川は、D-1とD-2を見る。
「ありがとさん。さて2人とも、行くぞ。」
「え、この子どうすんだよ。」
「そこらに置いとけ。シナリオが頭に入ってんだから平気だ。」
「雑じゃありません……?まぁ仕方ないか。」
D-1とD-4はイズナを寝かせると、階下の様子を見る。
「お頭、先生を連れて……あれ?」
「お頭ー?」
先生を連れた魑魅一座メンバーが2名やって来た。
キョロキョロしている2人に、先生が尋ねる。
「どうしたの?」
「お頭がいないんだよ……この部屋で待ってるって言ってたのに。仕方ねぇ、ちょっと探してくるか。お前、先生が逃げないように見張っとけ。」
「了解。」
魑魅一座の片割れは、お頭……依頼人を探しに行った。
「どうします……?見つかったらまずいですよね?」
「今後の行動に支障が出るな。いきなりこんな離れに葬儀屋が立ち寄ったとか言っても信じてもらえないだろうし。」
葬儀屋の設定を活かせる時はいつか来るだろうが……少なくとも今ではない。
芥川達がいる地点と、エドガーがいる部屋の天井裏は、壁で阻まれている。
壊してしまうことも出来るが、十中八九音で気づかれる。
かと言って降りるにしても、降りたら先生に見つかる……
さて、どうするか?
「こういう時こそあいつらの出番だよ。もしもし、島村?」
芥川は財団のトラックの前で待機している島村に電話をかけた。
『はいもしもし、島村です。どうした芥川。』
「ちょっと今諸事情で天井裏に潜伏してるんだけど、出られなくなったんで、煙幕を使ってほしい。座標はここ。」
『黒幕がいる所か……了解、D-51をそこまで行かせる。』
電話が途切れ、芥川はスマホを懐にしまい直す……と、着信のバイブが鳴る。
当然だが、着信音は設定していない。エージェントとして、不要な音を立ててはいけないからだ。
「はいもしもし……」
『芥川くん、私です、エドガーです。先ほどは出られなくてすみません。』
「謝るより、何があったか話してくれよ。」
電話の主は、行方不明だったエドガーだった。
芥川は驚かずに冷静に質問をし、エドガーも応える。
『ええ……まず結論から話すと、今回の黒幕であるニャン天丸こと『ニャテ • マサムニェ』……呼びにくいから今後はニャン天丸でいいですね?彼はオブジェクトに汚染されていました。』
ニャン天丸とは、本イベントの黒幕として出てくる猫獣人の名前だ。
ストーリー序盤では商店街の会長としてお祭り運営委員会と話しているが、その正体は魑魅一座を操る『路地裏の独眼竜 ニャテ • マサムニェ』として、ストーリー終盤で登場する……という役回り。詳しくはゲームを要チェック。
「あのニャン天丸が……悲しかったなあ……」
『芥川くん、ストーリー読んでないでしょう?取り繕わなくていいですから。』
「……さーせんした。」
『ストーリーを読むための最低限の育成はいいですけど、今はイベント中なんですからイベント呼んでください。そんでもって話を戻しますと、彼は「SCP-2201-JP 無尽月導衆定款」に汚染され、自らを「無尽月堂衆」と名乗るようになっていました。』
「おん……こっちでも調べるからちょっと待って。」
芥川はスマホを操作し、『無尽月堂衆』について調べると、千石博士がまとめたデータが入ってくる。
『無尽月堂衆』とは、世界中に潜伏している忍者の組織である。
彼らは特殊な反ミーム性を自らに施し、世間に自分たちを知られないようにしている。
そしてSCP-2201-JPは、無尽月導衆の定款である。
これを認識した者は、要注意団体「無尽月堂衆」を認識できるようになる……と思われていたが、その後の研究により、逆にこの定款を認識した者は無尽月堂衆に関する情報を正しく知れなくなるという異常性があることが発覚……したかと思われたが、その後の研究により、このオブジェクトの最終的な内容は「認識した者は、架空の組織である無尽月堂衆が本当にいると思い始め、最終的に自分が無尽月堂衆になる」という、なんとも頭が痛くなるような内容であった。
このオブジェクトによる汚染段階は5つあり、
(以下コピペ)
ステージⅠ
SCP-2201-JPの暴露により無尽月導衆が実在する事を確信する。
ステージⅡ
近現代史に無尽月導衆が関与した記述が発見出来ない事に強い違和感を持ち、無尽月導衆が情報を隠蔽していると認識するようになる。この段階までに確保すればタイプθ記憶処理により精神異常の除去が可能。
ステージⅢ
無尽月導衆と唯一繋がりを持つSCP-2201-JPの調査を行い、その過程で周囲の人物に拡散する。敵対関係にある人物同士でも無尽月導衆を共通の脅威とみなし協力するようになる。
ステージⅣ
無尽月導衆の活動内容を暴かねばならないと言う強迫観念が進行し、あらゆる出来事を無尽月導衆の関与と結びつけた妄想を語り始めるSCP-2201-JP-1が発生する。SCP-2201-JP-1の集団内で妄想が発生すると、エコーチェンバー現象が発生し、妄想は悪化し続ける。この妄想は異なるSCP-2201-JP-1のグループ間でも似通った内容になる。財団が捕捉出来ていないSCP-2201-JP-1のネットワークが形成されていると考えられている。
この段階までに確保すればタイプφ記憶処理により精神異常を除去する事が可能。
ステージⅤ
SCP-2201-JP-1は妄想と史実のずれを解消するため、情報の捏造やかく乱など、あらゆる手段を用いて妄想を史実に反映させる。 SCP-2201-JP-1は仲間同士のネットワークにより高度な諜報、暗殺、情報工作能力を習得しており、捕捉は困難となっている。
ステージⅤに至ったSCP-2201-JP-1の精神異常を除去する方法はない。
というものである。
「じゃあ報告書とはいえ、認識した俺らヤバくない?」
『財団職員は皆何処かで対策ミームを接種しています。ご心配なく。話を戻しますが、ニャン天丸はすでにステージVに至っており、治療は不可。今気絶させた所です。無尽月堂衆について話してもらう為に、千石博士の所に連れて行く事にしましょう。こっちに来れますか?』
「島村に手配して貰ったDクラスが煙幕を持ってくる事になってる。辺りが煙に包まれたら全員で脱出するぞ。その後、D-4は先生達の様子を報告しろ。」
「かしこまりました!」
『了解です。それでは、時をお待ちしています。』
通話終了。
それと同時に、今度は見知らぬ番号から通信が入った。
『……こちらD-51……煙幕を投げていいか……?』
「来たか。2人とも、移動の準備は出来てるか?」
「私は大丈夫です!」
「ここで出来てねぇ相場は無いぜ?」
「だそうだ。煙幕頼むよ。」
『……了解』
次の瞬間、辺りを包む煙。
それに乗じて、財団一行は廃墟から抜け出した。
「な、なんだこの煙幕は……!?お頭!お頭ー!」
魑魅一座の叫びは、霧の中に吸い込まれていった。
「……なるほど、事の顛末は分かった。まずは全員無事に生還したことを喜ぼう。」
トラックにて、島村が芥川達を出迎える。
「犠牲こそ出ませんでしたが、ストーリーを歪めてしまった。失敗ですよ、これ以上なく、ね。」
エドガーは、担いでいたニャン天丸を下ろして言う。
背中に大きな切り傷を負って気絶したニャン天丸の姿は、とても痛々しい。
「……死んでない?」
「死んでませんよ。」
「なら、いいか。」
「お前ら会話下手すぎでは?」
「既に足立くんが博士に詳細を伝えています。ニャン天丸を回収するAMASが来るので、引き渡したら今回の任務は終了です。引き渡しは私が行いますので、Dクラスの皆さんはトラックに戻って下さい。」
エドガーが纏めると、Dクラス達はトラックに入っていく。
不気味なほどに素直だ。
「なんか、長い1日だった気がするよ。」
「上手くいかない日に限って、時間は長く感じるものさ。ほら。」
島村は芥川に抹茶ラテを差し出す。
「百鬼夜行に来てこれを飲まないなんてありえないからな。」
「……お前、あの会社に所属してなければ絶対生徒達と仲良かったと思う。」
春先のようだが、夜はまだまだ寒い。
上手くいかなかった夜でも、抹茶ラテは美味しかった。
その後、やって来たAMASにニャン天丸を引き渡し、千石博士と簡単に話をしてから、次の任務の確認があった。
『次のシナリオは【時計仕掛けの花のパヴァーヌ】一章だ。嘘つきのゆりかごに確認したから間違いない。』
「あ、それは読んだ。虚無章な。」
「一応、天童アリスの初登場ですよ。と言っても、千石博士とリオさんが見張っている以上は、変な事は起こり得ないでしょうが。まぁだとしても、暇を持て余すことは無いと思いますがね……」
しばらくすると、D-4から通信が。
『芥川先輩!修行部によって魑魅一座が退治され、先生は助け出されました!シナリオ終了です!』
「了解。戻って来てくれ。2人とも、シナリオ終了だってよ。」
「聞いてましたよ。とりあえず、今日は休みましょう。我々に完全な休日など、訪れませんからね。」
「……カイザーコーポレーションもびっくりのブラック企業だな、ここは。」
財団の面々は眠る。
束の間の現実逃避のために。
お、お久しぶりです……
モチベ失って失踪してました、すみませんでした。
タイトル: SCP-2201-JP - 無尽月導衆定款
作者: WagnasCousin
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-2201-jp
ライセンス: CC BY-SA 3.0