回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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それぞれの戦場

sideグラントリノ

 

『病院内にいた人の避難は全て完了した!!』

『周辺住人の避難はまだです!!』

『……わかった。我々もそちらのフォローに入る』

 

耳につけたインカムから外の様子が伝わってくる。

ベストジーニスト指揮のチームが病院内の人の避難作業を完了し、まだ避難が終わっていない病院周辺の人々の避難活動のフォローに入ったようだ。

 

 

(……つまり、この戦闘への追加でのヒーロー側の参戦は無えってことだな)

 

あちらはあちらで忙しそうだ。仕方ない。

 

決して余裕がある状況じゃあねえが……思わず、口端が『にぃっ』と歪む。

 

(……あんまいい性分じゃねえよなあ我ながら。こういう鉄火場が大好物だなんてよぉ……いい年してみっともねえったらありゃしねえぜ全くよぉ……)

 

猛る戦意が身体を熱くする。

しかし、無理もねえじゃねえか、何せ……

 

「よう……こうして挨拶すんのは初めてだったな、志村の孫よぉ」

 

何せ、今目の前には……あの志村の孫が……ヴィラン連合のリーダーとなった志村の孫が、俺の敵として立っているのだから。

 

 

(止める。ヤツを止める。必ず止めなきゃならねえ)

 

 

無き戦友の為に、必ずヤツを止めなければならない。

 

決意を固める俺を、志村の孫は……ヤツは不思議なくらいに穏やかな瞳で見ていた。そして、

 

「……アンタ、ばあちゃんの仲間かよ」

 

不思議なくらい穏やかな声で、志村の孫は続けて、

 

「……そうか。ばあちゃん確かヒーローだったな……そりゃ仲間だったヒーローがまだいても不思議じゃねえか……そりゃ止めてえだろうな俺の事をよ」

 

「お前……」

 

毒気が抜かれる、とはこういう事を言うのだろう。

先ほどまで猛っていた戦意が薄れていく。

 

 

「……随分とまあ冷静な様子じゃねえか……お前ぇ……恨んでねえのかよ志村の……ばあちゃんの事をよ?」

 

 

 

「……今更だろ。そんなもん今更だ。昔ばあちゃんはヒーローやってて、そして今俺はここでこうしてヴィランやってる。そんだけの話さ。恨みだなんて……今更だろそんな事」

 

 

祖母への恨みなどまるで無い、と。

ヴィランに似合わぬ不思議と平静なその瞳が、その言葉に一切の嘘や虚飾など無いのだと静かに証明していた。

 

……泥花市で捕まる前までの死柄木弔の様子……それを聞いていた俺からすると信じられないその様子。

 

 

「……正直、驚れぇたぜ……もっと恨んでるもんだと思ってたよ。恨みに恨みに恨みまくってて……その八つ当たりで俺にまで当たり散らして怒りをぶつけてくる……そんくらいばあちゃんの事を恨んでるもんだと思ってたぜ」

 

「はっ!!死んだばあちゃんの事なんざ何時までも恨んでてもしょうがねえじゃねえか!!」

 

そして志村の孫は笑い、

 

「過去は過去で!!今は今だ!!さあ!!俺の仲間に手を出そうとしておいてタダで帰れると思うなよヒーロー!!」

 

志村の孫はそう叫び!曇りの晴れた目で俺を睨み、そして力強くファイティングポーズを取った!!

 

「……完全に一皮剥けやがったな……厄介だぜ……だが……だからって負けちゃいられねえんだよなあこっちもよぉ!!よくぞ吠えたな悪党(ヴィラン)!!このグラントリノがその首引っ括って牢屋(タルタロス)へぶち込んでやる!!」

 

それに負けないように俺も叫ぶ!!

ヤツの気迫は本物だ!!

押し負ける訳にはいかねえ!!

 

「おおおおおおおぉぉぉ!!!!」

「来い!!ヒーロー!!」

 

飛びかかる俺を迎え撃つヴィラン!!!!

 

俺と志村の孫の戦いはこうして始まった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideルミリオン

 

「ファントム・メナス!!!」

 

俺の必殺技が強化脳無に直撃!!

しかし!!

 

「……くっ!!コイツら全員かなりタフなんだよね!!!」

 

昨年の福岡に出現したのと同種らしい強化脳無達。

 

映像で確認はしていたが、やはりトンデモナイ耐久力だ!!

 

「ルミリオン!!お前はサポートに入れ!!ミルコ!!わかってるよなミルコ!!」

 

エッジショットの叫び!!それに応えるようにしてミルコはニヤリと凶悪な笑みを浮かべ、

 

「わかってるに決まってんだろ!!お前ら2人でヤツラに隙を作れ!!隙を見せたヤツから私が脳ごと蹴り砕く!!!」

 

周囲の建造物を、まるでジャングルの木々のように高速で跳ね回り移動し敵を攻撃しながらミルコが叫んだ。

 

(わかってはいたけど……こういう時、自分の低い攻撃能力が悔しいんだよね!!)

 

それはわかっていた事。

この個性を使いこなせる様になった今、防御面で自分は最高のヒーローだと自負している。

しかし、反面攻撃力の不足が、こういった強化脳無の様な敵との戦いでは痛い!!

サポートアイテムで上手く補えればいいのだが……自分の個性の性質上それも出来ない。

 

「でも!!だけど!!黙って見ている訳にはいかないんだよね!!」

 

例え敵に決定打を与えられないとしても出来る事は必ずある筈だ。

膝裏を狙い敵の態勢を崩す。

敵が攻撃をしようとした瞬間横から叩き、敵の攻撃を逸らす。

 

「いくらでもやりようはあるんだよね!!」

 

今自分が出来ない事がある。

だからってそれに凹んで下を向いていては行けないのだ!!

 

そして!!例えミルコとエッジショットがトップヒーローだったとしても!!この強化脳無の集団を3人で抑えるのはかなりの難題であった!!

 

「おおおおおおお!!!」

 

そして闘志を高める為に俺は叫び、近くの敵へと襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side回原

 

(……アッチもコッチも中々キツそうだなこれは……)

 

グラントリノさんVS死柄木弔。

ルミリオンさん・エッジショットさん・そしてミルコさんVS強化脳無達。

 

特に強化脳無達との戦いがキツそうで、正直あまり余裕が無さそうだった。

 

(……ならば!!)

 

荼毘×3から繰り出される、多種多様にして苛烈な個性攻撃を躱しながら、俺はホークスさんと、そしてトンガリと轟に向かって叫ぶ!!

 

「個性合体だホークスさん!!個性合体で一気にカタをつけましょう!!」

 

俺の叫びにホークスさんも頷き、

 

「ああ!!何時までも荼毘だけの相手をしている訳にはいかないよね!!エリちゃんの救出もある!!一気に行くよ!!ここで荼毘を仕留める!!!」

 

「おうよ!!」「ああ!!」

 

そして俺達は4人全員の中間地点辺りを目指し高速で移動!!!

 

それを!!

 

 

 

「「「はっ!!目の前で悠長にそんな事させる訳がねえだろバカが!!!」」」

 

 

 

3人の荼毘がそれぞれが放った炎の攻撃により、俺達の合流が妨害される!!

 

「チィ!!」

「クソが!!」

 

思わず漏れた俺達の悪態。それを聞き魔王3人が笑い、

 

「「「へっ……『個性合体、敗れたり!!!』てえ所だなあオイ」」」

 

「あんだと?」

 

俺の言葉にニヤリと凶悪な笑みを浮かべ、そして荼毘達が叫ぶ!!

 

 

「「「個性合体の弱点……言うまでもないだろ?個性合体をする瞬間!!!テメエら4人は絶対に一か所に集まる必要がある!!!その合流さえさせなければ個性合体は使えねえ!!!更にここには今までみてえに周囲のサポートも無い!!そして何より相手がこの俺だ!!俺達3人の魔王が相手だ!!!俺の目の前で個性合体なんてさせる隙は与えねえぞ!!!」」」

 

ドヤ顔で吠える荼毘!!

まあ確かに!!個性合体の都合上、必ず合体の瞬間俺達は一か所に固まる必要がある。

それは確かに事実だ。しかし……

 

 

「ヒュウ!!促成栽培型魔王のワリには随分とカッチョイイこと吠えるじゃないすか!!まるで合体モノのロボットアニメに出てくる、ヤラレ役の中ボスみたいなカッコ良さだねえ!!」

 

……そんな自信満々の荼毘達に、ホークスさんが茶化すような言葉をかけた。

 

「何だと!!ホークステメエ!!」

「ぶち殺す!!」

「焼き鳥だオラァ!!」

 

「おおっとっとっと!!」

 

返答として放たれた強烈な熱線を慌てて躱すホークスさん。

 

「……ま、そう言う事だぜ荼毘さんよ」

「……ドリルのガキか」

 

流石に熱線を躱すのに忙しく言葉を続けられない様なので、その言葉を俺達が引き継ぐ。

 

「……合体モノのロボットアニメじゃあるあるだよなぁ!シナリオ上の中ボス戦くらいで『合体封じ!!絶対絶命!!』みたいなお約束の主人公側ピンチの回が入るのはよぉ!!」

 

 

「ああ……んで結局主人公側がなんやかんやあって見事に合体!!中ボス撃破!!ってなる訳だ」

 

 

「……俺はロボットアニメとか詳しくねえがそうなのか?だとしたら燈矢兄はヤラレ役の三下みたいなセリフで吠えてたって事か」

 

上からトンガリ、俺、轟による、先ほどの荼毘のセリフをからかうような言葉を受けて、荼毘はこめかみを引くつかせ怒りの形相で、

 

「……ありきたりなアニメ通りに物事が進むだなんて都合良い事ばかりじゃねえんだよ世の中はなぁ!!」

「生意気なクソガキ共が!!後悔させてやるぜ!!」

「個性合体はさせねえ!!テメエら全員ここで焼き殺す!!」

 

3人の魔王が叫ぶ!!

そして溢れる殺意そのままに!!

 

「「「くらえ!!!赫灼熱拳!!ジェットバーン!!」」」

 

エンデヴァーさんから奪った凶悪な技で俺達を攻撃してくる!!

 

「よっと!!」

「へっ!!今更これぐらいよぉ!!」

「甘いぜ燈矢兄!!」

 

それをそれぞれ3人躱す。

 

しかし……

 

「へっ……今のでまぁた4人の距離が離れちまったなぁ!!」

 

「おいおいホントに大丈夫かよ!?なあヒーロー!?」

 

「そんなザマでホントに個性合体なんて俺達の前で出来ると思ってんのかあ!?」

 

「「「はっ!!笑わせるぜ!!!」」」

 

そんな俺達の様子を見て嘲笑する荼毘達。

 

「……なーに言ってんですか。序盤の苦戦……これもまた合体ロボットモノの『お約束』ってヤツですよ!!」

 

「……ホークス……」

 

熱線を躱し切り落ち着いた様子でホークスさんが戻って来た。

そしてホークスさんがニヤリと笑い、

 

「さあ!!楽しい楽しいアニメ談義の時間はオシマイだ!!さっさと荼毘達を倒し!!周囲の仲間をフォローし!!そしてエリちゃんを助けるよ!!」

 

「はい!!」「あたぼうだ殺るぜオラァ!!」

 

ホークスさんの掛け声に改めて戦闘態勢を整える俺とトンガリ。

 

「燈矢兄ぃ!!ここで絶対にアンタを倒して止めてみせる!!」

そして轟からも力強い決意が籠った強い言葉が飛び出る!!

 

 

「はっ!!悲しいなあ!!お兄ちゃん悲しいぞ焦凍ぉ!!」

「そんなに冷てえ目で俺を睨むんじゃねえよ!!」

「思わず殺したくなっちゃうだろうが!!」

 

その轟の戦意に反応した荼毘。

それに。

 

「この目を辞めて欲しけりゃさっさと倒されて俺達に捕まれよ!!そうしたらいくらでも普通の兄貴に向けるような目でアンタを見てやるぜ!!」

 

 

 

「「「ソイツはいいな!!賛成だ!!俺達が逆にテメエを!!焦凍を!!テメエをブチのめしてとっ捕まえてやるよ!!ああ!!そうだなあ!!両手両足焼き切り落としてダルマにして!!俺がテメエをペットにして飼ってやる!!ああ!!楽しい楽しい未来予想図じゃねえか!!そんで楽しくさっきのアニメの話の続きでもしようぜぇ!!!ペット扱いの焦凍くんよぉ!!!」」」

 

 

 

「ああ!!好きなアニメでも好きなコンカフェの話でもいくらでもしてやるぜ!!俺達がお前を倒した後でだけどなクソ兄貴!!」

 

 

 

「おお!!!……ぉ、おう?……おう?ん?」

「……好きな?コンカフェ?」

「……それ、兄弟間で一般的に交わされる会話なのか……?しかもこの状況で……?」

 

 

 

再開される筈の戦い!!互いに高まっていく熱く燃え上がる戦意と闘志!!その再開の瞬間に爆発した天然に……一瞬、酷く冷めた冷たい空気が流れる……

 

(((……なぁ、俺の弟大丈夫なのかこれ……???)))

 

そして、こんな状況にも関わらず助けを求めるような荼毘×3の視線を受け俺達は……

 

「……一般的かどうかは微妙な所だねぇ……」

 

「……ここは一つ、有識者の見解を求めたい所ですが……」

 

ホークスさんと俺の……なんとも微妙……な言葉。それに、

 

「……一番手近な有識者は、今アッチで強化脳無達相手に絶賛リアル大乱闘スマッシュブラザーズ開催中だぜ……どっち道、見解聞くのはコイツら全員ブチのめした後での話だな……」

 

ビッ!!っと背後で激戦を続けるエッジショットさんを親指で指し示し、トンガリがそう締める。

 

 

「……すまん。俺また何かやっちまったのか?」

 

 

((((((……やっちまったんだよなあ……))))))

 

 

一瞬……静かになった俺達7人の周囲の空間。

 

そこに、

 

 

「へっ!!ジジイのワリに中々やるじゃねえか!!大したスピードと蹴りだな!!」

 

「テメエも中々やるなぁ!!中々に歯応えがあり過ぎて!!ジジイに優しくねえぜぇオイ!!!」

 

「……今何だよね!!!ミルコ!!!」

 

「任せろ!!!蹴り砕く!!」

 

「他の強化脳無への牽制は俺に任せろぉ!!」

 

 

……そこに、周囲からは苛烈な戦闘による周囲の破壊音やら猛った叫びやらが聞こえて……何というか、よりココの空間の地獄感が増すと言うか何というか……

 

 

 

「……何というか……まあ……」

 

「「「……あっ、ああ……まあ、そうだよな……」」」

 

「……再開しようか?戦闘をさ?うん、俺達もこの後忙しいし……」

 

「「「……そ、そうだな……うん。そうだな……」」」

 

両陣営トップのホークスさんと荼毘がそんな間抜けな言葉を交わし、そして、

 

「……なんか悪いな。俺の所為で変な空気になっちまって」

 

轟の、その言葉に、

 

 

 

 

「「「「「「ホントだよ!!!!!!」」」」」」

 

 

 

……轟以外の全員が思わずツッコんでしまった。

……そして、

 

「……ああ!!クソ!!クソ!!意図せず間抜けな雰囲気になっちまったじゃねえか!!だがよぉ!!テメエらヒーローは全員ここで殺す!!それには変わりないんだぜ!!」

 

この空気を振り捨てるように荼毘が叫び!!

 

「ああ!!ここでアンタを倒す!!そしてここで絶対ぇ止めてやるぜ!!それにも変わりは無いぜクソ兄貴!!」

 

 

本物らしき荼毘と、この何とも言い難い空気の戦犯である轟が、この空気を切り裂くようにしてお互い叫び、そして挑発しあう。

 

「……これで今度こそ……今度こそ、本当に仕切り直しでいいんですかね?」

「……ダメなら帰るぞ俺は……」

 

俺とトンガリのセリフに『『『………』』』ホークスさん&荼毘×2は難しい顔で視線を交え、そして!!

 

「……さあ!!勝負だ!!」

「……お!!おお!!」

「……おう!!望む所だ!!」

 

 

「「あ!!色々と面倒くさくなって流れに任せたぞこのズルい大人達!!」」

 

 

冷めに冷めて冷え切った俺達の戦場。

それを無理やり暖めるようにしてズルい大人達3人が叫ぶ!!

 

「クソがぁ!!もう少し真面目に取り繕えや空気をよぉ!!」

 

「このダレた空気の中でマトモに戦えってのかアホかあ!!」

 

叫ぶ俺とトンガリ。

 

「さあ!!ここで止めるぞクソ兄貴!!あんたには言いたい事が山程あるんだ!!」

 

「「「不安だ……スゲェ不安だ……」」」

 

轟の叫び。それにどうしたものかと戸惑いながら……それでもファイティングポーズを取る荼毘×3。

 

こうして三極の戦場はそれぞれ歩を進める。

 

……この後に加速していく戦場。

……その空気を、微塵も感じさせないままに。

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