一話あたりの文字数が少ないとのご指摘を受けたため、時間的に連続している次話をそのまま合体させました。確かに私としても二千字前後は短いと思っていたので、これで読み応えが増してくれれば良いなぁ、と思っています。(もしかして場面を増やして文字数を増やすんじゃなくて、1場面ごとの掘り下げが足りないって事だったりするのかな……?)
あれからさらに数日経過、今は生まれて一ヶ月くらいだろうか。まだハイハイは出来ないが、首が座って寝返りが打てるようになった。それだけで家族たちは大はしゃぎで私を褒め倒してくれるので、私も大はしゃぎ。もしかして私は天才か?
ここ数日色々わかったことがある。まず私の名前である。わかったというよりも名付けられたというのが正確なのだが、ひとまず事の経緯を説明しよう。
ある朝、祖父母が襲来した。どうやら父方の祖父母のようだが、なんだか服装がド派手だった。まず祖父の服装だが、パリッと糊のきいた軍服に制帽、胸元には階級章?エンブレム?のようなものがジャラジャラついている。金属製のいかにも凄そうなやつが、それはもうジャラジャラと。祖母の服装も、色は落ち着いた浅い水色の帽子とコート、帽子には花飾り、首には真珠のネックレス、胸元にはブローチ。どれもこれも素人目でも上質なものだとわかるのだが、不思議と下品ではないのだ。まさに上流階級の着こなしともいうべき服装だ。
ママに抱っこされながら話を聞いていると、どうやら生まれた私を一目見るため、そして私の名前を決めるために来たらしい。名前で呼ばれないなぁ、いつまでバブちゃん、ベビちゃんと呼ばれるんだろうとは思っていたが、一月近く経ってもまだ名前が決まっていないとは思ってもいなかった。
さらに会話を聞いていると、うちの家系は貴族的なやつで、代々、長子の名前と長男の名前は家長が決める慣習らしい。(我がマルティン家が王家よりマルティンの地を賜って以来の伝統云々と長々と口上を述べていた。うちってマルティンっていうのか)
そのうえ、家長である祖父が仕事で忙しく、なかなか我が家に来れなかったのも合わさり、名前が決まるまで一月近くかかってしまったようである。名前が決まるのは嬉しいが、あまりに家柄が良すぎるのも勘弁願いたい。
考えてもみてほしい。元庶民で元男の私が、淑女として社交界の花を演じる所を。鳥肌ものである。媚びへつらい、牽制、吊し上げ。魑魅魍魎の権力闘争なんて、生粋の上流階級の人間なら日常茶飯事なのかもしれないが、変に前世の記憶がある私では、絶対にボロがでる自信がある。
そして何より政略結婚が嫌だ。今世の家族は良い人だし、孫を見せてやりたい気持ちがないわけでもない。だがそれはあくまで、男性を異性として好きになれたらの話だ。(そんな日が来るのかどうかわからないが)
好きでもないやつに股を開いて、好きでもないやつの子供を産んで、しかもその理由が権力のため、権威のためだなんてゴメンである。
そういった世界と縁遠いヤンチャ娘を演じれば、社交界での失敗を恐れて、そう言った世界から隔離してくれそうだし、そうしよう。そんなアホな皮算用をしていると、いつのまにか私の身柄がママから祖父に手渡されて、祖父からじっと見つめられている。よく見たらすごい厳ついお顔をされていますね、おじいさま。(威厳のある顔ともいう)
十分近く経過したが、コワモテが眉間に皺を寄せながらウンウン唸ってこちらを見つめ続けているため、非常に居心地が悪い。名付けうんぬん言っていたし、たぶん名前を考えている最中なのだろうが、できれば楽しくおしゃべり継続中のパパママと祖母の方へ行きたい。
そしてさらに二十分後、もう諦めて脳内1人しりとりをして現実逃避をしている時に、ついに祖父が口を開いた
「お前の名前はエルフリーデだ。エルフリーデ・フォン・マルティン。新たな一族の誕生だ!」
そう叫ぶと、まるで優勝トロフィーを掲げるように私の体が掲げられる。周りを見渡してみると、今まで談笑していた家族全員が佇まいを正し、拍手をしている。すげえ洋風で格式高そうな名前で違和感があるが、そのうちなれるだろう。なんだか名前をつけられただけだが、本当に生まれ変わったんだなぁ、女の子になったんだなぁ、と感慨深く思う。
そんなこんなで名付けも済んだし、これからどうするんだろうと思っていると、速攻で祖母に掻っ攫われた。どうやら命名儀式のためにおじいさまに譲っていただけで、早く私のことを抱っこしたかったらしい。
「エルフリーデなら、エルちゃんね!良いお名前貰えて良かったわねぇ!可愛いわねぇ!身体中プニプニねぇ!口元はママに似たのかしら!でもキリッとした目元はおじいちゃんとパパに……」
そんな事をずっと話しながら、怒涛の構い倒しスタートである。ひたすら私を構い喋り倒しながら3秒に一回可愛いと連呼している。そして5分ほど構い倒したあと、出産祝いに大量のベビー用品を渡して帰っていった。まるで嵐のような人だった。
命名儀式中、レナさんが車から家の中に運び込んでいたようだが、本当に大量のベビー用品が持ち込まれていた。具体的にはリビングの実に四分の一ほどが荷物で埋まっていた。あの量だと車の後部座席とトランクが全てベビー用品で埋まっていたに違いない。
祖父母が帰った後、パパママの会話を聞いていると、どうやら祖父の仕事はまだひと段落ついただけで、忙しいままなのには変わらないらしい。そんな中で仕事の合間に名前の候補をいくつも考えて、ベビー用品を買い集めて、なんとか時間を捻出して遠路はるばるうちに来てくれたらしい。そして捻出した時間の許す限り顔を見て、少しでも私に合う名前を付けたかったようなのだ。そりゃ名前をつけたら十分と経たずに急いで帰るわけだ。
仕事の大変さを理解している元社会人としては、非常に申し訳なく思うと同時に、そうまでしてくれることに非常にありがたく感じる。たとえ家族だとしても、他人の人生のためにそこまで労力を掛けてくれるのは、愛情の賜物でしかないからだ。
さて、おじいちゃんおばあちゃんが帰ったところで、謎の光学会の研究者である私から研究成果を発表したい。この謎の光、なんと動かせることが発覚した。普段は体全体を包む状態がデフォルトのようだが、意識すれば体の一部に偏らせたり、家族たち同様に頭から湯気が立ち上るような状態にできるようなのだ。
そして動かす実験中に、たまたま謎の光の面白い特性を発見した。謎の光を集めた部分が強くなるのだ。強くなると言っても大雑把すぎるので、もう少し詳しく言おう。
例えば、手に集めた場合、ジタバタして手がクッションにぶつかると、大の大人が布団叩きで布団をフルスイングしたくらいの結構エゲツない音がする威力が出る。
私が謎の光の特性に気がついたのは、この事例がきっかけだった。それは本当に何となく手に謎の光を集めて観察していた時、まだ筋力が未発達な状態で、観察しやすいように無理に上げていたために疲れてきた腕を、オーラが込められたまま自重に任せて下ろした。すると、本来は軽くポスッと音を立てる程度のはずだったのだが、スパァン!と結構な音量が発生したのだ。私がベッドから落ちたんじゃないか、ママが倒れたんじゃないかと心配して家族が集まってくる程度には結構でかい音が。
そこで私は気がついたのだ、この謎の光は一箇所に集めると面白い挙動をする事に。あとは単純で、身体中のあらゆる部位に謎の光を集める実験をしてみたのだ。すると、いくつかの部位で面白い結果が出た。
例えば、耳に集めると、耳が良く聞こえる。今までは私のいる部屋と離れているために、良く聞こえなかった電話での会話の音が聞こえる。これのおかげでおじいちゃんおばあちゃんが来るのを知ることができた。
例えば、目に集めると、目がよく見える。今まで良く見えなかった、部屋の本棚にある本の背表紙のタイトルが読み取れるくらい。どんなタイトルだったんだって?わからない。読み取れるくらい見えたんじゃなかったかって?見えたよ、ヒエログリフみたいなよくわからない文字が。向きの変えたローマ字やカタカナのようなものが混じったよくわからない文字が。
以上が現在判明している謎の光の特性の全てである。
さて、問題は新たに登場した謎の文字である。はじめに私はよくわからないと言ったが、理解したくないと言った方が正しいかもしれない。どこかで見たことのある、具体的に言うと週刊少年ジャンプで見たことのある謎の文字。まあ、この文字だけだったら、まだパパとママが書籍を全て作品内の言語に翻訳してしまうようなイカれたファンの可能性もあった。
だが謎の光の存在が、1番あり得ない可能性こそが現実であることを示していた。ああ、この謎の光、オーラはオーラでも、スピリチュアル的なオーラじゃなくて、生命エネルギー的なオーラなのね。しかもここ、日本どころかハンターハンターの世界だったのね、と。そこでさらに思い出す、そう言えば家族の誰かがヨルビアンとか言ってたことを。ヨークシンのある大陸の名前じゃねーか。まさか創作物の世界に生まれ変わるなんて、これっぽっちも思っていなかったから、丸々一ヶ月、気づきもしなかった。
よりにもよってハンターハンターかぁ。ひとたび外に出れば、人喰い魔獣やイカれた奇術師、暗殺一家や極悪非道(諸説あり)の盗賊団とエンカウントしかねない、あのハンターハンター。一歩間違えばキメラアントに滅ぼされかけ、暗黒大陸の生物に世界が滅ぼされていないのはたまたまらしい、あのハンターハンター。
生まれ変わったのは良いが、生まれ変わり先の世界をもう少しどうにかなりませんでしたか神様。初詣にしか参拝しなかったうえ、お賽銭が少額だったのがそんなに気に障りましたか神様。せめて、こち亀くらいの世界観で勘弁していただけないでしょうか神様。
だが現実は非情である、祈ったところで何かが変わるわけもない。出来るだけ早く生き残る術を身につけなければ(物理的にも)食い物にされかねない。幸い目が開いた時点でオーラを認識できていて、纏、垂れ流し状態、擬似的な凝も数日で出来ているのだから、才能は相当あると言って良いだろう。体がキチンと成長して体を鍛えられるまでは、念の修行に専念して、1人で行動できるようになってから体を鍛えるのが良いだろう。
出来れば、念の修行も肉体の修行も見てくれる師匠が欲しい。欲を言えば、本編におけるビスケのような、念能力者の育成方法を確立している心源流を修めている師匠が。
1番手っ取り早いのは、1人で行動できるようになったら、弟子入り志願をしにいくことだろうか?ただのガキなら追い返されるだろうが、念能力者だったら弟子入りさせてもらえるチャンスがあったりしないだろうか?ウイングに弟子入りしていたズシのように。
もし無理なら、確実なルートであるハンター試験を合格した後に、裏ハンター試験を目指すのが良いだろうか?だが本編においても描かれている通り、ハンター試験は非常に難しい試験だ。ハンター試験に合格できるまで自力で鍛えるには時間がかかるだろう。それまでに危険に晒されない保証もないので、次善の策として考えよう。
最終手段は、そこらの念能力者を捕まえて教えを乞うことだろう。独力で間違った道に進むよりマシという程度の選択肢なので、本当に最後の手段にしたい。本編においても、間違った念の知識によって失敗している事例が何個も出てきたのだから。
さて、今後の行動指針が決まったところで念の修行をしたいのだが、でかい問題が一つある。ほとんど付きっきりのママの存在である。纏や垂れ流し、目や耳などの攻撃を想定していない部位への凝などは問題ないだろうが、凝をした手足がママに掠りでもしたら、練で増幅したオーラに晒されてしまえば、下手したらママが念の洗礼で死にかねないのだ。
今にして思えば、私が念の特性に気がついた時に、たまたまママが近くにいなくて本当によかった、振り下ろした手のオーラで洗礼を引き起こしていた可能性があったのだから。
安全性を考慮して、ママがいる時間は纏、絶。いない時間は練、凝の修行をすることに決めた。本当は水見式を利用した発の修行もしたいところだが、幸か不幸か、家族たちは幼児の手に届く範囲にガラスを置いておくようなタイプの人間ではない。残念ながら私の系統がわかるのはしばらく先になりそうである。
一話あたりの文字数が少ないとのご指摘を受けたため、時間的に連続している次話をそのまま合体させました。確かに私としても二千字前後は短いと思っていたので、これで読み応えが増してくれれば良いなぁ、と思っています。(もしかして場面を増やして文字数を増やすんじゃなくて、1場面ごとの掘り下げが足りないって事だったりするのかな……?)