回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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魔王の真価・そして、一筋の希望

side緑谷

 

タイランドスマッシュが直撃し、荼毘が後方へと凄まじい勢いで吹っ飛んだ!!

 

ドゴォォォォォォ!!!

 

そして吹き飛んだ方向にあった病院の壁に激突!!轟音とともに荼毘の体が衝撃で壁にめり込む!!

 

「……………………」

 

パラパラと落ちるコンクリートの破片。壁にめり込んだ荼毘は無言。地面に落ちていく壁の欠片の音だけが、奇妙な静寂に支配されたこの空間に響いていた。

 

「……やった、のか……?」

 

思わず、僕の口からそんな言葉が漏れた。

 

タイランドスマッシュは間違いなく直撃した。

その凄まじい威力はかっちゃんお墨付きで「……ちょっとこれ使う相手考えた方がいいかもな……」というレベルの仕上がりだ。

 

流石、武術理不尽枠の回原くん直伝の技である。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『どうだ?ムエタイ、そして膝蹴りって選択肢も悪くないだろ?現代の武術では廃れた技術だけどさ』

 

『うん!!マスター出来れば強力な武器になりそうだよ!!でも何でこんな素晴らしい技術が廃れてしまったんだろう?』

 

『ああ。下手に当てると相手が死ぬからだろ多分』

 

『何でそんなモノを勧めたのかな回原くん!?!?!?』

 

『そりゃ、上手く当てれば相手が死ぬからだよ』

 

『何でそんなモノを勧めたのかな回原くん!?!?!?』

 

『……………』

 

 

僕らが武術の練習をしているのを見て興味を惹かれ、近くに来ていた尾白くんがまるで狂人を見るかのような目で回原くんを見ていた。

気持ちは大変によくわかる。何せ、僕も今の自分の目が、人様に向けていいような目をしているのかちょっと自信が無かったからだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

思い出すのはそんな記憶。

その、膝蹴り。

しかも瞬間的にフルカウル30%。

 

「…………………」

 

いくら魔王となった荼毘が相手であっても、この一撃で決まっていたとしてもおかしくはない。それ程の威力。

 

「…………………」

「…………………」

 

エンデヴァーとベストジーニストの2人も、一切緊張を緩める事無く未だ壁にめり込んだままの荼毘を警戒していた。

 

「……………」

 

………そして、

 

……………………パチ

 

「……え?」

 

………パチ……パチ……バチィ!!!バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!

 

 

「ぬう!?」

「これは!?」

 

突然、荼毘の身体が発光!!紫電を纏う!!

 

まるでクラスメイトの上鳴くんのような!!

いや!!正直それとは比較にならない程の稲妻が、炸裂音とともに荼毘の全身を纏う!!

 

同時に!!

 

ゴォォォォォォォォォ!!!!!!

 

「更に竜巻だって!?」

 

稲妻を纏い、めり込んだ壁に手をかけ『グッ』と壁から身体を引き抜く荼毘。

その身体の側には細く!!しかし天まで吹き上がる強力な風が!!竜巻が数本出現し!!まるで魔王を守る偉大な騎士のようにその側に侍っていた!!

 

 

 

 

 

 

 

side死柄木弔

 

「なあ死柄木……荼毘のヤツ大丈夫かな?」

「トゥワイスか」

 

ここは蛇腔総合病院から少し離れた山の上。

ちょうど遠くから病院が見えるギリギリの位置だ。

 

泥ワープで無事に脱出した俺達は、ヒーロー達の足止めに残ったハイエンド脳無と、そして荼毘の撤退を確認するのも兼ねてここでしばしの休息を取っていた。

 

「ふん!!荼毘くんなんかもう知らないのです!!」

 

「まあまあ機嫌直せよヒミコちゃん」

 

脱出直前の事もありトガはまだ不機嫌。彼氏が宥めているものの、その怒りが鎮まる様子は全く見えなかった。

 

「大体!!魔王を名乗るワリにはちょっと不甲斐ないのです荼毘くんは!!いくら3対4で人数的に不利だったとはいえ、あんなにヒーロー達に良いようにやられて!!ちょっと情けないのです!!」

 

「それは……まあ……」

 

プンスカプンスカと悪態をつくトガ。シンプルにただの悪口ではあるのだが、それは少し俺も気になっていたことでもある。

 

(……確かに、荼毘は強い)

 

エンデヴァーから奪った炎、さらに複数の強力な個性。

 

そして、あの凄まじい勢いで地面に投げつけられたにも関わらず、そのまま戦闘を継続出来る圧倒的なタフネス。

 

そう、間違いなく荼毘は強い。強いのだ。だが……

 

「確かに荼毘は強い……が、正直『魔王』を自ら名乗る程圧倒的な強さは無い……そう思っとるんじゃろ皆?まあ仕方無い。荼毘はまだ本領発揮が出来ておらんからのお」

 

「……ドクター?」

 

内心、皆が疑問に思っていた事。

その疑問に、ドクターが答える。

 

「元々、魔王の器としてワシらの計画の中心にあったのは死柄木弔じゃ。崩壊という強力な個性。トップヒーローと比較しても遜色無い程高い身体能力……それを活かし、近接戦闘を得意とする戦士型の魔王とする……それが本来のメインプランじゃった……じゃが、荼毘は違う。幼い頃からの無理が祟り、いくら治療を施しても寿命を延ばすのは難しく……それ故に、ワシの節制を含む延命関係の個性を組み合わせ寿命を無理やり延ばさざるを得なかったのじゃ……当然、本来は身体能力の強化に使うべきリソースを使い果たしてでものお」

 

「……………」

 

無言の俺達。その先を促す沈黙に応えてドクターは続ける。

 

「オールマイトのような超絶身体能力を与えられない以上、荼毘には別の道の強化プランを実行するしかない。それがメインの死柄木弔とは違う、サブとしての魔王・荼毘の強化プランじゃ……無理やり行った延命による、意図せずに得た超絶生命力……超耐久タフネスをベースとし、高い身体能力が必要となる接近戦関係の力をあえて捨てて、遠距離戦において無類の強さを誇る魔王とする……超絶耐久タンク型・一撃必殺系極悪遠距離砲台ビルド……死柄木弔とは真逆の、近接を捨てた遠距離特化の魔法使い……それが魔王・荼毘の強化プランじゃ」

 

「……ゲームのラストでそんなヤツが出たら、いくらそれまでが最高でもマジでクソゲー確定だろそんなクソ魔王」

 

「じゃろ」

 

遠距離から一方的に一撃死系の極悪遠距離攻撃され続けて、ようやく近づけたと思いきや超絶耐久タンクとか最悪にも最悪過ぎる!!

 

「でも……さっきの戦闘では?」

 

「……強力な上に効果範囲が広すぎるんじゃ荼毘の力は……だから、あの決して広くない室内空間では仲間の被害も気にして荼毘は全力を出せん……まぁ、もう一つ理由はあるんじゃが……」

 

「もう一つの理由だと?」

 

「……その強力な個性は、使う度に自分の細胞を死滅させる……そういう厄介なデメリットを抱えておる。それをクリアする為の個性もあるが……まだその個性の持ち主が見つかっておらん。じゃからこそトゥワイス……今の荼毘は、お主とセットでの運用が前提となっておる」

 

「おれ?」

「おれ?」

 

話に理解が追いついていない様子のトゥワイス。

その本人よりも先に、俺が気づく。

 

「……トゥワイスの個性で、その厄介だが強力な個性を持つ荼毘を複製するのか?」

 

「「………あ!?」」

 

そして!!トゥワイスもそれに気づいた!!

 

ドクターは俺達の様子を見て、そしてこっくりと頷き。

 

「いかに細胞が死滅したとしても、それが本体ではない複製なら関係無いじゃろ?超絶耐久タフネスで本体を守りつつ、複製2人でその強力だがデメリットありの個性攻撃で遠距離から敵を一方的に殲滅する……それが、本来の魔王・荼毘の戦い方じゃ」

 

「……実行出来るなら最強最悪の魔王かもしれねえが……本当に、そんな凶悪な個性なんてあるのかよ?」

 

「ある」

 

……そして、ドクターがその個性の名を告げた。

 

「個性『気象操作』……それが、その最低最悪にして、最凶の魔王を生み出す個性の名じゃよ」

 

 

 

 

 

side緑谷

 

雷が、天から地へと走る。

 

幾重にも、幾重にも。

 

カッ!!

 

そして、少し遅れて轟音が周囲に鳴り響く。

 

……そうだ。近くに雷が落ちた時、特有のあの現象。

 

「……リスクあっから使うのは控えるつもりだったがもう辞めだ……ここで死ぬならそれはその時……ああ……ダメだよそれは僕……いいじゃねえか俺。ここにはアンタの大好きな弟もいるんだろう?……ああ。そうだね。俺……ここで弟と一緒に皆殺しで、そして俺達も死んだら永遠だぜ……ってそうかそうだね僕……それは悪くねえアイデアだよ俺……」

 

「……燈、……矢……?」

 

「ああ……お父さん……エンデヴァー……アンタも僕と一緒に死んでくれるだろう?俺と与一とお父さん……僕が殺せば永遠に俺のもの……僕のものさ!!ねえお父さん!!エンデヴァー!!」

 

稲妻が空間を満たす!!

 

轟音が鳴り響き!!

 

そして!!その轟音を吹き飛ばすようにして竜巻が幾つも幾つも荼毘の周囲を駆け巡る!!

 

 

そして!!その全てを操る魔王・荼毘!!!

 

……それは、圧倒的なまでに絶望的な光景。

 

「あ……うぁ……く、クソ!!」

 

……それに一瞬、心が折れそうになった。

 

でも!!

 

「……それでも!!それでも!!だからって負ける訳にはいかない!!諦めるなんて絶対に出来るもんか!!!」

 

「デク……」

「デク……」

 

エンデヴァーとベストジーニストの声が不思議と耳に届く。

不思議だ。

この世界はこんなにも荼毘の所為で騒がしいのに!!

 

「何か!!何かある筈です!!ある筈なんだ!!いくらこの状況が絶望的だとしても!!絶対に!!絶対にここから逆転する為の手段がある筈なんだ!!」

 

「「デク……」」

 

「諦めない!!絶対に!!ボクは絶対に諦めない!!諦めてなるものかぁ!!!!!!」

 

叫んだ!!

状況が絶望的だなんて!!そんなのとっくにわかっている!!

 

でも、絶対に絶望だけはしない!!

 

何か!!何かある筈だ!!絶対に何かある筈なんだ!!

 

この絶対絶命の状況からでも、この戦況をひっくり返せる起死回生の一手が!!

 

 

 

 

………そして!!

 

「ヒュウ!!何だい何だいこれは!!」

 

病院から幾つかの影が飛び出して来る!!

 

ホークスだ!!剣を交えているのは脳無!?それも福岡に出たのと同じタイプらしき強力な脳無!!

 

更に!!

 

「マジかよ雷とか勘弁してくれよ!!俺!!まだ雷切は教えてもらってねえんだよ!!」

 

「まるで教えられたら出来るみたいな非常識極まりない事言うのは辞めてくれないかな回原くん!!!!!!」

 

そのホークスと脳無に続いて回原くんも病院から飛び出して来た!!

 

 

「!!!!!!!!!!!!!」

 

………あ!!!!!!!!!!

 

「回原くん!!!」

 

そして!!僕は『それ』を思いつき!!叫ぶ!!

 

 

 

 

「個性合体だ!!回原くん!!」

 

 

 

 

ああ!!これだ!!これこそがこの状況からの唯一絶対の起死回生の一手!!

 

 

 

 

「僕の全力を!!君に預ける!!」

 

 

 

 

 

僕にはまだ扱いきれないワン・フォー・オールの100%!!!

 

だけど!!きっと君なら!!回原くんならば!!

 

回原くんならば!!きっとワン・フォー・オールの全てを使いこなせる!!

 

 

 

「個性合体だ回原くん!!詳しく説明したいけどその時間が無い!!今は僕を信じてくれ回原くん!!」

 

 

 

ああ!!ヴィランが!!魔王が気象を!!台風を!!そして雷を、天を操るというのならば!!

 

 

 

 

「君とボクの力で!!天を貫こう!!!」

 

 

 

 

 

全てを貫くドリルとワン・フォー・オールの力!!

 

今ここで!!その二つを一つに!!

 

「……何がなんやらわからねえけど!!それでこの状況が何とかなるってんなら!!」

 

そして回原くんは叫び!!

 

「俺はお前を信じるぞ!!緑谷ぁ!!」

 

そして!!僕目掛けて飛びながら手を伸ばした!!

 

僕も全力で飛び!!その手に向かって自分の手を伸ばす!!

 

 

「や!ら!せ!る!かよぉ!!クソガキ共がぁ!!!」

 

 

そして!!それを遮る為に魔王の雷が!!台風が僕らに伸びた!!

 

光が!!僕らに迫る!!

 

 

そして!!!!!光が!!空間を満たした!!

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