特命機関夏目リサーチ   作:クライングフリーマン

15 / 47
榊は、食材を冷蔵庫に入れると、一息ついた。
夏目リサーチ社分社には休みがない。というか頓着しない3人を夏目はスカウトした。



15.行き倒れ

========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 =========================

夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。

夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。

夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。

笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。

高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。

榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。

久保田嘉三・・・警視庁管理官。テロ組織対策室をサポートしている。

池上葉子・・・池上病院院長。

蛭田玲於奈・・・池上病院の泌尿器科医師。毒物の権威。池上院長の大学の先輩。

 

===============================================

==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 

※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。

夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 

12月31日。午後8時。渋谷区千駄ヶ谷。夏目リサーチ社。

榊は、食材を冷蔵庫に入れると、一息ついた。

夏目リサーチ社分社には休みがない。というか頓着しない3人を夏目はスカウトした。

高齢者で、ITが利用出来、一般常識があり、家庭がない。秘密は厳守出来て、ホウレンソウも心得ている。お金に困っている訳ではなく、趣味も持っている。

健康に無頓着ではないが、過度なダイエットはしない。

実は、滅多にない人材なのである。

榊は、前職の影響もあって、実務より3人で夜食を取る為の料理担当だ。

本社は、『一般企業』なので、盆暮れ(お盆休み・年末年始休み)がある。

年末年始は、どうせ使っていないからと社長の優香に言われ、榊は「買い出し」した食材を本社の冷蔵庫に入れた。

作業が終った頃、忘れ物を取りに来た優香と朱美に出くわした。

「支社まで送って行くわ。」と言われ、浅草にある支社まで優香の自動車で向かった。

「社長、止めて。」榊が自動車を止めたのは、新宿御苑の近くだった。

ベンチで座って寝ている老人がいたが、明らかにおかしい。

涎を垂らしている。

優香は、119番をした。

老人が運ばれた救急病院は、池上病院だった。

院長の池上葉子とは、優香は旧知の仲だ。

運ばれた老人は、間もなく亡くなった。

池上院長は、ある紙片を榊に渡した。

「コピーを既に久保田さんにFAXで送ってあります。犯罪に関係しているかも知れないので、EITOにも連絡しました。そうしたら、夏目さんが、『夏目リサーチ』で調べてください、って。」

側にいた蛭田医師が言った。

「脳梗塞かと思ったが、毒物を服用された形跡があるんです。」

了解した優香が、自動車の中で榊に言った。

「文書解析、筆跡鑑定は科捜研の仕事だけでもないのよ、榊さん。あのシステムの『前科者データ』には、筆跡のある文書もあるの。お名前カードデータや運転免許証データには無いデータよ。何も分からないかも知れないけど、やってみる価値はあるわ。」

「なるほど。」「笠置さんには、さっきメールしたわ。とにかく、調べましょう。」

午後10時。夏目リサーチ社分室。

笠置は、榊から紙片を受け取ると、システムを稼働して、紙片のデータをスキャナで読み込み、マッチングシステムをスタートした。

ここのマッチングシステムはデュプレックスシステムで、本来は『リアルタイムマッチング』しているシステムの予備のシステムがあり、本社から指示があった『検索』があれば、その予備システムを使って、笠置達が『手動』で調べることになっているのだ。

午後10時半。

「こいつは驚いた。」

「何に驚いたんだい?笠置さん。」と言いながら、夏目が入って来た。

「ああ、夏目さん。」と、笠置は振り返った。

優香が経緯を説明した。

その上で、笠置が説明した。

「この人物、府中刑務所に服役中の筈の反社ですよ。」

「昔風に言えば、代貸、いや、舎弟頭か。」

『代貸』は、親分の『一の子分』のことだが、関東では、これとは別に、シマ持ちの貸元のヤクザの親分のこともいうのので、夏目達は『舎弟頭』と呼んでいる。

「服役中のヤクザが町中で死んだ?矛盾しませんか?」と、高山が言った。

調理を始めた榊が、「夏目さん、指紋は照合出来ないんですか、このシステム。」と尋ねた。

「出来なくはないが、もし脱走していないのなら、逮捕された時の指紋データと、本人の『生データ』を比べた方が早い。」

夏目は、久保田管理官へのホットラインをマルチディスプレイに出した。

事情を聞いた、久保田管理官は、「早速調べさせよう。今年も帰り損なったな。」と応えた。

午前0時。

優香は帰ったが、夏目は帰宅せず、『おせち』を食べながら、皆と寛いでいた。

久保田管理官から連絡が来た。

マルチディスプレイ越しに、「相変わらず豪勢だな。もう、おせちかい?」と久保田管理官は言った。

榊達は、口々に「管理官。あけましておめでとうございます。」と言った。

「あけましておめでとうございます。こちらのニュースは、おめでたく無かったな。亡くなった丹下は、服役直後に当時の刑務官を買収して、『替え玉』と入れ替わったらしい。つまり、逮捕した時の指紋と、現在服役している男の指紋データは一致しない。これは、刑務所の盲点だな。定期的に照合しないと発覚しないまま放置されてしまう。」

「つまり、榊さん達が出逢った、『本物』の丹下は、『入れ替わり』を知った、あるいは知っていた何者かに暗殺されたことになりますね。でも、何故今になって・・・。」

「手掛かりになるかどうかは分からないが、今日は、いや、昨日は丹下雄三の誕生日なんだ。普通は、おめでたい、が重なるように『元日』産まれとして出生届を出すもんだが、母親が刑務所内で出産し、死亡している。成人して、組を継いだ。」

皆が感心してところで、「夏目くん、そっち行っていい?」と久保田が言った。

夏目は、「喜んで。榊さん、たっぷりありますよね。」と言うと、榊は 「ジェ、コンプリ”Jai Compris”(分かりました)」とフランス語で言った。

―完―

 

 




つまり、榊さん達が出逢った、『本物』の丹下は、『入れ替わり』を知った、あるいは知っていた何者かに暗殺されたことになりますね。でも、何故今になって・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。