少し時は流れ……
お昼時。
アビドスの町中にあるラーメン屋、柴関ラーメン。
その中で食事をしている四人組の女の子達。
一人は白いワイシャツの上にコートを羽織っていて、頭からは高貴そうな悪魔の角を生やした赤髪の生徒。
一人はいたずらっ子らしき笑みを浮かべ、赤髪を見る白髪サイドテールの生徒。
一人は白髪サイドテールを見てため息をつく、これまた悪魔の角を生やした白髪ポニーテールの生徒。
一人は見るからに自信のない顔でそのやりとりを見る紫髪の生徒。
彼女らはゲヘナ学園の生徒でありながらアビドス自治区のあたりに事務所を構える犯罪組織「便利屋68」である。
この後柴関ラーメンは彼女達の手によって破壊される事になるのだが……
店の外から彼女らを、そして店の周りを監視する男が二人。
一人は長い白髪を無造作に結び、眠そうな目をしている。
もう一人は優しそうだが、その実疑り深い細目をしており、真紅の髪をウルフカットにして……あ、今髪色が白になった。
「あ、髪色変わった。」
「今回は早めですね。変わる周期もランダムなんですよ。変わる少し前から髪が硬くなり始めるので予測はできますが。」
……彼らは異常存在を確保し、人知れず収容することで世界を守る組織「SCP財団」である。
彼らは便利屋による店の爆破を防ぐ……のではなく、寧ろその事態が無事に起こることを確認するために来ているのだ。
その理由とは、
「本編通りに便利屋がラーメン屋を爆破しなかったら、俺達が代わりに爆破をして罪を押し付ける……そうしないと、ゲヘナ風紀委員と先生が出会わず、後々の展開に響く……そうだよな?」
「ええ。足立君の話によればそのはずです。」
ということだ。
現在、芥川は柴関ラーメン周りを見て周り、エドガーは路地裏から店の入り口を見張っている。
便利屋は入口から直線上の席に座っているので、よく見える。
「今の所、ラーメン屋の周りに不審なものは……ありませんね。」
「そうか。じゃ、俺は914の所に戻る。じゃあな。」
「ええ。あとは私が。」
通信が切れる。
柴関ラーメン内部を盗聴していたエドガーは、事前に教えられていた「台詞」を聞く。
「ちょっと何言ってるか全然……」
「わかりました」
「流石ハルカ!わかってくれた?」
「はい、つまりこんなお店は壊しちゃった方がいいって事ですよね……?」
もう起爆まで秒読み。
そう確信したエドガーは、爆発に巻き込まれないように離れる。
だが……
そこから30秒経っても……
1分経っても……爆発音が鳴らない。
ここは爆風が届かない距離ではない。
つまり爆発が起こらなかったということ。
「(一体何故?)」
エドガーは恐る恐る、柴関ラーメンの入り口が見えるところまで戻った。
するとそこには……
「イェア!みんな盛り上がってるかーい!?」
「………」
店の向かい側でエアギターを掻き鳴らしてる女の子がいた。
指の動きからして、中々のギターの腕らしい。が、エアギターなので一人で騒いでいるだけである。
便利屋はというと、その子を見て絶句していた。
「(しかしあの指の動き、本当に何か持っているかのようですね……エアギター……そんなオブジェクトがあったような……)」
エドガーはすぐに『エアギター』『不可視』とスマホに打ち込む。
すると、
「SCP-6084 ワンダーテインメント博士の音響的驚異的エアバンド™」と出てきた。
なるほど、彼女はこれを持っていたのか。
とりあえずSCiPとわかったので、速やかに対処しなければ。
エドガーは事前に柴関ラーメン店舗に仕掛けておいた爆弾を起爆させた。
ドカーン!
といういい音とともに、店が粉々になる。
そしてエドガーは目の前の爆発でビビっているエアギター女子をはっ倒して、素早く記憶処理。
気づいた事だが、キヴォトスの市民は銃や爆発には強くても、格闘戦の強さはこちらの世界の人間とそこまで変わらない。
勿論、常日頃から銃撃戦という喧嘩をしている分、力は強いが……エドガーが遅れを取る程ではない。伊達に隊長をやっていた男ではないのだ。
楽器を手探りで探し、一箇所に纏めて、袋に突っ込んで入れておく。
「芥川君、聞こえますか?オブジェクトを確保したので、こっちに来てください。もう少しここを見張っておかなければならないので。」
「了解。」
エアギター女子を寝かせ、エドガーは柴関ラーメンの方を見る。
無事に瓦礫が溢れ……
その中に、なんと亀がいるではないか。
それも、水辺にいそうな見た目をしている。
既に息絶えているようだ。
エドガーは顔が真っ青になり、急いで『亀』とスマホに打ち込む。
すると検索結果が数件出てくる。
一先ず、エドガーは亀を回収し、芥川と合流。
事情を説明した。
「まさか店の中にいるとは……財団職員なのにオブジェクトを殺してしまうなんて、恥さらしな。」
「仕方ないだろ。本編進めるためにはやむなし。それより爆薬が多過ぎて周りの住民も巻き込んでる方がヤバいと思う。」
「そこはどうでもいいんですよ。少しくらい。銃弾をものともしないジャッカスな身体を持ってるなら、どうせ死人はいないでしょう。」
二人は路地裏に隠れると、スマホに目を向け始めた。
そして、調べて分かったこと。
まずは透明な楽器から。
SCP-6084 ワンダーテインメント博士の音響的驚異的エアバンド™
このオブジェクトはいくつかの楽器であり、光を反射及び吸収しないため、不可視である。が、実体はあるため触れられる。
電源スイッチはあるが、外部電源がなくても機能するそうだ。
さっきの女子が電源を入れなかったのは偶然ということ。
SCP-6084-1 - ワイヤレスマイク、調整可能なマイクスタンド、ワイヤレススピーカー2台。
SCP-6084-2 - エレキギター、3mのコード付き1/4インチジャックコネクタ、アンプ。
SCP-6084-3 - エレクトリックベース、3mコード付き1/4インチジャックコネクタ、およびアンプ。
SCP-6084-4 - 調節可能なドラムスローン、ドラムスティック2本、ブラシ、バスドラム、スネアドラム、タムドラム3つ、ハイハットシンバルセット、クラッシュシンバル2つ、付属スタンドを含むドラムキット。
この4つで構成されている。
また、演奏者の演奏技術を大幅に向上させる働きもあるらしい。
このSCiPを作成したとされるワンダーテインメント博士のセールストークもあるが、割愛。
以上。
そして、亀の方の解説。
この亀だが、SCP-961-JP「世界を廻る亀」という。
このオブジェクトは亀の見た目だが、一般的な亀とは身体構造が変わっており、無機物を食べる。
このオブジェクトは死亡すると身体が変化し、地球儀のような見た目になるらしい。
そしてその地球儀の何処かに丸印があり、その丸印を見る、もしくはオブジェクトに触れた者は、丸印の場所にオブジェクトを運びたくなる……
「しまっーーー」
芥川が気づいた時には、エドガーは既に目が虚ろになっており、961-JPを持って何処かに行こうとしていた。
961-JPを指定の場所に持っていっても、新たな961-JPが生まれるだけで、大きな脅威ではない。
だが、エドガーが欠けるのは財団にとって大きな損失だ。
何故って、現状二人しかいないからだ。
既に『相棒』と言えるであろう彼を助けるため、芥川は焦らなかった。
焦らず、エドガーの目線にペン型記憶処理機を当て、記憶処理。
説明が面倒な事になるが、これでよし。
丸印を見ないためにも、ハンカチをその
そして目を覚ましたエドガーに事情を説明。
二人は、あの頼れる男に連絡する事にした。
尚この裏側では、アビドス高校と便利屋の諍い中に、ゲヘナ風紀委員が割って入ってきていた。
ちなみに6084の正式名称は『ワンダーテインメント博士の音響的驚異的エアバンド』ではありません。
日本語版の記事が作られていないので、翻訳した名前をそのまま載せました。
ご了承下さい。
タイトル: SCP-6084 - Dr. Wondertainment's Acoustically Astounding Air Band™
作者: Liz The GM
ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/scp-6084
ライセンス: CC BY-SA 3.0
タイトル: SCP-961-JP - 世界を廻る亀
作者: usubaorigeki
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-961-jp
ライセンス: CC BY-SA 3.0