回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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HERO

side緑谷

 

「あ!?ヴィラン連合がエリちゃん使って人質交渉!?」

 

「……え?」

 

蛇腔総合病院周辺の人々の避難活動中、バーニンに相談したい事が出来た為、彼女に近づいた僕の耳に突如不穏な会話が聞こえて来た。

 

インカムで誰かと話しているバーニンの、その会話が耳に届く。

 

「ワン・フォー何!?とりあえずアシスト向かう!」

 

……当然、僕も耳にインカムはつけている。

だから当然……僕の耳にも直接……その言葉は聞こえていた。

ただ……

 

 

 

「『ワン・フォー・オールを俺に差し出せ……与一……ワン・フォー・オールと、このガキは交換だ……ワン・フォー・オール……力だ……俺に力をよこせ……力を僕に……』……だと?何を……何を突然言ってるんだ荼毘は……?」

 

 

……ただ、一瞬その言葉の意味を理解したくなかっただけで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side爆豪

 

「……あ」

 

あ……あ、あ、あ………

 

「……不味い……不味い、不味い、不味い!!!」

「……トンガリ?」

 

最悪だ!!最悪!!最悪過ぎる!!

 

最悪だ!!こんな事が!!こんな言葉がアイツの耳に入っちまったら!!

 

『ホークス!!他!!突入班聞こえるか!?』

 

……ああ!!クソが!!やっぱり予想通りだ!!

 

『緑谷が!!デクが!!突如そっちの方に!!蛇腔総合病院の方に向かって高速で向かってる!!ああ!!追いつきたいけど追いつけねえ!!何てスピードだよアイツ!!』

 

 

やっぱり!!アイツの!!デクの性格なら!!こんな事を聞いちまった以上!!アイツは止まっちゃいられねえ!!

走り出しちまう!!何も考えずに体が動いちまうんだ!!そういうヤツ何だよアイツは!!

 

 

「………ああ、こっちに近づいてくる……サーチの個性でハッキリわかるよ与一……ワン・フォー・オールを俺に捧げる為に、僕の元に帰って来てくれているんだねワン・フォー・オール……ああ……ワン・フォー・オールの力さえ俺は……俺は……俺は!!!!与一!!与一ぃぃぃ!!!」

 

 

ドン!!!!!!

 

「荼毘!!」

 

こちらへと向かっているデクの気配を察知したのか!?

突如荼毘が!!トゥワイスの個性によって増えた、コピーではない本物らしき荼毘が!!この空間の出口に向かって高速で飛んだ!!

 

「エリちゃん!!」

「みんな!!」

 

……その手にガキを抱えて!!だ!!!

 

「クソがあ!!」

慌てて追いかけようとする俺!!それに!?

 

「動くんじゃねえよクソガキがあ!!」

 

「……ちぃ!!!荼ぁぁあ毘ぃぃぃいいい!!!!」

 

そんな俺に向けてヘルスパイダーの熱線を放ち、牽制する複製荼毘!!

 

「まだ人質交換の交渉中だぜぇ!!動くんじゃねえぞヒーロー共!!」

 

「クソがぁ!!!!!」

 

「荼毘くん!!話が違いますよ荼毘くん!!人質の返還交渉は私に一任する約束だったのです!!止めて!!あの荼毘くんを止めて下さい!!」

 

「「ひゃぁぁぁっはっはっはっは!!今更止められるかよ俺をよぉ!!良いじゃねえか!!これはこれでおもしれー!!おもしれーぞぉぉぉぉ!!!」」

 

「荼毘くん!!!」

「荼毘テメェ!!」

 

そして!!この僅か極小の時間に!!本体の荼毘はガキを連れてこの空間から離脱!!間違い無くこの病院へ向かって来てるデクの方へと向かった!!向かっちまってやがる!!

 

 

『デクです!!突然の全体通信失礼します!』

 

 

そしてああクソがぁ!!テメェなら!!テメェならば!!この状態で!!絶対にそう言っちまうよなぁ!!

 

 

そしてそしてそして!!デクの言葉が!!インカム越しに皆の耳に突き刺さる!!

 

 

 

 

 

 

 

『荼毘は僕を狙ってる可能性があります!!エリちゃんごと僕の方に誘導出来るかも!!』

 

 

 

 

 

 

「あぁぁああああああ!!!!!クソがぁぁぁぁぁ!!!」

 

「トンガリ!?」

「爆豪!?急に何を!?」

 

クソが!!クソが!!クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが!!!!

 

「……クソがぁ!!!!!!」

 

「ダイナマイトくん……」

 

 

ああ!!クソが!マジでクソだ!!誰だ!?誰だよこんなクソな脚本書いた奴は!!マジでソイツは性格最低最悪のクソ野郎だ!!

 

「頼む!!ダイナマイトだ!!誰か!?誰でもいい!!誰でもいいいから!!誰でもいいんだ!!頼む!!頼むからデクをフォローしやがれ!!」

 

インカムに向かって叫ぶ!!ああ頼む!マジで頼む!!

 

クソが!神に祈ってもいい!!仕方ねえよ!!俺が今!!そこに!!デクの側に今俺がいたなら俺がやるんだ!!

 

 

でも!!今俺はここにいる!!ここにいるからアイツを!!デクを助けられねえ!!今フォロー出来ねえんだ!!

 

「だから!!」

 

ああ!!だから!!頼む!!誰か!!誰でもいい!!誰でもいいんだ!!誰か!!!

 

 

「誰か!!誰でもいい!!誰でもいいからデクをフォローしやがれ!!頼む!!頼むよクソがぁぁぁぁぁ!!!」

 

俺の叫びが空間に響く。

この空間内に。

インカム越しの誰かに届けと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side緑谷

 

トップスピードで無人となった市街地を駆け抜ける。

皆で病院周辺の人達の避難活動をかなり頑張ったおかげかな?無人の街並みを今僕は一人で駆け抜けている。

誰も、誰一人として人影を見ること無く、僕は街を駆け抜けていた。

 

(エリちゃん……そしてワン・フォー・オール……)

 

ぐるぐると心の中を重い想いがぐるぐるぐるぐると駆け巡る。

 

今の自分の行動……これが正解なのかどうかすら、正直言ってそれすらもわからない。

でも……

 

(エリちゃん!!)

 

……あの小さな小さな……これまでとても辛い人生を歩んできた女の子。

 

「……絶対に……絶対に助けてみせる!!」

 

いくつもの建物を追い越し駆け抜け、そしてついに僕は蛇腔総合病院まで辿り着いた。

 

そして!!

 

「デクさん!!」

「エリちゃん!!」

 

そして!!

 

「ああ……ようやく会えたぜワン・フォー・オール……俺の元に帰って来てくれたんだね与一……」

 

「荼毘!!」

 

それはまさに運命的と言うか奇跡のようなタイミング!!

 

僕とは逆に病院から外へと飛び出してきた荼毘とエリちゃん!!

 

 

OFAを受け継いだ僕。

AFOを受け継いだ荼毘。

 

こうしてついに僕達は正面から対峙する事となった。

 

 

「エリちゃんを離せ荼毘!!」

 

 

「……エリ?エリ?……ああ……エリね……そうかこのガキか?そう言えばいたなこんなガキも……いいぜ、返してやるよ……テメエが……与一が……ワン・フォー・オールを俺に捧げるって言うんならなぁ!!」

 

狂気が、溢れる。

 

狂える魔王が口を開く。

爛々と輝く妖しい瞳。

不安定に揺れる体……しかし、エリちゃんを捕まえている手だけはしっかりと力強さを感じさせる。

 

そんな、狂気に支配されたように見える、荼毘が。

 

「……さあ、俺に捧げろよワン・フォー・オールを……」

 

荼毘が、僕に向けて、空いているもう一つの腕を伸ばす。

 

「来いよ……これで俺は……僕は……生意気なヒーロー共を皆殺しにして……世界を壊して……その最後に親父を殺して……絶望した親父……ああ、そして与一が帰ってくるんだね僕の元に……」

 

(……何を言っているんだ、荼毘は?)

 

余りにも狂気が溢れるそのカオスな言葉。

 

奴は……ひょっとして正気を失っているのか?

 

(……だったら!!)

 

グッ!!と全身に力を込める!!

 

(これなら!!ワン・フォー・オールを渡す事無くエリちゃんを無事に取り戻せるかもしれない!!)

 

荼毘は明らかに正気じゃない。

これなら!!僕さえ上手くやれば!!

 

しかし……

 

「……んだよ、その目は?」

 

「……えっ?ぐわああぁぁぁ!!!」

 

ザク!!ザク!!

 

「デクさん!!」

 

突如、こちらに向かって伸びていた荼毘の腕から凶悪な爪が2本出現!!そして僕の両足の甲を高速で貫く!!

 

激痛が走る!!その激痛で思わず僕は叫んでしまった。そしてエリちゃんが泣きながら僕を見ていた。

 

「……そんな生意気な目で俺を見るなよ……僕が油断してるとでも思ったのかい?ひょっとして、個性を奪われる事無く無事にガキを助けられるとでも思ったのかよ!!生意気だな!!許せねえよ!!あんまり僕を舐めるんじゃねえよ!!」

 

両足の甲を貫く爪を戻しながら叫ぶ荼毘。

爪を引き抜く際に更に足が傷つけられ、その激痛に叫びそうになって!!でも叫ばない!!叫べない!!何故なら!!そうしたらエリちゃんが更に泣いてしまうからだ!!

 

激痛に耐えながら、傷ついた足でしっかりと地面に立つ。

 

狂気に支配されているようで、どこか冷静な部分もあるのか?しかしそのすぐ後に激昂し叫び出した……何でこんなに精神的に不安定なんだ荼毘は?

余りにも精神的に異常な状態だ。狂気、冷静、激情……そしてまた狂気……一瞬でコロコロと精神状態が変わり過ぎている。

 

 

今のやりとりから、そんな事を思う。

だとしたら……

 

『だったら……その冷静さを失う程の精神的な衝撃さえ与える事が出来れば……荼毘は再び怒りと狂気に支配されて、エリちゃんを救出する一瞬のスキを見せるかもしれないね』

 

(……物間くん!!)

 

突如、脳内に響く物間くんの声!!これは!!

 

『個性テレパス……今、君にだけ聞こえるようにメッセージを送っているよ。全く……無茶苦茶するね緑谷。確かに人質の交換交渉は必要だけどさ、人質交換の条件になってる君本人が敵の目の前まで一人で行ってどうするのさ……』

 

それは正直ごめん!!

 

そんな僕の心の声が届いたのか?物間くんは続けて、

 

『……ま、こうなった以上、今更そんな事を言ってもしょうがない。君の事だ。まだまだやれるだろう?この状況で、たかだか両足の甲に風穴空けられたくらいで止まるようなヤツじゃないよね君は!!』

 

(……うん!!もちろんだよ!!)

 

テレパスは向こうのメッセージは届くけど、こちらからメッセージは送れない。

だから、気づいてくれ……と、そう願い、激痛を我慢しながら右足を軽く持ち上げ、つま先で地面をコツコツと軽く二度三度叩く。

 

僕の足はこの通り大丈夫だよ!!

この状況を打開する策があるなら気にせずやってくれ物間くん!!

 

そんな、声に出さない僕のメッセージ。

 

『……よし。カッコいいぜ緑谷』

 

それを彼は無事受け取り。

 

『……君の意志はちゃんと受け取ったよ緑谷。これより作戦を伝える。応えてみせてくれよ緑谷』

 

そして物間くんから作戦が伝えられる。

 

『僕がこれから荼毘を煽る。それはもう本気の本気で煽りまくってやるよ。徹底的に煽りまくってアホみたいに激怒させる。今の荼毘みたいに精神的に不安定じゃない一般人でも、例え相手がヒーローだったとしても、煽りに煽りに煽りまくって間違い無くキレさせてみせる。そして荼毘が激怒したタイミングで、さらにもう一個僕が仕掛ける……これで、ヤツの脳をパンクさせてみせる。君は、この一瞬のスキを活かしてエリちゃんを救出してくれ』

 

物間くんの煽り……それも、本気の煽りか……

 

最近はフィクサー役としての裏方の立場が目立っているが、元々の物間くんは相手を煽り、それによって出来た隙を多彩な個性で攻める、というトリッキーな戦いを得意としていた。

 

……インターン以降、急激に成長した物間くん……

 

その、本気の煽り。

 

(来る……来るぞ、確実に!!確実にエリちゃんを助けるチャンスが来る!!全力で!!全力でその一瞬のチャンスを活かしてみせろよ緑谷出久!!)

 

それすら出来なくて何がヒーローだ!!

 

 

『あれ〜!?あれあれあれ〜!?おやおやおや〜!?何だい何だい!!なんかヒーローとヴィランが全力で戦う真面目な戦場に!!一人だけ色々勘違いしたキモチ悪い魔王もどきが参戦してるみたいだねぇ!!デカい図体してガキみたいなことばかり喚いてるキモチ悪い魔王もどきがいるじゃないか〜!!ねえ何でキミこんな場違いな所に来てるんだい〜!?』

 

「……何だ!!この気に食わねえ声は!!テレパスじゃないか!?クソ!?何処からだ!!誰がガキみたいなキモチ悪い魔王もどきだとぉ!!姿みせろよ!!僕が殺してやるぜえ!!」

 

そして!!物間くんが仕掛けた!!

テレパスを荼毘にも繋ぎ!!そして!!煽る!!

 

『ガキみたいなキモチ悪い魔王もどき、って評価がそんなに不服かい?不思議だなぁ!!だってキモチ悪いじゃないかキミは!?そんなキモチ悪いザマでよくキミそんな事言えたもんだねえ!!ビックリさ僕は!!さっきからガキみたいにわめき散らして!!魔王なのに恥ずかしくないのか〜いキミはさあ!!そんでもって!!そんだけ多くの強力な個性を持ってるのに!!さらに緑谷の超絶身体能力強化みたいな個性まで欲しがるなんてキモチ悪くて悪くて悪過ぎないかぁ〜い!?何だい何だいひょっとしてあれかいパーフェクトヒューマンでも狙ってみたいのかぁい!?そりゃそんだけ多くの個性持ってて、さらに緑谷の個性まで手に入れたらそりゃパーフェクトヒューマンだぁ!?いやぁキモチ悪いねえ!!まるでダッチワ◯フにシリコンペ◯ス生やして「さあこれが無敵完璧パーフェクトヒューマンです!!」ってドヤってるみたいなキモチ悪さだねえ!!ねえねえ恥ずかしくなぁい?恥ずかしくないのぉ!?不思議だなぁ!!不思議だなぁ!?まるでゲームで最強の個性集めて無敵のキャラをメイクしようとして無様に失敗した最悪のガキをみてるような気分だよ僕はさぁ!?なにそれ!!つまんないねえ!!ギャグなの?ひょっとしてギャグのつもり!?皆の笑いを取るためにワザとこんなマネしたのかなあ!?ねえねえ今どんなキモチ?どんなキモチ?笑い取ろうとしてド滑りして!?しかもみんなにキモチ悪いって思われてる今どんなキモチなのぉ!?僕わかんないなあそんな気持ちさ!?ねえねえもう一回生まれ直してお父さんにギャグの言い方教え直してもらった方がいいんじゃないのお!?ああ!?ダメだ!?ダメだったね!?ごめん!!キミお父さんと仲悪いもんねえ!!お父さんにギャグ教えてもらうなんて無理だったねごめんごめん!!じゃあ友達にギャグの言い方教わったら?ってごめんねえ!?こんなキモチ悪いキミには友達もいないよねえ!!ごめんねえ!重ね重ねごめんねえ!!』

 

(思ってたよりトンデモナイのが来たぁぁぁ!!!!!)

 

 

これはヒドイ!!ヒド過ぎる!!

例えヴィラン相手でもここまで言っていいのかい物間くん!?

 

 

……しかし、やはり、こうかはばつぐんだ

 

 

「何だとコラァ!!何処にいる!?何処にいるんだい!?殺す!?まずテメエから殺す!?八つ裂きにしてその全ての肉片を焼き尽くして!!最後に脳みそまでグチャグチャにしてやる!!出てきなよ!!僕の前に出てこいやクソ野郎があ!!」

 

……そりゃ、キレるよね……

 

やはりというかそれはそれというか……無茶苦茶に激怒した荼毘が、テレパスで脳内に話しかける物間くんにキレ叫びまくっていた。

 

『……ふ〜ん?僕に出てこいって?……まあ、いいよ、じゃあ行こうかな?いやぁ……やだねえ。こんな気持ち悪いガキと同じ空気吸うなんてさ……ホントは行きたくないんだけどねえ』

 

そして、物間くんが、再度仕掛ける!

 

 

 

荼毘と、僕の中間。

 

荼毘から僕の姿を隠す、絶妙なポジション。

そこに、ワープの個性で生み出された黒いワープゲートが開く!!

 

「こいやぁ!!姿見えた瞬間に殺してやるよぉ!!」

 

そのワープゲートに全ての意識を集中する荼毘!!

 

(……ここだ!!)

 

……間違いない!!ここだ!!

この瞬間だ!!

この、荼毘の全意識が瞬間集中したこの、僅かな一瞬!!

 

ここから!!物間くんは更に一手仕掛けると言っていた!!

スキは、絶対に出来る!!

集中しろ緑谷出久!!

 

この一瞬に!!今出来る全てを賭けろ!!

 

そして、ワープゲートから一人の男が姿を見せた。

 

 

 

「……俺が言える筋合いでも無いが……一体何食ってどう育ったらあんな邪悪なセリフを思いつけるのだ……子供の教育とは、本当に難しいものだな」

 

 

「………………え?………………………あ?」

 

 

 

スキが!!出来た!!

 

『行け緑谷!!!』

その声が脳に届く前に!!今出来る僕の全速力で荼毘の元に!!エリちゃんの元に飛び込む!!

 

 

 

「デクさん!!」

 

 

そして荼毘からエリちゃんを取り戻す!!

抱きかかえたエリちゃんごと!!飛び込んだ勢いで荼毘の後方へ抜ける!!

 

 

背中を向けた僕……その背中に、

 

 

「……親……父?なんで……なんで、ここに親父が……」

 

完全に脳がオーバーヒートした荼毘の、そのかすれた声が聞こえてくる。

 

「……何故と言われてもな。何故も何も無い。お前を止める為に俺は来た。それだけだ燈矢」

 

 

……そして、振り向いた僕。

 

……その僕の視界に、あのヒーローの姿が……あの偉大なヒーローの姿が入った。

 

 

 

『「ランボー怒りのアフガン」ならぬ、「エンデヴァー怒りの蛇腔総合病院」って所かな?』

 

 

……そう、そこにいたのはエンデヴァーだった。

群訝山荘の戦いの時に、実の息子である荼毘の奇襲を受け、重傷を負い、個性すら失った、そんな悲しき元No.1ヒーロー……

 

 

 

……そのヒーローは、まだ傷が癒えてはいなかった。

 

……ヒーローコスチュームの隙間、所々覗く皮膚にはまだ痛々しい包帯が見え隠れしていた。

 

失った個性を補うつもりなのか?いくつもの強力なサポートアイテム……ジェットパック、足元には高機動ブーツ。高振動ナイフにスタングレネード……手元にはアサルトライフル型のサポートアイテム……

 

強力なサポートアイテムで全身武装したエンデヴァーが……傷だらけのその姿を隠しきれない男が、今、こうして決戦の舞台に戻って来ていた。

 

 

 

「……なんで……なんでここにいるんだよ親父……あんだけボロボロになって……個性も無くなったのに……どうして……どうしてここにいるんだよ親父……親父……」

 

……そして、今だけは正気に戻ったように荼毘が……荼毘が、震える声で、そうエンデヴァーに問いかけた。

 

 

 

 

 

 

「……個性が無くては、ヒーローをやってはいけないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

「「……………………え?」」

 

 

……そして、誇り高きヒーローの、静かだが、今までの全ての経験に裏打ちされた力強い言葉が!!

 

この空間に静かに!!しかし確かに響く!!

 

 

「俺が諦めの悪い男だなんて、そんなことは今更だろう……皆知っているだろう?今更だ。今更なんだそんな事は……たかが『個性を失った』程度の事で、俺がこの状況でヒーローを諦めるだなどと、本当に皆そう思っていたのか?そんなにも諦めが良くて、物分かりのいい男ならば……俺は、俺はこうまでしてNo.1ヒーローを目指し続けてはいない。とっくにNo.1を目指すのを辞めて……それなりにそこそこの人生を過ごしている」

 

「ああ……う……あ、あぁ……」

 

「……デクさん?」

 

 

その、あまりにも眩しい姿に、今、僕の目が猛烈に焼かれていた。

 

 

「親父……ああ、親父……」

 

そして、荼毘の、言葉にならない言葉に、エンデヴァーは、

 

 

「個性があろうが無かろうが、俺はヒーローだ……お前を……燈矢を止める。ただそれだけのヒーローだ」

 

 

青空の下、傷だらけの姿で、静かに……静かに吠えるエンデヴァー……

 

傷だらけの、個性すら失ったエンデヴァー。

 

 

それでも、この場の誰よりも誇り高く力強く立つエンデヴァー。

 

……その姿こそが、誰よりも、何よりも正しくヒーローだったのだと……真のヒーローだったのだと……

 

「あ……ああ……ぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

……その姿を、僕はこれから、生涯忘れる事は、無かった……

 

 

 

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