量産型ニケ、キヴォトスに行く   作:ウィルキンソンタンサン

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今月はね!


1日からね!


飛ばしていきますよ!


いいっすか!




まぁ今月終わるんですけどね


11.ん、失踪ってどういう事

 

 

 

 

 

セリカがいなくなった。

それが発覚したのは少し前、電話に出ない事にアヤネが気付いてから。

そこから家まで行って、いない事を確認し問題が本格化。

 

市街にいないか捜索する為、私──砂狼シロコはアビドスの人気の無い街を携帯片手にロードバイクで奔走していた。

まず考えられるのはセリカのバイト先である柴関ラーメン。もしかすると、大将が何か知っているかもしれない。

 

半ば突き当たりの石塀を片足で蹴り飛ばすように曲がり角を曲がり、道路の真ん中を前傾姿勢で疾走。

夜目の効く私は、その先で店の施錠をしようとしている柴大将を視認した傍から大声を出して大将を呼び止める。

 

「柴大将ッ!!」

 

「──な、なんだ!? 何事だ!?」

 

ロードバイクのハンドルを90度折り曲げ道路と垂直に車体を滑らせ、片足でブレーキを掛けて柴大将の目の前で静止。*1焦げたゴムの臭いがした。

 

「柴大将、セリカ知らない?」

 

「……ん? あ、あぁ…アビドスの……シロコちゃんか。セリカちゃんは定時に出たぜ、何かあったのかい。」

 

「ん、連絡がつかないし何処にいるのか分からない。」

 

「本当か? ……ん〜、最近ヘルメット団? ってのがこの辺りを彷徨いてるって話を聞いたが…………何事も無けりゃいいんだけどな……」

 

セリカがいなくなった原因の最大候補が挙がった。あれだけコテンパンにしたのにも関わらずまだいた事に少し驚き。

もしヘルメット団に攫われていたのだとしたら、捕捉するのはかなり難しいはず。ホシノ先輩と先生が調べてるみたいだけど……。

 

ひとまず、目の前の柴大将に一礼。行方は分からないままだけど、ヘルメット団がいたと言う情報だけでも大きな収穫。

ついでに、気になる事を聞いておこう。

 

「……ん、それが聞ければ十分。ところでファルコンは?」

 

「ファルちゃんかい? セリカちゃんの後に続いて定時上がりだ。もしや、ファルちゃんも行方知らずなのか?」

 

「ファルコンは常に行方不明だから、大した理由は無いよ。まだここにいたら手伝って貰おうかと思って。」

 

「そりゃ残念だったな。ファルちゃんなぁー、連絡先が家電(いえでん)しか無いんだよなぁ。携帯も持ってないらしい。給料先払いか日払いでいいって言ってんだけど頑なに頷いてくれねぇんだ。」

 

腕を組んで困った様に言う柴大将。

携帯を持っていない、確かにそれは本人が言っていた事だ。この情報社会に携帯を持っていないなんてどういう事だと甚だ疑問だけど、そこで私は彼女と初めて相対した時のことを思い出した。

 

「ヘルメット団…………。」

 

「ん? あぁ、確かにヘルメットは被ってるけどな。だがヘルメット団って装いでも無いだろうよ、なんだったか……元々兵士? とは言ってたが。」

 

兵士。ソルジャー。ソルジャーF.A.(Falcon)

 

ファルコンは多くを語らない。聞けば答えてくれるのだろうが、ずかずかと土足で踏み入っていい様なものでも無いのは流石に私でも理解できる。

あの無表情の鉄仮面の奥に、どれだけの過去が詰まっているのか。過去を持たない私にとって、とても好奇心を唆られる。

 

まぁ、それはいい。それよりも目下に生じた問題。

 

ソルジャーF.A.は、1()()()()()()()()()()()()()()()()

 

考えたくは無い可能性。でももし。もし、その時の伝手がまだ残っていたとしたら。

ファルコンはきっと、恩だとか借りだとかそう言うのに弱い。そこに付け込まれていたとしたら。

きっと今までの全てがブラフで、これが目的だったのだとしたら。

 

そんな悪い考えは頭を振ってどこかへやる。

 

「とりあえず、ありがとう柴大将。また食べに来るね。」

 

「おう、こっちでもちょっと探してみるよ」

 

「ん、無理はしないで家にいた方がいい。近頃物騒なんでしょ?」

 

そういうと、柴大将は一瞬キョトンとした後に声を上げて笑った。

 

「こいつは1本取られた! そうだな、近頃物騒だ。俺みたいな一般市民は出歩かない方が賢明ってな。」

 

そう言うと柴大将は振り返って、どういう訳か閉めたばかりの店の扉を再び解錠した。

その姿を不思議に思った私に気付いたのか、大将は扉を開きながら言う。

 

「それじゃあ俺は、腹空かせて帰ってくる学生の為に何か作るとするか!」

 

パチリと暗い店内に光が点る。

大将なりの激励に、ハンドルを握る手に力が篭もった。

 

「ありがとう、柴大将。すぐに連れ戻すから。」

 

「おう、頑張れよ!」

 

グッとペダルを踏み込み、再び夜道を走り出す。ビルの看板から発せられる数々のネオン掲示板が、やけに輝いて見えた。

 

 

 

交差点を曲がり少し進むと、道路上に気になる場所を発見。ロードバイクから降りて銃を片手にその場所まで歩く。

 

「ん、なにかの破片?」

 

辺りにはなにかの破片や部品が転がっている。アスファルトには切り付けたようなタイヤ痕が残され、散らばったこれらは恐らく車の1部なのであろう事は容易に理解できる。

よく見れば薬莢も無数に転がっており、なにか銃撃戦があったであろうことも分かった。

 

スマートフォンのライト機能で地面を照らして見ていると、見覚えのある薬莢を発見。

異常に大きなショットシェルだ。まるで対人想定をしていないような、もっと強大なナニカに使うことを想定しているような大きさのそれが、局所に散らばっていた。

 

私の知る限り、アビドスでこんな弾を使う人間は1人しか知らない。

 

「ファルコン……!」

 

思わず周りを見回す。

すると、地面ばかり見ていて気付かなかったが……少しばかり離れた所にどこかで見た盾が斜め気味でアスファルトに突き刺さっていた。

ちょうど、そこにいた誰かを護るように。

 

再び、不自然なタイヤ痕へ目を向ける。

事故でもあったかのようなタイヤ痕。その先。曲がり角の石塀。

 

そこにはまるで、何かがぶつかったかのような人一人分の大穴が空いているように崩れていた。

それを見た瞬間、思わず走り出す。アスファルトを蹴る軽快な革靴の音と、駆け出した足に蹴り飛ばされた薬莢の音が夜に響いた。

 

瓦礫をかけ登り、石塀の中──捨てられた家屋の庭へと侵入。やっぱり外から突っ込んだみたいで、内側に瓦礫が大量に落ちていた。

元々は丁寧に手入れされていたのだろうけど、すっかり荒れて雑草と砂だらけになってしまっている庭の草の上に降り立つ。

 

瓦礫の中の幾つかが、ペンキをかけたように赤く染まっている。庭に生えた草の上にも途切れ途切れに、しかし一直線上に赤い点が紡がれているのが光に照らし出される。

 

その点線の終着点。そこに、黒い影が横たわっていた。

 

白いハイソックスが草で汚れるのも構わず走り出し、その影へ滑り込むようにして近寄って傍でしゃがむ。

 

そこにいたのは。倒れ伏していたのは。

ベージュ寄りの長いブロンドの髪。迷彩柄のボディスーツ。

 

 

ソルジャーF.A.が、血塗れで転がっていた。

 

 

胸の奥が底冷えする様な感覚がした。

普段付けているヘルメットとゴーグルは何処かに行っている。目を瞑って倒れた真っ赤な彼女からはまるで生気を感じず、死んでいる、あるいは人形であると言われても納得してしまう恐ろしい雰囲気があった。

 

「ファルコン……ファルコン!」

 

名前を呼び掛けても反応は無い。揺さぶって起こそうと身体に触れようとして……やめる。

 

こういう時、動かすのは不味い? なにも分からない。頭が真っ白になってしまっている。

別に、対策委員会の仲間な訳じゃない。勝手に来て、勝手に死にそうになって、勝手に攻めてきた。そこから不思議な縁があって、アビドス自治区の一員になった。

それだけ。

それだけなはず。

 

なのに私は、こんなにも狼狽えている。

 

何が起こってこうなってしまったのか、全く分からない。撥ねられた? こんな場所で? ならあの銃撃戦の跡は?

あの散らばったパーツ、不良達がよく使ってる頑丈高馬力が売りのジープのバンパーに似ていた。

 

ということは、交戦中に故意的に撥ねられた? 間違いない。あのタイヤ痕だ、相当なスピードだったのは確定している。

なら、それに当てられて石塀を貫通してここまで飛んだファルコンは?

 

たとえキヴォトス人でもタダじゃ済まない。ましてや、彼女はヘイローを持っていない。

 

「だ、駄目……ファルコン、ファルコン!」

 

何故か彼女を友達だと思った。この世界(キヴォトス)の事を全く知らず、怒られて、それでも懸命に生きている彼女を。

 

自分と、重ねていたのだ。

記憶も無いままに、当てもなく雪の中彷徨っていたかつての私に。

私とファルコンは真逆だ。

()()()ホシノ先輩と巡り会えた私と、()()()ホシノ先輩と巡り会ったファルコン。

 

ファルコンは私になり得たかもしれない。私はファルコンになり得たかもしれない。

 

だから気になった。だから知りたかった。だから……。

 

仲良くなりたかった。

 

「死んじゃ、だめ…………!」

 

これからだった。これからもっと楽しくなるはずだった。いきなり友達だと言った事に困惑しながらも受け入れてくれた。先の柴関訪問でも打ち解けられていた。

もっともっと、沢山の時間を過ごして、沢山話して、いつか───。

 

 

いつか、笑顔にさせてあげたい。

 

 

それだけだった。

 

彼女の手を握る。意識を失った人間の手にしては、まるでプラスチックの様な不自然な重量と感触。

それも構わず握り締めて、名前を呼びかける。

 

早く起きて。これから、セリカを探さなきゃいけないから。

 

そう言うように。

 

その時だ。

彼女の体内から、微かに何かが起動するような甲高い音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えー、おはようございます。今日も元気に、ソルジャーF.A.です。

 

突然で恐縮なんですけれどもね、これどういう状況でしょうか。目が覚めたらシロコが私の手を握りしめながら泣きべそかいてるんだけど。

 

「ファル…コ……ン?」

 

「…………ッ……」

 

呼びかけられたもんだから答える為に声を出そうとすると、喉奥からゴロゴロブクブクと音が鳴る。

これはアレですね、液体触媒が肺とかに侵入した時に出る音ですね。

 

「だめ、ダメッ! 喋らなくていい、今先生を呼ぶから──!」

 

なんか慌ててる。ウケる。この程度じゃ死なねーよ!

とりあえずスマホをタップする腕を掴んで首を振る。そんなことする必要はないってばよ。

 

「どうして……? ファルコン、このままだと」

 

「ッガ、ぐ、ぅ…………死に゙ません、よ」

 

上体を何とか起こす。うーん草共にベッタリと赤色がくっついています。家主には迷惑なことをしてしまいました。

 

……なんでこうなったんでしたっけ。

 

あ、身体がちょっと固い。出血、いや出液体触媒し過ぎたせいで身体を構成するガッデシアムが硬化しかけている様です。

液体触媒が流れる事によって万能金属たるガッデシアムは人間の肌の柔らかさを再現できていますが、肝心の液体触媒が無くなるとプラスチックみたいになってしまうのです。

よろしくないですね。

 

ゆっくりと起き上がる。骨格に異常は無し。無数の傷口は……塞がってきてる。液体触媒も流れ出ていない。

 

「え……大怪我、だったのに」

 

呆気に取られたような顔で私を見上げる、半泣きのシロコ。いやいや舐めてもらっちゃあ困ります。これでもニケなもんで。

 

ちょいとばかし遅れたみたいですが、しっかり発動したみたいですね。

 

「ん゙ん゙………あ゙、あー……ファルコンネストの起動を確認。───はぁ。」

 

「……!」

 

私に搭載されたスキル、その2。ファルコンネスト。

その効果は、受けたダメージの内のいくらかを回復出来るというもの。どうやらこんな事になる前にしっかり起動していたみたいです。

 

ぐしぐしと目元を擦り、シロコが私に問いかける。

 

「…ん、ファルコンって何者なの?」

 

「──ただのしがない兵士です。元、ですけれど。」

 

兵士と言うよりは、兵器ですけども。まぁ誤差です、誤差。

 

はてさて、一体なぜ私はこんな事になっているのでしょうか。辺りをぐるりと見てみると、私の液体触媒らしき大きな赤い点線の先に崩れた石塀があります。どうやらあそこから突撃してきた模様。

 

うーん、なんでしたっけ。

 

「あっちで薬莢と車のパーツが散乱してた。銃撃戦中に車で攻撃された……違う?」

 

「ふむ……」

 

銃撃戦。車。

 

思考を巡らせる。撥ねられたショックで記憶障害が発生しているらしい。なら、起きた事象から推察して脳を刺激するしかあるまい。

なぜ私はここで銃撃戦をした? 不良に絡まれた? にしたって、こんな事になるか?

 

いくつもの点を作り、それを一つずつ線で繋げる。

 

「……あ。」

 

そこではじき出された、ひとつの結論。

というか、思い出しました。

 

その瞬間、私はシロコに向かって両膝と手を着き額を地面へ擦り付けた。これは昔私の事を中級者さんと呼んでいたゲーマー兼ハッカーの知り合いに教えて貰ったこと。

謝罪のなかでも最大級の謝罪! "ジャパニーズ・ドゲザ"!

 

「……ん、理解が追いつかない。」

 

何か言っているが構いやしない。私はもういよいよ生きる価値が無い。

 

事の顛末をお話しよう。

 

 

 

まず初め。セリカと同時間帯に仕事をあがった私は、セリカともう一度話をする為に先に帰ってしまっていたセリカの後を追った。

するとどうだ、追い付いた時に私が見たのは一対多の銃撃戦。その一とはセリカであり、多はヘルメット団。

 

大きな爆発が起きた後、フラフラになって今にも倒れそうなセリカを守る為に盾をぶん投げ緊急参戦。

 

私もこのアビドスで不良を狩りすぎて少しばかり有名になっていたらしく、半ば恐慌状態へ陥ったヘルメット団達をはっ倒しつつセリカを守っていると。

 

半狂乱になったヘルメット団が運転する車による悪質タックルが背後から炸裂。

いくら100kgオーバーの私といえどこれには耐え切れず吹き飛ばされ、ニケといえど衝撃やら石やらでボコボコになって今いる場所まで転がる。

そして、そのまま車に気絶したセリカが詰められ去って行くのを土を握りしめながら見送って、最後に思い切り液体触媒を吐いて、気絶(シャットダウン)

 

で、今です。

 

 

おい、大戦犯じゃねぇか私。死にて〜〜〜!

てかもう死ねよ。殺せよ。

あーあ。

 

「セリカが攫われました。」

 

「……ッ!」

 

「私の不手際です、敵はカタカタヘルメット団。阻止、出来ませんでした……。」

 

そう言って、更に地面に額を擦り付ける。

守るべき人を守れなかった。

守る為に生まれてきたくせに。

人を守る為に。人の役に立つ為に。人を救う為に。

人の為に世の為に勝利の為に造られたのに、何も出来なかった。

 

私の存在意義が、無くなってしまった。

この使命が植え付けられたものだと言う事などとうに理解している。しかし、私はこの使命に何十年と殉じてきたのだ。

その為に戦ってきた。ありもしない命を懸けてきた。

 

なのに、そんな私は少女ひとり助けられない。

 

「ファルコン」

 

そう声をかけられる。感情の読み取りづらい、でもどこか優しげな声。

両頬を掴まれ、無理やり顔を上げさせられた。

その先には超至近距離にシロコの顔があり、その瞳孔が私を見つめている。

 

()()()()()。敵はカタカタヘルメット団、セリカは攫われた。それさえ分かれば十二分。」

 

そう言って立ち上がり、スタスタと道路へ歩き出すシロコ。

半ば辺りで止まり、不思議そうに私へ声を投げかける。

 

「ん、もう動けるんでしょ? なら早く来て。セリカを取り戻すよ。」

 

「……え…あ…………」

 

ありがとう。その言葉が脳内に反響する。

対象の行いに感謝する言葉。知識として知ってはいる。でも、なんで今私にその言葉が投げかけられたのか理解ができない。

 

私は失敗した。蔑まれて当然だ。

殴られはせど、感謝されるいわれは無い。

 

「ん……知りたかった事が全部わかった。それに───本来ここまでやる義理もないのに、そんなになるまで後輩を守ってくれた。何にも気付かなかった私なんかより、よっぽど立派。……だから、ありがとう。」

 

「…ありが、とう。」

 

「ん、ありがとう。」

 

「…………。」

 

ここで、私はひとつ気付いた。この言葉(ありがとう)をかけられて思考が止まった理由だ。

言われる理由だとか、賞賛される行いだとか。そんな事の前にまず。

 

 

 

 

 

 

(量産型ニケ)は、柴関での働きを除いてこれまでの行いに感謝と言うものを────

 

───まるで、された事が無かったのだ。

 

 

 

 

 

*1
金田スライドブレーキ




セリカ救出はまた次回!
救出終わったらちょっと駆け足で対策委員会編駆け抜けたいですね。あと数話でファル虐広範囲バチボコ曇らせができるはず………お待ちくだされ。


そんな事よりバイオハザードイベどうですか?
私ですか?

ぐだぐだ特異点がね、ちょっとね。

先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。

  • 男にするべき
  • 女にするべき
  • おねにーさん(性別不詳)にするべき
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