「──うん、わかった。こっちでもなんとかできそう。それじゃあ、そろそろ戻ってきて。うん、アヤネちゃんも戻ってきてるから。うん。また後で。」
そう言って電話を切る。
傍にいる先生をちらり見てみると、タブレットを手に持ったまま魂でも抜かれたみたいにうつろな目をしていることに気付いて小さな悲鳴が私──小鳥遊ホシノの口からこぼれた。
すぐに気を取り直し、先ほど後輩であるシロコちゃんから電話で渡された情報を脳内でざっくりとまとめる。
まず一つ、後輩たるセリカちゃんの行方。
近頃あまり見かけなくなっていたかカタカタヘルメット団の犯行であるという事が判明した。
あそこまでコテンパンに叩いたというのにまだ諦めていなかったのかと呆れるが、事実として大切な後輩が拉致されているのだから侮れない。
セリカの居場所が判明した暁には、今度こそ再起不能にしてやろうと心に決める。
もう一つ、ファルコンを発見した事。
セリカちゃんが攫われそうになっている現場を偶然目撃し守ろうとしたが、背後から地面に濃いタイヤ痕が残る程急加速したジープで追突され昏倒。
シロコちゃんが発見した時は意識不明の重体だったが、すぐに目覚め立ち歩けるまで回復。
連れてアビドス高校まで来るとのこと。
このツッコミどころの多さに、思わず頭を抱えた。
追突───うん、まぁ、合理的と言えば合理的。私の銃撃を何発受けても目立った傷を負わなかった彼女を撃退するのならば、強力な質量攻撃を仕掛けるのが1番。
それでも、それが分かっていても普通の神経をしているなら人を意図的に撥ねるなんて出来ないだろう。いくらヘルメット団とはいえ、それは同じはずだ。
そんな事を考えられない程追い詰められていたのか、そもそもまともな神経を持ち合わせていなかったのか。
あるいは、その両方か。どちらにせよ、やはりこのアビドスからヘルメット団を排除するのは目下の課題だ。
だが、あるいは────。
そもそも、
急加速したジープに背後から撥ねられ、石塀も突き破ったのにも関わらず立ち上がった? そんな馬鹿な事があるか。
確かに彼女は堅牢そのもの。もしかすれば、私にも並ぶ程に。
だが限界はあるはずだ、このダメージはそう易々と立ち上がれるものじゃない。
ましてや、すぐに回復したと? ヘイローも無いのに? 有り得ないにも程がある。
もし本当にそうなのならば、いよいよ彼女は人間では無い。機械か何かだ。
目撃者は居ないのだ、それらしい現場を偽装してしまえばいくらでも説明はつく。
それに加えて、セリカが襲われている現場を"偶然"目撃した? それはちょっと出来すぎだろう。
自然に考えるのならば、彼女こそセリカちゃんを攫った張本人だ。
元来ファルコンはヘルメット団の一員として私達に立ちはだかったのだし、今に至るまでの全てがこの為だったと……そうだったと考えるのが普通だ。
あぁまったく、外部の人間はこれだから信用できない。
隣りにいる先生も、いつ裏切るのかも分からない。
今はまだ善良な人間でいるらしいが………今にも裏切りそうなこの面───なんか心ここに在らずだけど───おまけに性別も分からないときた。
およそ信用できたものじゃない。
シロコちゃんとここに来て、いつも通りの平然とした顔でヘルメット団にやられました───だなんて言った日にはその顔面に愛銃の弾をプレゼントしてやろう。
そう決意を新たに、どういう原理か連邦生徒会のセントラルネットワークに自動的にアクセスされていくPCを睨み付けながら、セリカちゃんの端末からの最終発信源特定を待つのだった。
☆
「ん、ただいま」
スパァン、と勢いよく対策委員会の部室の扉を開ける音が廊下に響く。もう少し丁寧に開くことは出来なかったのだろうか。中から仰天した声が聞こえたのだけれど。
「シロコ先輩! 何かわかりました?」
「ん、セリカが攫われたって事とその犯人がヘルメット団って事が分かった。今ホシノ先輩と先生が調べてくれてる。」
「ヘルメット団がセリカちゃんを……!?」
「ん……あと、拾い物した。」
よたよたと歩きながら入り口に近寄ると、ちょうど私が入るべきタイミング。そのまま扉の枠に手をつけて身体を支えながら、やはりのっそりと入室。
「あっ、ファルコン……さ…」
「ファルコンさん……?」
私を認識するなり、中にいたアヤネの声は尻窄みに。青少年にはややショッキングな姿だったか。
とにかく、まずはお二方にご挨拶。
「……どうも、先日はご来店ありがとうございます。」
「言ってる場合ですか!? 救急箱は───」
「あぁ、お構いなく……。それは私にとって意味をなさないので。」
扉を閉め、一つ息を吐いて入口横の壁に背を預ける。本音を言うなら今すぐにでもボディを換装したい。ここに来るまでの道のりもやっとだ。
私のスキル、ファルコンネストによる回復はあくまでも最低限のもの。全快には程遠い。
つくづく、量産型はままならなぬものです。もっとガーッと回復したらええねん。
「それと、皆様に謝らなければならない事が。」
「え? そ、それより治療を先に……」
そう言って救急箱を抱えるアヤネを、ノノミが手で制する。そしてそのまま、私に問いかけた。
「それは、その傷が関係している事ですか?」
「……はい。」
口を1文字に結び、私を見据える。
話してみろ。そう言っていることを言外に察し、私は口を開く。
「セリカが攫われたのは、私の責任です。」
あぁ頭が重い。身体が重い。必要な時に限って使えない兵器なんて存在の価値が無い。
ちらりとシロコを見ると、もう好きにしろという表情を浮かべている。
実の所、ここに向かう道中に「謝る必要は無い」と言われていたのです。
でもねぇ、素知らぬ顔ではいられないのですよ私は。
今からするのは自己存在否定の告白。"処分"される覚悟はいいな? よしやろう。
「ヘルメット団と交戦している現場を目撃し、食い止めようとしたのですが──ご覧の有様です。」
そう言って、直角に頭を下げる。
「倒せたはずでした。守れたはずでした。防げたはずでした。この様な事態となってしまったのは私の責任です。大変、申し訳ありません。……それと、ノノミから頂いたヘルメットも破損してしまいました。重ねてお詫びします。」
さて全部言った。あとは野となれ山となれ、だ。どんな罵詈雑言の嵐だろうと袋叩きだろうと甘んじて受け入れますとも。
───が、返ってきた言葉は予想に反して、いやもはや逆に予想通りで。
「……顔を上げてください、ファルコンさん。セリカちゃんが攫われたのはファルコンさんの責任ではありません。」
「そ、そうです! そんなことは良いんです、とにかく早く治療を!」
「…………はい。」
諦めですねこれは。誰も彼も私を許してくれやがって。
なんだか余計に惨めです、誰か思い切り罵ってくれやしませんでしょうか? ……いや、別にそういう癖を持ってる訳じゃ無いんですけれども。
「だから言ったはず、ファルコン。」
「……シロコ。」
「奪われたなら、奪い返せばいい。私達の為に戦ってくれただけで十分。でしょ?」
「そうです! ファルコンさん、セリカちゃんの為にありがとうございます☆」
「はい、ありがとうございます。ですから治療を……」
観念した、と意を込めて両手を小さくあげる。
「敵いませんね、皆さんには。」
「でしょ。」
誇らしげに胸を張るシロコ。なんか腹立つなこいつ。
ところで、と彼女はその獣耳を揺らして話を切り出した。
「ファルコンは、謝る割には許して欲しく無さそう。」
「……そうでしょうか。…………いえ、そうかもしれませんね。」
まぁ、うん。今回の件に関しては許されない方が良いと思うんだけど。
「今回のこともそうだし、今までの事全部。ファルコンはいつも、許しを拒絶してる。謝る対象からもそうだし…………そこに居ない、誰かに向けても。」
こてん、とシロコは首を傾げる。
「ファルコンは、いったい誰に許さないで欲しいの?」
誰に。当然謝るべき対象ですが。別に許して欲しい時もありますけど。
それよりも謝る対象以外とか誰が────
そう疑問を抱いた瞬間、ズキリと脳が痛んだ。
『█ぁ、███─█─。わ█──の──友。──か、どう██、─た──を許─██─で───。』
ノイズだらけの、およそ一言も聞き取れない声ならぬ声。
周りを見ても、誰かが話した様子は無し。ならば幻聴? いよいよ私もガタが来たか。
というか、痛み? 痛みだと? 内外尽く痛覚を遮断されたニケたる私が? オイどうなってやがる弊社、話が違うだろ。
今の幻聴、そして弊社の怠慢。その両方をどうしたものか裁量しようとすると、丁度よく扉が開いた。
「みんな、お待たせ〜」
「ホシノ先輩! 先生!」
お二方の参陣。ホシノ先輩は相変わらず小さいし、先生も変わらず妖しい。
来たのならば仕方がありません。先程の幻聴と痛みは忘れるとしましょう。
「おっ、シロコちゃん戻ってたんだね〜。じゃあファルコンもい…る……」
「はい、先日はどうも。先生も。」
入り口の横にいた私を見た途端、ホシノ硬直。先生も目を見開いた。なぜ。
「"君は、確かラーメン屋の……"」
「……派手にやられたみたいだね、ファルコン。」
あ、信用してない目。まぁ今回の件はヘルメット団絡みですから、疑惑も致し方なし。
えぇそれはもう派手に。と笑い飛ばしてやろうと思い、声を発すると───
「────……。」
ゴロゴロブクブクと音が鳴りました。まーた肺に液体触媒入ってますよ。まったく声出ない。はは、ワロス。
「……!?」
「ばかファルコン、やっぱり無理してた……!」
手を口に当てて思い切り咳をすると、ベッタリとグローブに赤いのが染み込んでます。
「あ゙ぁ゙も゙う、ままなりませんね……あ、お気になさらず。ちょっと痰が絡まっただけで───」
「そんな訳無いでしょ、尋常じゃない音だよ。セリカちゃんを守ろうとしてくれたのは感謝するけど───そんな身体じゃ、もう戦えないじゃん? ちょおっと遠いけど、病院に行ってよ。」
顔を下に向けながらため息を吐くホシノ。
いや、病院とか行っても意味ないですからねぇ。
「ご心配には及びません。見た目こそパンクですが、本当に大したことは無いのです。それに、今は1分1秒が惜しい。そうでしょう?」
「そう、だけど……流石に無茶だよ、血塗れじゃんか」
「心配無用ですよ、もう遅れはとりません。車の一つや二つ、止めてみせますとも。」
「どうしてそんなに……」
「セリカを奪還する為です。」
そう言うと、ホシノは顔を上げて先生へ目線を向ける。そのパスを受け取った先生は少し困ったような顔を浮かべた。
「"えぇと、みんなの話を聞く限り……ファルコンはヘイローが無いけど銃が効かない人間、って事でいいのかな?"」
人では無いぞ、兵器だぞ。人型なだけだぞ。
しかし周りがこくこくと頷いてしまった。
「"うーん…本音を言うのなら、病院に行くべきだと思う。でも……"」
そう言って、奈落のような目で私を覗き込み───言う。
「"止まる気、無いでしょ?"」
その言葉に頷く。
「先程、シロコは言いました。奪われたなら、奪い返せばいい。身勝手な事は承知の上、皆さんにお願い申し上げます。この奪還戦、リベンジとさせて下さい。」
そう言って頭を下げる。
そうして、返された言葉は─────
「派手なのは見た目だけで、あまり目立った外傷はありませんよ。」
「そうだとしてもちゃんと治療しないとダメです! 」
参加する代わりに、せめて手当ては受けろと言われた為甘んじてアヤネの治療を受け入れることになりました。
「ほらここ、服ごと切ってるじゃないですか! 頭もちゃんと手当てしないと! ホシノ先輩の言う通り病院にも……」
ちょっと暴言に聞こえるのやめてね?
「服も真っ赤ですし、着替えた方が良さそうですね〜」
ガーゼを当てられ、ぐるぐると包帯を巻かれているとそんな事を言い始めるノノミ。
服と言われてもねぇ。まぁ汚れているのは認めますが。
「ん、なら予備の制服があったはず。取ってくる。」
「シロコ?」
───それから数分もしない内にシロコは制服を持って現れ、ノノミにボロボロになったボディスーツをひん剥かれ無理くり制服を着させられた。
「うんうん、やっぱり似合うと思ってました!」
「……そうですか。」
着替えている間に至る所へ包帯を巻かれた。まったく物資の無駄この上ないが───不思議と、悪い気分じゃない。心做しか回復した気がする。
「このままアビドスの生徒になる?」
「生徒という歳ではないですから、お気持ちだけ受け取ります。」
「え!? ファルコンさんって成人しているんですか!?」
成人、成人かぁ……。ニケって成人式とか無いねんな。生まれた瞬間から銃持たされるし。あ、でも第1射は祝砲と認定できるか?
「そういえば、アヤネは私について……」
「あ、はい! それはもうノノミ先輩から全て。」
「あぁ、そうですか。あの時は本当に申し訳なく……。」
「ん、もう誰も気にしてない。ファルコンは自己評価が低すぎ。」
「ついでに言うと、今ホシノ先輩が先生にファルコンさんの詳しい説明をされてます☆」
そっすか。まぁ先生目線だとずっと謎の奴だったからね。むしろもっと早く説明するべきだった。
さて、噂をすればなんとやら。ガラリと扉が開きました。
「"もう大丈夫かな?"」
「詳しい位置が特定出来たから、そろそろ出発するよ〜……お、ファルコン制服似合うじゃんか」
「私が着させたんですよ☆」
「良くやったねノノミちゃん」
パチン、とハイタッチが響く音。仲良いね君ら。
☆
夜道、明るさに反比例して人気の無い市街で銃撃が何回も起きる。複数人のヘルメット団が銃口をこちらに向け、統率された動きで付け狙っていた。
「なんなの、この人数!」
特に何かがあった訳でもない。ただ今日来店してきた先輩達、そして先生とファルコンに対してブツブツと文句を垂れながら帰宅をしていただけだった。
それが突然、目の前にヘルメット団が現れたかと思えば囲われていたのだ。
背後からも……最初から私が狙いで? だとしても、何が狙いで?
そう疑問に思っても既に遅く、何かが放たれた音と共に爆発が起き吹き飛ばされる。
対空砲? 違う……この爆発音は、Flak41改……?
火力支援? どこから……?
ち、違う、これは……まさか……
こいつら、
彼女達の真意に勘づき、しかし意識が保てず今にも倒れそうなその瞬間。
目の前に何かが突き刺さる音と共に影が落ちた。
よくよく見れば、それは見覚えのある形の盾。
「───誘拐は犯罪ですよ!」
そう言って、これまた聞き覚えのある声と爆発みたいな発砲音。
やってきたのは長い髪の女性。
「ファル、コン……!」
発砲音の度に人が吹き飛ばされる音がする。どういう訳か知らないが、ファルコンが助けに来てくれたらしい。
でも、一体なぜ? 私はファルコンに対して、あんな態度をとっていたのに。
いや、それは後で考えよう。とりあえず今は彼女だけに頼ってはいけない、と頬を叩いて意識を覚醒させて銃を手に取った。
「あ、あいつは……!」
「あの射撃音は!」
「間違いない、小鳥遊ホシノの子飼い!」
「───"セクメト"だ!」
「セクメト? 誰が言い始めたんです、それ。」
「ぎゃあっ!?」
「くそくそくそくそ、おい! どうにかしろ!」
セクメト、なんておかしな通り名がファルコンにはあるらしい。なんだか可笑しくて、少し笑ってしまった。
……その油断がいけなかったのだろうか? 背後に迫る質量の暴力に、気が付かなかった。
「───セリカ!!」
そう声をかけられ振り向くと、そこには巨大なジープが迫っていた。
いやにスローモーションで、運転席も良く見える。ハンドルを握っていたヘルメット団の、バイザー越しの目すらも。
その目は何も写しておらず、正しく混乱状態。
「黒見セリカを攫う」、「ファルコンを倒す」。この二つがごっちゃになった結果、わけも分からずジープを急発進させたのだろう。
この速度だ、当たれば数ヶ月の病院行きは確実。ただえさえ借金を返さなければならないのに、こんな事にお金なんて使ってられない───。
そう思いながらも目を瞑った時、何かに押し出される感覚。驚いて目を見開くと、両手を突き出したファルコンがそこにいた。
そのままファルコンのいた所にジープが通過し、私は地面に倒れる。
ジープが通過した時に散ったのだろう、赤い液体が頬に付着しているのを指で拭って確認。
その指先に纏わりついたいやな温もりが、私の魂ごと身体を掴み取った様な気がして……。
やがてヘルメット団に身体を掴まれても、全く動く事が出来ずそのままトラックの様に魔改造されたジープの荷台に転がされ──────意識を失った。
目を覚ます。
「ッ!?」
勢いよく起き上がる。
「こ、ここは!? 私、攫われた!?」
痛む頭を押さえながら、現状の確認。
地面が揺れ、走行音が聞こえた。
「ここ……トラックの荷台? ヘルメット団め……私をどこに連れて行くつもりなの……。」
恨み節を呟きながら辺りを見ると、少し光が漏れている箇所を発見。外を覗こうと目を見開くと、そこにあった景色は────
「砂漠……線路!?」
線路がある砂漠。私が知っている限り、そんな場所はひとつしかない。
「線路がある場所って……まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」
ならば、どこにも連絡を取ることが出来ない。脱出できたとして、対策委員会に知らせる方法は無い。
それを理解した途端、足が力を失ってしまった。
「どうしよう、みんな心配してるだろうな……。」
次に浮かぶのは数々の結末。
どこか人知れぬ所へ埋められるかもしれない。
他の子達の様に、街を去ったのだと思われるかもしれない。
……裏切ったと、思われるかもしれない。
誤解されたまま、対策委員会のみんなに会えないまま死ぬかもしれない。
「そんなの、ヤダよ……。」
悔しさと悲しさ、そして何より不甲斐なさに涙が込み上げる。
ふと指先を見ると、そこには乾燥しきった赤い液体が外の光に照らしだされる。
「…………ファルコン…!」
ホシノ先輩みたいに硬いファルコンでも、あの速度で、しかもあの体勢で車と正面衝突なんてタダじゃ済まない。
私のせいで。
あんなヘルメット団も対処できない、弱い私のせいで。
あの時の夜、アレはあんまりにも正論で、上手く言い返せなくて、それでカッとなって酷いこと言って……!
それも謝れてないのに!
「う、うぅ……」
あぁ、ダメだ。
そう思った時には、もう決壊寸前で…………─────
「─────う、うわああああっ!?」
爆発音と共に急停止。慣性で荷台が
「カハッ、ゲホッゲホ!」
砂埃が口に入り、大きくむせる。
「な、なに? 爆発? トラックに砲弾でも当たったのかな……一体どこから?」
不思議に思ってキョロキョロとしていると、聞きなれた声が聞こえた。
もう一生聞くことは叶わないとさえ思っていた、その声が。
「セリカちゃん発見! 生存確認しました!……って、顔に血が!? いや、でも傷は───」
「あ、アヤネちゃん!?」
唯一の同期、アヤネちゃん。その姿に顔を綻ばせると、また別方向から声。
「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見! 」
「!?」
「なにぃー! うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと! そんなに寂しかったの? ママが悪かったわ、ごめんねー!!」
頼れるんだか頼りないんだかよく分からない、素っ頓狂なことを言う白とピンク頭の先輩二人。
「うわああ!? う、うるさいっ!な、泣いてなんか!!」
「嘘! この目でしっかり見た!」
「泣かないで下さい、セリカちゃん! 私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!」
またひょっこりと現れたもう1人の先輩がそう言う。
「あーもう、うるさいってば! 違うったら違うの! 黙れーっ!!」
助けてくれた安堵感か、照れ隠しにそう言う。
「"良かった、元気そうで安心した"」
いつの間にかいた先生。どうしてここが分かったのかと聞くと───
「"ダテにストーカーじゃない。"」
なぜか誇らしげに、相変わらずの腹立たしい顔でいつか私が言った言葉を言ったから、変態教師と叫んだ。
「それにしても、どうやって止めたの? 戦術サポートシステムにしては……」
爆発も起きていない、そう疑問を言おうとすると。
「あ、それは本人からの要望でねぇー?」
ホシノ先輩がそうニヨニヨしながら壁に突っ込んだみたいにひしゃげた車の先頭を指さした。
「ん、怪我してるから止めてって言ったのに聞かなかった。」
のっそりと、そこから出てきたのは────
「───先程は不甲斐なく、申し訳ありませんでした。しかしこれで……名誉挽回、ですね。」
「…うへ、本当に身一つで車を止めちゃった。」
長い髪と、青いネクタイにスカートを風に揺らしながらいつも通りの仏頂面でその身を顕にしたのは。
「……とは言っても、挽回するべき名誉というのは特に持ち合わせていませんが。」
私をジープから身を呈して守ってくれた、ソルジャーを名乗る女性。何故か私達アビドス高校の制服を着ている、ファルコンだった。
車に撥ね飛ばされても大丈夫なんてキヴォトスの人は凄いなぁ、と先生は思いました。
先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。
-
男にするべき
-
女にするべき
-
おねにーさん(性別不詳)にするべき