僕はIS原理主義者なんだ   作:チキンうまうま

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「…なんで姉さんは【白騎士事件】なんて起こしたんだろうな。」

 

 僕たち2人が両親から離れて暮らし始めた頃、箒は窓の外を眺めてそう言った。それに対して僕は出回り始めたISについての雑誌をパラパラとめくりながら答えた。

 

「さあ?案外世界にムカっ腹立ったから、みたいなアホみたいな理由じゃない?ねーちゃん頭いいけどアホだし。」

「…彗も理由は聞いてないのか。」

「聞いたけどはぐらかされたね。」

 

 その言葉は暗に『お前は私より篠ノ之束(姉さん)と仲が良かっただろう』と言っている。そんな妹に肩をすくめて、僕は読んでいた雑誌をパタンと閉じた。

 

「…合ってるかはさておき仮説は一つあるよ。」

「なんだ?」

「まあこれは姉さんの悪性を信じた碌でもない仮説なんだけどね。」

 

 僕は指を立てて、まるで授業をしてるみたいに箒に尋ねた。そんな僕の様子に箒の顔が不可解だ、と告げてくる。

 

「問題です。技術が発展するのはいつでしょうか。」

「…急になんの問題だ?」

「ふせいかーい!正解は戦争でしたー!」

 

 キャッキャっとはしゃぎながら告げた結果、箒の顔が不機嫌に染まる。ごめんて。

 

「ごめんって怒らないで。」

「…ほんとに彗のそう言うところは姉さんに似ている。」

「いやほんとやめて?謝るからさ。」

 

 『姉さんに似ている。』これほど自分の身を省みなければならないと思わされる言葉もそうないだろう。

 

「でもまあ割と的を射てると思うんだよね。毎度毎度戦争のたびに人類は爆発的に技術を進歩させてきた。そしてもし次に世界大戦が起こるとするなら、その主役は間違いなくISだ。だって2000発だっけ?のミサイルに対処できるくらいなんだからさ。」

「‥ISでも同じことが起こると?」

「可能性は高いよね。それともう一つ。」

 

 これはだいぶ穿った見方ではあるんだけどね。そう言って僕は続けた。

 

「次の世界大戦が起これば放射能やらなんやらで地上に人が住めなくなる、ってのをねーちゃんから聞いたことがあるんだ。」

「…それは私も聞いたことがあるな。」

「なら話がはやい。なら地上に住めなくなった人類はどこで暮らすようになるんだろうね?地下かな?海中かな?ならそこもダメになったら?」

 

「─その時は()()かな?」

 

 箒が顰めっ面で僕を見た。後で聞くと、この時の僕は随分ねーちゃんに似てたらしい。

 

「…ISというエサをばら撒いて戦争を引き起こして、人が人をたくさん殺して殺されて、全部失ってたくさんの選択肢が消えて、人類が地球を捨てて宇宙に行かざるを得なくなって。それで初めて姉さんの夢は、ISで宇宙にいくっていう夢は叶う。そう思ったんじゃないかな。」

「…そうか。」

「まあ思いつきだけどね。」

 

 ねーちゃんの内心なんてわかるわけないし。僕は笑ってそう言った。

 

「でも姉さんならやりかねないのが怖いな。」

「それに関しては僕もそう思うよ。」

 

 そう言って僕はまた雑誌を開いた。そんな僕にため息をついて、箒もガラス越しに外を見た。

 まだ明るくて、星は一つも出ていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園。そう呼ばれる学校の職員室で1人の女教師が大きなため息をついた。周囲の教師たちが心配するように覗き込んでくるほど、それはそれは大きなため息だった。

 

「はあぁぁぁ…なんなんだ今年は…。」

 

 そう言って女教師─織斑千冬は頭を抱えた。その様子に隣のデスクに座っていた後輩にして同僚、山田真耶が不安そうに尋ねてくる。

 

「先輩…大丈夫ですか?」

「…大丈夫だ。大丈夫、のはず、だ。」

 

 グリグリとこめかみを揉み、頭を振りながら千冬は答えた。外見通りにクールビューティーな彼女を苦しめるものはなにか。

 

 それは千冬の弟、織斑一夏を起因とする一連の騒動であった。

 

 本来ISというものは女性にしか起動できない。何でかは知らないがそれが現在の常識であり、ISの登場以降その法則が破られたことはなかった。

 

 が、その法則を一夏はぶち破った。何でかは知らないが受験会場を間違え、IS学園の試験会場に迷い込んだ一夏がISを起動。まさかの事態に世間は大騒ぎになり、2人目を探すべく日本中、いや世界中で検査が行われた。

 

 そしてまさかの2人目が発見された。それも割と見知った顔が。

 

 要人保護プログラムのせいで名前が変わっていて、ついでに年月が彼を子供から青年に変えていたが、千冬にはそれが誰なのかがすぐにわかった。いや別にそんな仲が良かったというわけでもないのだが。

 

 【篠ノ之 (けい)】。世界で2番目にISを起動させた男はISを作り上げ世界を一変させたた天災にして千冬の親友、篠ノ之束の弟だった。

 

(マジでふざけるなよあいつ…!今度は何をした…!)

 

 きりきりと痛む胃を抑え千冬が呻く。一夏はまだいい。自分と同じ境遇の、特殊な身の上だからだ。でも、彗は違う。

 

 千冬は、かつて彗がISを起動できなかったのを知っている。

 

 最初にISができた時、ぴょこぴょこと跳ね回る彗がISを起動しようとして、でもできなくて、拗ねて泣いていたのは今でも覚えている。その後束と2人がかりでどうにか宥めたものだ。

 

 そんな彗がISを起動させた。これは確実に束が関わっている。千冬はそう結論づけた。というかそうとしか考えられなかった。

 

(ただでさえ箒が入学するから警備を強化しなければならないというのに、そこにハニトラ対策と女尊男卑過激派の対策もしてさらに全員の担任をしろだと…!?この学園は私を過労死させる気か!)

 

 世間では世界最強(ブリュンヒルデ)と名高い彼女も一皮剥けば24歳の、まだ全然若手と言っていい1人の人間であった。そんなどえらい無茶振りをされた彼女はぎりりと奥歯を噛み締め、親友の顔を思い浮かべる。

 

(次に会ったら覚えておけよ束ぇ…!)

 

 思い浮かべた親友()は殴りたくなるほど無駄にいい顔で笑っていた。

 

 





「いやなんでけーくんIS起動させてんの?意味わかんないんだけど」
 ─某天災

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