「……てことで、6068と961-JPについては以上だ。」
『おう、お疲れさん。とりあえず両方ケースにしまっとけ。』
千石博士と連絡を取ったエージェント•芥川と機動部隊隊長エドガーは、ふと疑問に思った。
博士が『お疲れさん』なんて言葉を言うのだろうか?
「オブジェクトを殺したというのに、怒らないのですか?」
『気にすんな。961-JPはいずれ増やせる。それよりも、6068がキヴォトスに存在する……これは大きな意味を持つぞ。』
「6068……ワンダーテインメント博士の名を冠するオブジェクトですか。」
『そうだ。つまり、キヴォトスには『ワンダーテインメント博士』が存在する可能性が高い。』
「なんなんだ?そのワンダーテインメント博士ってのは。」
Dクラス上がりの芥川が疑問を投げかける。
待ってましたとばかりに、千石博士がそれに対して口を開く。
『この際だ。ワンダーテインメント博士について軽く教えてやろう。』
要注意団体……財団の活動に支障が出る可能性がある奴らの事な。
その一つ、ワンダーテインメント博士。
奴は個人か、それとも集団なのかはわからない。
だが、奴は何らかの手段でオブジェクトを『創作』している。
子供達を始めとした『お客様』を楽しませることを大切にしていて、奴らの作るオブジェクトは『商品』だ。
商品っつっても、無害な奴から本気で危険な奴まであるがな。
で、更に……要注意団体にしては珍しく、財団に対して敵対的ではなく、自らオブジェクトを持ってきて収容を依頼する事もあるんだ。
奴らが作るオブジェクトに関しては……まぁ、出て来次第教えてやる。
『以上だ。俺は今からエリドゥに侵入してわざと調月リオに見るかる事でコンタクトを図る。グッドラック。』
そこで通信は切れた。
「エリドゥか……どんな所か知らないけど、めちゃくちゃ広いんだっけ?そこが丸ごとサイトになるのか……楽しみだな。」
「今の所は物系のSCiPばかり集まってきているから良いんですが、いざ危険な生物のSCiPなんざ出ようものなら、今の私らには何もできませんからね。」
まだなるとは限らないのに、お気楽なお二人だ。
「ここがエリドゥか……」
場面が変わり、視点は千石博士。
彼は『ミレニアムのビッグシスター』こと調月リオが建設した機械ひしめく大都市『要塞都市エリドゥ』に侵入していた。
「さて……」
千石博士はエリドゥ中をパトロールしているらしいAMASというロボットの前に、両手を挙げて現れた。
「てきたいするいしはありません。つかつきりおさんとはなしたいだけです。つれていってください。」
と棒読みで言う。
AMASはその場に留まったまま、何も言わない。
そもそも言葉を話す機能はないのかもしれないが。
だが、AMASはその場で、千石博士をじっと見つめていた。
まるで得体のしれない物でも見ているかのように……
「(……そりゃそうだ。頭がタブレットの人間なんていないわな。)」
うっかりしていた事に気付いた千石博士は、タブレットを頭から外し、その素顔を晒した。
「……どうした?あまりに美しい人間が現れたから、ビビったのか?」
千石博士の素顔を知る者は財団でもかなり少ない。
だが財団内で彼の顔を知る者は、皆口を揃えて「あんな美形は見たことがない」と言う。
それほどまでに美形の男なのだ。
詳しく文で表してしまうと程度が知れるので、ここでは言わないことにしておくが。
……とにかく、AMASは千石博士を人間と認識したようで、リオと何らかの通信を取り始めたようだった。
暫くすると、AMASはホログラムを映す。
そこには、黒髪ロングのスラッとした女性がいる。
一見冷たい瞳は、千石博士を見極めているようだ。
彼女こそが『ミレニアムのビッグシスター』セミナー会長の調月リオである。
『……はじめまして。私がセミナー会長の調月リオよ。あなたは先程、『名もなき神々の王女AL-1S』の元を訪れていた人よね?』
「おや、知ってくれていたとは何よりだ。俺の名は千石キョウゾウ、千石博士と呼んでくれ。」
とても自然に千石博士のフルネームが語られたが、特に伏線とかではない……よ?
ちなみにまあまあ古そうな名前ではあるが、千石博士はまだ30代である。
『ええ、わかったわ。それで千石博士、単刀直入に聞きたいのだけれど……何故、『名もなき神々の王女』の元に来ていたの?』
リオからしたら、千石博士はとても不明瞭で不安定、何もわからないから危険な存在だ。
平静を保ってはいるが、内心は意外とビビってるのかもしれない。
『彼女の安否を確認したかったからな。彼女が下手に『SCiP』の影響を受けようもんなら、キヴォトスが滅ぶ。俺はそうなることを知っている。』
『複数の疑問があるわ。あなたは何者?『SCiP』とは何を表すの?何故、あなたはキヴォトスの未来を知っているの?』
「凄むなよ。友好関係を結びたいからな。まず質問1の答え。俺はこの世界にはない組織『SCP財団』の職員だ。SCP財団は、異常な存在『SCPオブジェクト』を人知れず
『……1と2はともかく、3はにわかに信じ難いわね。この世界をゲームとして観測する?そんなことが出来て未来が見られるとしても、それは可能性に過ぎないわ。』
「……ま、そうすぐに信じてもらえるわけないわな。だが、いずれ君は俺達を信じることになるさ。……それよりも、だ。1と2について話をしよう。」
リオは初対面の怪しい人間をあっさり信用する程、純粋無垢な人間ではない。
そう感じた千石博士は、正直に自分達の要求を突きつける事にした。
「結論から言うと、エリドゥを貸してほしい。SCiP……SCPオブジェクトを収容するには、サイトという名の収容施設が必要だ。そして俺達はキヴォトスに身一つで来たから、サイトを持たない。そんなとき、ゲームとしてキヴォトスを観測している仲間からこのエリドゥの噂を聞いてな。無人の都市となると都合がいい。それに、あんたの技術力もお借りしたいしな。」
『……エリドゥを作ることには、大事な意味があるの。おいそれと他人に貸すわけにはいかないわ。』
「『無名の司祭』とやらに対抗するためだっけか?」
『!?何故あなたがそれを……』
「観測してる仲間がいるって言ったろ。あんたがエリドゥを作った目的はそいつが教えてくれた。」
『………』
「怖がらせるつもりはないんだ。合理的な話をしようぜ?あんたはキヴォトスを守るために、エリドゥを作った。俺達は世界を守るために、エリドゥを使わせてもらいたい。『世界を守る』という目的は合致しているだろ?」
『でも……』
「そして俺達は、キヴォトスの未来をある程度知ることができる。キヴォトスを守りたいなら、俺達を仲間に引き入れた方が良いってことだ。」
『……それでも、あなたが本当にその『SCP財団』なのか、信じるに値する判断材料が無いわ。だから……トキ。』
「はい、リオ様。」
いつの間にか、メイド服の女性が千石博士の後ろをとっていた。
『彼を私の部屋までお連れして。』
「かしこまりました。」
千石博士は両手を挙げ、抵抗の意思が無いことを示した。
「C&Cの飛鳥馬トキか……」
「はじめまして、千石博士。C&C所属、コールサイン04。飛鳥馬トキです。リオ様のお部屋にご案内させていただきます。」
「よろしく。」
「また、装備品及び電子機器一式は、一度こちらでお預かりさせていただきます。」
「結構多いけど大丈夫か?」
「ノープロブレムです。」
千石博士はタブレット二枚、スマホ三つ、ハンドガン二丁、914で改造したボルトアクションライフル一丁、財団仕様のナイフ二本、電気ケトル、電子レンジ、トースター、小型冷蔵庫、消火器をトキに渡した。
トキは流石に冷や汗を浮かべたが、責任を持って荷物を運んだ。
「こんなに沢山、何処にしまっていたのですか……?」
「企業秘密。後一つあるぞ。」
千石博士は指笛を吹いた。
すると路地裏から、『上半身しかない猫』が出てきた。
「!?」
『!?』
「驚いたか?こいつはSCP-529『半身猫のジョーシー』。上半身しかない猫だが、まるで下半身があるかのように動きやがる。実験により、下半身は存在しないことが分かっているがな。」
「着いたら私に抱っこさせてください。」
「いいぞ。ジョーシーに対してやってはいけないことは、チーズを与えないこと。それ以外は普通の猫と同じだ。では、案内してもらおうか。」
「はい、着いてきて下さい。」
千石博士とトキは、道中で雑談をした。
リオの生活力が低すぎて心配なことや、財団の日常などなど(勿論、財団の秘密は一切話さず)。
そういえばこの世界に来てから、雑談はしていない。
今頃奴らはどうしているだろうか。と、千石博士は考える。
「さて、着きましたよ。」
ドアが開き、リオと複数のAMASが千石博士を迎える。
「改めてはじめまして、千石博士。」
「どうも、こちらこそはじめまして、調月リオ。早速、俺をここに呼んだ理由を聞かせてくれ。」
「ええ。正直さっきの猫ちゃんだけでも、あなたの言う事が本当というのは分かるのだけれど……これを見て欲しいの。」
リオが見せたカメラの映像に映っていたのは、檻の中に入った羊だった。
かなり寂しそうだ。
「もう収容していたのか。流石ミレニアムの生徒会長と言った所だな。」
「……この羊、何か分かる?」
「羊のSCiPは沢山いる。ただ見せられただけでは、分からないな。」
「博士、ジョーシーはオスですか?メスですか?」
「メスだ。可愛がってやってくれ。」
トキは既に千石博士の荷物をまとめて、何処からか取り出した猫じゃらしでジョーシーと遊んでいた。
それを見たリオの顔が少し微笑んだ気がした……が、すぐにいつもの険しそうな顔になった。
「この羊は数日前、エリドゥに入り込んでいたの。AMASを使って捕獲したんだけど、その……手触りが良さそうだったから……」
「触ってみたと。そしたら?」
「なんと、爆発したのよ。半径6メートルの機器が全て壊れてしまったわ。火傷もしてしまったし……」
リオは火傷で赤黒くなっている右腕を見せる。
この発言から、千石博士は当てはまるオブジェクトを確定させた。
「(本来死ぬ威力の爆発だが、それでも火傷ですむのか。これがキヴォトス人の耐久力……)そいつの名はSCP-1874『ジン•ギス•バーーン!!』羊以外の哺乳類の皮膚に触れると爆発する羊だ。」
「知っているのね?この子、捕獲してからずっとこんな感じで……何とかならない?」
「俺が覚えているこいつの特別収容プロトコル……ああ、収容の方法を書いた説明書みたいなもんだ。それによると、1874は皮膚に触れなければ爆発しないので、全身を覆った状態で手袋をつけて収容すべし。また、7頭以上の羊の群れのうちの一匹として飼わないと、ストレスで生理学的影響に苦しむそうだ。ここに羊はいるか?」
「いえ……羊型のロボットなら、沢山いるけど。」
「それで十分だ。後は農場に似せたスペースを作って、そこで収容する。そうしたら、普通の羊のように飼えばいい。それで収容完了とする。」
「それでいいのね……なら、すぐに地下農場を作るよう手配しておきましょう。」
リオがAMASに命令を出すと、AMAS達は走っていった。
「信じてくれるか?SCP財団の事を。」
「……まだ暫定だけど、SCP財団が存在することは本当のようね。いいわ、エリドゥの一部を収容サイトとして貸してあげる。その代わりに、キヴォトスが危機に陥った時は協力してもらうわ。」
「ああ、勿論。その提案は俺にとっても本望だ。よろしくな。」
千石博士とリオは、固い握手を交わした。
「そうと決まれば……まず、俺の仲間達と連絡を取ろう。君達にも紹介したいからな。」
そして千石博士は、トキから返してもらったタブレットを頭に嵌めるのであった。
千石博士の素顔はほぼスタレのDr.レイシオだと思っててください
あいつマジで顔良すぎる
え、リオ会長がこんなチョロいわけない?
そのとおり。
私の文章力がないからこうなる。
ほんとはジョーシーじゃなくてキメラれねぇを出したかったけど、あいつは見た者に言い争いさせる異常性持ってるから断念。
リオ会長絶対あのキメラ好きだと思う。
今回使用したSCPの記事です。
タイトル: SCP-529 - 半身猫のジョーシー
原語版タイトル: SCP-529 - Josie the Half-Cat
訳者: 訳者不明
原語版作者: Unknown Author
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-529
原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/scp-529
ライセンス: CC BY-SA 3.0
タイトル: SCP-1874 - ジン・ギス・バーーン!!
原語版タイトル: SCP-1874 - Zis Boom Baa
訳者: gnmaee
原語版作者: DrWaverton
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-1874
原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/scp-1874
ライセンス: CC BY-SA 3.0