Fate/SUPER Z   作:ねろんかえ沙流

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ついに来たぞ!みんなお待ちかね!最強サーヴァント孫悟空の登場だ!

 

「願いは叶った……ではさらばだ……。」

 

割れんばかりの轟音をあげながら巨大な神龍は七つの翠玉欠片(エメラルドボール)に分裂、七つの方角へと飛び去って行った。

 

そこで少女、岸浪ハクノの意識は起動し始めた。

 

「ハッ……。どういうこと……これって……。」

 

立っていられなくてその場で膝をつく。彼女は何故か学ランの帽子を被って学ランにスカートだった。

 

「まさか……またBBの仕業なの……?まったくいつものことながら……」

 

痛む頭に思わず座り込むと。少女は自分の手に三画の令呪が刻まれていることに気づいた。

 

「よぉー!オメェが神龍が言ってたマスターさまとかっちゅー偉いカミさまだな」

 

そこには、オレンジ色の道着を来た髪の毛の黒い長身の男が立っていた。

 

「あなたは……!(キラキラ)」

 

「ああ……!どうやらそうみてえだな!」

 

「あの有名な斉天大聖孫悟空……!」

 

「あり!?なんだオメェ、オラのこと知ってんのか?」

 

「え……その発言はちょっと謙遜しすぎて、軽く引くレベルっていうか。」

 

「はっはっはっはっは」

 

私物(しぶつ)のコミック本、全部の巻に鳥嶋彰先生のサインが入ってるレベルの『ポラゴンボール』オタクを舐めないで欲しい。ついでに言うと、GTは正当続編にして完結編。」

 

「なぁ!とりあえずオラ、ファイターのクラスっちゅーもんなんだけど、さっそくで悪い。契約してくれっかな。原始天尊(げんしてんそん)さまがどうにも五月蠅(うるさ)くってよ」

 

「わかった」

 

二人が拳を合わせるとほの(あか)い光が瞬いた。

 

「私は岸浪ハクノ。悟空さん聖杯の知識は得てますよね?」

 

「ああ。」

 

「じゃあ、さくっと今の状況を説明してほしい」

 

「んー……。そうは云ってもよぉ。変な龍人の赤ん坊がやってきてさ。色々教えてくれたんだけど、オラよくわかんねーって言ったら呆れて帰っていったきりなんだ」

 

「そっか。まぁ……。悟空さんが私のサーヴァントなら絶対勝つから、どうでも良いといえばどうでも良い。

ん……。ちょっと待って欲しい。

あれ……?聖杯戦争って架空の人物を呼べたっけ……?」

 

「架空ってオメェ、オラのファンじゃなかったんか?」

 

「え」

 

「オラ架空の人間なんかじゃねーぞ。あの斉天大聖孫悟空だからな。三蔵法師様といっぺぇ冒険したしな」

 

「つまり悟空さんは実在の人物で鳥嶋彰先生は本当の話を漫画として記録してたってこと?」

 

「ああ!」

 

「そんなバカな……つまり此処って……」

 

「その鳥嶋彰とかナントカっちゅー従者なら確かに覚えてっぞ。いやあーアイツおもしれえ奴だったなぁ……!」

 

「まさかの異世界転生。『ポラゴンボール』がリアル世界に存在したら宇宙の秩序的な物が色々おかしくならない?いったいこの世界は何なの……」

 

「まぁ、そうこまけえことは気にすんなって。さーて、これから他の相手6人と戦ってポラゴンボールを七つ集めねーとな……」

 

「あわわわわ世界がヤバイ!(錯乱)」

 

「よーし!マスターさまも見つけたことだし、これから、あの龍人の赤ん坊にもう一回会いに行って、詳しい話を聞きにいかねえとなぁ……。」

 

 

 

「何をくだらない小娘とごちゃごちゃ語り合ってるんだ?ナームルス」

 

とつぜん狼を思わせる銀髪の青年が現れて、思いっきり上から目線の態度と傲岸不遜な調子の声で詰問し始めた。

 

「ナームルスぅ?」

 

「そうだ。お前こそ彼の第三帝国の魔術協会トゥーレの遺産にして、最高の法師陰陽師(ほっしおんみょうじ)、ナームルスだ。この俺が忘れるはずがない。あの魔女リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの目をかいくぐって、はるばる極東にまでやってきたのもお前を探し出して回収するためだ」

 

「待てよ、オラは法師陰陽師(ほっしおんみょうじ)なんちゅー怪しい術使いになった覚えはねえぞ」

 

「フ……。どうやらこのゾクゾクと震えがくるほどの世界の異変はその娘が発端らしいな。おい、ナームルス!俺たちに言葉要らない。そうだろう?

 

──天帝勅令(てんていちょくれい)(わらべ)や童、この花咲くやと人ぞ問いしに。

 

水克火(すいこくか)!!!」

 

青年が術式を発動すると、這うような火炎が、悟空の身体を取り巻き焼き尽くそうとする。

しかし。

 

「ん?なーんだ、なにかと思えば!こんな子供だましでオラに勝てると思ってたんか。笑っちまうぜ!」

 

「ふ……。ははははははははははは。今のは禁呪だぞ?禁呪をまともに喰らって、肉体に傷一つついていない。やはりお前はナームルス以外の何物でもない。

貴様が一瞬、妙な事を言うから人違いかと思ったじゃないか。(いや)、人ではない、か。これは失礼」

 

「オメェ、ナニモンだ!!?」

 

「俺はヤン・アーベル・ヴェストハウゼ。魔術協会トゥーレ亡き後に復興されたノイエ・アーネンエルベの魔術師だ。

まあ、俺の名前など、三日も経てば忘れているさ、今のお前ならな」

 

ヤンの言葉を聞いて、岸浪ハクノは幼い少女のように、くすくすと笑う。感情がバグっているからである。

 

「ヴェストハウゼ?トゥーレ協会とかアーネンエルベとかドイツ人かぶれしてるのに、ヴェストハウゼって何だかオランダ人みたいでおかしいね」

 

これが銀髪の青年の怒りに少し触れたらしい。

 

「肉塊には少し黙ることを教えてやらんとな。小娘だからとて容赦はせんぞ。闇のラルヴァの恐ろしさを知れ……五大元素説を説く猿どもが。」

 

ヤンはサディスティックな笑みを浮かべてまたも呪文を行使する────。

 

ハクノは《悟空だったもの》を連れて逃げようとするが足が動かない。

 

なぜなら足元には……。無数の青白い赤ん坊の死体が取りすがっているから。

 

「いやああああああああああああああああ」

 

彼女は絶叫をあげながら徐々に意識を失っていき、切れた糸のように悶絶(もんぜつ)した。

 

「ふはははははははははは。こんな虚仮脅しで泣き叫ぶとは所詮は小娘だったか。心霊医術で内臓を抜き出してやろうとでも思っていたのだが。

まあいい、さっさとナームルスを回収するか」

 

その時、何かを察した悟空は突然、顔色を豹変させる。

 

「ちょっと待て……オレは確かにお前らの言うナームルスさまかもしれないがよ、()()()()()()にだって人権くらいはあるだろ?」

 

「ほう、面白いことを言うじゃないか。国家の庇護無く、法の網を搔い潜って逃げ回って来たお前のような存在に、人権が、(いな)、如何なる権利もないことくらい、身に染みてよぉく分かっているだろう?なあ、ナーメンロス(名無し)よ」

 

「はい、そうですか、と引き下がるわけにもいかねえし。オレはこのマスターと契約してしまったんでな……」

 

すると、

「ハアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!」

突如、苦し気な大声をあげて悟空は唸り始める。

 

大地が震えるかと思われる雄叫びの内に、みるみる悟空の身体がやや大柄な毛むくじゃらの猿人に変化し始める────。もはや、そこには一人の修羅がいるのみ。

 

草壁流法師陰陽術(くさかべりゅうほっしおんみょうじゅつ)はこうやって使うんだ……!!!」

 

今や我々の想像を超えた猿人と化した悟空の眼は悲しみをたたえて居る。そして悲しげな声で今持てるすべての力を振り絞る。

 

「──北帝勅語(ほくていちょくご)()かや、あかや。三宅(みやけ)(その)の其の()まりしに。

 

 

来い、長曽祢虎徹(ながそねこてつ)ッ!!!」

 

ナームルスと呼ばれた孫悟空が十本の刀剣を虚空から呼び出し、()()()()()()()()()()()()。十本すべてが、かつて長曽祢虎徹(ながそねこてつ)と人々に信じられ、また一切を切り伏せてきた逸物(いつぶつ)である。

 

「いくぞォ!!天稟(てんぴん)()りィィィ!!!」

 

十本の刀を(つか)んで、そのまま猿人悟空は突進していく。

しかし、ヤンはまったく動じるそぶりを見せず、この(たの)しき魔術格闘戦に応じる構えだ。その口元は少し緩んでいる。

 

「ニイェッツ、ニイェッツ、くらき森と黒山羊の同胞(はらから)。千の(はえ)の卵を(いつ)しむ老人。エーカ、ドヴィ、ナヴァ、シャル・シャ・シャド……」

 

白い手袋を嵌めたヤンの腕が前方に向けられると、幾何学的紋様が空間に浮かんで九層の壁となる。

 

この不可思議の壁はヤンの身体を守護し、悟空の猛攻をも(はば)む。

切りかかった悟空の十本の刀は分厚いゴムに当てられたかのように、ヤンの眼前、数十センチの所で止まったままだ。

 

「畜生!これならどうだあああああぁぁぁ!!!」

 

数歩の間合いを取って、悟空はさらに詠唱を始める。

 

「──北帝勅語(ほくていちょくご)無常性君(むじょうしょうくん)一切虚空世間(いっさいこくうせけん)()くを聞きて、(われ)阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)を生ぜり。无道(むどう)道人(どうにん)不必(ふひつ)にして(ひつ)なる信書(しんしょ)頂戴(ちょうだい)せり。

 

明々白光(みょうみょうびゃっこう)、!!!」

 

悟空も五芒星(ごぼうせい)の円陣を発生させ、そこから光の雪崩が圧倒的な暴力性を以てヤンに襲い掛かる。

 

「深淵の最下層のラルヴァをたっぷりと喰らうがいいィィ、ナームルスよォォォ!!!

イェ、イェ、千の()(はら)みし黒き森の山羊────」

 

ヤンは長い頌を述べて声を枯らした。そして若干の疲れの色を見せ始めている。魔術師の最大の弱点はこの長い詠唱時間にある。多くの魔術師が声を枯らし、のどを痛める。多くの詠唱するよ派の魔術師がこの苦しみに耐え抜いてきた。魔術に詠唱は必要がないって?でも恰好が良いだろう?ああ見よ、黒色の幽体の火が稲穂(いなほ)の如く束となり、十全(じゅうぜん)に捻じれてから弾け飛ぶように悟空の元に殺到する────

 

すると悟空は雄たけびをあげる。

「ウオオオオオアアアアアアァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!鞍馬天狗(くらまてんぐ)()まり()!!!!!!!」

 

猿人悟空はできるだけ長く大声をあげながら岸浪ハクノを抱えて空高く飛翔する。カッコいいぞ、孫悟空!その背中には大きな羽根があった。

 

時に、悟空には彼女を抱える為のもう二本の腕が在った。なんたること!見よ!()()()()()()()()()()()

 

猿人悟空は、バサバサと羽根を広げてこの何のにも阻まれることのない大空を滑空、遥か彼方まで飛んで行く。

 

「チッ逃がしたか…………。まさかナームルスの覚醒がここまで進んでいたとはな…………。まぁいいだろう。あいつにはナームルスとしての自覚がたっぷり残っていたようだからな。ククク」

 

猿人悟空が去って行った方角を見上げながら、ヤンは呵々大笑した。

「かの聖遺物にも例えるべき人造ホムンクルス。ヤツがこんなにも早く見つかるとは嬉しい誤算だったな……」

 

ヤンは愉快そうに一人ごちると、《黒龍饅頭》と黒い文字で印字された紅い箱からキツめのタバコをくゆらせた。

 

タバコの白い煙の先には、暗鬱たる闇夜がどこまでも広がっていた。




最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
最終話まで完成させるから(多分)、次回もぜって見てくれよな!
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