キヴォトスにてSCPを収容する!   作:勧悪懲善

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何?Dクラスと博士がブルアカの世界に?
そんなバカな話があるか。
と、バカにしちゃいけない。
それが正式な報告書なのか、誰かが暇つぶしに書いたtaleなのかはわからないが、財団職員として、読んでおくべきだろう。
さて、どんな話なんだか……


2048-JP ピンからキリまで、危険度は様々

巨大なぜんまい仕掛けを前にして、千石博士は悩んでいた。

 

「(流石に914を無視してミレニアムに行くことは出来ないな……何をするにも、2人じゃ少なすぎる。もっと人員が必要だってのに、何故かいつまで経ってもDクラスが来ない……)」

 

千石博士は目の前の路地裏を見ながら、思考を巡らせる。

あの後、彼は足立研究助手に『Dクラス職員を何人かキヴォトスに送れ』と指示を出した。

異世界に繋がるドア……仮に『SCP-4042-JP 透き通る青春はいずこ』とする。

4042-JPを通った物は全て、地上から2.5m程のところから落ちてくる。

そして、その物たちを入れるよう博士が足立に指示してから、足立が入れた物が路地裏に現れるまで、5秒程しか経っていないのだ。つまり、タイムラグは無いと言える。

足立から『Dクラスを5人送りました』との報告も来ている。だが、いつまで経ってもDクラス職員が現れない。

人間だとまた違うのだろうか?いや、彼らと同じDクラスが一人、確実にこの路地裏から出現し、千石博士自身もここに出現した。

出現ポイントはここで固定されている可能性が高い。

つまり、

 

「あのドアをくぐってキヴォトスに着くには、何か条件があるって事だ。俺とお前にあって、お前以外のDクラスに無いもの。それは何だ?」

 

博士は目の前にいる唯一の財団エージェントであるエージェント•芥川に問う。

彼らは4042-JPをくぐり、学園都市キヴォトスへやってきた。

キヴォトスとは、ソーシャルゲーム『ブルーアーカイブ』の舞台で、博士と芥川が来たキヴォトスでは、本来無いはずのオブジェクト達がひしめいていたのだ。

 

「入った時点では俺はまだDクラスだったから、Dじゃないって事じゃないよな。……足立くん、送ってもらったDクラスの性別とか年齢は?」

 

『送ったDクラスは男女両性居ますし、博士や芥川君と同い年の人もいます。身長も同じ人もいるので、身体的特徴ではないかと。』

 

芥川は通信で、元の世界に残っている財団職員の足立研究助手に情報を求めたが、期待に応えうる情報は無かった。

 

「髪の色とか、目の色は?」

 

芥川は昔、飛行機事故を起こした上で奇跡的に生き残り、Dクラスになった。

その時の恐怖から、彼の髪の毛は真っ白に染まっている。

彼は事故当時から髪を伸ばしており、現在はうなじのところで雑な一つ結びにしている。

相当な血を浴びたのか、毛先は真っ赤だ。

同じく恐怖で目に届く成分がおかしくなったのか、彼の瞳は青い。

 

「それは無いな。今、送られた奴らのリストを見たんだが、白髪のDクラスもいたから。」

 

「頭付け替えたのか。普通の人間の顔はないのか?」

 

いつの間にか頭をタブレットに付け替えていた千石博士に、芥川はツッコミを入れる。

この男、道具を自らの頭にできるという異常性を保有しているのだ。

 

「……普通の人間……あ、わかったかもしれん。足立、エドガーを送ってくれ。」

 

『エドガーさん?Dクラスと違って、彼が消えるのは損失でしかないのでは?」

 

「大丈夫だ、許可貰ってこい。奴の嫌われっぷりは折り紙付きだ。」

 

「……ですね、わかりました。サイト長の許可もあるので、今から送ります。』

 

どうやら、博士は何かがわかったらしい。

 

「エドガーって、確か、俺等のサイト唯一の機動部隊の奴だっけ?」

 

「そうだ。機動部隊し-20(キリキリバサラ)の隊長、エドガー。つっても、エドガーってのはコードネームで、本名は俺も知らないがな。」

 

「で、何でそいつを送ろうって?」

 

「奴は『異常性』を持っている。恐らく、それが無事にキヴォトスに来るカギだと、俺は推測している。」

 

「異常性……待てよ、化け物の博士はともかく、俺は普通の人間だ。俺にも『異常性』があるって?」

 

「ああ。先程、空崎ヒナの調子が良くなった時だ。ヒューム値の異常を感知した。」

 

彼等は少し前、ブルーアーカイブのキャラクターの1人である空崎ヒナと協力し、SCP-019を破壊したばかりである。

尚、ヒナの記憶は消した。

 

「ヒューム値ってのは?」

 

「説明が中々面倒なものなんだが……分かりやすく言うと、ヒューム値とは『現実の強さ』だ。」

 

「……はい?」

 

「まぁ、わかんねぇよな。続けるぞ。まず、この世界のヒューム値を1とする。これを基準に『自身のヒューム値が高い』もしくは『周囲のヒューム値を下げることができる』存在は、現実を捻じ曲げる事ができるんだ。」

 

「何?超能力みたいな事か?」

 

「ちょっと違うが、その認識でいい。ヒューム値の差を利用し現実を好きに改変する事ができる奴らを『現実改変者』と呼ぶ。早い話、お前は現実改変者である可能性が高い。」

 

千石博士は芥川に対し、ビシッと指を指して言った。

 

「俺が現実を改変できるって?んなわけ……」

 

芥川は、色んな方向に手をかざしたり、手をワキワキさせたりしてみた。

が、何も起こらない。

 

「おっと、適当に改変しようとするなよ。そうしたら撃ち殺すからな。現実改変者は周囲に自分の現実を押し付ける事で、自分に都合のいい世界を作る。その現実の強さを数値化したのが、ヒューム値だ。」

 

「わかったような、わからないような……今地味に殺すって言った?……要は俺にその異常性があったから、空崎の調子を良くできたし、ドアをくぐれたと。そういう事か?」

 

「ああ、そう思ってもらって構わない。」

 

現実改変やヒューム値についての説明は、とても難しい。

芥川が理解するのは、まだまだ先だろう。

 

「しかし、俺に力ねぇ……現実改変すれば、俺もあいつらみたいに銃が効かない身体になれるのか?」

 

「無理だな。現実改変の影響が及ぶのはあくまでも『周囲』。自分自身のヒューム値は同じだから、改変はできない。できるのはせいぜい弾をそらすくらいだ。詳しくはこれ読んどけ。」

 

千石博士は芥川に現実改変に関する資料をダウンロードしたスマホを渡した。

 

「(読んだ)なるほど……よくわからんけど、うまい話じゃ無いんだ。そんでもって……現実改変者は財団に友好的でない場合殺されると。」

 

「そうだな。お前が現実改変能力を持っている以上、危険だから監視しなきゃならない。」

 

千石博士は芥川に、赤い腕輪をつけた。

 

「この腕輪には、スクラントン現実錨が内包されている。お前のヒューム値は大きく下がったはずだ。」

 

スクラントン現実錨とは、ヒューム値を一定に保つことで現実改変能力を封じる機器である。

 

「これは俺が改良したスクラントン現実錨。俺のスマホについてるスイッチ1つでオンオフを変えられるスグレモノだ。危ない時は俺がスイッチをオフにして、お前の現実改変で……という感じで行こう。そろそろ来る頃か?」

 

2人が話している近くに、人が現れる。

その人は、2.5mの地点から、華麗にスタッと着地した。

 

「やあやあ!お久しぶりです千石博士!」

 

タイミングよく現れたのは、深紅の髪を持ち、日本人離れした顔の美男子。

腰には日本刀をさしている。

彼こそが機動部隊し-20(キリキリバサラ)の隊長、エドガーである。

 

「久しぶりだな、エドガー。こっちはついさっきエージェントになった芥川だ。」

 

「こんにちは、芥川君!お噂はかねがね!」

 

エドガーは多少強引に芥川の手を取り、握手をした。

 

「噂も何も無くないか?俺、さっきまで一介のDクラスだったのに。」

 

「Dクラスがエージェントに昇進したなんてビッグニュース、10分もあればサイト中に広まりますとも!仲間同士、一緒に頑張りましょう!」

 

「距離詰めるの早っ……エドガーの異常性ってのは何なんだ?」

 

「教えるより、実際に見た方が早いでしょう。そろそろ周期ですから。」

 

「周期って……えぇ!?」

 

芥川が言い終わる前に、エドガーの髪の色が、深紅から橙色に変わった。

目を丸くする芥川。

 

「今のが私の異常性。私は『一定の周期で髪の色が変わる』異常性を有しているのです。君の現実改変や、千石博士の『モノを頭にできる』異常性に比べれば、どうにもジャッカスな異常性ですよ。」

 

「(ジャッカス……?)いや、びっくりはしたけど……刀持ってるからもっと戦闘に利用できるタイプかと思ってた。」

 

「能力バトル漫画のように便利な異常性ばかりではないんです。これはこれで結構面白いんですけどね。」

 

エドガーは手入れの行き届いた髪を触りながら言う。

 

「とりあえず、これで3人か。まだまだ足りないな。」

 

「いっその事、モブ生徒やモブ住民を捕まえてDクラスとして雇うというのはどうでしょう?」

 

「お前、倫理観どこに置いてきた?財団倫理委員会はお飾りじゃないんだぞ。」

 

「冗談ですよ。」

 

「倫理委員会って?」

 

「財団メンバーは度々、収容のために非人道的行為に走ることがある。それを抑制するためにルールを作っているのが、倫理委員会だ。」

 

倫理委員会。

わかりやすく言えば、財団の良心の最後の砦である。

こいつらが道徳的ルールを決めることで、財団は世界の味方でいられるのだ。例えば、必要以上の犠牲を出してはいけないとか。

ちなみにDクラスは犠牲に含めないのでノーカンである。

 

「なんにせよ、914を安全に収容する施設が必要だ。俺はミレニアムへ行って、調月リオと話してみる。お前らはこれから来るであろう人員と協力して、ここらのオブジェクトを収容してくれ。」

 

「重要といえば……倫理委員会についてのつまらない話をしている間に、こんなものを拾いましたよ。」

 

エドガーは懐から、十円玉を取り出した。

 

「見ててください。」

 

エドガーはその十円玉をピンッと弾き飛ばした。

俗に言うコイントスだ。

十円玉は回転し、表を向いて落ちた。

そしてエドガーはこの行為を20回続けて行った。

投げ方も変えたり、叩きつけたりもした

十円玉はいずれも、表を向いて落ちた。

 

「どう投げても必ず表になる十円玉です。」

 

「確かに異常だけど……地味じゃね?」

 

その光景を見ていた千石博士が口を開く。

 

「これは日本支部で収容しているオブジェクトだな。SCP-2048-JP『普通のコイン』だ。」

 

「明らかに普通じゃないのに?」

 

「ああ。説明すると、このコインは落とすと必ず表になる。さっきエドガーがやった通りな。だが、正確には『絶対に表になる』のではなく、『表になる確率が極めて高い』コインなんだ。」

 

「つまり、裏になる可能性もあるという事でしょうか?」

 

「ああ。そして表が出る確率は、一定の回数投げると急激に低くなり、裏が出やすくなるんだ。」

 

「その確率は?」

 

「500回とも、それ以上とも言われている。そうやって裏になる確率が大きくなった状態でコイントスをし続けると、今度はまた表の確率が高くなる。」

 

「つまり、極端な確率が常に一定回数で変動するSCiP……ということなのですか?」

 

「そう思うだろ?なんとこのコイン、確率が変われば変わるほど、変わる周期が短くなっていくんだ。何回か500、その次は400……と、短くなっていく。そしていずれは、周期はわからないほどに短いものになるんだ。元の世界の実験では、18000回以上投げるともう周期は全くわからない状態になったんだと。その結果、コイントスして表が出る確率は……」

 

「「確率は……?」」

 

2人はゴクリと唾を飲む。

 

「常に50%だ。」

 

「つまり普通の十円玉って事じゃねぇか!何だったんだよこの時間!」

 

芥川の慟哭。

エドガーは半笑いみたいな虚無顔みたいな、絶妙な表情をしている。

そう、このコイン、異常性を持っているかどうかも怪しいのである。

 

「ま、こういうくだらないアイテムも沢山あるってこった。お前ら、暇があったら記事を読んで勉強しとけ。」

 

千石博士は二人のスマホに『SCP記事一覧』と書かれたファイルを送る。

そこに書かれた記事の多さを目の当たりにして、芥川は「マジか……」と天を仰ぎ、エドガーはニコニコしながら、それを見ているのだった。




前書きの人は……まあ、皆さんと同じ読者だと思ってて下さい。
今回から三人称視点になります。こっちの方がやりやすそうだから。

今回使用したSCPの記事です。
タイトル: SCP-2048-JP - 普通のコイン
作者: HN_410
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-2048-jp
ライセンス: CC BY-SA 3.0
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