魔法先生ロボま!   作:カリドーン

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村とE.G.O

アリナにとってこのウェールズの村は居心地の悪い場所であった。理由は3つ存在した。

 

「ネギの魔力量は凄まじいな、まだ3歳だというのに大人よりも多いぞ……この調子ならナギ・スプリングフィールドと同じ『偉大な魔法使い(マギステル・マギ)』になることも夢じゃないな!」

「それに比べてもアリナはどうして………。魔力量どころの話ではない、魔力がそもそも無い。一体どうしたものか……」

「もしかしたら魔力がまだ無いだけで成長に連れて増える………のか?」

「知らんよ……どうしたものかねぇ」

 

1つ目はアリナが一切、魔力を持っていないことである。魔力が無いのは魔法使いにとっては致命的であり、魔法が唱えられないどころか魔力による肉体の強化などの様々な能力の行使がは可能である事を指す。英雄の娘としてはあるまじき状態でもあるため、一部の村人の間では実の娘ではなく養子である

のでは無いかと言われていた。前世は裏路地で産まれ、家族どころか自分の名前すら知らなかったアリナにとって会った事のない父親と血が繋がっているのかどうかは心底どうでも良かった。しかし、3歳でまだ物心が付いていないだろうと思い込み、本人を前にこんな会話がされる方が多々あり、くだらない憐れみや失望を負けてくる相手の顔面を陥没させたいのを我慢するのであった。

 

「酒が飲みたい?……ジュースで我慢しろ」

「あぁー!?何してるのアリナちゃん!そんなの吸っちゃダメよ!!」

「この本はまだ早いよ、せめて20歳になってからよ」

 

2つ目は酒、タバコ、女が愉しめないことである。流石に3歳児にそんなものを与えないのは人としては当然であり、『偉大な魔法使い』を目指す魔法使いである村人がそんなことを許すわけもなかった。アリナからすれば17年も我慢しなければならないという事でもあるため非常にショックであった。これを機に全てやめてしまおうかなとポジティブに捉えた事もあるがそう考えた次の月にはそんな考えが頭から消え失せていた。浴びる程に酒を飲みたい。肺いっぱいにタバコの煙を吸い込みたい。女体を生まれる程に感じたい。煩悩は魂にこびりついて離れなかった。そして、最後の3つ目の理由は

 

「ただいまネカネちゃん……あれ、ネギはどうした?」

「おかえりアリナ。それが川に飛び込んで風邪ひいちゃったのよ……あと私のことはお姉ちゃんって言いなさいっ!」

「また飛び込んだのかあいつ?あ、あとネカネちゃんの方が可愛らしい響きで好きだからやだね」

 

兄の存在である。兄であるネギとアリナは非常に相性が悪かった。父を憧れの対象として見ているネギと父に無関心のアリナ。活発なネギと(女関係以外は)大人しいアリナ。魔法の才能に溢れたネギと全く魔法の才能が無いアリナ。二人の間には自然と溝が出来ていた。とはいっても双方の視点から見た時に相手に対する感情は全く違うものであった。ネギにとってアリナはよく分からない存在であった。素晴らしい魔法使いであり英雄でもある父のことに興味を持たず、寧ろ面倒くさそうにすらしている妹に対して哀れみや怒りなどの様々な感情をネギは包括していた。対するアリナはネギに対し、全く興味を持っていなかった。そもそも血の繋がりというのが良く分からないのがアリナであった。前世に血の繋がりと呼べるものは無く、今世でも兄しかいない。そんなアリナだったため血の繋がった家族より仲の良い他人と共に過ごしたいと考えることは自然でもあった。もし仮にネカネとネギのどちらしか助けられないとしたら悩む事なくネカネを救うだろう。

 

「しっかし、自分がピンチなら父親が来てくれるって本当に思ってるのかね……ピュアというかなんというか……」

「………ネギはまだ幼いから『死』というものが分かっていないのよ。3歳だものしょうがないわ」

「………そういうものか……」

 

アリナからすれば『死』が知りたいのであれば裏路地にいれば否が応でも理解できるものであった。遠い場所に行って二度と会えないなんて説明を受けた時は面を食らってしまったくらいであった。そんな生優しいお花畑な事を言っていれば裏路地で血のシミとして生涯を終えていた。

 

「アリナ……ネギとは仲良く出来ないかしら?」

「別に仲良くしてもいいけどそもそも合わないんだよね。まあこればっかりはしょうがない」

 

この村にいる限りアリナはネギと共に『英雄の子供達』としてセットで見られるしかない。これでそれなりに気が合う相手なら良いがネギとは合わない。とっとと村を出てお互いの人生を歩むのが二人にとって得策であると考えていた。

 

「ネカネちゃん今日のご飯何?お腹がぺこぺこだよ」

「もう!……今日はシチューよ」

「おお!いいねぇ、ネカネちゃんのシチューは絶品だよ」

 

ネギ相手とは違い、アリナはネカネを非常に気に入っていた。美味い飯を作ってくれるし性格も良いし何より可愛らしい。自分が金を稼げるようになり、甲斐性ができたら嫁に欲しいなと思うくらいには気に入っていた。

 

「いただきまーす」

 

アリナはネカネの晩飯に舌鼓を打ち、お替わりをした後、シャワーを浴び、布団に入り惰眠を貪った。これがアリナの夜のルーティンである。裏路地の生活に比べればここは天国と見間違う程に素晴らしい生活であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行ってきまーす」

「行ってらっしゃい、夜になる前には帰ってきてねー!」

 

早朝に起きた後、朝食を食べるとアリナは外に出る。最初の頃はネカネも心配して止めていたのだが、大した怪我もしておらず問題も起こしてないので許可を出すことにした。何をしているかは知らないが恐らく釣りか虫取りだろうとネカネは推測していた。家には年季の入った釣竿と虫取り網があるのだ。

 

「それじゃあ今日も試すかMimicry(ミミック)

 

アリナが村の近くの森の奥深くまで行くと誰もいないのを確認した後、一言唱えた。するとアリナの身体の上に大きな目や口のついた赤い肉塊のような防護服が付き、右手には赤を基調として幾つかの骨や目のような器官が付いた大剣が現れた。

 

「まさかL社の装備や防具を自由に出せるとは思いもしなかったな……魔法が使えないと知った時はちょっぴり無念だったがやっぱり私にはこっちの方が性に合う」

 

前世、アリナのいた会社では幻想体から抽出した武器や装備を職員は付けることが出来た。幻想体から抽出された武器や防具の総称は『E.G.O.』と呼ばれ、会社に様々な利益をもたらした。幻想体から抽出した武器や防具は幻想体の危険レベルに比例し、一度自由を許せば国一つ滅ぼせるらしい『ALEPH』クラスの武器は非常に強力で非常に危険なものであった。そんなE.G.Oをアリナは自由に取り出せるようになった。前世ですら管理人がどのE.G.Oを決めていたというのに今世では自分の意思で自由に選べるというのは心底心躍ったものである。

 

「うーん、やっぱりこの武器が一番しっくりくるなぁ……一番使ったからかな?まあ、今の体じゃ一振りするのも大変だし鍛えるかな。少なくとも女の子をお姫様抱っこ出来るレベルには早急になりてぇ」

 

そういうや否やアリナは大剣を素振りし始めた。ネカネは遊びに行ったと勘違いしていたが実際は修行、肉体造りに近しいものであった。いくらE.G.Oが強くとも自分の体は今は3歳の子供のものである。英雄の子供という難しい立場にいるということは理解していたためなるべく早く強くなることをアリナは望んだ。

 

森の中は長時間風を切る音が聞こえた。




『Mimicry』
武器も防具も優秀
武器はダメージ分の25%回復
防具は高いRED耐性
タンク役にぴったり
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