それから、夜になるにつれて足の痛みもなくなり、
9時頃には右手に松葉杖をそえるだけで歩けるまでに回復した。
その足でラナに言われた場所、屋上に向かった。
『やぁ、涙。遅かったじゃないか?』
「それ、ついさっきまで病人だった人に言うセリフ?」
『疑問文を疑問文で返すなんてね…まぁ、見てみなよ』
そう言われて、フェンス越しに見えたのは深夜でも構わず煌々と、輝く街並み。
「普通の街だけど」
『よく見てみなよ』
「あれは…」
街の輝きに隠れて影のようなものがチラついて見えた。
それは身の丈は2~3メートル位あり、顔にモザイクのかかった巨人の様にも見える。
『あれが、魔獣だよ』
「…どうやって」
『?』
ラナは首を傾げてこちらを見た。
「だから、どうやってあれを倒せと…」
『簡単さ、君はその力を持ってる』
イメージするんだ…そう、急かされると
僕は眼を閉じ自身の中に意識を向けた。
暗い…暗い…中に輝く僕の命の灯火。
僕はそれを強く握りしめる、そんなイメージ。
『出来た、じゃないか』
そこに居たのはさっきまで、青い患者服を着ていた僕ではなく、
シルバーメタリックと白を基調とした装衣で、
腰まで伸びていた白髪は邪魔にならないよう髪留めで止められており、後頭部から一筋の滝を模している。
「あれ?」
僕はあることに気付いた。
『どうしたんだい?』
「武器はないの?」
そう、変身したら杖とか本とかあるでしょと、
『魔法少女の特性上、個性によって武具の所有はあるものと思っていたけど、いやぁ、君は珍しいね』
「どういう事?」
『君はその体が武器ってことだよ』
「せめて、魔法くらいは……」
『そんな、夢ばかりの魔法少女に世界が救えると思うかい?ボクはそう、思わないな』
「この、ブラック企業」
ラナは鼻で笑ったあと、こう続けた。
『そのブラック企業に命を助けられた君が言うかい?』
あぁ、もう~こいつと話しているとイライラしてくるなぁ…外見は可愛いと思うけど。
そう思いながら、飛んだり跳ねたり、
空を蹴ったり拳を振ったりしてみて、身体が動くか試した。
「ラナ、いいよこの身体だけでやれそう」
『じゃあ、君がどんな魔法を使えるのか診断してみるかい?』
と、ラナがこちらに向かって来ると同時に足場が震える。
『おやおや。涙、早速で悪いけど
屋上に現れたのは月夜の光を背にした5体の魔獣。
各自、雄叫びや身震いを済ませた後、こちらに向かってきた。
「いきなり、本番なんて聞いてないよー!」
魔獣の初撃を交わし空いた空間にカウンターを決める。
その時、月光を胸元のペンダントが煌めいた。
~つづく~