皆様が思い描く神崎さんを、原作の神崎さんを崩さぬよう頑張りますので生暖かい目で見守っていただけますと幸いでございます。
ということで急ピッチで拵えました神崎さん回になります。
杉野君が対先生弾ボールで暗殺する同時刻、暁君の登校中のお話です。
よしなに。
黄色いの、もとい殺せんせーのブチ切れ真っ黒表札パクリ事件から数日(表札は綺麗に手入れされた状態で元に戻されていた)
ワシ…俺は今お気に入りの曲をお気に入りのヘッドフォンで聴きながら校舎までの山道を登っている。一人称が定まらんわい…
ちなみに今聴いているのはサックス四重奏「遊戯」、お気に入りの曲であり苦しめられた曲である。あれはまだ俺がE組になる前、吹奏楽部に所属していた時だったな…
「あ、おはよう渡辺君」
アンサンブルコンテストでこの曲をやる事になってとにかく難しいのなんの。連符がとにかくきつい。決まればとてもオシャレでかっこいい。アルトとテナーのハモリといいバリサクの重厚感といいとにかくオシャレである。もう1度吹奏楽部に戻りたい気持ちがあるがE組は部活動禁止なんだとか…部活をやっている暇があるなら学業に専念してとっとと戻ってこいと、まあ一理ある。
「…?渡辺君?」
そういえば渚とは吹部で仲良くなれたんだったな。ずっと女の子だと思っていたっけなあ…
「……えいっ」
「どあっ!?」
突如後ろから衝撃を受ける。空襲か?
後ろを振り返ると少し不機嫌そうに頬を膨らませている黒髪長髪の大和撫子、我がクラスのマドンナ的存在。神崎さんがいた。曲に夢中で何も気付かなかった。慌ててヘッドフォンを外し彼女の方へ向き直る。
「お、おはよう神崎さん…すまん、曲に夢中で何も気付かなんだ…」
「ふふ、おはよう。何聴いてたの?」
一転笑顔を見せる神崎さん。やはり彼女はクラスのマドンナという説得力がすごいな。見れば見るほど引き寄せられるこの力。日本人みんな好きじゃろ、黒髪長髪。風でひらひら揺れるこの長髪。絹じゃよ絹。
「ああ〜…サックスの曲なんだけど、聴いてみるか?」
そう言いながらヘッドフォンを首から外し彼女へ差し出してみる。これで断られたら結構ヘコむよね。
「サックス?あ、渡辺君って吹奏楽部でサックスやってたもんね。ちょっと聴いてみようかな。」
神崎さんは笑顔でヘッドフォンを受け取って耳にあててくれた。よかった断られなくて。孫におもちゃを買ったのに要らないと言われた記憶がフラッシュバックしそうになった…やっぱりめんこは古かったか…
携帯に表示されている再生ボタンを押す。音量は大丈夫だろうか。
「……」
沈黙。まあ沈黙。神崎さんは瞳を閉じ真剣に曲と向き合ってくれているようだ。正直少し緊張を覚える、自分の好きな曲だからこそ、この、審査されているような感覚。アンサンブルコンテストで覚えた緊張感と少し似ているような気がする。神崎さん審査員だったのか…
立ち止まり曲を審査して頂き数分、神崎さんは目を開けヘッドフォンを外した。
「…どう、でしたかね……」
「…うん!すごくいい曲だったと思うよ。とってもオシャレだったし、かっこよかったかな。」
好印象。安心した、自分の好きな曲を人に勧めてその人にも良いと感じてもらえるこの幸福。自分が作曲したわけでもないのに少し照れくさい。
「気に入っていただけたようで良かった。遊戯っていう名前の曲だから、また家に帰ったらゆっくり聴いてみてくれ。」
「ふふ、ありがとう。渡辺君っていつもこのヘッドフォンつけてるよね。音楽好きなの?」
「好き…好きだな。音楽は良い。聴くだけでその世界へ誘ってくれる。辛い時も苦しい時も音楽を聴けば気分が上がる、音楽は日常を豊かにしてくれる。」
この世界に転生してから発見した、音楽は素晴らしいものであると。転生前は音楽などなんの興味も無かったがな…
生前できなかった事をやってみようと決意し手当り次第に色々と試して見た。やったことないスポーツを見よう見まねでやってみたり、絵を描いてみたりした。その中で1番ピンと来たのが音楽だった。オーケストラを最前席で見た時の感動は今でも忘れない。音楽とはこんなにも人の心を動かす力があるのか、こんなにも自分の中にある何かが揺さぶられるのかと。気付いてからはとにかく色々な曲を聴き漁るようになった。
「…なんか、かっこいいね。じゃあまた今度、渡辺君のオススメ曲教えてもらおうかな?」
「いつだって受け付けよう。ロックにバラード、メタルやパンク。なんでも良い曲を紹介しよう。神崎さんの好きな曲も今度教えてくれると有難い、雑食だからなんでも聴くぞ。」
「私の好きな曲はねーーー」
「ほう…それだったらーーー」
大和撫子との登校、悪くない。
かっこいいって言われちゃった。おじいちゃん年甲斐もなく照れそうになっちゃった…
神崎さん難しい!!
どうやってくっつけるべきなんですかねえ!?