8月分投稿したと勘違いしてました、ごめんちゃい♡
突貫で書いたので短いです。
ふらつく身体を無理やり立たせ、後のことなんて考えず盾を振るう。
片目が見えない分普段以上に目と首を動かし、周辺視野の情報をこれでもかと獲得して相手の行動を予測する。
避けて、避けて、当たって、よろけて。耳が聞こえないのが大きなハンデとなっていて、すべての情報を目と鼻で感知しなければならないのはとても面倒だ。
「………!」
「…、……! ……!」
私に対して、何か言葉を投げかけているようにも見える。止まるよう要求しているのだろうか? どちらにせよ、止まる気は無いけれど。
……まったく本当に、私は何がしたかったのだろう。
結局のところ、こうして盾を振るっている相手も私が守るべき人間なのだ。
いかなる理不尽を受けようとも、心無い言葉を投げかけられようとも。どんな人達も仮初の命を賭して守るのが私の使命だ。
もちろん、それはただの外付けに過ぎないのは分かってる。そして、だからといってそれを蔑ろにできる訳じゃない事も、もう分かってる。
分かっている。
今私がしていることが、間違いだということも。大将の為にも、自分の為にも、ここは何もしないでいるのが正解の選択だったはずなのだ。
冷静にホシノ達を呼んで、一応中立の立場である先生の立ち会いの元相手方と話し合いを行う。これがベストだったろう。
頭じゃ分かっているはずなのに、どうしてか止まることは出来ない。それをしたところで、私のこの胸の蟠りは解消する気がしない。
「……ままなり、ません、ね」
盾を振って数人を吹き飛ばしながら、気付く。私は怒っているのだ、と。
いつも通り口だけ、いや頭だけでなく身体まで……つまり、今の私は全身全霊で憤っているのだ。
誰に。
この目の前の集団。便利屋。そして、なにより私自身。
再三言うが、防げた。確実に防げるもののだったはずだ。警戒を張り巡らせ、神経を尖らせていれば。便利屋の会話にもっと耳を傾けていれば。
浮かれていた、という自己分析は全く正しい。そしてそれを自覚しながらも、理不尽に私は周りへ怒りを振り撒いている。
ニケだというのに、感情に呑まれて行動など絶対にしてはならない筈なのに。確実に律した筈なのに。私は呑み込まれていないと判断した筈なのに。
これではまるで、人間みたいだ。
そうハッとした瞬間、大きく咳き込んで動きが止まる。
戦場で動けなくなるとは何事か。急いで体勢を整えようと踏ん張……れない。
足が、動かない。
数回大きく咳。最後の咳で喉が熱くなり、食道が広がる感覚がしたと思えば、赤い液体が口から飛び出す。
雑に口元を拭って、前に踏み出そうとする。けれど、足は私の命令に反してピクリとも────。
「うごか、な……」
脚に力が急激に入らなくなり、がくんと膝を折って地面へ倒れ込む。
きちんと見えていた片目の視界すら焦点が定まらない。
脳が圧迫されているかの様な感覚に包まれ、体内から鳴る音が内側に大きく響いて……響いて響いて、頭が割れそうだ。
上体を起こそうと手を着いて……滑る。液体触媒がべっとりと地面に付いていた。
「……あ…………ぅ…………」
呼吸がどんどんと浅くなる。やがて回数が増えてあえぎあえぎ、情けない音が口から溢れ出した。
苦しくて、こんな感覚は初めてで、痛覚なんて知らない感覚が主張して─────
どうして、なんで。
私はニケだ。その前の記憶なんて無い。正真正銘、純粋なニケ。呼吸なんて人間性を保つ為だけのものに過ぎず、実際それは必要の無い機能だ。
呼吸器官に異常? だから何だ。稼働には何も問題が無い。こんなに苦しいなんてことは有り得ない。はずだ。
であれば、考えられるのは液体触媒の深刻な不足? 体が動かないのも、それ? でも苦痛を感じる理由には弱い。
「あつ、い……」
暑い。熱い。胸の奥があつい。
燃え上がる様な熱が、胸の奥で暴れ回っている。
コアが発熱している?
こんな事は初めてだ。こんな状態ははじめてだ。どんなに死にかけても、上半身と下半身が別れた時もこんなことにはならなかった。
頭が痛い、頭が
「あ、あぁ…………あ……!」
どれも初めて感じる信号。これは何だ、何が起きてるんだ。
死にかかっているだけなのに、これくらいの事は日常茶飯事だった筈なのに。
まるで、この身体が私のモノじゃ無いみたいだ。
「あたまが、われる……っ!」
思考をしようとするそばから、ほどけてきえていく。頭のなかで言葉をつむぐのも、たった1文字だけでも、つらくて、くるしくて、きもちわるい。
いたい。いたい、いたい。
「……っ! …、……!!」
声もでない。この苦しみをはつろする手段がない。
呼吸ができない。のどが触媒でふさがれているらしい。
なんだ、これは。これが、私の末路?
何年も、何十年もたたかってきて。
その末が、アークでも、ラプチャーにしはいされた地上でもなく、こんな、よくわからない、ばしょ?
ダメだ、切れる。最後の糸が。張り詰めていた糸が。
私の防壁が、無花果の葉が。
反射的に浮かんだ拒絶と理性。それは疲弊しきった脳と身体の前に解けて消えた。
そうして次に浮かんだ言葉は、言語化される前に徹底的に潰してきたもの。いつしか自然と輪郭を感じる事も無くなったはずのもの。
どうして、わたしが、こんなめに。
わるいことなんて、ちかって、なにひとつしていないのに。
「どう、して……?」
ズクンと、コアが震えた。
ニケの根幹であり、炉心であり、心臓であり、ブラックボックスであるコア。当然一機につきひとつ。しかしながら、いつでも物事にはいくつかの例外というものがある。
その、例外。このソルジャーF.A.の今までの戦闘において静観を貫いていた
『いやはや、代償があの子みたいなオーバーヒートじゃなくて記憶とは恐れ入ったね。ニンフとシナジー悪い? なにを失ったのか分からんけど、なんか消えたのは分かる。脳洗浄と全然違う、うっわー気持ち悪い。』
『うん? コアに関する記憶が消えたらどうすんのか? へいへいイングリッドきょーかん、私を誰だと思ってるのさ。必要になったら思い出しますよ。……それが私なら、きっとね。』
『怖くないのって? はは。あの子に関わった研究員、私除いた全員の記憶消した奴がなんか言ってら。…………あー、うん。……怖くないよ。覚悟なんて、あんたがこの会社継いだ時から決めてる。』
『ん、当然。だって私ら、親友でしょ。』
目の前に、私が立っている。暗闇の中に、私が。でも、あれは私じゃない。別のソルジャーF.A.だ。
まず服装からして違う。彼女は支給のものではなく、ネクタイを付けたスーツに白衣を羽織っており、社員証を首から下げていた。
見開かれた眼にはこのボディにそんな事が可能なのかと思えるほど光を蓄えられていて。一切変わらない見た目なのにも関わらず、全く違う個体だと誰でもわかるくらいの活きた眼をしていた。
すごいなぁ、と純粋に思う。私には、あんな目をするのは絶対に無理だ。
同じ量産型と言えども、違う人なだけでここまで差異が出るのか。
「……違う人じゃないさ」
彼女は、そう言葉を発した。
この声も、私と同じ声帯の筈なのに全く違う。凛としていて、澄んでいて、よく通る。見た目以外何もかもが違うのに、彼女は違くないと否定した。
「ちょっと、ややこしいんだけどね。」
困った様な顔で視線を逸らしながら頭を搔く。
しかし、すぐに視線を私に戻しにこやかに言葉を放つ。
「君は私だよ、間違いなくね。だって、ほら。」
思わせぶりに言葉を切って、彼女は足を動かし私にゆっくりと近付く。鼻が触れ合うくらい近付いた彼女は、その指先を私の胸の中心────コアに突き立てて、愉快そうに、いたずらが成功した子供のように、こう告げる。
「
1歩、2歩、自ら後退する。
笑顔を浮かべている彼女の顔を呆然と眺めていると、急激にある記憶が、今まで消えていた記憶が、輪郭を帯びて明確な形で脳内に現れた。
「……あ。」
そうだ。そうだった。多分私は、そうなんだ。
なにひとつ分からないけれど、この記憶は、そういう事だ。
灼けるように熱い胸を押さえて、たった一つの記憶を言葉にして絞り出す。
「───私には、コアが2つ存在する。」
機械が駆動する音が響く。
やっとか、待ちくたびれたと不満げに唸る様な音。突然目覚めたそれに、身体は驚きながらも自然と受け入れる。
まるで、存在を元から知っていたみたいに。
「そうだ、そうだとも。」
彼女は満足そうに頷く。
「私の中には、ソルジャーF.A.のコアが2つある。他のコアにするより、よっぽど相性がいいだろうと思ってね。単純計算で出力は2倍……の、はずだったんだけど。」
中枢から末端まで隅々に接続され、不足していたエネルギーが強制的に補給される。やがてそれは脳に到達し、その接続を待ち構えていたのかと思うくらい迅速に、プログラムが起動した。
「まぁ、気を付けてね。思ったよりくせ者だからさ。それに……なーんか手を加えられてる。気に食わない。あぁ、気に食わないねぇ……。」
言うだけ言って、名も知れぬ彼女は霧のように姿を消した。
でも、そんなことに気を割いていられなかった。胸の奥が熱くて熱くて、燃えて、焼き付いてしまいそうで。棘だらけの虫が、身体の内側でのたうち回っているみたいで。
やがて景色から色が失われて気を失うその最中、脳内に文字列が表示された。
ギルティ:マイティバニー実装!なんだそのふざけた格好は!!!!
シン:スウィフトバニー実装!なんだそのバカみてぇな格好は!!!!!
シュガー:キラーバニー実装!なんだそのアホみてぇな格好は!!!!!!!
先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。
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男にするべき
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女にするべき
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おねにーさん(性別不詳)にするべき