騎導戦士シュガーンダム 作:しゅがらいっ
ミノフスキー粒子発見のきっかけは太陽フレアであった。太陽フレアによる通信障害のメカニズムを研究していた学者であるミノフスキー博士は太陽から放射される電磁波を受けて連鎖的に結合する粒子を見つける。
その粒子の連鎖的な結合が強いエリアでは通信障害が起こりやすいという結論を踏まえ、太陽フレアそのものではなくフレアによる粒子の結合反応こそが通信障害を起こしている可能性があるという仮説をミノフスキー博士は提唱する。仮説は粒子の濃度を一定以下にする技術の理論構築のための基礎研究に過ぎないが、通信安定の礎となれるのならばこれ以上喜しいことはないとミノフスキー博士は語った。
ミノフスキー博士の発表を受け、世界各国はミノフスキー粒子の研究に乗り出す。
世界は博士の願いとは正反対の方向に大きな一歩を踏み出した。
ミノフスキー粒子がコントロール可能な代物だとすれば通信障害を意図的に起こすことが出来る。つまるところ強力な兵器になり得ると各国は予想していた。
情報社会である現代においてミノフスキー粒子の戦略的価値を理解しない者などいない。
それはライツやトレーナーにとっても同義である。
「トレーナー、最近気合いが入っているな」
トレセン学園地下に存在するロボット研究施設『Planet』ではミノフスキー粒子の存在が明らかになったその日から室内の明かりが消えたことはない。
『Planet』はライツがフルダイブロボットの開発、製造で得た莫大な利益をトレセン学園に寄付した結果として生まれた場所である。この膨大な地下空間でフルダイブマシンの設計、研究、開発、調整等のあらゆることをトレセン学園関係者と共に進めている。
「ミノフスキー粒子技術応用の6……力場の応用でST-2のエネルギー問題が解決するんじゃないかと思って」
「そうか......! タービンが必要ないなら小型化して搭載出来そうだ」
世界のミノフスキー粒子の研究は加速度的に進む。ミノフスキー粒子は特定の電磁波だけでなく静電入力を行った際にも結合する性質を持つことが明らかとなる。この力場はIフィールドと命名された。
Iフィールドの発見と時を同じくして重水素とヘリウム3による核融合の最終実験が成功したとの報道はどこのメディアもポジティブに報じた。たった数ヶ月間に連続する吉報に世界中が沸き上がっていた。
通常、エネルギーというものは電力に変換するにあたって損失が発生するものだが、Iフィールドを応用すればエネルギーをタービンを介すことなく直接取り出すことが出来る。それゆえ変換する工程はなくなりエネルギー損失は0と言っていいほどに少ない。加えて核融合は環境負荷が極めて小さく、理想のエネルギーそのものであった。技術者達はIフィールド制御型小型核融合炉をジェネレータと呼んだ。
Iフィールドの発見はまさにエネルギー革命であり、世界を一瞬で変えうるほどの力があった。本来の目的ではない副産物に過ぎないにせよ、エネルギー面で大幅な貢献をもたらした。
ST-2に搭載していた内燃機関はジェネレータへと置き換わり、各調整も問題なく進行していた。
ライツはトレーナーをはじめとする仲間たちとの部活動の延長のような日々が堪らなく好きであった。1人が案を出しては皆で悩み、アイデアを持ち寄り、形にする。アイデアがそのまま実現することは稀であるが、その調整すらも楽しいと思っていた。中でもトレーナーの持つアイデアと世界観には驚かされることもしばしば、ライツにとっても学びが多く良い刺激を受けているのだ。
トレーナーのアイデアや行動力には目を見張るものがある。ライツの関わっていた事業の多くはフルダイブ技術を主軸にしたもので、フルダイブ規制によって受けるであろう損害は甚大なものになるだろうとトレーナーに愚痴を漏らせば次の日には解決策と一緒にやってくる。そういう人だ。トレーナーの出した『Parcaeによるフレーム生成をモデルにした技術応用。フレーム操作とそれに準ずる映像生成について』という案は見事に採用され、産業ロボットはその地位を確かなものとした。
もはやライツにとってトレーナーは欠かせない存在である。トレーナーにとっても自身がそうであればいいとライツは願う。
「人類の宿題をひとつ終わらせましたね」
「……あぁ!!」
トレーナーの言葉は石油への依存からの脱却を意味する。有限である地下資源が枯渇した時、人類は終わりを迎えるとささやかれ始めてから、かなりの時間が経った。
問題は1つ無くなり、世界はより良い方向へと向かうのだろう。次は食糧問題だろうか。
確かに言えるのは、人類は破滅から遠のいたということだろう。
世界はより豊かになる。多くの人間が思い描いた未来図とは真逆の結果となる。
ジェネレータの登場から数ヶ月。石油などの既存エネルギーの価値は暴落、これに地下資源が主な収益源である中東の国々が反発を示す。
高まった緊張は世界に不信感をまき散らした。その不信感が頂点に達した時、国籍不明船が公海上で海底ケーブルを切り始めた。
第三次世界大戦がふとしたきっかけで始まる。そう予測した国家は次々とミノフスキー粒子の応用技術の開発の加速とミノフスキー粒子の対策を始めた。
同時期、とある起業家が大量に打ち上げた人工衛星群の1つが寿命を迎える。人工衛星群は大気圏に突入させる機能を備えておらず、制御の利かなくなった衛星同士が衝突を繰り返すことで生まれたスペースデブリが地球を覆った。人類はこれをロストベルトと呼んだ。
通信設備の壊滅は社会を大陸や島の単位に狭めただけでなく衛星を使った技術すらも失われてしまう。
それから更に数ヶ月、中国で極秘裏に開発されていた人工知能アンドロイドDA2Lタイプを初めとする複数のアンドロイド達が同国農村部で独立運動を起こした。
彼らは国を作り、こう名乗った。
『ジオン』と。
2話を書いている内に生成AIでジブリの絵柄がどうのという問題が発生し内心穏やかではないです。
本作のテーマに通ずるところがあるので言及しますが、前々から感じていた技術の進歩と人間の倫理の乖離が広がる世界というのが今まさに起こっています。私はこれを善性を信じるという形で未来に委ねるべきではないと考えます。
人は未熟な生き物です。その原点に立てるならば自分は技術を正しく使えるなどと奢りはしないはずです。皆様には一度立ち止まってルサンチマン的感情と権利問題を引き離して考えてほしいのです。