Hunter世界でどう生きるか   作:武本良い肉

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第7話

あれから3年経過、9歳になったエルフリーデ・フォン・マルティンです。最近は成長して頭身が上がり、美幼女から美少女になりました。あれから私生活では色々とあった、それはもう本当に色々と。

 

まず最近は婚約者候補を千切っては投げ、千切っては投げ、連戦連勝している。なぜそんな事をし始めたのかというと、修行をしていること、ハンターを目指している事、好きな人以外と結婚するつもりも子供を産むつもりもない事。まあ色々と家族に打ち明けたのだ。

 

なぜそれが婚約者候補をぶちのめすのに繋がるのか、経緯を一から説明しよう。まず、いつからかは正確ではないが、社交界モドキにおける異性からのアプローチが本格化してきた。聞くところによると、うちみたいな家格の高い家の人間、特に女性にはあるあるの話らしい。どうやら分別のつかない幼いうちに唾をつけておいて婚姻を狙う輩が一定数いるようなのだ

を。今のところ、色恋にも権力闘争にも興味はないので、もちろん私は全て断った。だがそれで問題が全て片付くわけでもないのが面倒なところ。

 

社交界モドキには大概ママ同伴なので、もちろんアプローチについても把握しているわけだが、そう言った場合の定番の対処法をみなさんご存知だろうか?答えは簡単、正式な相手がいないから粉をかけられるのだから、幼いうちから婚約者を決めてしまおうというわけだ。我が両親も御多分に洩れず、正式な婚約者探しをスタートした。両親からこの子はどうかな?とお見合い写真をいくつも見せられながら、この子は家柄が良い、この子はお金持ち、この子は、この子は、この子は、と色々なタイプの男の子を勧められたが、私にとっては社交界モドキにおける異性からのアプローチと大差はない。もちろん全て断った。好きでもない人と添い遂げることはできない。

 

賢い方法は婚約を受け入れてしまって、男避けとして散々利用したあと、ハンターになってトンズラすることだろう。だがそんな不誠実な事はしたくない。断ることこそ私が今示すことのできる最大の誠意の形なのだ。

 

修行の時間が潰されるのは癪だったが、婚約者探しのためか、日に日に出席頻度の増す社交界モドキは親のメンツのために出席はしたし、お見合いが持ってこられれば一応会ってお話しはした。何も知らずに断るのも相手に失礼だからだ。だがその上で全て断った。

 

そうしたらまあ、パパもママもおかんむりである。そりゃあ何も知らない両親からすれば、せっかく苦労して集めた良縁を全て無碍にしたのだから、そうなって当然だ。しかも理由が、はたから見ればただのガキのわがままでしかないからだ。だが私には私の意思がある、好きな相手以外お断りである。

 

そうしてパパママと無言の冷戦状態に突入して幾らか経過したある時、レナさんから聞かれたのだ。婚約を全て断り、あなたは何がしたいのかと。それは家のためにも、あなたのためにもならない、身を滅ぼすだけだと。

 

そこでハタと気がつく。ああ、パパもママもレナさんも、私を普通のか弱い貴族の娘と思っていて、そんなか弱い貴族な娘として得られる幸福を追求しようとしてくれているんだと。なぜなら、私がハンター試験を受けるつもりであることをまだ誰にも伝えられていないからだ。貴族としてではなく、ハンターとして生きたいと伝えられていないからだ。そしてそれが決して絵空事ではなく、現実的に可能とする能力を、すでに持っている事も。

 

それからすぐに家族全員にハンター試験を受けるつもりである事を伝えた。もちろん家族全員から反対された。あなたみたいな幼い女の子が一体何が出来るのかと。ハンター試験はいかに難関で、いかに危険であるかを懇々と諭してくる。なので私は、今出来ることを見せた。言葉で伝えるよりも余程説得力があるだろうから。

 

大岩をパンチで粉々に砕き、鉄製品を飴のようにグニャグニャに曲げ、木々を脆いスナック菓子のように粉々に砕く。ナイフを自分に突き刺そうとして、逆にナイフが折れる様子。動物を素手で捕まえる。インパクトのありそうなものを色々と見せた。

 

パパは冷静に見ていたが、ママとレナさんは心ここに在らず、目と口を広げてポカーンとした顔のまま固まっていた。当然の反応だろう。ママたちからすれば、普通の娘だと思っていたのに、突然こんなアメコミもびっくりのスーパーパワーを見せつけてくるのだから。私が同じ立場ならお口あんぐりである。

 

「念はいつ覚えたんだ?」

 

そうパパが聞いてくる。軍関係者なので念の存在を知っている可能性は考えていたが、どうやらその推測は当たっていたらしい。多分パパが今の状況を冷静に見ていられたのは、そのためだろう。

 

「生まれた時からだよ」

 

隠す必要もないのでそう答えると、なんだか納得したように頷き、ハンター試験の許可を出してくれた。どうやらパパは非念能力者ながらも、私が生まれた時から今までの間に時々だが違和感を感じていたらしい。

 

妙に成長が早かったこと。子供の頃から理知的だったこと。弟という比較対象が出来たことでそれがより浮き彫りになったこと。毎日森で、遊びではない何かを真剣にやっていることに気がついていたこと。いつかそれを自分の口で話してくれるのを待つと、ママと話し合って決めたこと。まさかそれがハンターになることだとは思っていなかったこと。色々と話してくれた。

 

「ごめんなさい」

 

まさかそこまで気づいていた上で、私の自主性に委ねてくれていたことに、思わずそんな言葉が出てきてしまっていた。そして、ひた隠しにしていたことが涙と共に次々と口をついて出ていた。念は危険なものだと知っていたから、家族と遠ざけて秘密にしていたこと。修行をして力を手に入れるまでは、ハンター試験も受け入れてもらえないだろうとわかっていたから、ずっと言わずにいたこと。最悪は、家出をして私の評判だけ下がれば家族たちに悪影響は少なくすむだろうと思っていたこと。

 

話終わると、ママに抱きしめられる。そして、気づいてあげられなくてごめんね、と涙を流しながら、震える声で謝罪の言葉を繰り返しながら、強く抱きしめられる。

 

その上から、パパに抱きしめられる。ごめんなぁ、違和感に気がついた時に、きちんと聞いてあげていればよかった。きちんと話をしていればよかった。そう言いながら、強く抱きしめられる。

 

それを聞くと、さらに申し訳なくなって涙が止まらない。私が悪かったの、ごめんなさい、謝らないで、前世も合わせるともう良い年齢のはずなのに、感情に揺り動かされて頭が働かず、声も震えてこんな言葉しか出ない。

 

十分か二十分か、泣き疲れて瞼が重くなる。パパママにこんなに抱きしめられたのはいつぶりだろうか?温もりを感じて、安心感に身を任せるのはいつぶりだろうか?緊張していた精神は緩みきり、ついには意識を手放した。

 

 

さて、目が覚めてからも大変だった。まずママが私ベッタリになった。気づいてあげられなかったから私が傷ついたと思ったのか、修行に行こうとしても何にしてもついてこようとするようになった。流石に危ないので止めていると、念の危険性も知っているからか、パパも説得に協力してくれた。

 

また、おじいちゃんから大量の刀剣と銃火器、防弾ベストから携帯食まで様々な物資が届いた。戦争でも始める気かな?と思っていたが、どうやらパパから話を聞いたようで、ハンター試験に使いたいものがあれば持って行きなさいとのことらしい。気が早いよ、おじいちゃん。後で手入れの方法だけでも電話で聞いておこう。

 

そして、家族みんなと色々話をした。最近の修行の進捗、どんな服が好きなのか、どんな男性がタイプなのか、ハンター試験に向けて準備は進んでいるのか、生理や妊娠出産などの女性特有のものが怖いこと、包み隠さず話した。

 

昔は動きやすいシャツとパンツが好きだったけど、今は可愛らしいフリルのついた女の子らしい服も好きになってきたといえば、ママとおばあちゃんと一緒に服を買いに行ったりもした。前世ではウインドウショッピングなんて、時間が無駄にかかるだけだと思っていたが、あーでもないこーでもないと話しながらいろんなお店の服を見て回るのも、案外楽しい物だった。

 

昔は男性に全く興味を持てなかったけど、家ではなく私を見てくれて、パパみたいな、かっこよくて優しくて紳士なタイプなら好きになれるかもと話せば、パパとママの馴れ初めを話してくれた。案外昔のパパはイケイケで、社交界で見かけたママに一目惚れして熱烈アプローチをしたらしい。しかもママは元々敵対派閥の人間だったというのだから驚きだ。当時は本当に大騒動で、ママは家族から縁を切られて、1人マルティン家に嫁いできたらしい。通りで母方の祖父母と一度たりとも会ったことがないわけだ。

 

私が生理が怖いと言えば、肉食動物と素手でバトルする方がよっぽど怖いわよ、と笑って安心させてくれた。そして本を買って、自分の体験も踏まえて説明してくれた。

 

妊娠出産も怖かったけど、パパとママに愛されて、ハンスが生まれて、小さな肉親を愛おしいと思えたことを話せば、大変さも確かにあるけれど、それ以上に素晴らしいことだと教えてくれた。いかに私とハンスが生まれてきてくれたことが幸せだったかを、私たち姉弟を抱きしめながら語って聞かせてくれた。

 

そして最後に、私は最大の隠し事を話した。前世の記憶があることを。

 

最初はよくわかっていなかったようだが、パパもママもすぐに抱きしめてくれた。たぶん緊張して声が震えて、涙目になっていただろう。パパとママは大丈夫だから、ゆっくり話しなさいと安心させてくれる。そんな言葉に背中を押され、少しづつ話し出した。

 

前世は男で大人だったこと。そのために女である自分に違和感があったこと。最近やっと女としての自分を、少しずつだが受け入れられるようになってきていること。それでもまだ男としての部分が確かにまだ残っていて、好きになれる男性でなければ添い遂げるのは難しそうだということ。だから婚約を断っていたこと。そしてほんの少しではあるが、未来について知っていること。そのために修行を頑張って、ハンターになるつもりであること。

 

秘密を話し終えて、もっと取り乱した状態になるかと思っていたが、案外心穏やかにいられた。多分確信があったからだ。パパもママも、間違いなく受け入れてくれるだろうという確信が。

 

そしてそれは合っていた。改めてしっかりと抱きしめなおし、ありがとう、言わなくても済んだはずなのに話してくれて、ありがとう。そう繰り返す両親に、思わず抱きしめ返す。

 

今にして思えば、パパとママはいつ秘密を暴露したところで、こうして受け入れてくれたのだろう。どこかで家族から拒絶されることを恐れて、こちらから壁を作っていた。家族家族と言いながら、内心他人を見る目で見ていた。だが、こうして蟠りは無くなった。私は、本当の家族を手に入れた。




親は案外子供のことを見ている物ですよね。まともな親であればあるほど、なんでそんなこと知ってるの!?ってことがあるもの。まあエルフリーデちゃんは前世から培った社畜精神のせいで、修行を真面目にやりすぎていたので、両親にも異常性が気が付きやすかったと思います。年頃の娘が六年間、週5、6日森に出かけて一日帰ってこない、森に出かける表情が楽しそうに遊びに行くわけでもなく、何か真剣な顔をしている、森で何をしているのか聞いても遊んでいたの一点張りで具体性がなく何かを隠そうとしている素振りがある、生傷が絶えない、歳の割に脂肪が少なく筋肉質で腹筋が割れている、描写外でもいろいろ気づくだろう場面があっただろうと思います。それでも何も言わなかったのは、両親の自主性を重んじる精神の賜物ですね。それこそ婚約も本来は親の一存で全て決めることが出来ましたが、最後の判断は必ずエルフリーデに委ねていました。(全て断られましたが)

前世成人男性が、今世の家族を心から本当の家族として受け入れるまでは数年かかるだろうと思っていましたが、エルフリーデちゃんの場合は9年かかりました。多分真面目で警戒心の強いエルフリーデちゃんの場合、婚姻関係の問題が出てこなければ、心の中で一線を引き続けて、本当の家族として受け入れることは一生なかったと思います。
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