量産型ニケ、キヴォトスに行く   作:ウィルキンソンタンサン

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11月4日、勝利の女神:NIKKE3周年。
3周年記念イベント『GODDESS FALL』、開幕。

月イチ更新失敗した理由はここにあります。
衝撃が強すぎて立ち直れませんでした……


13.退き口(一切鏖殺)ってなんやねん

 

 

「……おい、大丈夫かよ。」

 

運転席でハンドルを握り、代わり映えのしない砂漠の上を走らせながら助手席へと声をかける。

 

「────とじゃ……」

 

「あ?」

 

「…わざとじゃ、なかったんだ……」

 

外したフルフェイスのヘルメットを抱きかかえて、そううわ言のように呟く彼女。

その意味は考えるまでもなく分かる。数刻前の事だろう。

 

"黒見セリカを攫う"という楽な仕事のはずだったのだ。

だが、奴が現れた事で全てが狂った。

 

不良達の巣窟。無法地帯。

行き場所の無い私達のような連中がこぞって住処にしていたアビドス自治区。不良間の小競り合いや妙に強いアビドス生の妨害はあったものの、そこでは静かで平和な環境が築かれていた。

 

一発、大砲のような轟音が自治区に響くまでは。

 

夜な夜な、数々の不良達が再起不能に追い込まれた。現場には、必ず人数分のショットシェルを転がして。

 

人として復帰は出来ても、不良としては二度と復帰できなくなる程戦意を喪失させる破壊力。人数分のショットシェルが示す通り、それが1発分の威力。

そんな代物を扱う冗談の様な人間が、このアビドスにやってきたのだ。

 

誰が呼んだか、"セクメト"。出処不明、呼び名の意味すら不明のそれが妙にしっくり来るほど、私達はその存在を恐れていた。

 

 

だから、()()が目の前に現れた瞬間。私達はどれだけの恐怖に包まれたか。

 

アスファルトに突き刺さった盾。毎夜毎夜、聞こえる度に身を寄せ合って共に震えたあの轟音。

それだけで、全ての統率が失われた。姿を知る者は少なかったが、その2つの音だけで彼女こそが"セクメト"だと理解したのだ。恐慌状態に陥り、手榴弾のピンすらも抜く事が出来なくなった者もいた。

 

……だから、彼女が跳ね飛ばれた瞬間。あれだけ強大で恐ろしかった存在が消え去った瞬間。

皆、どれだけ安心しただろうか。どれだけの安堵だっただろうか。

 

どれだけ、突っ込んだジープに感謝しただろうか。

 

だが、その行動を行った当の本人は喜色を一切見せず、代わりに塞ぎ込んでしまっている。

 

曰く、()()()()()()()()()()()()()

 

人がしてはいけない曲がり方、人が出してはいけない色。

決して取り返しのつかない鈍い音。

 

あまりの恐怖で何も見えず聞こえずだった我々は知らない、その最悪を彼女だけが知っていた。

 

このキヴォトスにおいて前例の無い程、その身にはあまりにも重すぎる業。

指示の下チーム全体で及んだ誘拐とは違う、彼女だけの罪。

 

なんと声をかければいいのかまるで分からず、ハンドルを握りしめて俯く。

 

 

外で風が起きたのか、突然現れた砂埃に車体が突っ込んで視野が奪われる。その奥ででふと、何かが前方に舞い降りて立ち塞がった気がした。

 

砂埃を抜けると、目の前には────

 

「……………は?」

 

瞬間、思考能力の全てが奪われた。

 

装いは全く異なるものの、その正体は本能で理解できる。

このジープで吹き飛ばされたはずの、"セクメト"が……目の前に立って、こちらを見つめていたのだ。

 

「ひ──────!」

 

そこから先は、覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"はい、という訳でね"」

 

「いやはいじゃないでしょ! アレ、どういう事!?」

 

パン、と軽快な音を手で鳴らして話を切り替えようとした先生にセリカが口を挟む。アレと言いながら指された指の先には、服に付着した砂を手で払っていた私。

 

砂に転がって僅かに煙を立てている盾を拾い上げ、砂を払って肩にかけながらこんにちは。ソルジャーF.A.です。

 

いやはや、柄にもなくエキサイトしてしまいました。

身一つで車を止めるだなんて経験中々無いですからね。せいぜいが万歳突撃してくるラプチャーに正面からぶつかる程度が関の山です。あれいてーんだよな。

 

「いや〜凄かったねぇファルコン。」

 

「凄いどころ騒ぎじゃないでしょ!? 何、走行中の車止めるって!? あとどうやって前に行ったの、経路予測出来たとしても先回りは出来ないでしょ!? それと何より────」

 

ふいーやれやれ、と皆の所へ歩いていた私に再度指を指すセリカ。

 

「あの服装は!? なんでアビドスの制服着てるの!?」

 

「あぁ、これですか?」

 

「そう! なんで!?」

 

「ふふ、分からないでしょう? 私も分かりません。」

 

そう言うと、分からないのかいとズッコケる。

 

「元々の服が汚れてしまってましたから〜」

 

「ん、似合ってる。」

 

「また先輩達はそうやってノリで着させて……」

 

恨めしそうに2人を見るが、何処吹く風。この2人組には何を言っても無駄なのだ。哀れ後輩、強く生きろ。

 

「というか1番聞きたいのはファルコン!」

 

おっと私に矛先が向いた。

 

「どうやって先回りしたの!? いやそれよりも───」

 

言いながらも、強気な姿勢は尻すぼみに。まるで、何かを思い出してしまったかのようです。

 

「──怪我は、大丈夫なの…?」

 

そうでした。彼女は私が撥ね飛ばされる様を1番近くで目にしたのです、トラウマは不可避。

この歳で、しかも私が原因でトラウマ抱えるとか普通に自害モノです。うわ死にたくなってきた。

 

「ご心配無く、この通りです。」

 

むん、と元気アピール。若干節々の動きが鈍いですが、まぁそれくらい。私が勝手に飛び出した結果なのですから、そんなに気負う必要なんて無いのです。

なんというか不思議なもので、この身体中に巻かれた包帯のお陰で治ったような気がするのです。効果なんて全く無いはずなんですけどね。

 

さてそこで、先生からお言葉が入りました。

 

「"あー、みんな。話の途中ですまないけれど、ヘルメット団が来てるよ。"」

 

「ん、油断は禁物。ここはまだ敵陣のど真ん中。」

 

火器を手に取りこちらを見据えるヘルメット頭がチラホラと増えてきています。

雑談に興じている場合じゃあないですね、これは。

 

「うへ、敵さん怒ってるねぇ〜」

 

「前方にカタカタヘルメット団の兵力、多数確認。さらに巨大な銃火器も多数確認しました……徐々に包囲網を構築しています!」

 

「手際良いねぇ、敵ながらあっぱれ……。それじゃー、折角だから包囲網を突破して帰りますかねぇ〜」

 

大きくのびをして、盾を展開するホシノ。それを見て、私も肩から盾を下ろします。

何か警戒しているのでしょうか、あちら側から仕掛けてくる様子はありません。この戦いの火蓋を切るのはアビドスサイド、という形になりそうですね。

 

「……気を付けて。奴ら、改造した重戦車を持ってるわよ。……あとなんかファルコンの盾黒ずんでない?」

 

「これですか? ……いや、まぁ。これで飛んで車の前へ出たので。」

 

「は?」

 

理解できない、という面を返された。なにか不思議なことでも言いましたかね? 砂漠で車に追い付くのは無理だったから飛んだのですけれど。

具体的に言うと、盾に爆弾を付けてアヤネの運転するジープから飛び降り、シロコのドローンで爆撃して貰いました。

 

爆風を利用して距離のアドバンテージを無効化する完璧な作戦。俗に言う、ウィンドボムです。

 

いいものですね、空を飛ぶというのは。地面を這いずり回ってラプチャーを追っかけ回すニケには無い体験でした。もしアークに帰る事があったらみんなに自慢しよ。

 

「ん、あの戦車はFlak41改良型。」

 

なんて?

周りを見ると、神妙な顔をしてシロコの言う事に頷いています。

Flakと言えば88ミリ(アハト・アハト)……でも戦車かぁ。高射砲じゃないのあれ?

 

いや、忘れがちだけどここ異世界だったわ。たまたま名前が同じなだけだな。うん。

よし、考えるのやめた。

 

「"あ、ファルコン。これを。"」

 

後ろから声をかけられ、振り向くとそこには先生。私へ何かを差し出していました。

 

「これは……インカム?」

 

「"うん。私の指揮に入るのは初めてだったよね?"」

 

そういえばそうです。なんでも、先生の指揮が入ると部隊がめちゃんこ強くなるのだとか。戦術の欠片も理解していない輩に指示でもない指示をされてきた量産型の私としては、思わず期待してしまいます。

 

インカムを受け取り、耳へと突っ込む。

 

「"私はこのタブレットと口頭で指揮を執るんだ。よろしくね?"」

 

「はい。今更ですが……改めて、部隊に合流します。」

 

微笑んで、手元のタブレットを弄る先生。かと思えば、何やら妙な感覚がしました。

 

一瞬、虹色の水晶の様なエフェクトが見えたような。

 

なんだなんだと眉を顰める*1と、その瞬間─────何かを思い出したかのように、ズクンと脳髄の奥が急激に熱くなった。

 

ナニかが脳から全身へ広がっていく感覚。思考は冴え渡り、元々伸びていた背筋がさらにピンと張る。……冷たい信号が、身体を統制した。

 

 

 

…………あぁ、これは知っている。このキヴォトスに来てから久しく失っていたけれど、確かに。

というか、私は元々()()だった。この状態こそが、元来の私だ。

 

これは、NIMPH(ニンフ)だ。

(ニケ)の脳髄に巣食い、シナプスの制御を行うナノマシン群。

 

この世界に来てから沈黙を貫いてきたソレが、目を覚ましたのだ。

 

 

「"……ファルコン?"」

 

突然押し黙ったのを不審に思ったのか、先生から呼び掛けられる。

これはいけないと声を出そうとすると────

 

あぁ、これはまずい。

 

喉奥から生成された言語が口内より放たれる直前に勘づいた。

日頃から言う事を聞いてくれないお口だけども、今は特別、聞いてくれない。

 

「───如何されましたか、()()()?」

 

「"……え?"」

 

あぁクソったれ、と胸の内で悪態をつく。

ここにきて、このタイミングで! 今まで何の反応も無かっただろ!

 

「ファルコン……?」

 

ホシノ達も怪訝な顔でこちらの様子を伺いますが、そちらに目線を送ることもありません。

もはや私の意志と関係無く、口を動かす身体。

 

「敵性体、反応増えています。指示をお願いします、指揮官。」

 

もうこれ侵食だろ、なんで言うこと聞かねぇんだよこの身体おい何とか言え弊社ァ!

そもそもNIMPHってなんだよ、名前と作用しか教えて貰ってねぇんだぞちゃんと教えろ某ゲーマーァ!! 殺すぞ〜〜〜!!!!*2

 

『中級者さ〜ん……』

 

……あなたは…イマジナリー某さん……?

 

『あのときは〜……喋るのに疲れてしまって〜……』

 

じゃあいつも通りお得意の対面BlaBla会話をすれば良かったじゃないすか!

 

『だめで〜す……イベント周回してたので〜……』

 

うっひょ〜〜〜〜〜!!!!(全ギレ)

 

そのまま脳内から掻き消える、私を中級者と呼ぶ変わり者の彼女。

そういえば、ここへ来る前も含めて久しく会っていませんでした。スマホのオンラインゲームやそれこそBlaBlaでやり取りをするくらい。

 

……顔くらい、出せば良かったですね。

 

探偵を名乗る割にはかつて東の島国に存在したマンガの麻酔針撃たれる私立探偵の方がましなレベルの推理を披露するマジキチとか、BOOM? というゲームが好き過ぎてありとあらゆる媒体にプログラムを仕込むマジキチとか、なんやかんやで結構な友人がいる彼女ですが……

 

───いえ、それは思い上がりですね。彼女は特化型で、しかも中央政府からも重要視されている存在です。

たまたま気に入られただけで、本来私のような量産型は顔を合わせて話す事すら有り得ないのですから。

 

まぁそれはそれとして大事な事はちゃんと教えて欲しいですけどね〜!?

 

 

「"え、えぇと、じゃあ……"」

 

脳内でヤバいクレーマーと化している内に、先生はテキパキと部隊のポジションを割り振っていきます。

 

アヤネはジープに戻り後方支援、ノノミは弾をばらまいて撹乱。

シロコとセリカは中距離から牽制、そして指定暴力団アビドス組長ことホシノが最前線で殴る係とのこと。

 

「"ファルコンはホシノと同じポジション。面で攻撃して、戦力を分散させよう。それと───"」

 

そこで言葉を切り、先生は少し悩ましげに口を窄めて……意を決したように、私に言う。

 

「"ファルコンにはリーダーをお願いしたい。私では対応しきれない、咄嗟の判断を補って欲しいな。"」

 

「承知致しました、指揮官。」

 

「"指揮……先生なんだけど…………。"」

 

微笑みを崩さず、されど困惑を隠しきれない様子の先生。

これはかなりスマン。ごめんなさいです。

私にはどうにも……諦めですねこれは。

 

まぁおそらく指揮官以外の呼び方はしないと思うんでね、お気になさらず。司令官とかマスターとかドクターとか言いませんから。

 

……なぜ自分の体の事なのに不明瞭なのだろうか。ニケの辛いところね、これ。

 

しかし、私が班長(リーダー)? アビドスの面々の勝手知ったるは年長たるホシノでしょうし、ここは彼女がやるのが普通じゃあないんですかね?

まぁ実戦経験でいったら私が上なのは間違いないと思いますが……。実際、部隊のリーダーでしたし。リプレイス1、既に懐かしく感じる響きです。

 

「さ〜て、みんな自分の役割は把握できたね〜?」

 

パン、と手を叩いてメンバーを見回すホシノ。

いよいよ時が来ました、目標は敵陣正面突破による帰宅。それしか手がないとは言え、やっている事はセキガハラのシマズのそれです。

なんなら、ただ帰るのではなく「別に、全員倒してしまっても構わんのだろう?」を素で行く作戦。完全にイッちゃってるよ、こいつら修羅に生きてんな。

 

心の中で1つため息を吐き、手に持った盾を握り直す。指揮官もとい先生が絡まなければある程度自由に動けます。

ここはやはり、アークの頃と変わりません。

 

「それじゃあ………………行こうか?」

 

それを合図に、私はホシノと共に敵陣へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

*1
気持ちだけで実際はピクリとも動いていない

*2
1回くたばってる定期




文章の書き方を忘れたので戦闘まで持っていけませんでした。余分な文章が多かったですね……反省です。
更新が止まっている他の作品も書き進めてはいますが、これがもしかしたら今年最後の投稿になるかもしれません。
それでは皆様、良いお年を。

先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。

  • 男にするべき
  • 女にするべき
  • おねにーさん(性別不詳)にするべき
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