バズり女王なのに俺の声にだけフニャるひよの先輩   作:茉森 晶

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第25話 凸凹探偵 ガオー&ちづ

 

 

     *          *

 

 

 ようやく騒がしさから解放され、陽代乃は店の外で鷹也と向かい合う。

 

 

「私、気にしてないから、正直に言ってくれていいんだけど……ちょっと嬉しかったりした?」

 

「そ、そんなことないですってば!」

 

「やっぱり、あれくらいの身長の方が……とか思わなかった? ちっちゃくて可愛いし……並んでバランスいいのかな~、なんて」

 

 

 普段は本当に身長差のことなど気にしていない陽代乃だが、ツグミのアタックは思った以上に深層の不安を引き起こしていた。

 

 

「先輩……ちょっと怒りますよ?」

 

「うっ……わ、私、こんなこと言うつもりじゃなかったもん! でも、気になっちゃったんだもん!」

 

 

 泣き出しそうな声で、腕をパタパタと羽ばたかせる。

 

 今は男子のような見た目なのだが、幸い、誰もふたりを見ていなかった。

 

 

「身長差のこと、『気にならない』と言えば嘘になります。けど、先輩が俺を好きでいてくれる気持ちを信じてるから……隣に立てるんですよ」

 

「そ、そうだよね。わかってる。わかってるはずなのに……ごめんね」

 

「知り合って、まだ数日ですもん。ちゃんと信じさせられないのも仕方ないけど……」

 

 

 今、傍目には【男同士】。

 

 手を握るわけにはいかないので、陽代乃に向かって鷹也は手のひらを上げて見せた。

 

 陽代乃は『???』という顔をしていたが、鷹也が手のひらをポンと押し出すようにジェスチャーするのを見て、同じように手を上げ、その手にハイタッチする。

 

 

「とにかく今は一緒に過ごす時間が大事だと思うので。これから、たくさん一緒にいてくださいね」

 

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

 

 

 ようやく陽代乃の落ち着きが戻り、鷹也はホッと胸をなで下ろす。

 

 そこで初めて他のふたりの姿を探すが、先に出たはずの千鶴&雅桜は見える範囲にいなかった。

 

 

「あれ? 千鶴と雅桜さんは……ん、LIME(ライム)?」

 

 

『あとは若いふたりに任せましょう。おほほほほ』

 

 

 スマホには、そんなメッセージが表示されていた。

 

 

(もっと若いのが何言ってんだか……。千鶴、最初からそういうつもりだったのか?)

 

 

「先輩、こう言ってますけど……どうしましょうか」

 

「えっ? うそ、千鶴ちゃん帰っちゃったの? がおー氏は……なんも連絡ないんだけど」

 

「気を回してくれたってことですかね。まぁ元々、兄妹付き添いのデートが不思議なイベントだったけど」

 

「えっ? えっ? 今からふたりきりデートってこと? 待って、心の準備が……!」

 

 

 ストリート系のイケメンが、うろたえながら頭を抱える。

 

 陽代乃のポンコツさを少しずつ肌で感じ始め、鷹也は少し嬉しくなっていた。

 

 

「ひよの先輩、とりあえずブラブラしましょうか。せっかくだし、デートらしく行きましょう」

 

「は、はいっ! デ、デートらしく……んむむ」

 

 

(まぁ、周りからは男子ふたりで遊びに来てるように見えるんだろうけど。元々、それが今日のコンセプトだもんな)

 

 

     *          *

 

 

 少しだけ時を戻し、鷹也たちが【はいすぴーど・えすけーぷ】から出てくる数分前。

 

 

「おい、引っ張るな、小埜千鶴。何だ、そんなに急いで」

 

 

 千鶴は雅桜の手を引きスタスタ店を出ると、向かいの店と店の間の路地に入り、立て看板に身を隠した。

 

 

「あ、ふたりとも今出てきたね。雅桜さん、ちょっと目を離さないように見といてください」

 

 

 千鶴はそう言って、フワフワヒラヒラしたゴスロリ服が汚れないようにしゃがみ込み、袋からスマホを取り出す。

 

 

「何なんだ一体。どうする気だ?」

 

「今から普通のデートしてもらって、それを尾行するんすよ」

 

「尾行? 何のためだ?」

 

「またストーカーみたいなのが来たら、雅桜さんがやっつけなきゃだし。こないだは『何とか戦えた』ってことになってるけど……ちゃんと弱いんすからね、ウチの兄」

 

 

 メッセージを打ちながら、千鶴はナチュラルに兄をディスる。

 

 

「俺は元々そのつもりだったが。ともに行動した方が確実であるし、尾行する必要などないだろう」

 

「妹やら兄やらが一緒でいいわけないっすからね。デートっつったら、ふたりきり。アンタ、そういう経験ないんすか?」

 

「なくて悪いとも思わんが。それなら、お前はあるということか?」

 

「ないわ! アンタは何年も多めに生きてるから、多分あるだろうと思ったんすよ」

 

 

 お互い、人付き合いが下手そうな者同士、恋人いたことないのを張り合う。

 

 そんなふたりだったが、それぞれ兄と妹がお付き合いすることになり、少し変化はあるようだった。

 

 

「おにーはヒドい目に遭ってんすからね。これからはハッピー展開だけでいいんすよ」

 

「まぁ、それは認めてやるが…………おい、陽代乃たちが歩き出したぞ」

 

 

 高身長さわやか眼鏡男子とピンクメッシュのゴスロリ娘。

 

 かなり目立つ探偵コンビのミッションが今、スタートした。

 

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