特命機関夏目リサーチ   作:クライングフリーマン

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新聞を閉じた高山が言った。
「かっぱ橋のお祭りか。もう1年経ったんだねえ。」



35.影武者

========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 =========================

笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。

高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。

榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?

夏目朱美・・・夏目リサーチの副社長。芦屋グループ傘下に入り、夏目リサーチは登記上、違う会社名になっている。

 

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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 

※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。

夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 

午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。

新聞を閉じた高山が言った。

「かっぱ橋のお祭りか。もう1年経ったんだねえ。」

高山が言っているのは、去年の下町七夕まつりのことだ。上野と浅草を結ぶかっぱ橋本通りのお祭りだ。

EITOの事件なので、夏目リサーチも関係はある。

「今日は、『星と太陽のマーケット』。私達には関係無いな。」と、榊が厨房から言った。

そこへ、副社長の夏目朱美が入って来た。

「笠置さん、警視庁の『連絡ボックス』開けて。」

笠置は怪訝な顔になったが、思い出した。

警視庁からのメールの送受信で情報漏洩しないように、『連絡ボックス』を作ったのだ。独自のセキュリティーで、特殊キーでないと解錠出来ない。

これは、EITO東京本部の草薙の提案だ。

テロ対策室の隣にある情報管理室は、以前プロファイラーがスパイとして潜り込んでいたので、メンバーは一新していた。

メンバーの面接は草薙が行った。

草薙は、EITO東京本部に常駐しているが、一応、警視庁採用の一般職員で、久保田管理官に見込まれて、その身分のまま出向している。

そして、どうやって連絡を執ったのか、闇サイトハンターこと山並専用の『連絡ボックス』もある。

その『夏目リサーチ用連絡ボックス』に指示書のテキストファイルがあり、1枚の写真データがあった。

笠置が読み上げた。

「諸君は、以前元外務大臣石谷が惨殺死体で発見されたことを覚えていると思う。スパイ容疑がかかり、行方不明になっていた男が殺されていた。親族が引き取り、荼毘に付したので、詳しい調査は行われていなかった。それで、DNAのデータはない。しかし、『タレコミ』の写真は石谷が写っている。ダークレインボウに消されたと思ったが、案外生きているのかも知れない、というのが村越さんと一致した意見だ。そちらでの、マッチングを依頼する。」

笠置は、読んだ後、すぐにその写真データをダウンロードして、マッチングシステムにセットした。

「何かスパイ映画みたいね、カッコイイ。私は兄貴に言われた通り伝えただけだけど。」

朱美は、時々ギャルっぽくなる。年上のオジサン部下に気を遣っている積もりなのだろう。

このシステムは、二次元データから三次元データに変換、骨格単位の照合が可能だ。

アラームが鳴った。マッチした場合とアンマッチした場合は音色が違うと笠置は言っていたが、朱美はマッチした場合しか知らなかった。

画面には、『100%』と出ている。

「元大臣は、確か政治家になる前は『お祭り男』として知られていた。地元じゃないし、ばれないと思ったかな。死んだことになっているし。」

笠置の言葉に、「お祭り男って事は神輿を担いでいない人ですね。」と、高山が同意を求めた。

「え?神輿担いでるけど。」

「副社長。『本当に』神輿担いでいる力持ちは、重さに耐えながら、中の方で支えている人達。石谷みたいなのは『賑やかし』。中の人がかけ声かけて担いでいるのを見たことあります?」

「じゃ、石谷は力持ちじゃないのね。」

「お調子者なのは確かですね。で、那珂国の要人と仲良くなり、情報漏洩していた。志田総理同様、那珂国の手下同然だった。市橋総理がスパイ行為を見抜いて、更迭をした。人づてに聞いた所によると、詰め寄られた時、『じゃ、いいですぅ。』って言ったらしい。ふざけたこと言えたのは、那珂国が拾ってくれる自信があったから。」

「さあ、出来ましたよ。しかし、ホントにこれでいいんですか?夏目さんの指示のレシピ通り作ったけど。」

朱美の前には、所謂『ねこまんま』があった。

不穏な気配を察した榊は、自分のプレートと朱美のプレートを入れ替え、厨房に消えた。

「夏目さん、きっと、皆を和ませようとしたんだね。」

「そうでしょ、きっと。レベルが低いけど。」高山は笠置に合せて言った。

見ると、朱美は猛烈に料理に闘いを挑んでいた。

何とかいう、ロシア料理だったな、と笠置が思っていたら、榊が戻ってきた。

「副社長。『夜食』にどうぞ。」

可愛いバスケットに入っているのは、『おかか』のおにぎりだった。

「なああああごぉ。」

朱美の鳴き真似に、皆は爆笑した。

報告書は寝る前でいいや、と笠置は思った。

危機は去った・・・この場の危機は。

―完―

 




「副社長。『夜食』にどうぞ。」
可愛いバスケットに入っているのは、『おかか』のおにぎりだった。
「なああああごぉ。」
朱美の鳴き真似に、皆は爆笑した。
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