青空の美しさを知ってくれ……
1人の人間として思いやられてくれ……
「ラプチャー、来ます!」
「ふおぉぉぉ!! とても大きいです!!!」
「タイラント級……知能が高い訳でも無さそうだ。大きいだけか?」
「指揮官さま、そこ危険だから離れて!」
「エンカウンター!」
見渡す限り荒廃した灰色の大地。背を着けた瓦礫から顔を出すと、蛆の様に湧いた機械群──ラプチャーがこちらに銃口を向けている。
その中でも一際大きなラプチャーが見下す様にモノアイを光らせ、ゆっくりと迫ってきていた。
人類最後の砦……アークの軍事部からも例外的な扱いを受けている部隊、カウンターズが慣れた様子で交戦を始める。
私はそのカウンターズの3人と何故か前に出て怒られている指揮官を横目に、ラプチャーに向けてショットガンを構えた。
「……なんでこうなったんだろ」
そんな弱音は銃撃音でかき消され、誰の耳にも届くことはない。
ここまでの経緯を話そう。
私達の部隊──リプレイスは地上での交戦中に戦闘が難しくなる程の損傷を負い、指揮官は傷付いた私達を放置して脱走。
当てもなく彷徨う中、ラプチャーの集団に接敵。疲労困憊の状態でまともに戦闘出来るはずもなくひいこら言って逃げている過程で、偶然任務で出ていたこのカウンターズと合流。んで、今だ。
まぁ、指揮官が私達ニケを見捨てるなんて別に珍しい話でもない。だが「二度とアークに戻れると思うなよ役立たず共」という捨て台詞はどうかと思う。護衛も無しだったが無事に帰れたのだろうか。
とは言えども、帰りまで使い物になるニケなんて残ってなかったが。
かくいう私もボロボロでね……身体中いたいいたいなのだ。
痛覚無いけど。
大体、量産型部隊リプレイスはアーク内の暴動を鎮圧する為に作られたものでしょうが。あー地上ヤダ。
「ふおぉぉ!! 火力火力!!!」
お隣でなんか騒いでますけれども。ショットガン撃ってるだけでしょうが、なんでこう特化型って変な子が多いんだろう。
その点ウチの部隊は皆んな素直で良いよね。量産型万歳。
……ま、特化型がいない分扱い雑だし強くないし吹けば飛ぶような命だけどね。
私が牽引していた量産部隊は私含め3人。カウンターズと合わせて6人の編成で押し寄せる無数のラプチャーを迎え撃つ。
「リプレイス1! 損傷しているんだからそんなに前へ出なくていい!」
と、無線で指揮官から私に後退指示。変な事を言う人だ、我量産型ぞ?
「指揮官。私は量産の防御型ニケですので、気にせずお使いください。」
「何を言ってるんだ? 量産型だとしても、君だって1人のニケだろう。下がるんだ」
「……承知しました。」
……特化型は兎も角、量産型を気遣うとは。
噂に違わず、カウンターズの指揮官は変人だ。
隙を見て後方に下がり、私の隊のメンバーと合流。壁を背にしてチクチク後方支援を行う。
まぁ、流石はアークでも特別視される精鋭部隊と言ったところか、戦闘は程なくして終わり。
「……で、あんたら何があったのよ。そっちの指揮官はどうしたの? あ、私アニスね」
バイザーを上げて一息ついていると、アニスと名乗るカウンターズのメンバーが話しかけて来た。
ボブカットの金髪が光を反射していて目がチカチカする。
まぁ、合流するなりラプチャーが押し寄せてきたのだからこの疑問は当然の事。事務的に事情を説明すると、なにやらカウンターズの皆さんは全員微妙な表情になってしまった。
「あぁ……うん…。指揮官さまと一緒にいると忘れがちだけど、そんなやつばっかなのよね…本当は……」
「なんて事を! 指揮官の風上にも置けません、師匠の爪のあ……あ、アイスでも食べさせてやりたいです!」
「爪の垢ね、アイス食べさせてどうすんのよ」
何を言ってるのだろう、このメガネ。てかパンツ見えてますよ。いや水着かあれ。
「事情はわかった、君達はカウンターズで一旦預かる。」
あ、はい。あざす。いやはや死ぬかと思ったが、生き残ったね。良い人だなぁこの指揮官、私も特化型になれたらなぁ。
そういや、あともう1人カウンターズにはメンバーがいたはずだが……何処にいるのだろうか。
少し見回してみると、どうやらそのニケは先程倒したクソデカラプチャーの残骸を観察している様だった。あんなん見てどうすんねや。
「指揮官、このラプチャー……どこか変ではないですか?」
彼女はこちらに振り返り、そんな事を言った。
……変? 変なのはこの指揮官じゃね? 様子のおかしい人です。
「構造が通常のラプチャーと違い────」
あぁ、難しい話をし始めやがった。ラプチャーの機械構造とか知るかってんだ。
と、呆れ半分安堵半分でバイザーを下ろそうとした瞬間。目の端で、ラプチャーの残骸の1部から異様な光が盛れ出しているのに気が付いた。
恐らく私以外誰も気付いていない。あの光が何をもたらすのか……それは知らないが、ラプチャーから出ているんだからどうせロクなものではない。
傷付いた身体に鞭打って走り出し、赤黒の特化型ニケさんを全力で引っ張って位置を入れ替え押し飛ばす。
「ッなにを───」
量産型と言えどパワーは十分。カウンターズの2人が彼女を受け止めたのを確認し、ラプチャーの方を見てみる。
そこでは先程の光が一気に放出され私の体を包み込まんと布のように光の範囲を広げている真っ最中。
それに呆気なく飲み込まれ、平衡感覚を失い地面に倒れる。
重力が増したみたいに身体が重くなり、伏せる事しかできない。やがてその重さに耐えかねて、私は意識を失ってしまった。
☆
「………知らない空。」
目を覚まして最初に出たセリフがこれ。
恐らく地上ではあるのだが、空の色がおかしい。
バイザー越しだからだろというツッコミもあるとは思うが、舐めないで欲しい。いつもの空の色なんてバイザー付けてても分かる。
背負っている盾のせいで背中が痛いので、肩から下ろしながらのそりと上体を起こす。
バイザーごとヘルメットを外し、ゴーグルも取る。
「うわっ……」
あまりの明るさに目が眩む。
空が青い……アークの空の色だ。でも、アークにこんな場所あったか?
当たりは1面砂漠。顔に照り付けられる光は人工のものとは思えない。
「ここ、どこ?」
空には見た事がない光輪が浮かんでおり、遠くに天に向かって光を放つタワーが見えた。
ゆっくりと起き上がり、盾を拾って背負う。ここで気付いたが、傷が癒えている。
おかしい、さっきまで私はボロッボロで廃棄処分一向聴といった感じだったのだが。
肩にかけたショットガンを確認すると、殆ど尽きていた弾薬はMAX。ポーチにも出撃時と同じ量が詰め込まれていた。
「……はぁ?」
意味が分からないこと尽くしで、ひたすら首を捻ることしか出来ない。
カウンターズやリプレイスのメンバーはおらず、私1人。
仕方がないので、ゴーグルとヘルメットを付けて移動を開始。
砂漠に行った経験なんて無いから、どう歩けばいいかなんて分からん。というか、歩いた所で誰かいるかも分からない。
地上でこんな青い空見たことが無いし、またカウンターズみたいな部隊と合流出来るとも限らない。
私がここにいるのは十中八九あのラプチャーのせいだろうが……おのれ、ここどこだよ。
あーくそ、空が青いなぁ。
さて、数時間歩きまして現在夜。気温なんて感じないので活動する分には別に問題無いのだが、如何せん精神的疲労が凄まじい。
身体は機械だが心は機械では無いのですよ、私の様な量産型でも。
あー水飲みてー。
あと、何度も何度も砂嵐が起きててウザい。ボディスーツが砂まみれで嫌すぎる。愛銃も軍事用とはいえここまでの砂漠での使用を想定していないから、故障の心配がある。
もうひとつ。圧倒的な違和感。
「ラプチャーがいない……」
私達の大敵、人類種の天敵。ガースー黒光りファッキンクソ鉄屑野郎共ことラプチャーがどこにもいないのである。これは異常どころの騒ぎでは無い。
地上を歩けば3分もかからず接敵。1体いたら1000体いると思え。それがラプチャーなのだ、ここまで居ないのはいくらなんでもありえない。
……ここ、本当に私の知ってる世界?
少し前に聞きかじった事。D-WAVEとかいう特殊なエネルギーを発し、この世ではない別の世界で暮らす生命体を召喚したり、送り返したりする『ゲートキーパー』。
あのクソデカラプチャーが発した光が、それに準ずるものだったとしたら。
私は、また別の世界に召喚された?
「……はは、そんな馬鹿な。」
そんな突飛な考えに自嘲してみる。
「なにが馬鹿なんだ?」
「いえ、いくらなんでも考えが飛躍してるだろうと思いまして」
投げ掛けられた問いに笑いながら答える。まったく、わざわざ独り言に質問してくるなんて嫌な奴だ。
……ん?
おかしいぞ、私じゃない声が聞こえた気がするんだが。とうとう私も故障したか?
「おい、こっちだこっち。」
ギギギ、と声のする方向を見ると、そこには赤いヘルメットを被った少女が立っていた。
「────ッ!?」
叫び声はすんでで飲み込む。
なんだ、いつからいやがった。まったく気付かなかったぞおい、疲れてるな私。
第1村人に発見されてしまった。銃を持っているし、多分ニケ……なのか? なんか生体反応が……でも人間がこんな銃だけ持って外ほっつき歩いてる訳ないし……
「お前、こんなとこで何してんだ?」
何をと言われても。強いて言うなら遭難。
てか、なんか頭に浮かんでますよ。天使みたいで可愛いですね。あ、もしかして本当に天使だったりします? 死んだんすか私。
「何言ってんだお前……って、なんだよ遭難してたのか? まったく、しょうがねーな、着いてこいよ。」
そう言って彼女は手招きをして歩いていく。どうやら道案内をしてくれるらしい。
良い人だ、着いていこう。
「名前は? ウチじゃ見た事ねーな、どこのヘルメット団だ?」
「ヘルメット団、とはなんでしょうか。」
あまりにも聞き慣れない言葉に、思わず聞き返す。その質問に彼女は素っ頓狂な声を上げた。
「は? お前ヘルメット団じゃないのかよ。んだよ、紛らわしい……」
ふむ。彼女のようにヘルメットを被っている者は基本的にヘルメット団なる集団に所属していることの証明になるのだろうか。
どこの、という事は複数の勢力があるのだと考えられるね。うーん、本格的に私の知ってる世界じゃ無さそうだな。
「じゃあお前なんなんだよ。なんであそこにいたんだ?」
「気が付いたらあそこにいました。ここは何処なのでしょうか?」
「さっきから質問に質問で返してくるな……ま、いいや。事情はよく分かんないけど、お前も大変なんだな。記憶喪失ってやつか? キヴォトスで砂漠っつったら決まってんだろ、ここはアビドスだよ。」
「キヴォトス……アビドス砂漠……やはり知りませんね。……もうひとつ聞きますが、"アーク"という施設に覚えは?」
「アーク……? んだそりゃ、ミレニアムの施設か?」
うん、確定した。ここは私の知ってる世界じゃない。全く別の世界に転送されてしまったのだ。
───はぁ。
「変な奴だな、お前。格好も……ミリタリーなのかこれ。いや、今はいいか。ともかく、自己紹介だ。私はカタカタヘルメット団のオウカ、お前は?」
オウカと名乗った少女は私に名前を聞く。
名前ねぇ、量産型だから型の名前しか持ち合わせてないぜ。ごめんな。
ってことで、いつもの形式通りに名乗らせてもらいましょうか。
「……エリシオンのソルジャー
先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。
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男にするべき
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女にするべき
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おねにーさん(性別不詳)にするべき