あの後、真夜中に目が覚めた。
気分はスッキリし、意識はクリアである。
んっ?…ふと、違和感を感じた。
「工藤さん?」
そう、呼び掛けた言葉は虚空へと消えた。
「(それも、そうか…)」
寝ていれば反応するはずもない…
そう思いベッドを抜け出し、仕切りカーテンを開いた。
その時だった、
「(トントン…)」
「ん?…うわぁ?!」
しぃ…
背後にいたのは少し前に屈んで、僕に沈黙を授けんとする狙井さんだった。
「(狙井さん、何で起きてるんですか?)」
「(いいから、用事あるのはティナにでしょ)」
着いてきて…
病室を後にする彼女を追った。
昼間とは違う冷ややかな気配を漂わせ忍の如く足音を立てず先を行く。
僕も足音にだけは注意して、後を追った。
……
暗く足元の覚束無い夜の階段を上へ上へと昇る僕。
狙井さんはすたすたと距離や感覚を記憶してるかの様に
エコロケーションをしながら導いてくれる。
今何階だろ…
カツンと段差を昇り中途半端に開いたトビラを開けそこへ辿り着く。
「ここは…」
「よく頑張りました。」
真夜中の夜空に輝く星々に負けない町の夜景。
我々を外界から閉ざす金網の隙間から、
それを眺める金色の髪を持つ彼女がいた。
そして、僕は違和感を感じた。
(これは…呪い?)
魔獣から放たれるモノに酷似していた。
僕は彼女に声をかける。
「何?…してたんですか」
「なにもしてない…と言ったら嘘になるわね」
その違和感に漸く気付いた。
「工藤さん、車椅子はどうしたんですか…」
その返答に答えるように何者かの殺気へ反射的に体が答えた。
「魔獣!?」
下半身のない魔獣がいつの間にか足元にいた。
「あなたは一体」
その質問に答えるかのように工藤さんが答える。
「私達は
人は魔人と呼ぶわ」
「魔鍵」
「この、鍵の事よ。私たちはそう呼んでいるわ」
その手握られていたのは、
12、3cm程の骨のような材質でウォード錠風の見た目だが、
持ち手所に黒色の水晶がはまっていた。
そして、それから発生する黒煙のような霧は魔獣の時より濃く、異様であった。
「それをどうするんですか…」
「決まってるでしょ…使うのよ」
こんな風にねっ!!
すると、ティルナはイーブルを振るい。
3体の魔獣…下半身がなく両手で肢体を支えている、
都市伝説にある様な魔獣が姿を表した。
私もとっさの判断で変身をし、緊急時に備えた。
ティルナから放たれた3体の魔獣は獰猛で狂悪な勢いで襲い掛かって来た。
まず、狙井さんを抱えるようにして背後にジャンプすると、タイミングを逃し飛びかかってきた1体…Aが空を切る。
そして、彼女を安全そうな入り口の付近に運搬すると、その間にBが眼と鼻の先を突っ込み。
それを避け、後続のCに渾身の拳を与える、それを受けたCはその衝撃で霧散した。
「ふ~ん」
すかさず、AとBの飛びかかり。
それも、勘で右へ左へステップをし身を翻したところでBも滅殺。
最後にAは飛び込んできたところを顔面をキャッチして床に突き付けた。
「はぁ、はぁ…」
「おぉ、すごいすごい」
今回は、かなり手強かった…ホーミングしてくる極太光線は慣れてきてはいたけど、別々に襲いかかってくる想定での戦いはなれてなかった。
「さっ、遊戯も済みしましたし…話を続けましょう」
「ティナ…そろそろ、その変な敬語止めたら?」
「狙井さん?」
そう言えば、さっきから可笑しいと思ったのだが、狙井さんが全く狙われていなかった。
「ごめんね、私も魔人なんだ」
スっと魔鍵を取り出す。
「えっ…」
愕然とした。
「えっと、実を言うとね。前から知ってたんだよ、貴女が魔法少女ってことはね。」
「そっ、そんな…」
「だって、貴方が部屋を移動する前の深夜、街に行くのが見えてたから」
すると、眼球の形をした魔獣がふよふよとフェンス外から現れる。
「私が呼んだのは私達が敵だったって事と、別件で話をしたくてね」
ムフゥ…ドヤ顔をきめる工藤さんを見て思った、やっぱり悪い人に見える…。
「話ってのは?」
「そう、そう…私達を仲間にしなさい」
「えっ?!えぇ!?」
「ラナさーん」
『あいよー』
そう、狙井さんの呼び掛けに答えた白狐のような生き物はフェンスの向こうから身軽そうに飛び越えてここへ来た。
って、ここ8階だけど……色々と大丈夫なのか、この生き物。
「ラナ、何故ここに…と言うか何で二人が彼の事を
?」
『それは、ボクがアプローチを掛けておいたからね。因みにだけど彼女たちが僕を視認できるのは彼女達が
「かんちゃん、険悪そうな顔でこっちを見るのは辞めて頂けるかしら?」
「…工藤さん」
魔人…聞いていたのは印象と言うかここまで一般人と大差がないのには正直驚いた。
「それと、工藤さん…貴方達は一体何を考えているのですか」
「そうね」
…世界征服、とか?
「じょ、冗談よ。冗談」
「工藤さん~」
『茶番はいいから早くしてくれないかい、ボクも暇人じゃないんだ』
「分かってるわ。単純に言うとね…
「えっ?秋田?ここは東北地方じゃありませんよ?」
「あ~もう、察しが悪いなぁ…人を呪うことによ」
あぁ、成程。だから、魔法少女にしてくれと…
そう、話の流れに踏ん切りがついた僕はラナに問う。
「…で、ラナ。僕は何をすればいいの」
『まず、
すると、ラナは呪文を唱える。
「ラナ、それは?」
工藤さんが問いかける。
『封印魔法さ。キミ達は呪いの補助が切れるから気をつけてね』
封印が終わる頃、工藤さんは膝から崩れ落ち。
狙井さんもその場に座り込んだ。
『次に、彼女達の願いを叶えて魔法少女になって貰うんだけど…涙、君がやるんだ』
「僕が?えっ、でも…」
『そう、不安そうな顔をするのもわからなくもないが、つい昨日程まで君の魔法系統の割出を行ってたんだ。
君には悪いけど先に内容だけは彼女達に伝えてある、後は君次第だ』
僕自身…その言葉は僕が1番苦手な言葉の1つだ。
僕は今まで…男であった頃は全ての判断は両親の言うなり、命令通り動く
自分の意思で判断で行動を行った事はなかった。
『君は、あの出来事で変わった。君は、今までの君ではない…大丈夫、ボクが手伝ってあげるからさ』
「ラナ…」
いいかい、まず二人の肩に手を…
「失礼しますよ、工藤さん。狙井さん」
「あっ、はいはい」
次に、眼を瞑って相手の鼓動を感じるんだ。
そうしたら、その鼓動の軌跡…光がみえてくるはずだよ。
それに君の魔力を通して、その先、大元…大きな
輝きが見えるだろ?
「(…うん)」
『じゃあ、それを魔力で包んで引っ張り上げるんだ、できるかい?』
「(…ん~ん?んん"?)」
『いや、できるかい?』
「…」
『おーい』
「いま、やってんでしょ#」
ラナは少し引き気味の声を上げた。
『涙がキレた』
「今集中してるから」
『そうか…もう眼を明けてもいいよ』
…眼を明ける?
あぁ、そうだった。魔力の制御でいいのかな?
何分、初の試みだったので魔力を感じとることだけに集中して周りの事が視えなくなっていた
。
「ちょっと、怖いけど…」
まず、始めに感じたのは光だった…
それは、私のソウルジェムから起点をなして、
発生している蒼白な光の線で幾何学な模様を描き、大なり小なりの魔方陣を形成していた。
「キレイだ…」
『それは、好かった。しかし、これはキミの魔法…他人の絶望をゼロに帰す奇跡。因果の裏切りだね。
使ったとしても後2、3回が限度と言った所だろうね』
と、ラナはいつもと変わらない声色で言葉を述べた。
「3回ね、覚えておくよ」
『ふむ、君が物覚えがいい子だと…祈っておくとしよう』
「神様に?」
『神ね、あんなものに頼るのはボクとして威厳を失いそうになるよ』
「会ったことあるの?」
『ないと、言えば嘘になるが…聞きたいかい』
「…ん、いい」
『そうかい、たく…あの人は……って、聞かないのかい?』
「えっ?だから、別に話さなくていいって」
『ぷっw』
「何笑ってんの…」
『いや、確かにあの人が選んだだけの性格だなとね』
「だから、あの人…ん?」
魔力の流れに異常が起きた。
『式の終わりだ。魔力の流れをゆっくり抜くんだよ』
「わ、わかった」
すこし、間を置いて…
「でさっきの話の続きなんだけど?」
『あぁ、あの人の話か…少し長くなるよ』
と、月明かりの元。ラナは話し始めた。
~つづく~