量産型ニケ、キヴォトスに行く   作:ウィルキンソンタンサン

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アークにおいて身体のムチムチさと闇の深さは比例する
キヴォトスでは反比例する


6.住所は裏路地ってなんやねん

 

 

何回もの射撃音がそれぞれ重なり、時折爆発が起きる住宅街の道路。

 

「お、おい! 話が違うぞ!? アビドスならやりたい放題じゃなかったのかよ!」

 

「無闇に撃つな! 私に当たる!」

 

「クソッこのチビ強ぇ!?」

 

所々抉れた路面には、複数人の不良が倒れ伏している。意識を持ち戦闘を継続している不良達も、戦意を喪失しかけていた。

 

「この…舐めんなクソチビ──ガァッ!?」

 

彼女達は別に、すこぶる弱いという訳でも無い。むしろ、不良なりにそこらの一般生徒よりは強い筈だが……今回ばかりは、相手が悪かったと言う他ない。

何故ならば、今彼女らが相対している敵は───

 

「うへ、チビで悪かったね〜」

 

この学園都市キヴォトスにおいて指折りの実力者である、アビドス生徒会副会長……或いはアビドス廃校対策委員会委員長の小鳥遊ホシノなのだ。

 

ものの数分足らずで不良達は制圧。

残りの不良達が倒れた仲間を担いでどこかへと逃げて行くのを尻目に、ため息を吐いた。

 

「……はぁ。やぁっと不良も減ってきたと思ったのに、最近また増えてきたなぁ〜」

 

肩凝りが酷いや、と呟き肩を揉みながら歩き出すホシノ。が、その歩みは間もなく止まった。

 

「うへ、また銃撃戦〜?」

 

すぐ近くで銃声。また不良共が小競り合いでもしているのかと、方向を変えて気怠げに歩き出す。

 

「この銃声……」

 

聞こえてくる中でも、一際大きな銃声がどうにも引っかかった。音からして恐らくはショットガンだが、その破壊的な音から大規模な兵器か何かと間違えかねない程のそれ。

ホシノは、この銃声に聞き覚えがあった。まさか、と思いながら気持ち早歩きで現場へ急行。

 

T字路を右に曲がり、もうもうと硝煙混じりの砂埃が上がっている区画に目をやると───

 

「うへっ!?」

 

突き当たりの路地から激しい爆発音と共に人影が2つ分勢い良く飛び出し、そのまま向かいの石塀に叩き付けられた。

 

「な、なに!? なにが起きたのさ!?」

 

あまりに唐突な事に困惑しながらも、飛んでくる石塀の破片を咄嗟に展開した盾で防ぎショットガンを構えて路地へ目をやる。

 

すると、やがて砂埃越しに路地からゆっくりと見覚えのある人影が姿を現した。

 

「───戦闘終了。警戒を解除します」

 

街灯に照らされた彼女はその手に握られた盾を背負い直し、ショットガンを仕舞って辺りを見回し……そして、ホシノを視認した途端その動きを止める。

視線を悟られない様にする為か、何らかの機能がついているのか……いずれにせよ、その目に装着されたシルバーミラーのゴーグルによって瞳孔の開き具合や注意の先が視認できず、何を考えているのかは分からない。

 

だが、重心の動きに戦闘の意思が認められない事によってホシノはショットガンを下ろした。

 

「…や、ファルコン。久しぶり……だね?」

 

いや何故疑問形だ。と自身の動揺ぶりに内心自嘲していると、その上から凛としたよく通る声で返答が来る。

 

「お久しぶりです、ホシノ。そして、こんばんは。」

 

「あ、うん。こんばんは……」

 

何だろうか。別に間違ってはいないのだろうが、やはりどこかズレている。

相変わらずの形式通りな社交辞令的レスポンス。

 

およそ女子とは思えない程やっつけ感満載で雑に纏められた髪と、束ねきれなかったのか手を加えられず放置された太腿まで届く髪が風に揺れ、本人の性格からして明らかに第三者の手が加えられているであろうホシノの艶やかなピンク髪もまた同じ様に揺れた。

 

「…もう、ヘルメット届いてるよ。いつ取りに来るのかって、ノノミちゃんが首を長くして待ってる。」

 

「そうなのですか? それは申し訳ない事をしました。丁度、明日伺おうと考えていた所です。」

 

「分かった、明日ね。明日は自由登校だし誰がいて誰がいないのか分かんないから、おじさんが渡すよ。」

 

「承知しました、12時頃お伺いします。お手数掛けますが、よろしくお願いします。」

 

「気にしないでよぉ〜、おじさんが好きでやってる事だからさぁ」

 

あまり人と話している気がしない事から、まるでお人形さんと話をしている様だと内心うへうへ鳴く。そんな中、切り替えも兼ねて先程から湧いている疑問を彼女に問いかけてみた。

 

「それで、ファルコンはどうしてここに? ヘルメット団はどうしたの?」

 

その問いを口にした瞬間、彼女の鉄仮面の如き無表情が僅かに崩れたのをホシノは見逃さない。言い終わってから、あぁマズったかと口を噤んだ。

 

しかしてその問いの回答はやはり思った通りと言うか、聞かなければよかったと後悔の念に駆られる物。

 

「追い出されました。私の居場所は無いのだそうです。」

 

「……あ、そ。あの子達に言われたの?」

 

ホシノの脳裏に浮かんだのは、ファルコンを連れてアビドス高校に攻め入ってきたヘルメット団の中でも少しは"やる"様であった2人。彼女を残して去っていった際の口振りから、てっきり仲間として認めているものだと思っていたが──

 

「オウカとマツリの事でしたら、違います。あの方達に会うことは叶いませんでした。」

 

返ってきたのはそれを否定するもの。会えなかった、という事はホシノ達と別れて拠点に戻ったその日に追放されていると言う事だろうか。

ならばヘルメット団の特性上、彼女の事を知らない他の部隊の人間によるものと考えていい。

 

いや、追加戦力は全体に通達しとこうよ…。

とはいえ、もしかしたらファルコンの事について連絡をきちんとしていたのかもしれないが……あのヘルメット団だ、個々の情報伝達能力に関してはお察しというものだろう。

 

彼女はヘルメット団に関して"拾ってもらった"と言っていた事から、生徒ではなくそこらを彷徨う浮浪者…もしくは、その格好から考えるに退役軍人に類する者と見える。いずれにせよ、居場所を失っていた事には変わりないが。

推測が正しいのなら、この数日の間彼女は再びアビドスを彷徨っていたのかもしれない。

 

「それで、ここで何を? なーんで戦ってたのかな」

 

「寝床を占拠されていましたので。」

 

「……………寝床?」

 

「そこの路地ですが。奇跡的に砂が入り込んで来ない場所でして、あそこを使えないと困ってしまいますから。」

 

あっけらかんと返してきた彼女に、ホシノは思わず天を仰いだ。

やはり野宿である。

いたいけな少女が野宿をしている。こんな砂に侵された環境で、真っ暗な路地裏で寝ようとしている。

 

「え、えーと……そこらの空き家を使おうとは思わなかったの? ほら、どうせ誰もいないんだから」

 

「…? アビドスでは空き家に住み着くのは合法なのですか?」

 

「いや、違うんだけどさ……」

 

即レス。取り付く島も無かった。

そういう至極真っ当な思考回路を持ってるのならなんで襲ってきやがった。

しかしどうしてやろうか。多少の歪みはあれど、ホシノもまた義務教育課程を経た立派な人間。1度母校と後輩に危害を加えた様な奴だとしても、このまま放置というのは気が引ける。

別にアビドスに対して悪意を持っている訳では無さそうなのを見るに、単にギブアンドテイクなだけなのだろうし。

やはり野ざらしは見過ごせない。

 

いくらなんでもこんな裏路地で、ねぇ?

 

「ま、あれ以来シロコちゃんもセリカちゃんも1層訓練に励んでる事だし…授業料とでも思っとこうかな〜」

 

そう呟くと、なんの事やらと首を傾げるファルコン。そんな様相を見て、ホシノはやはりうへうへと鳴いた。

 

「空き家ひとつ、使っていいよぉ〜。たぶんどっかしらはインフラ生きてるから、探そう。」

 

「……いいの、ですか? ですが、私は──」

 

「いいよお〜、おじさんが許したげる。鍵は昔の名残でオートロックが多いけど、大半機能してないから壊しちゃっていいよ。……その代わり、もうアビドスで悪い事しないでね?」

 

「……了解しました、お約束致します。」

 

 

その後、あまり時間もかからずに電気水道ガスが生きている空き家を奇跡的に発見。その住所をメモに記し、後日書類を用意しておく旨を伝えて帰路に着いた。

 

暗闇に紛れて見えなくなるまでこちらに向かって頭を下げていたファルコンを脳裏に浮かべながら、大きくため息。

 

今までの問答から、ホシノは彼女の事を"善意を受け取る事が難しい人間"であると評価していた。対価の無い善意を差し出されると、これを異様なまでに避けようとするのだ。

故に、これを施しと思われ罪悪感を負わせ無い様に、対価を要求する。

 

家を1軒使う代わりに、アビドスを荒らさない。

狙い通り、すんなりとこの交渉は通った。

 

一見すれば人として当然の事を言っているだけ。それに彼女もこれ以上アビドスに害を及ぼすつもりは毛頭無かったのであろうが、やはり形としてあった方が安心するらしい。

元来のNOと言えなさそうな性格も相まって、彼女にとっては断れない、その理由も無い提案だっただろう。

 

人形みたいな彼女も、人間らしいところがあるじゃないかと顔を綻ばせる。

 

だがその顔は瞬時に無となり、歩みも止まった。

ホシノの脳裏にふと、とある黒い背広のいけ好かない大人が浮かんでしまったのだ。

 

相手の求めるものを与え、自分の目的も果たす。絶対に断れない提案。今の手法は、確か────

 

 

「……………最悪だ。」

 

上を見上げて、ボタンの様な小さな灯りを点している街灯に群がる羽虫を眺めながら、ホシノはそう吐き捨てる様に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Whooooooooooooooooooooo!!!!!

 

お家貰ったよぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!

ホシノさんマジ好きラブです一生ついて行きます。

 

脱浮浪者ですよやりました。なんてお優しい方なのでしょうかあの方は、ひと目見た時から内心般若だとか修羅だとかクロウだとか中央政府だとか散々こき下ろしてきましたが、その実菩薩様でございました。

 

目下の課題であった寝床の確保がこんなにも簡単に片付くなんて、まさに僥倖。

おい見ろよ、風に吹かれねぇしひんやりしないぜ! 雑魚寝しても寒くねぇぞ!

蛇口捻ったら水が出る! お湯も出る!コンロも火着くでおい!!!!

 

マイホーム……なんと素晴らしい…!

 

あ、でもやっぱり水道代とか光熱費とかあるよね…? まぁいいか、来月の給料次第だし考えても仕方がない。

長らく放置されていたせいかうっすらとホコリが積もっているが、ニケの前にはなんの効果も無し。落ち着いたら掃除をしよう、覚悟しとけよハウスダスト。

 

まぁパーっと風呂でも浴びようぜ、暖かいお湯が出るシャワーとかいつぶりだ。

 

 

 

 

さて、そんな訳で私の体内時計が2:30程を示す頃。家中を探索して発見した寝室のベッドに寝転がって部屋を見渡す*1。大きな窓のカーテンの隙間から射し込む月明かりに照らされたモダンな室内は、やはり目新しい。

アークの自室とか簡素なもんだったからな。私物はいくつか置いてたけど、打ちっぱなしのコンクリに四方固められて息が詰まりそうだった。

ホントにモノ扱いです、失礼しちゃうわ。これだから量産型はいけねぇ。

 

……そういえば、元の世界はどうなっているのだろうか。有無を言わさずニケを別世界に転送するラプチャーとか、冷静に考えたら脅威以外の何物でもない。飛ばされたのが私で良かった。

部下はちゃんと保護されただろうか。頼むぞカウンターズの指揮官、量産型とはいえ大事な部下だ。

 

しかし、あんなカスみたいな世界でもつい恋しくなってしまうのは何故だろうか。こっちでは色んな人に良くしてもらってて、恵まれてるけど……それでも、この世界にニケがいない限り私は独りなのだ。

友人も、部下も、指揮官も───二度と会えない。

あーあ、ホームシック…というかカントリーシック……いや、ワールドシック? 何それかっこいい。

 

はい寝る前大妄想終わり、切り替えましょうか。明日のTo Doは…えーと、まずアビドス高校でホシノさんからヘルメットを頂戴致しまして……その後は15時から22時まで柴関でおバイトです。働ける幸せを噛み締めましょう。

そういえば、明日新しいバイトの方が来るとかなんとか。「ファルちゃんは覚えが早いし優秀だから、先輩として教えてやんな!」と笑っていましたが……私に務まるのでしょうか。まだ始めて1週間程ですが。

 

────案ずるより産むが易し、ですね。なんとかなれー。

 

「ソルジャーF.A.(Falcon)、スリープモードに移行します。」

 

……おやすみなさい。

 

 

 

 

 

*1
ベッドからなにやら軋む音が聞こえたが気にしたら負け




NEW FLAVORのスチル…あれ、初めて見た時……なんて言うか……その…下品なんですが……下品なのでやめておきますね

先生は男にするべきか女にするべきか。それが問題だ。

  • 男にするべき
  • 女にするべき
  • おねにーさん(性別不詳)にするべき
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