そして降臨、窮屈になると服を脱ぎ出すニケ……!
カタカタヘルメット団アジト、住居スペース。非番の隊の団員は、殆どがブラックマーケットなどへ足を運んでいてひっそりとした静けさを保っている。
立ち並んだテントの内の1つ、その中で一人の人影がムクリと起き上がった。
「…ここは……住居スペース?」
カタカタヘルメット団2番隊、オウカ。彼女は自身がここで眠りに着いた記憶が無い事から、この状況に困惑する。
痛む頭を抑え、自分がヘルメットを被っていない事に気が付き、傍に置いてあった赤いヘルメットを被った。
スマホを見て時間を確認。夕方だった。
辺りを見回すと、隣には彼女が隊の中でも最も信頼する友人、マツリが眠っている事に気が付いた。
「おい、起きろマツリ」
「ゔ……んだよ…………今日は日曜だよ、まったくおっちょこちょいなんだから……」
「今日は水曜だバカ、早く起きろ!」
べし、と頭を叩く。そこでやっと起き上がったマツリ。
「あぁ……んだここ」
「住居スペース……。私らは、確かアビドスに行って……」
「あー……倒れたやつ全員担いでアジトまで突っ走って……」
2人は閉口する。その先の記憶が無いのだ。
大方、アジトに着くなり疲労で倒れてしまったのだろう。団長への報告はちゃんとされたのだろうか。どちらにせよ、改めてしに行く必要があるが。
「ま、今日はアビドス終わったら非番だったし……寝るか……」
再び横たわるマツリ。
だが少しもせずに、またムクリと起き上がってオウカに向かって言う。
「……ファル子は?」
エリシオンのソルジャー
そもそも、戻って来れたのか?
「死んでは無いだろ、あのピンク頭もそこまでバーサーカーじゃない。」
「だと思いたいが」
「しかし、思ってた10倍は強かったなファル子。このまま仲間になってくれたらどんなに心強いか。」
「……だなぁ」
マツリは知らない事だが、オウカはF.A.が普通の人間でない事を知っている。
キヴォトスの外からやってきた人型兵器、ニケ。命を懸けて戦っていた彼女が、いくら強いと言えども命のやり取りをした事が無い少女に負けるとは思えない。
昨日の夜彼女の話を聞いていた時は半信半疑だった。が、あの洗練された戦いを見せられてしまっては事実だと納得せざるを得ない。
彼女は恐らく、カタカタヘルメット団の中では一番強い。束になっても勝てるか怪しい。
是が非とも正式に仲間にしたい。
とはいえオウカの目にはどうにも、F.A.は不安定に見えた。
人間と話している気がしない、人形の様な佇まいの彼女。しかしオウカには、それがまるで迷子の子猫の様に思えたのだ。
不安定な彼女の心に付け入る真似は避けたいなぁ……と、ヘルメット越しにため息を吐いた。
「もう戻って来てて、ウチの手伝いでもしてるのかもな。」
ありえる、そう笑ってマツリに黒いヘルメットを投げる。
「うおっと、もうちょい丁寧に扱ってくれよ」
「ファルを探しに行こうぜ。」
「……はいはい」
どっこいしょと立ち上がり、共にテントを出た。少し歩くと、黒いヘルメット達が活発に作業をしているのがあちこちで散見される。
「3番隊か」
マツリが面倒臭そうに言い、オウカも同じ様にため息を吐いた。3番隊に配属されている団員達の多くは思い込みが激しい性格で、1度こうだと思ったら言う事を全く聞いてくれないのだ。
「ん? あれは……」
「なんか盛り上がってんな」
出入口付近の方で、3番隊の子達が集まってちょっとした騒ぎになっているのが見えた。気になって近寄り、1人に声をかける。
「ちょっといい?」
「ん? 誰……ッお、オウカさん!?」
彼女は驚いた様に名前を叫び、その名前を聞いた団員達もこちらに向かって勢い良く顔を向けた。
「オウカさん!」
「噂をすれば!」
「マツリもいるじゃん!」
「おいなんだよ、キメェなぁ」
「落ち着け、何があった」
興奮した様子の集団を何とか沈め、何故そこまで興奮していたのか理由を尋ねる。すると、皆が我先にと口々に言った。
曰く、追撃に来たアビドスの手先を退けたと。
「おいマジか」
「本当なら危ない所だった、良くやったな」
アビドス高校の連中はまさしく少数精鋭という言葉が当てはまる。一人一人がヘルメット団ならばトップを張れる程の実力を持っているのだ。
そんな連中が、寝ている間に攻めてきていたかもしれないという事実に冷や汗が出る。
「あ、でもそいつなんか変なこと言ってて」
「ん、変な事?」
「オウカさんを呼べだとか、マツリを呼べだとか。タイマン張ろうとしてたんすかね?」
「…………ん?」
1人のヘルメットが言った事の内容。普通に聞いたならばなるほど確かに決闘の申し込み。だが、そいつがアビドス高校の生徒ならばおかしい。
あの連中が、自身らの名前を知っている筈がないのだ。
彼女達の前には皆等しくヘルメット頭であり、個ヶの見分けなんてついていない。というかそもそも、名乗ってすらいない。
2人の中で、ある嫌な予想が浮かんだ。
「……なぁ、そいつってさ」
「はい!」
「盾背負って、白のボディスーツに迷彩柄のハーネス着てたか?」
少しばかり震えた声。「違う」、なんなら「その人はあそこで物資運んでる」。そんな返答が帰ってくる事を切に願っていた。
だが、その淡い期待は瞬時に吹き飛ばされる。
「そうですそうです! 全く、変な奴でした。」
「変な事言って退却して行ったんすよ」
「なんだっけ……あ、そうだ。」
「ファル子は無事です」
「それだそれだ。まったく本当に変なやつだっ────」
響き渡る発砲音。突然倒れた仲間を見て困惑するヘルメット頭は、マツリの持つ銃の口から硝煙が立ち上っているのを見て撃たれたのだと気付いた。
「な、何を──」
「何を、だ?」
2発目。言葉を言い切る暇もなく地面に落ちる。
その声はまるで、決して触れてはならない逆鱗に触れられた龍の咆哮の様に、底冷えする声。
「私達を助けてくれた奴に」
少し音の違う銃声。
オウカがまた別のヘルメット頭に向けて発砲したのだ。
「頼りになる助っ人に」
「わざわざ恩返ししてきてくれた奴に」
何度も銃声が響き、気付けば集まっていた3番隊は残り1名。その頭に、オウカとマツリは共に銃口を向けた。
「「私達の
同時に発砲。撃たれた彼女はバイザーが粉々に砕け、意識を失う。
どんなに心無いことを言われたのか。彼女と話すにつれて何となく理解した、彼女の自己肯定感の低さ。不当を妥当と判断してしまう、価値観のズレ。
この思い込みの激しいヘルメット団達は、ただ帰ってきただけの彼女にどんな言葉を浴びせたのだろうか。あの、迷子の猫の様な不安げな顔を無表情の下に隠した彼女に。
オウカとマツリは、同時にそのヘルメットを脱いで叩き付けるように地面に捨てた。
「ほとほと愛想が尽きるよ、この集団は」
そう吐き捨て、2人は揃ってアジトから出る。
2人は捨てた。
この裏社会においての圧倒的なアドバンテージたる、数の力を。
1人の健気な友人と再び会い、今度は何の気兼ねなく話す為に。
☆
「ファルちゃん、その箱はここに置いてくれ」
「はい、降ろします。」
仕込みの材料が入ったダンボールを指定された場所に降ろす。かなりの重量があり、ニケの私はともかく柴大将には中々辛い重さだ。
街が営みを始める少し前、朝靄のかかる明朝で柴関ラーメンの裏手からおはようございます。量産型のソルジャーF.A.です。
「悪いなぁ、仕込みから入ってもらっちゃって」
「いえ、お気になさらず。これが今の、私のやりたい事ですので。」
「そうかい、嬉しいねぇ。無理だけはしないでくれよ!」
さて、あれから数日。本日は仕込みからラストまで頑張らせていただきますよっと。ニケには精神的な疲れしか存在しないので、柴大将のラーメンがあれば常時労働可能だぜ。よっ、人権バッファー柴大将!
え? どこで寝泊まりしてるのかって?
はは、寝床まで柴大将のお世話になる訳にはいかないじゃないすか。砂が防げそうな所ら辺で毎回5時間程スリープモードかまさせて頂いておりますとも。
ニケは体臭とか無いですからね。お給金が出次第寝床確保する予定ではありますけれど。
流石の私もホームレスは嫌です。
店内の厨房で、柴大将が大きな寸胴鍋をクソデカコンロに置いているのを尻目に、私はダンボールから材料を取り出し黙々と封を切ってキッチンに並べる。
ラードが入ったカンカンを缶切りで開け、入れやすいように全面を剥がす。
こっちは……醤油が入ったカンカン。対角線上に2箇所開ける。本みりんと書かれたボトルは蓋をパキッと開けて軽く締めておきます。
いやはや、朝から中々の重労働。これを大将はいつも1人で? 化け物かなんかっすか?
一通り作業が終わり、ずっと曲げていた腰を反らせる。
あ、ちなみに服違います。制服もらいました。
あのボディスーツ以外の服を着た経験が無かった為に少し手間取ってしまったけども、1度着てしまえば快適そのもの。圧迫感が無いのは違和感でしかないけれど、直に慣れるでしょう。
「ファルちゃん、それ取ってくれ」
「了解しました」
っと、大将さんがコンロの火をチャッカマンで着火し、スープを作り始めました。例のラーメンのスープ、それが出来る過程を間近で見ることが出来るたぁいい仕事だべ。
しかし、この食材や調味料の数々。アークならば幾らしたか分かりません。恐らくは天文学的お値段になること請け合いでしょう。
これが普通に買えてしまう……。ふむ、価値観の違いに我ながらドン引きです。
と、そんな内に同時進行でチャーシューを作り始めた事に匂いで気付く。あー、めっちゃいい匂いしてきた。
「米炊いといてくれねぇか? 終わったらモップかけといてくれ!」
「了解しました。何合炊きましょう?」
「あー……今日は木曜か、5合だな」
棚から米の入った袋を取り出し、擦り切って5杯を炊飯器の器に入れて水で研ぐ。数回繰り返し、濁りがそれなりに出なくなったら線に沿って水を入れて炊飯器にセット。蓋を閉めてボタンを押す。
ピロリンと軽快な音が鳴ったのを確認し、キッチンから出てモップを取り出します。
アークにいた頃なら、今の時間帯は何をしてたか……。出撃の為に銃の点検をしてたかな、少なくとも起きてはいたと思うけど。睡眠時間とかあんまり無かったしなぁ。
今は5時間もスリープ出来てるぞ、革命だ……! とはいえ、身体が長時間の睡眠に慣れて無さすぎてちょくちょく起きるけど。
モップがけもそこそこに、卓上調味料の補充やテーブル拭きをしているともうすぐ営業時間。柴関ラーメンは良く開店前から行列が出来る為、それなりに身構えなくてはならない。
……てか既に店内の匂いが腹に来る。
「よし、ファルちゃん! そろそろ店開けてくれ!」
「はい。ご案内を開始しますね。」
指示が下った為、出入口の鍵を開け、扉を開く。店外にはやはり行列が出来ており、それを横目に掛けられた札をひっくり返して『営業中』に切り替える。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ。」
そう言って店内に戻る。続く様に客がぞろぞろと店内へ入り、席へ座りあっという間に満席となった。
「すみませーん!」
「はい、ただ今お伺いします。」
「すんません」
「少々お待ちください。」
制服の裾を揺らしながら店内を行ったり来たり。慌ただしいんじゃボケェ! 急かすんじゃない!
「大将、柴味噌2柴ラー1です」
「あいよ!」
はい次! 私呼んだのはどいつだぁ!
「お姉ちゃん見ない子だね、新人さん? MomoTalkやってる?」
うるせぇ!!!!! ももとーく? ってなんだ!!!!
え? メッセージアプリ? 知らねぇ!! 私にとってのメッセージアプリはBlaBlaだ!!!!
「お疲れファルちゃん、最近更に物騒になって来たから気を付けて帰ってな。また明日!」
「はい、お疲れ様でした。大将もお気をつけて。」
大将に向かって一礼して店を出て夜道を歩く。いやはや今日も繁盛だった。例の猫さん──イルマと言うらしい──も私を気にかけて足繁く様子を見に来てくれるし、いい環境だなここは。
……私がこんな良い環境にいていいのかな。いや、ダメと言われても困るんだけど。もしこの世界にD-WAVEがあるなら……うん。帰るしかないのかな、元々この世界の住民じゃないし。
まぁ、いくら考えてもたらればだし考えるだけ無駄かな。よし、この話おーわり。
そういえば、最近治安が悪化しているらしいです。私のスマホは周波数が違うのか電波通じないので知らないっすけど。
いつものボディスーツに少し付いた砂を払い、盾を背負い直す。柴大将は日給でいいと言ってたけれど、これ以上の親切は私が爆散してしまうので断った。
故に、どっちみち私は給料日まで1文無しなのだよ。
お金が手に入ったら、寝床にスマホに服に銃に……うん。足りねぇな。
どっちみち傭兵業はした方が良さそうやんね。ヴ、ヴァルキューレ? って警察機関……アークでいうならA.C.P.U.みたいなとこがキヴォトス内の逃亡犯に賞金を懸けてるから、
あと……なんだっけ。昼に来た
てか、本当に生徒がキヴォトスの行政取り仕切っていたという事に驚いたね。もうね、アホかと。馬鹿かと。
大人が政治やってもアークみたいになるんだから、子供がやったらもっと酷い事になるに決まってるじゃないすか。
なんならアークより遥かに広いよねキヴォトス*1。信じらんねぇ。
それはいいとして。その生徒会長の失踪のせいか、発砲音や爆発音が結構多い。まぁ元気がよろしい様で結構でございますけれどね? 柴大将の店にまで危害加えたらマジで許さねぇからな。
しかしこの世界、ラプチャー以外にも無いもんがあるよね。
"人間の男"……いないよね、この世界。まったくどうなってる事やら。アンダーソン副司令官さんみたいな筋肉モリモリマッチョマンがいねぇ。
───ま、分からんもん考えてもどうせ分からんし良いか!
私は量産型なもんでして〜、特化型になれない程度の出来の悪い脳味噌ですからね〜(^^)
特化型の知り合いならもっとマシな回答が出来たかもなぁ。「これは多分…こういうことだと…思いまーす……」とかゲーム片手に言ってくれたかね。
もう会えないけどね、と消えかけの街灯に照らされながら笑う。帰る場所なんて無いけど、ひとまずいつも寝てる場所へ。
はぁ。
明日は何時からシフトだったかな。
……お、どっかで爆発起きた。銃撃も起きとるやんけ、ショットガンの音が一際大きいね。
どっかで聞いた事ある銃声……気の所為かな。
アビドスも治安維持組織が動いてないらしいから物騒だねぇ。ここの自治権を持ってるアビドス高校がやらなきゃならないけど、あの有様だし。でも良くやってるよ、あの子達も。
あ、そういやヘルメット。いつ取りに行けばいいんだろ。あの時はヘルメット団と一緒だったから、もう1回襲撃行った時に貰おうって思ってたけど今は違うし。行ったら行ったで撃たれそうだなぁ、あのちっこいのめっちゃ怖い。
曲がり角を曲がって路地に入る。この奥が私が寝泊まりしている場所だ。
と、奥へ入ると───
「あ?」
「なんだお前」
──イヤァァァーーナンカイルーーー!!!
「こんばんは。」
「お、おう…いや違う! 何の用だ? ここら一帯は今日からアタシ達の縄張りなんだよ、帰んな!」
なんやて。それは困る、もう暫く私はここで寝泊まりしたいんだけど。結構自治区中見て回ってやっと見つけた砂避けスポットだぞ、ここ以外で寝たら次の日には砂まみれだぞ。
放棄された家屋に這入っても良いんだけど、後からハイ犯罪でーす☆って言われても困る。
であれば、やる事はひとつ。背負った盾からショットガンを取り出す。
「へっ、やるってのかよ」
「来いよ、吠え面かかしてやる!」
「───ソルジャー
Q.なんで一般量産型のF.A.がニンフ知ってんの?
A.F.A.にキメラ量産型が登場するゲームを見せたゲーム好きでハッキングが得意なニケが教えてくれました
先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。
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男にするべき
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女にするべき
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おねにーさん(性別不詳)にするべき