やはり俺の幼馴染と後輩がいる日常は退屈しない。 作:あべかわもち
「失礼しまーす。ここに八幡いない?あ、いた」
「誰かと思えば三浦か。一色とケーキ屋行くんじゃなかったのか?」
「いろははもう小町と合流してるし。八幡も行くんだから迎えに来てあげたの。嬉しいっしょ?」
「何言ってんだか。あぁ、残念だが、おれは行けないんだ」
「はぁ?なんでよ?」
「彼がここの部員だからよ」
「へ?」
三浦は驚いたように声の方を向く。入口近くに座っていた俺に話しかけていたから、奥にいた雪ノ下には気づかなかったようだ。
「・・・雪ノ下、さん」
「三浦さんだったかしら。久しぶりね」
「覚えてもらえて嬉しいじゃない。ねぇ雪ノ下さん」
「・・・どうも」
あれ?おかしいぞ。なんでこんなに冷たい視線が飛び交っているんだ。まじで部屋の温度が一気に真冬になった気がする。いや言いすぎか。
「なんだお前ら知り合いなの?」
「ちょっと、ねぇ?」
「えぇ、ちょっと」
女子には色々あるのだろう。あれだけ雪ノ下のことを話題に出していたから、会ったことあるとは思っていたけどな。というか言いすぎじゃないかも。やっぱりこの部屋寒くなってるわ。あっドア開いたままだ。
「まぁいいや。八幡、さっさと帰るよ」
「さっきも言ったが俺は行けないっつーの」
「あんたのおごりね」
「ちょっとは話を聞いてもらえませんかね」
さすがの俺もこれだけスルーされるとちょっと傷つく。ほんのちょっとだけ。
「なにか言った?八幡。私、聞き間違えたみたいなの。もう一度言って」
「だから、行けないって」
「なんでよ?こんなところで油売ってるんだから、暇なんでしょ?」
「あー油売ってるのはそうだが、暇と言うわけじゃない。部活だからな。ていうかさっき雪ノ下が言ってただろ」
「?ごめん。あーし、まじで聞き間違えてるみたい」
「だから部活だって」
「部活?誰が」
「俺が」
「どこで」
「ここで」
「・・・雪ノ下さん。八幡の言ってること本当なの?」
「えぇ、そうよ。今日平塚先生に頼まれたの。面倒を見てくれって。私が却下しても勝手に入部届けをつくって受理していたから、遺憾なことだけれど、彼はこの奉仕部の部員になるわね」
「はぁ?なんでそうなるわけ?そんなの八幡が望まなければ無効じゃん!!」
「なにむきになってんだよ。お前もあの平塚先生の強引さは知ってるだろ?俺にもどうしようもなかったんだ」
そう肉体的なダメージを回避するためにはこれしかないんだ。
「う、そりゃそうだけど。でも、それってさすがに横暴じゃん」
「私も三浦さんと同じ意見よ。さすがにやり方はどうかと思うわ。でも、手段はどうであれ、彼は入部してしまった。あなた達も知ってると思うけど、一度部活に入ったら、この学校の制度上半年間はそこに在籍しないといけないの」
そう言えばあったなぁという表情の三浦。
俺も一応頷くが、正直そんなの知らないぞ。あれ、俺これから半年もこの得体の知れない部活にいないといけないのか!?なんということだ・・・
「八幡、知らなかったっしょ」
「なぜばれた!?」
「そんなの八幡の顔見ればバレバレだし」
「な・・・んだと?」
「あの、続けても良いかしら?」
「ごめんね雪ノ下さん。八幡のせいで」
「俺のせいかよ!」
「静かになさい煩いや君」
もう帰りたいよ小町・・・
「つまり、彼はここで部活動に励まないといけないってことなの。納得してもらえたかしら。三浦さん?」
「・・・わかった」
「悪いとは思ってるわ」
「なんで謝るのよ。これも雪ノ下さんのせいじゃないし」
「それもそうね」
「ただし条件を出すから」
「?」
「私もこの部に入るから」
「「はぃ?」」
某刑事さんと同じ口癖がとっさに出てしまった。というか、雪ノ下もじゃないか。こいつドラマとか見るんだな。
「いいでしょ?雪ノ下さん」
「・・・平塚先生に聞いておくわ」
「ありがと。じゃぁ、改めてよろしくね。八幡、雪ノ下さん」
「えぇ、こちらこそ」
「マジか」
この部活に入部させられたら、なぜか三浦もついてきた。
なにを言ってるかわからんだろうが、俺にもわからん。
雪ノ下の口の悪さと三浦の俺への扱いの悪さが一度にやってくると思うと、頭が痛くなってくる。
これから、俺はうまく学園生活をやっていけるのだろうか。
きっと、俺の幼馴染と彼女は相性が悪いのだ。
俺にとっては、だが。