バズり女王なのに俺の声にだけフニャるひよの先輩   作:茉森 晶

35 / 37
第35話 おっぱいホイホイなの?

 

 

     *          *

 

 

「あひゃ~~~! ヤバヤバのヤバ! 申し訳なさすぎる!」

 

 

 鷹也のメッセージに、陽代乃はベッドの上でゴロゴロと転げ回っていた。

 

 

(こっちが『好きだよ』って送ろうとモタモタしてたら、先言ってもらっちゃった! こういうの、男子の方から言ってくれるのもモテ属性なんじゃないの~っ?)

 

 

 長い脚が柵に当たり、ゲシッと大きな音&『フギャッ!』と間抜けな悲鳴が上がる。

 

 

「いったぁ……! やっぱ私、ポンコツなんだなぁ……」

 

 

 痛みで我に返り、スネをさすりながらスマホ画面をタッチする。

 

 

『嬉しい! 私も大好きだよ! ゆっくりデート、近いうちに計画しようね!』

 

 

「よし……っと。あ~う~……もっとお話ししたいけど、ただでさえ感情重めの気絶しまくりヤバ女だし。節度あるところを見せなきゃな……」

 

 

 お開きへの言葉を打とうとする指が、ふと止まる。

 

 

「あの服屋の子、若王子ツグミ……だっけ。本気で鷹也くん狙ってたよね……」

 

 

(そりゃそうだよ……なぜか身長のお陰で気づかれないだけで、めちゃカッコいいんだもん。まぁ、こんな嫉妬深くわーわー言っちゃうような(わたし)だし、他の(ひと)に今まで見つからなかったのはよかったのかもしれないけど…………ハッ?)

 

 

 グルグルと思考を巡らせていたが、慌てて(かぶり)を振る。

 

 

(身長低いのが『よかったのかも』なんて……差別する人と同じになっちゃう。うう……自己嫌悪だぁ)

 

 

 バチンと頬を一度平手打ち。

 

 その後、すごい勢いで文字を入力し始める。

 

 

『私、どんな鷹也くんでも好きになるからね! もし言いづらい秘密があったとしても、ちゃんとハナシ聞くから!』

 

 

『嬉しいですけど、急にどうしたんですか?』

 

 

『どうもしないけど! もっと鷹也くんのこと知りたいと思ったから』

 

 

『わかりました。秘密って秘密もないんですが、思いついたら相談しますね』

 

 

(う~ん……やっぱ不自然だったかなぁ?)

 

 

 悩める恋愛初心者は、堂々巡りの問答へ。

 

 

『なんか、ごめんね。一気に言いたいこと言って。じゃ、私もお風呂入ってきまーす』

 

 

『はい、ごゆっくり』

 

 

 スタンプで締め、陽代乃はスマホをベッドに放ると、しばし放心状態に。

 

 

「ほんと、ずっとおたおたしてるなぁ。恋人同士の自然な会話……わかんないよ~!」

 

 

     *          *

 

 

「先輩……やっぱ気を遣ってくれてる感じかな」

 

 

 湯船の中、さすがに少しのぼせてきた鷹也。

 

 

(『一ファンでもある』なんて念押して、ちょっと説教くさかったよな。それに……逆の立場では、俺も同じなんだから)

 

 

 湯の中から立ち上がり、立ちくらみでよろける。

 

 

「俺も……もっとしっかりした男にならなきゃ。Yo!tubeの方も再開しないと……」

 

 

 まだ少しクラクラしながら、浴室の引き戸を開ける。

 

 その時、ちょうど脱衣所入口のドアも開いた。

 

 

「え…………きゃあッ!!」

 

 

 千鶴(ゴスロリのすがた)は一瞬フリーズし、すぐに悲鳴を上げドアを閉めた。

 

 

「もーッ! 見せてんじゃないよ!!」

 

「み、見せてないわ! 被害者は俺だろ!? 男性差別反対!」

 

 

 理不尽な抗議に言い返しながらも、千鶴が『きゃあッ!!』という声を上げたことに違和感を覚える。

 

 

(こんな状況が久しく無かったけど、少し前ならもっと子供っぽい反応だったよなぁ。うーん、ヘンな感じ……)

 

 

「千鶴、今帰ってきた? 遅かったじゃんか」

 

 

 そのまま台所へ向かおうとした千鶴は足を止め、声を(あら)らげる。

 

 

「不良なんだから、これくらいフツーだっての!」

 

「最近は物騒なんだから、マジで気をつけてくれよ。誰かに追いかけられたりしなかったか?」

 

「うっさいなー……デカい細マッチョ男が送ってきたから誰も寄ってこないってば」

 

「あ……雅桜さんと一緒だったのか? じゃ、今まで……」

 

 

 話している途中で、ドスドスと足音が遠ざかっていく。

 

 誰得な兄のラッキースケベを受け、千鶴は唇を尖らせながら洗面所代わりの台所へ。

 

 

「くそ……見られたのは俺の方なんだぞー」

 

 

     *          *

 

 

「はぁー、最悪。なんであんなジャストタイミングなんだか……」

 

 

 台所で手洗い&うがいをし、千鶴はなんとか鼓動を落ち着かせる。

 

 

(3年ぶりくらいに見たかも。あの時も、まったく同じ感じで同時にドア開けたっけ)

 

 

 大きく溜息をつき、グラスに注いだ牛乳を一気飲み。

 

 兄妹そろってミルク教を信仰しているようだった。

 

 

(こっちの裸見られたのは……1年前くらいだっけか。どこの兄妹でもあるあるだろうけど……やっぱ腹立つな)

 

 

 ぐわし、と、自分の胸を掴んでみる。遠い目をする。

 

 

(服屋の店員……ヤバかったな。陽代乃ちゃんもデッカいしなー。どーなってんの、ウチの兄。おっぱいホイホイなの?)

 

 

 ちなみに『牛乳で胸が育つ』という医学的な根拠も、残念ながら無いのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。