「これからの基本方針の説明をするよ。まずは大きな2つのチームを作る。一つはホークスを中心としたプロヒーローのチーム。そしてもう一つが回原と緑谷を中心とした学生のチームだ。ホークス中心のプロヒーローチームは雄英高校の外での活動がメインとなる。雄英に籠るんではなく外に出て積極的にヴィラン連合を探し、可能であれば捕縛する……それがホークスチームの役割だ。そして僕達学生チームはさっきの話のように緑谷を囮とし、雄英を襲撃してきたヴィラン連合を迎え撃ち、返り討ちにして捕らえる……それが役割となる」
今後の作戦を説明する物間。
なるほどね。
緑谷を囮にするのはわかるけど、敵の襲撃を待つ間戦力を遊ばせてるのも勿体ないもんなあ。
だから戦力を分け、片方は外での探索を行う、と。ご尤もな話である。
「ここで僕からプロヒーロー達に要請があります。雄英のBIG3である通形先輩、天喰先輩、波動先輩の3名。この3名を卒業後もしばらくは出向という形で雄英に残して欲しい」
「えー!?何々!?ねえ私今名前呼ばれた?呼ばれたよね?何でだろう不思議不思議!?」
突然予想していないタイミングで名前を呼ばれ、元気よく反応するねじれ先輩。
「……嫌だこの視線……この注目……あんまり俺に注目しないでくれ……」
「諦めるんだよね!!この状況で名前が出たら注目されるのが自然なんだよね!!」
そしてらしい反応をする天喰先輩と、それを励ます?通形先輩。
そんな3人に物間は、
「敵のメインの狙いが緑谷である以上、なるべく戦力は掻き集めておく必要があります。そういう点では今も雄英に所属し、プロヒーロー達に混ぜても高い戦闘力を持ちながら学園生活に慣れている御三方にご協力願うのが自然でしょう?……そういう訳で、センチピーダー事務所、ファットガム事務所、リューキュウ事務所としてはこの要請についていかがでしょうか?」
そう言って物間がプロヒーロー達の方に問いかける。
「代表代理で来ているサー・ナイトアイだ。異存は無い。構わないなミリオ?」
「当然なんだよねサー!!」
「コッチも異論は無いでえ!!なあ環!!」
「……人の意見をちゃんと確認してから返事をして欲しい……でも……」
そして、天喰先輩はチラッと緑谷を見て、
「……後輩を守る為なら俺も頑張るよ……なるべく目立ちたくないけど」
「「「「「相変わらず頼り甲斐があるのかないのかわからないぞ天喰先輩!!」」」」」
下を向いてブツブツ言いながらも……『後輩を守る為に』……その一言だけは力強い意志を感じる天喰先輩。
らしいなあ、なんてついつい思ってしまう。頼りにしてますよ天喰先輩。
……そして、
「ねぇねぇ聞いた旋くん旋くん!?聞いた!?聞いたよね!?聞いてない筈ないよね!?ねぇねぇ不思議不思議!?私!?雄英高校卒業してからも雄英高校に居ていいんだって!?」
「「あ『ん』!!」」
ガバッちょ!!と擬音が聞こえてきそうな感じで俺に抱きついてくるねじれ先輩!!それを見て目が逆三角になる一佳と唯。
「ねぇねぇ不思議不思議!?やったぁ良かったぁ!!まだまだこれからも一緒にいれるんだね旋くん!?ねぇねぇ聞いて聞いて!?私ね!?スッゴク嬉しい!?嬉しいの!?この気持ち伝わってるかな!?伝わってるよね!?不思議不思議!?」
そう言いながら「むぎゅー!!」と抱きつく力を強めるねじれ先輩……大変幸せなのですが……まあ……何というか、これより先に……
とりあえずねじれ先輩を抱きつかせたままリューキュウさんの方に目を向けると、彼女はやれやれ……といった様子で嘆息し、
「……はぁ、リューキュウ事務所も異存は無いわよ。ねじれの雄英高校への出向に賛成します……でも出来ればねじれが騒ぎ出す前に賛成させてもらいたかったわ。元々反対するつもりも無かったけど。ねじれの動きの後だと、私が反対したら『マジで無いわアイツ』ってなるし、賛成したとしても『ああ……反対し難いから賛成したんだなアイツ』ってなっちゃうじゃないの、もう!!」
「リューキュウごめんね!!でもね私!!スッゴク嬉しかったの!!ホントに嬉しかったの!!だから許してねリューキュウ!!ありがとう!!」
「……もう!!そんな事言われたら何もこの後言えなくなるじゃないの!!いいわよねじれ……頑張りなさい。私も他の所で頑張るから」
「ありがとうリューキュウ!!」
そして『ぴょーん!!』と俺から離れてリューキュウさんに抱きつくねじれ先輩。ホントに妖精みたいに落ち着きがない人だなぁ。
美人が抱き合ってイチャイチャプレイしてる光景は大変眼福な訳で、皆がしばしその光景に癒される。
「……あ、でも住む所どうしよう?ねぇねぇ不思議不思議!?雄英に残るのはイイんだけど私何処に住めばいいのかな?いいんだろう?ねぇねぇ不思議不思議!?ねぇねぇ私どうしたらいいの?」
とりあえず気になった事は全て口に出してしまうねじれ先輩。
「……あ!!ねぇねぇ!!旋くん旋くん!!聞いて聞いて!!私ね!!良い事思いついたの!!ねぇねぇこれ名案じゃない!?これしかないよね!?ねぇねぇこれ素敵だよね素敵だね!!ねぇねぇ不思議不思議!?!?」
そしてリューキュウさんのとこから再び「ぴょーん!!」と跳ねて俺に抱きついてくるねじれ先輩。
「「……(ん)」」
それを見て無言で動き出す一佳と唯。
そしてそんな何もかもを気にせずねじれ先輩か口を開き!!
「ねぇねぇ!!私の住む所がなければ旋くんの部屋に私が住めば良くない!?不思議不思議!!これ最高のアイデアじゃない!?ねぇねぇそうだよねそうに決まってるよね!?私達付き合ってるし一緒の部屋に住んでても変じゃないよね問題無いよね!!これが一番いい方法じゃない!?ねぇねぇ不思議不思……むぐ!!!」
「ん!!」
「はーい落ち着きましょうねねじれ先輩……そういうのやり始めると戦争になりますんで」
「ん!!」
「むぐー!!」
「……まあ一応言っておきますけど……それでもやるっていうなら、負ける気はないからこっちも遠慮しませんからね」
「ん!!」
「むぐ〜!!」
……俺の知らない所で何かが勝手に決まっているようなのだが、とりあえずねじれ先輩が口を塞がれ2人に引きずられて下がっていく。それを無言で見守る俺達……
……いや、ぶっちゃけねじれ先輩と同じ部屋で生活……というフレーズには正直心を打たれたのではあるが……ダメ?
「………」
とりあえず、無言でチラッとトンガリを見る。
トンガリは「……へっ!!」とやれやれポーズで、
「……ツタ女はクリスチャンだぞ……結婚するまで色々ダメよ宣言された俺よりなんぼかましだろテメエは」
「お、おう……」
トンガリさんも大変ですね……お互い青少年的には辛いね正直。
しかしまあちゃんとそれを受け入れた上で認めてる訳で……よおトンガリ偉いなオマエ、この物語の主人公さんかな?
そんな訳で2人、とりあえず緑谷を睨む。
「なんでさ!!なんで君たち僕を睨んでるの!?」
「「何でもねーよばーか」」
「しかも息がピッタリ!!」
いやすまんがホントに特に理由は無いのよ。
何となくタイミング的に緑谷を2人で見てしまっただけで、正直すまん。
だが、しかし……
「……そうだな、ああ……俺にはわかるぞ二人とも……」
「ここでお前が来んのかよ!?」
「マジで来んなや!!この手のタイミングでお前が後ろからニョロっと生えて来て最近良い事あった記憶がねーんだよボケ!!」
そんな感じで何だかんだと楽しく話している俺達3人の後ろから、突然ニョッキと轟が生えてきた!!
「心配するな。俺はベストジーニストとエッジショットの2人からあれからも色々と学んでいるんだ」
「「「だから不安しかねーん(ないん)だよ!!」」」
「最初に彼女が3人います……あと2人彼女が増えると何人になるでしょう」
「「「おおいコラァ!!!何言い出すんだよオイ!!!」」」
「不正解」
「「「いやだから続けんなよ!!!」」」
「男は……最初にどうやってその3人の彼女と付き合ったか聞いてほしいの……そして新しい彼女2人を一緒に
「ギャァァァ!!」
「俺じゃねえ!!オイ!!俺が言った訳じゃねえからなコレ!!オイ聞いてっかツタ女!!」
「あ!麗日さんが僕達をゴミを見るみたいな目で見てる!!違う!!違うよ!!違うからね麗日さん!!」
「それが、ベストジーニストとエッジショットから教えてもらった、男の答え……」
「「「ほんっとに!!プライベートではろくな事言わねえなあのダメ大人2人!!」」」
「……フッ」
「……(グッ!!)」
「「「見てないで助けろぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「「「「……………」」」」
「あ!!ち、違う!!違うから!!ぶっちゃけハーレムと無理です!!3人でホント限界!!もうこれ以上増やすとかないから!!頼むからそんな目で俺を見ないで!!」
「臨時株主総会の時に話してケリついてんだろうがぁ!!だから落ち着けやコラァ!!そのアンリマユばりに髪の毛伸ばしてビタンビタン地面を叩くの辞めてくださいオラァ!!」
轟爆弾が炸裂し、とりあえず平謝りする俺とトンガリ。
「……デクくん……私思うんよ」
「はい!!麗日さん!!」
「……良くない事は、やっちゃダメだからね」
「はい!!麗日さん!!」
そしてなんか意味深なやり取りをしている緑谷と麗日がいました……
side蛙吹
「けろけろ……私、思ったことは何でもすぐに言っちゃうの」
雨降って地固まるかと思いきや、別方向からの爆弾で再度足元が崩れ落ちた人たちを……特に、お茶子ちゃんと緑谷ちゃんを見ながら、
「……メタ的な何かの記憶が流れ込んできてるのよ……ああ……お茶子ちゃんが大切な見せ場を一個、爆豪ちゃんに奪われてしまったのでは?……っていうね。でも冷静に考えるとアレは恋愛というよりは友情的な感覚の強いイベントな気もするのよね。結局、そんな一大イベントがあったとしてもこの後十年くらい付き合うとかもなく友人として過ごしてそうだし……難しいわね恋愛って。けろけろ」
そんな事を思いながら周囲を見渡す。
恋愛で揉めてる極小界隈。緑谷ちゃんを俺たちで守るんだ!!と盛り上がっている熱血界隈。それに混ざりたいけど性格的に混ざりにくいから遠くから決意を固めている人たち……そしてそんな学生達を「若いっていいなあ」と眺めている大人達……一瞬、ミッドナイトが視界に入ったけれどそこからは目を逸らす。鼻血で輸血おかわりとか初めて見たわねけろけろ。
「…………」
「……?物間ちゃん?」
……そして、そんな皆の顔……その一つ一つをじっと確かめるようにしてじっくり見渡す物間ちゃん。
……その、視線の先には、
「……青山、ちゃん?」
どうしたのかしら?
またお腹が痛くなっちゃったのかしら?
プラスの感情が支配しているこの空間。
……その中で、たった一人……よくわからないけど、何かしらのマイナスの感情を秘めていそうな、そんな顔をしている青山ちゃん。
元々、彼はこんな感じで皆と笑い合いはしゃぐのは得意ではないタイプだった。
だから今、彼が一人でいるのは……別に、そんなに変な事ではない。ないのだ。
でも……
(……なんて顔をしているのかしら、青山ちゃん……)
「……あ」
……そして、私がそれを彼に聞くことはなく……彼は一人この場を去り、自分の部屋に行ってしまった。
side死柄木
「雄英高校の卒業式を襲撃するだと?」
「ああ」
先生の持つアジトの一つ。
そこで俺たちは今後の事について話していた。
「直近のヒーロー共の躍進には雄英のガキ共……スパイラルを中心とした学生の活躍がある。その象徴とも言える雄英高校の一大イベントを襲撃し大被害を出し、ヒーロー社会へ揺さぶりをかける訳だ……ついでにワン・フォー・オールが奪えるかもしれねえ。悪い作戦じゃねえと思うぞ」
「……確かに、な」
荼毘からの雄英高校卒業式への襲撃のアイデアを聞き、俺は考える。
(……確かに、悪くない)
昨年末の福岡の一件。
エンデヴァー起因によるヒーロー達の権威の失墜。
それをフォローしたのは雄英の若きヒーロー達の活躍……スパイラルを中心とした若き小英雄達の活躍という要素が大きい。
この作戦は、そんな小英雄達の本丸である雄英高校を襲撃し、実戦力・世間的評価の両面に大ダメージを与える事が出来る。もちろん、成功したのなら、だ。
「……確かに成功すれば、ヴィラン連合にとっては大成功なのです……が、雄英高校の卒業式の日程と、開催場所は非公開なのです……どうやってそれを特定するのですか?また私を雄英高校に潜入させるのですか荼毘くん?」
トガの至極もっともな疑問。それに、
「フッフッフ……心配しないでいいよトガヒミコ……全部僕に任せてくれ」
「荼毘……くん?」
そして、荼毘の顔をした、荼毘でない「誰か」が笑い、
「僕には『友達』が多いんだよ。その友達から、雄英高校の卒業式の日程とか場所はすでに教えてもらっている……だから、後は俺に任せてくれれば大丈夫だ!!なあトゥワイス!!」
「えー!?俺ぇ!?」
突然話を振られて戸惑うトゥワイス。
「……ふむ、トゥワイスの個性で荼毘を最初から増やし、気象操作する魔王・荼毘×3での雄英高校の卒業式襲撃か……これ以上無いくらいの特級戦力じゃな。卒業式の日程と場所が特定出来ているのであれば十分成功の芽はあるじゃろうのう」
「……本当に雄英高校の卒業式の日程とか場所が特定出来てるんなら……まあ、反対する理由はねえな」
「……だな」
……そして、俺とコンプレスが頷き、作戦の実行が決まる。
雄英高校の卒業式。
本来はおめでたいイベントの日。
……そこが、次の戦いの舞台となる事が確定した。