逆バニールージュ!?!!?!?!??!?
777で1番まともな格好してたルージュが!!?!?!???!?
逆バニー!?!?!!?!??
「お会計1230円になります。」
「カードで」
「クレジットカードでのお支払いですね、こちらに差し込んだ後パスワードの入力をお願いします────抜いて頂いて結構です。レシートは……」
「あー、大丈夫。」
「失礼しました、またお越しくださいませ。」
「ご馳走様、美味かったよ!」
「あいよー、また来いよ!」
ピシャン、と扉がしまる音。
さてさて仕事にもだいぶ慣れて一連の動作が自動化してきた今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。ソルジャーF.A.絶賛労働中でございます。
いやはやこの砂漠地帯たるアビドスはやはりクッソ暑いらしく、太陽に中指を立てたくなる気温が続いている様なのですが……不思議と客足が途絶えることがありません。
故に、オールシーズン忙しい柴関です。ラーメンに季節は無いからね、しょうがないね。
客層もまた幅広い。会社員はもちろん、地元民らしきご老体に不良達。噂を聞き付け遠路はるばるやってきたというラーメン通の生徒。あとヘルメット団。
ラーメンには季節もなければ性別年齢の垣根も存在しないらしいですよ? まぁ大将のラーメンですから、当然と言えば当然です。こんな食事が味わえること、普通だと思ってはいけません。
しかしこれだけの人が集まる場所だと言うのに、なんならヘルメット団も来ると言うのに、あの2人……オウカとマツリは見ていません。
食事中の会話を盗み聞いたところ、未だアビドス高校にちょっかいをかけている様ですので2人もまだアビドスにいるはずなのですが。
マツリはともかくオウカには素顔を見せているし、会えば双方分かると思うのですけれどねぇ……。
と、残り少なくなったピッチャーに水を継ぎ足しながら思いに耽ける。
規定量入れた後氷をぶち込んでピッチャーの蓋を閉め、机に両手を着いて軽く伸び。まぁニケだし意味なんか無いけどね!
そのまま視界をスライドさせ、忙しそうにホールを行き来しているセリカを収める。
セリカも仕事を覚えるのが早く、かなり様になってきています。いやぁ若者ですねぇ、着々と脳の劣化が進むニケとしては大変羨ましい限りです。
やはり例の一件が尾を引いているのか、滅茶苦茶避けられていますが。業務連絡以外の事を言おうものならやんわりと会話を終了されてしまいます。ウケる。
シロコは彼女の事をツンデレと呼んでいたが……正直まだ分からない。思い悩んでるって何が? どうやって私を辞めさせるかとか?
職場の人間関係の不和ってキツいですからねぇ、分かりますとも。まぁ自発的に辞めてやる気はサラサラ無いですが。
いくら兵器と言えども、そんな事で私を拾ってくれた大将を裏切るマネはしたくありません。柴大将の前では、もう少し人間のフリを続けていたいのですよ。
「少々お待ちください! 3番テーブル、替え玉追加です!」
ハツラツとした声でセリカが大将に声をかける。よく通る声です、素晴らしい。尚のこと、その声で怒鳴らせてしまった事が申し訳なくなりますね。
ですが、いつまでも自罰的ではいられません。今は労働中です、もっと生産的な事をしましょう。
そう思い、卓上調味料や割り箸等の補充をしようと動き出した瞬間。背後でガラリと音を立てて扉が開いた。どうやら来客のようです。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで……」
聞き慣れてきたセリカの声が途中で止まる。と思えば、今度は驚いた様な声を挙げた。一体どうしたというのだろうか、キャラクター*1でも来たのだろうか。そう疑問に思って振り返ってみると。
「あの〜☆ 5人なんですけど〜!」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」
「お疲れ。」
なんだか見覚えのある人達がゾロゾロと店内へ入ってきました。なんなら、内1名はつい最近会ったばかりです。
「み、みんな……どうしてここを……!?」
振り絞った様なか細い声を出すセリカ。それもそのはず、来店したご新規5名様は紛うことなく"アビドス廃校対策委員会"そのもの。セリカはバイトしている事を秘密にしているので、この来訪は予想外なものなのです。
……2人ほど、知らない人がいるようですが誰でしょうか。
「うへ〜やっぱりここだと思った。」
「"どうも。"」
と、ホシノに続いて見たことが無いスーツ姿の方がにっこり笑ってそう言った。
ふむ、メガネをかけた子はこの間シロコが言っていたアヤネとやらでしょう。では、消去法でこの方はやはりせ───
「せっ、先生まで……やっぱストーカー!?」
──ストーカーだったみたいです、どういう事でしょう。先生とは聖職者であるはずで、そんな不名誉な呼び名とは無縁の存在の筈なのですが。セリカのストーキングをしているのでしょうか? きっつ。
その
出入口付近で軽い問答を交わし、そこそこで大将から軽い注意が下った為にセリカは不服半分羞恥半分の表情で慌てた様にテーブル席へ通した。きちんと敬語な辺り、やはりセリカは根が真面目なのだろう。
「おーいファルちゃん、注文いいー?」
「あ、はい。只今お伺いします。」
バイト中に友人が冷やかしに来る、なんて微笑ましい光景をもう少し見ていたかった気もしますが、ここで他のお客さんからコール。仕事と言うのは厳しいものですね、致し方ありません。
注文対応をしている間も、後ろでなんだか会話が盛り上がっています。先生がどの席に座るかだとか、バイトの制服がどうたらだとか。
対応を終えてカウンターを拭いている最中も背後で楽しげな会話が聞こえてきます。やれ注文をどうするかやら、先生が奢ってくれるやら。先生が逃げようとしてがっちりホールドされたり。
こうしてみると、セリカもちゃんと子供なんだなぁと思えますね。そんな子供にノンデリ質問攻めカマしてキレさせた奴がいるってマ? 死んだ方がよくね?
おい聞いてんのか
まぁ、まだ死ねませんがね。きちんと柴関に貢献して、オウカとマツリとも再会する。両得してこそ今どきのニケ像ってやつでしょうや。
そのタスクを終わらせてから、自決用の拳銃に手を伸ばしましょう。帰る方法が無ければの話ですが。
そんな決意を新たにし、気合いを入れ直そうと前掛けの紐を結び直そうとした時。
背中を突き刺す様な、或いは撫でられる様な。そんな悪寒が全身を駆け巡り思わず目を見開いた。
「───っ!?」
反射的に振り向くと、話題のストーカーこと先生と明確に目が合った。今私を襲った感覚は、あの人の視線によるものなのでしょうか。なんなの? ニケに悪寒を走らせるとかラプチャーか何かなの? もしくは中央政府?
そのまま、数秒間の沈黙。
こうして見てみると、先生と言うこの人は不可解な点が多くあります。
行政機関らしく白いスーツにネクタイを締めているのはいいとして、体格顔つき所作に至るまで……一体
女なのか、男なのか。どっちと言われればどっちとも見えるような、タキシードもメイドも似合う様な。そんな見た目をした彼ないし彼女は、黒髪のウルフカットを揺らして優しげに、しかしどこか艶やかな微笑みを私に向けてきています。
細めたその瞳はまるで底が無く、じっと見ていると吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥りかねません。
そして何より、
見たところニケでは無さそうです。連邦生徒会長から直々に任命された───なんて話があるので、この方は正規のルートでこのキヴォトスにやってきたのでしょう。
で、あれば。先生なら、キヴォトスから外の世界へ行く方法を知っているやも知れない。
外の世界と言えどアークの住民でない事は確かです、理由は語るまでもありません。ですが、外に別の世界がある。その証明だけでも大きな収穫となること請け合い。
「あ、ファルコンびっくりしてる。やっぱそうだよね〜、おじさん達も最初面食らったもん。ねぇ先生って結局どっちなの?」
「"え? ん〜やっぱり…………内緒。"」
そう言って、先生は笑った。なんですかあの妖艶な笑み。馬鹿なんじゃないすか、あれが教職のする笑みかよ。
「……ところで、どうかされましたか?」
ひとまず、ここまでじっと見られているからには何か用件があるのでしょうか。探りも兼ねて尋ねてみます。
「"あ、ごめんね。ヘイローが無いなぁって思って見てたんだ。"」
返答されましたが、その声ですらどっちか分かりません。ここまで性別の判断がつかないとか、もう奇跡と言っても差し支えない身体の作りをしています。意味が分かりません。
「それはお互い様ですよ。えーと、先生…でいいですか?」
「"うん、君の名前は?"」
「ソルジャー
そう名乗ると、先生は変な事を聞いたかのように目を点にする。
「"…ソルジャーって、それは……"」
何か聞こうとしたのか、先生は口を開くが───そこで横槍が入った。
「うへ〜、ファルンはファルコンだよ先生?」
「そうです! ファルコンさんはファルコンさんです☆」
ホシノとノノミが先生の言葉を遮る様にしてそう言った。2人ともなんだか顔を見るのが久しぶりな気がします。
まぁ私の名前云々の話はここでする様な事では無いですし、これは助けられたと捉えるべきでしょう。
「と言うか……ファルコンもここでバイトしてたんだ? おじさん知らなかったな〜」
「ん、完全にツッコむタイミングを失ってた。ファルコン、ちゃんと働いてたんだ。」
「ご挨拶ですね、シロコ。ホシノと改めて会う前に柴大将に拾ってもらったんですよ。」
なんて失礼な蛮族なんでしょうかこいつ。躾がなっていませんね、誰がこんな風に育て上げてしまったのでしょうか。責任者の顔が見てみたいもんです。
「皆さん、あの店員さんとお知り合いなんですか……? えぇと……あ。」
メガネの子───アヤネが先生を除いて全員私と顔見知りな事に焦ったのか、私の顔をまじまじと見て……固まった。
その様子を見てノノミがアヤネになにやら耳打ち。
「これには深い事情があるんです、今は一旦飲み込んでください、ね?」
「は、はい……」
場がこれ以上ややこしくならないようにしてくれた様ですね、流石はノノミ。気遣いがプロ級です。
「"と、いうか……ファルコンってもしかして"」
「ん、前に言ったファルコン。力を貸してあげてほしい。」
シロコが立ち上がり、徐ろに私の両肩を掴んで先生に向かってそう言い放ちます。なんでそんな得意気? というか、もしかしてって何が?
……さてここで、この間のシロコの言葉を思い出してみましょう。
『……ん、じゃあ先生に相談してみる。困った事があったら聞いてって言ってたし。今日はこれで。』
『友達の悩みは私の悩み。ファルコンが困ってたら私も困る。なら、ファルコンの困り事は私の困り事。ん、道理は通ってる。かんぺき。』
『先生に相談してみる』
『先生に相談』
『相談』
はい。
こいつ、マジで相談してやがった。やりやがった、やりやがったよこのバカ。
「"あはは……いや、力を貸すのは構わないよ。頼られるのは嬉しいからね。"」
本気かこの人。おいおいまた善性の塊みたいな大人が出てきたぜ勘弁してくれよ、おいアーク見てるか? これがCool Kivotosuだ。
なにより、と言葉を続ける先生。
「"私の生徒の
そう言って頭を下げた。
…………はぁ?
「む、先生。私はお世話されてない。私がファルコンのお世話をしてる。」
……………………はぁー?
さて、ここでこの間のシロコの言葉を思い出してみましょう。
『……ん、じゃあ先生に相談してみる。困った事があったら聞いてって言ってたし。今日はこれで。』
『友達の悩みは私の悩み。ファルコンが困ってたら私も困る。なら、ファルコンの困り事は私の困り事。ん、道理は通ってる。かんぺき。』
『友達の悩みは私の悩み』
『友達の悩みは』
『友達』
こいつ……こいつマジでッ……! ほんとにッ!
バカなの!? ねぇバカなの!?
もし私がニケでなく普通の人間であったなら、恐らく天を仰ぎ叫んでいた事でしょう。今だけはこの鉄仮面に感謝の程を申し上げたい。
こいつ、同情の良い転換としての友達じゃなくて心から対等な友達だと思っていらっしゃった!? なぜに!? 私あなたのこと蹴っ飛ばした挙げ句撃ってるんですよ!?
それが無かったとしてもこんな1ミリも表情変わらん奴なんか誰が友達にしたいねん。アホちゃうか。
1日寝たらぜんぶ忘れちゃうのかな……可哀想……。
と、シロコに憐れみの視線を向けていると背後から声がかかる。
「あー、盛り上がってるところ悪いが運んでくれファルちゃん。」
振り向くと、大将が提供カウンターにいくつかのラーメンを置いていました。ふむ、私とした事が少し話しすぎてしまったようです。
「そうよ、さっさと食べて出てって!」
そう不機嫌そうに、しかしどこか楽しげにセリカが言ってラーメンを配膳する。数が多い為、私もその背を追うようにしてラーメンを運ぶ。
「チャーシュー麺のお客様。」
「はーい☆ ありがとうございます!」
「特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピングのお客様は……」
「はいはい、おじさんだよぉ〜」
「塩ラーメンは……アヤネちゃんだっけ? はい、どうぞ」
「あっ、ありがとうセリカちゃん」
「熱いから気を付けて。……もう、ファルコンは良いから! 後は私がやっとくから、他の仕事やって!」
「それは……失礼しました。では他の業務は請け負いますので、セリカは気にせずごゆっくりと。」
「なにそれ! 皮肉!?」
配膳していたらセリカにキレられました。解せぬ。
まぁ学友と接している様子を見られたくないとかそんな理由でしょうか……それかシンプルに私のことが嫌いか。
普通に両者でしょうね! 誰か殺してくれ。
「ん、仲間に対してその言い方は良くない。言い直すべき。」
「そうですよセリカちゃん、もっと優しく言わないと!」
「わ、私!?」
ここでシロコとノノミが口を挟む。どうやら2人的に今の物言いは頂けなかったらしい。発言はしていないが、ホシノもアヤネも同意見らしい顔をしている。
先生は……なんだあの顔。微笑ましいものを見るかのような笑みを浮かべている。
いつかアークで見た、公園で遊ぶ子供を眺める母のような顔に似ていますね。まぁ直後に私を認識した途端、その母は血相を変えて子供を抱き抱えどこかへ行ったのですが。失礼じゃねマジで。
「ほらほら、ファルコンさん悲しそうにしてますよ〜?」
「なんにも表情変わってないんだけど……」
「セリカちゃん、素直になりなよぉ」
「純度100%嘘偽りない本心なんだけど!?」
「ファルコンとセリカに何があったのかは知らないけど、最近セリカは"絶対言い過ぎた"とか呟いて悩んでたりしてる。ん、ファルコンはそんなに心配しなくていい。」
「ちょっとシロコ先輩!?」
気が付けば、グイグイとセリカは私の正面へ引っ張りだされ不服そうな顔を浮かべています。私のやらかしを告げれば逃れられるだろうに、それをしない辺りやはりセリカは真面目なのでしょう。
ちなみに先生はずっと笑顔で頭の上にハテナマークが浮かべています。アヤネも同じく。
「もう、分かったから! ちゃんと言うから…………ファルコン。」
「はい」
「……………………他の仕事、頼み、ます……」
前掛けの裾を掴み、顔を赤くしてそうモゴモゴと口にするセリカ。私に対しての信頼とかはゼロ通り越してマイナスに達しているだろうに、そんな事を言う。
正気なんでしょうか。
私は彼女達の存在意義さえ否定しかねない事を言ってしまったというのに、それでも仕事を任せてくれると言うらしい。
そうであれば、ニケとして答えはひとつ。
「───はい。私にお任せ下さい。」
「…………あんた、今笑っ───」
さて、任された以上は全てのタスクを完了させなくてはなりません。信用回復の第1歩です、しっかりとこなしましょう。
☆
「じゃあ、皆の事見送ってくるから。……その、悪かったわ。任せちゃって」
「問題ありません、私の役目ですので。これでセリカが良い時間を過ごせたのなら、任された甲斐があったというものです。」
そんな訳で。先生の大人のカードとやらで会計を済ませたアビドス御一行様を連れて、セリカが店の外に出ていくのを見届け……テーブルの清掃をしながら一息吐く。
脳内に浮かぶ議題はひとつ。先生だ。
自身の想像していた先生とはかなりかけ離れていたが……まぁ、そういう事もあるだろう。
なんにせよ、善性の塊であるということに間違いは無い。……同じ善性の大人であったカウンターズの指揮官とは、似ても似つかないですが。あの方はきちんと男でしたからね。
まったく、大人というのは不思議ですね。色んな人がいます。
年齢で言うなら私も大人の部類になるのでしょうけれども、生憎子供に自信を持って背中を見せられるような生き方もしてないですし知見もありません。
戦うこと以外能が無いですから。
しかし、セリカとの壁が少しばかり縮まったのは良い兆候です。後は誠心誠意真心込めて頭を下げる事ができれば、1つの大きな問題が片付き職場環境が円滑になることでしょう。これには柴大将もニッコリです。
このまま好感度を稼いでいきましょう、とテーブルを拭きあげる。まずはきっと不機嫌そうに戻ってくるであろうセリカを宥めることから始めましょうか。
そう思い、私は顔を上げた。
その晩の事だ。
セリカが、攫われた。
僅差で先生はおねにーさんになりました。皆様アンケートへのご協力ありがとうございました。
先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。
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男にするべき
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女にするべき
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おねにーさん(性別不詳)にするべき