回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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覚醒

side死柄木弔

 

『こちらファントムシーフ!!エンデヴァーとデクの活躍でエリちゃんの救出に無事成功したよ!!デクも負傷したけど無事だ!!』

 

「エンデヴァーだと?個性失ったんじゃなかったのか?」

「……その筈じゃが……」

 

 

皆で荼毘主導の人質交渉の状況を確認するため、俺達は一か所に集まっていた。

交渉の一環としてヒーローからインカムを一つ受け取り、そこから聞こえてくる声に全員で耳を傾けていたのだが、エンデヴァー復帰という驚くべき情報に思わずドクターと視線を交わす。

 

「……オッサンの復帰なんてどーでもいいのです……ああ、良かったエリちゃん……無事、ヒーロー達の所に帰れたのです……良かった……良かったよぉ……」

 

「ヒミコちゃん」

 

先ほどまで誰よりも厳しい顔でインカムを睨みつけていたトガから、ほっとした様子の安堵の声が漏れた。

 

その様子を見てコンプレスやトゥワイスも一緒にほっとしていたが……

 

「……全員、気を引き締めろ。ほっとしてばかりもいられねえぞ」

 

……そう、人質交換交渉の為に戦いは一時中断していたが、本来はまだ戦闘中。

 

事実、俺の視線の先では、同じくインカムで外の状況の確認を終えたヒーロー達も、コチラへと視線を向けていた。

 

「……潮時じゃな。泥ワープで撤退じゃ」

 

俺と同じく状況を確認したドクターが口を開く。

 

「幸い、荼毘以外の全員が今ここに集まっておる。ハイエンド脳無にヒーローの足止めをさせて、その隙にさっさとトンズラするとしようかの」

 

「ドクター……荼毘はどうする?」

 

俺の問いにドクターは、

 

「……儂ら全員が撤退した後、ハイエンド脳無達に外の荼毘の撤退の援護をさせる……正直、一体か二体を捨て駒にする必要がありそうじゃが……まあ仕方なかろう」

 

「……ふん、荼毘くんなんてもう知らないのです!!」

 

「おいおい落ち着けよヒミコちゃん」

 

「ぶー」

 

先ほどから荼毘へと強い怒りを隠さないトガを懸命にコンプレスが宥めている。

 

「「はっ!!もう逃げるのかよ!!つまんねえなあ!!」」

 

そして、少し離れた所から俺達とヒーロー双方の様子を見ていた2人の荼毘が口を開いた。

 

「まだ誰もヒーローを殺してねえのに、いいのかよお前らそれで!!」

 

「俺達のアジトが襲撃されたんだぜ!!お返しに何人かヒーローを殺しでもしねえと帳尻合わねえじゃねえか!!」

 

狂気と殺意。激しい衝動に突き動かされ叫ぶ荼毘。

 

それに俺達は誰も反論も反応もしなかった。

 

「「……ちっ!!」」

 

そんな俺達の様子を見て、荼毘は心底つまらなそうにボリボリと頭をかき、

 

「「……さっさと行けよ。ハイエンド脳無と一緒に俺達も撤退の援護をしてやる……」」

 

「荼毘……」

 

……気の所為か?一瞬、荼毘から俺達を心配するような……こちらを案じるような?そんな様子が見えた気がした。

 

しかし……

 

 

「よし!!行くぞい!!頼むぞジョンちゃん!!」

 

……しかしそれを確かめる機会、時間が無かった。

 

泥ワープの個性に包まれ、俺の視覚と聴覚がぼやけていく。

 

 

 

「……逃げるつもりかい!?逃さないよ!!」

 

「「はっ!!やれるもんならやってみろよ!!」」

 

 

 

遠くなっていく声。

小さくなっていく視界。

 

俺達の前に立つ荼毘とハイエンド脳無達。

そこに襲いかかるヒーロー達。

 

そして、戦いが始まる。

きっと始まったのだろう。

 

……その光景を目にすること無く、俺達は蛇腔総合病院から泥ワープで移動した。

 

 

 

 

 

 

 

side緑谷

 

救出したエリちゃんを抱きかかえたまま、僕は眼前で沈黙したまま睨み合う2人の男を見ていた。

 

エンデヴァーと荼毘。

父と子。

ヒーローとヴィラン。

 

この地で再び対峙した親子。

沈黙は重く、ひりつく程の緊張感がこの空間を支配していた。

 

「やあ。見事だったね緑谷。素晴らしい動きだったよ」

 

そこに、ワープゲートが開き物間くんが姿を現した。

 

「……雄英の負の面?」

 

「エリちゃん!?」

 

確かに!!さっきの煽りはかなり邪悪度ヤバかったけど!!

 

しかし物間くんは、面と向かってエリちゃんにそんな事を言われたにも関わらずニッコリと笑い。

 

「やあどうも。雄英の負の面だよ。エリちゃん……君が無事で良かった。さあ、この場はエンデヴァーに任せて、僕のワープゲートで撤退するよ2人とも」

 

 

物間くんの言葉が聞こえたのか?荼毘がこちらをキッと強く睨み、

 

「……いいのか?俺から視線を外しても?」

 

「……チッ!」

 

すっ、とアサルトライフル型のサポートアイテムを構えたエンデヴァーへと視線を戻し、荼毘が舌打ちする。

 

「……さ、今のうちだ。行くよ緑谷」

 

その様子を確認し、物間くんがエリちゃんを抱きかかえた僕を促した。

 

でも……

 

「……ごめん。それは出来ないよ物間くん」

 

「……緑谷?」

 

「デクさん?」

 

「エリちゃんを頼むね物間くん」

 

すっ……と抱きかかえていたエリちゃんを物間くんに預ける。

 

思わず、といった感じでエリちゃんを受け取り抱きかかえる物間くん。

 

「緑谷?一体何を?」

 

意味がわからない……そんな様子の物間くんに、僕は告げる。

 

「……僕は、ここでエンデヴァーと一緒に荼毘と戦う」

 

「緑谷!?」

 

僕の言葉に驚く物間くん。

 

「戦うって!?戦うって正気かい緑谷!?君は両足負傷してるんだぞ!?しかも敵の狙いは君なんだぜ!!なのに何で!?」

 

「……荼毘の狙いが僕だからだよ物間くん。荼毘はおそらくラグドールから奪ったサーチの個性で僕の居場所がわかる。だから、僕がここを移動すると間違い無く荼毘は僕を追いかけてくる。そして、間違いなくその場所で被害が出る……だから、僕がここでエンデヴァーと一緒に荼毘と戦い、倒す必要があるんだ」

 

僕の言葉に物間くんは一瞬だけ考え、

 

「……理屈はわかったけど、本当にやれるのかい緑谷?その両足の負傷は決して軽くないぞ?」

 

僕の意見の正しさを認めながらも、本当に僕が戦えるのかと心配する。

 

 

でも……

 

 

「……うん。それなら大丈夫だよ物間くん」

 

 

だけど……だけど、大丈夫。

 

 

……さっきからずっと僕の心の中で、心象世界で叫び続けている人達がいるから。

 

「心配ありがとう。でも、この通り足の問題は大丈夫さ」

 

「……って!!緑谷!!君!!浮いてる!?浮いてるのかい!?」

 

『俺の力を/私の力を使え!!』と叫び続けている人達がいるから。

 

その人達の熱い想いが!!叫びが!!そして僕に与えてくれる力が!!その全てが!!僕の心を強く強く燃やし続けているから!!

 

 

 

『さあ!!俺達の力を使え!!そして!!あの素晴らしいヒーローと共に巨悪と戦おう!!』

 

 

 

7代目継承者の個性・浮遊

6代目継承者の個性・煙幕

以前からお世話になってる5代目継承者の個性・黒鞭

4代目継承者の個性・危機感知

 

エンデヴァーの姿に心を打たれた歴代継承者達が、あのヒーローと共に魔王と戦おう!!と僕の心象世界で叫んでいた!!

 

『『…………』』

 

まだ力を貸してくれない2代目と3代目も、ぶっちゃけ今すぐエンデヴァーと一緒に戦いたくてソワソワしてる気がする!!

正直、自分達以外の歴代継承者達が先に協力を申し出てしまった為『俺達2人だけでも慎重にならないと……』的な感じで頑張って自制している感じが凄くする!!

 

でも当然だ!!だって!!

 

(あのエンデヴァーの姿を見て!!共に戦いたいと思えないようなヤツがヒーローなんて志すものか!!)

 

浮遊の個性で軽く浮かび、強い決意を込めた目で物間くんを見る。

 

「……ふう、こりゃ説得は無理そうだね。覚悟完了しきった回原みたいな目をしてるぜ緑谷」

 

「……物間くん」

 

やれやれ……そう言いたげな様子で物間くんは、

 

「……言うまでもないけど気をつけろよ。荼毘は君の個性を狙っている。無理は禁物だ。最悪、両足ぶっ壊すつもりでこの場所から高速移動して逃げるように。援護の準備はしとく」

 

「ありがとう物間くん」

 

「礼を言われる理由がないよ緑谷……さっきので僕は君を認めた。ちゃんと無事に帰ってこいよ……全く、制御出来ない超絶パワーに複数の個性使いだなんて……まるで物語の主人公みたいなヤツだね君は」

 

「あはは……」

 

そして最後に軽く悪態をつくと、物間くんはエリちゃんを連れてワープゲートに向かい、

 

「……雄英の負の面は実はイイ人?」

 

「……ふふ……いいや、僕はとっても悪いヤツさ。くれぐれもそこを勘違いしちゃダメなんだぜエリちゃん」

 

……エリちゃんと、どこか楽しげな物間くんの声が、ワープゲートの中に消えていった。

 

そして、その2人と入れ替わりに。

 

「……話は聞いていた。私も援護に入ろう。デク……君はあまり前に出ないように」

 

「ベストジーニスト!!」

 

トップヒーローであるベストジーニストが物間くんのワープゲートから現れた!!

 

「……ここでベストジーニストかよ……チィ!!だが関係ねえ!!テメエの個性は俺の炎相手じゃ相性悪いだろうが!!伸ばした繊維を全部燃やし尽くしてやるぜ!!」

 

「フッ……真に優れたデニムとは細部の仕上げにこそ魂が宿っているものだ。私の技が大技ばかりだと思うなよ?当然、援護用の小技も用意はある……ここで貴様にデニムの奥深さを味あわせてやるとしよう」

 

「はっ!!やってみろや!!」

 

「……すまんな、協力感謝するベストジーニスト」

 

「かまわないさ。ただ単に、私が貴方と共に戦いたいだけなのだからな」

 

(ああ!!ベストジーニストも僕と同じ気持ちなんだ!!)

 

誇り高いエンデヴァーの姿は、間違い無く多くのヒーロー達の心に火を付けていた。

きっと、今ココにいないヒーロー達の心にも。

 

「荼毘が他人の個性を奪える以上、大人数でヤツと戦うのは愚策」

 

「ああ……少数精鋭での戦い……燈矢との戦いは、必然そうなってくる……無理はするなよ。危険と感じたらすぐに後方に下がれデク」

 

「はい!!」

 

荼毘を前後から挟んでいる今の状態。

 

横に並ぶ僕とベストジーニスト。そして反対側にはエンデヴァー。

 

その中間に立つ荼毘は、苛立ちを全く隠そうともせずに、

 

 

「ああ!!どいつもこいつも!!俺の気に障る事ばかり言いやがる!!ムカつくぜ!!ああ!!最悪!!最悪だ!!」

 

怒りの叫び、そして両の手から凶悪な炎が吹き上がる!!

 

「上等だぁ……俺を倒す、ってんならやってみろやヒーロー共がぁ!!全員返り討ちにした後で!!ワン・フォー・オールを奪ってやるぜ!!」

 

そしてその極悪な炎を薙ぎ払った!!

 

3対1の決戦が始まる!!

 

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