回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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卒業式血戦前夜

sideエンデヴァー

 

「まだ寝ないんですかエンデヴァーさん?」

「……ホークスか」

 

雄英高校の卒業式を翌日に控えた前夜。

明日のために用意された、雄英高校から適度に離れたとあるホテル。

その屋上で雄英高校のある方角を一人見ていた俺の元にホークスが来た。

 

……その顔を見て俺は、

 

「……『決戦は明日だから、早めに寝て身体をしっかり休めろよ』……という、当たり前の事をわざわざ言いに来た訳ではなさそうだな」

 

「…………」

 

俺のその言葉を聞き、ホークスが顔をしかめた。

図星だったのだろう。ホークスは非常に……本当に申し訳なさそうな、それでいてとても言い難い言葉を口から放った。

 

「……明日の決戦ですが……あまり、前には出過ぎないでくださいねエンデヴァーさん」

 

「…………」

 

……それでも、ホークスは決して俺から目を逸らすような事は無く、あたかも「今この場でこの言い難い事実を俺に伝えるのが自分の役割なのだ」と、覚悟を決めた顔で、

 

「……貴方がトップヒーローであったのは強力な個性を持っていたからだ」

 

「………」

 

「……個性を失った今の貴方には、かつて程の力は無い……それでもこれまで積み上げてきた経験と、それを補うサポートアイテムの力で並みの、凡百のヒーローよりは優れた力を持っている……それでも……その事実があったとしても、貴方は……貴方の今の力は……かつていたトップオブトップの場所には届かない」

 

「…………」

 

……そんな、残酷な事実を俺に告げる。

わかっている……わかっている。

わかっているのだ、これがホークスの役割であると。

立場が逆であれば、俺がホークスに告げたであろう残酷な言葉。残酷な役割。

 

そんな役割を、俺よりも遥かに年下のこの男にさせてしまった……それに申し訳ないと思う。

だから……

 

「……ああ、わかっている……」

「……エンデヴァーさん……」

 

……だから、その思いには、せめてしっかりと応える。

 

「俺自身の手で燈矢を止めたい……その気持ちに変わりは無い……しかし、今の自分の力も、状態もしっかりとわかっているつもりだ」

 

「…………」

 

「……その上で、自分の都合を優先するような勝手な行動でお前たちの足を引っ張るような真似はしないと誓おう。これでいいかホークス?」

 

 

「……すみません……言い難い事を言わせてしまいました」

 

「かまわん。それがお前の……No.1ヒーローの役割だ」

 

「「…………」」

 

……そして、沈黙。

 

「……突然すみませんでした……もう、行きますね……エンデヴァーさんもあまり夜更かしせずに早く寝てください」

 

「……ああ、ありがとう、ホークス」

 

「……俺に対しての初めての『ありがとう』じゃないすか今の?……こんな形で聞きたく無かったっすねえそれ……」

 

「……ふん」

「……へへ」

 

そうして、ホークスが屋上から飛び去る。

 

ホークスは優秀だ、間違い無く。

しかし、本来は不向きなNo.1ヒーローという役割を任されている男……それでもしっかりと自分の役割をやり切っている男に、素直に尊敬の念を抱く。

 

 

「……すまんな、ホークス」

 

その献身に、誰にも聞こえない謝辞を。

 

決戦を控えたとあるホテルの屋上。

一人夜空を見る俺。

そこに……

 

……コツン。

 

「……盗み聞きか、趣味が良くないな」

「……そんなつもりは無かったんだ、すまないねエンデヴァー」

 

……ホークスと違い、空を飛ぶでもなく、一人の男がやって来る。

オールマイトだ。

 

「……すまない。本当に聞くつもりはなかった。ただ……私も少し夜風に当たりたくてね」

 

「……かまわん……俺たちが勝手に話していただけだ……俺はもう部屋に戻る……」

 

「うん……明日、頑張ってねエンデヴァー」

 

「ああ」

 

そう言って、入れ違いで屋上に上がって来たオールマイトとすれ違い、俺はホテル内の自分の部屋へと戻った。

 

「…………」

 

……そんな俺の背中を……惨めな俺の背中を、じっとオールマイトは見ていた。見続けていた……俺の姿が見えなくなるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

side死柄木弔

 

「……俺はもう寝るぞ。雄英の卒業式は明日の13時からみてーだが……寝坊したり寝過ぎたりでくれぐれも体調崩したりすんじゃねえぞ……じゃあな」

 

「おう。おやすみ荼毘」

 

おやすみ!おやすみー……みたいな皆の言葉に対し、背中を向けてひらひらと手を振りながらこの部屋から去っていく荼毘。

 

ここは先生の用意していたアジトの一つ。

その中に用意されていた自分用の部屋で明日に備えて眠りにつくのだろう。

 

「「「「「……………」」」」」

 

そして、その後に残るのは荼毘を除いたヴィラン連合……つまり、俺達だ。

 

「……のう、死柄木弔よ?」

「……何だよドクター?」

 

おそらく狙っていたのだろう。荼毘がこの部屋からいなくなったこのタイミング……そんなタイミングで、ドクターが俺に問いかけてくる。

 

「この襲撃の後、お前はどうするつもりなんじゃ?」

「……それは」

 

「……もっと正確に言うならば、この襲撃の後にヴィラン連合を……今この場にいるワシラをどうするつもりなんじゃ?どうしたいんじゃ?」

 

「おいドクター……それは……今、聞くことなのか?」

 

ドクターの言葉……決戦前夜にするには多くの意図を含んだ言葉……それを止めようとするコンプレスに、ドクターは

 

「お前さんの言いたい事はわかっとる。わかっとる……が、それでも聞くべきじゃろうこれは。なあ死柄木弔よ……明日の雄英高校卒業式襲撃はワシラも賛同しとる。この歪んだヒーロー社会……そのヒーロー社会に、大打撃を与える事の出来る一手じゃからな間違い無く。まあそれはいい。いいんじゃ、それはワシもかまわん……じゃが……」

 

じゃが……と、ドクターは決定的な言葉を告げる。

 

「……このまま一生ワシラは……反体制の、反ヒーロー社会のゲリラ的な活動を続ける……続けて行けばいいと。そう思っているのか死柄木弔よ。全員が……ワシラ全員が戦い死ぬ時まで、そうやって反社会的な活動をするのだと……し続けるのがお主の目的なのか?ヴィラン連合の目指す未来なのか?ワシはそこを聞きたい。聞きたいのじゃ死柄木弔よ」

 

「……ドクター」

 

「オール・フォー・ワンであれば違う。魔王ならば違う。今もタルタロスに囚われている本家本元の魔王ならば違う。ワシに……ワシラに、もう少し魅力的な未来を、この先を示してくれているじゃろう。魅力的な未来を示す……それが優れたリーダーに必要な資質じゃ。残念ながらワシは……お主にも、荼毘にもそれを見出だせておらん」

 

ドクターの目が、決してこの問いから俺を逃がすつもりはないのだと、そんな強い意志を放ち俺を貫く。

 

「今すぐでなくともよい。当然じゃな。だが時間は正直それ程残っておらんじゃろう。だからなるべく早くワシラに示して欲しいのじゃ死柄木弔よ。ヴィラン連合を、魔王・荼毘という特級戦力を持つワシラは、これからどういう道に進めばいいのかを?どんな輝かしい未来が待っているのかを?それを、お主の、リーダーとして抱くヴィジョンを示して欲しいのじゃ」

 

「ドクター……」

 

こちらを責めるようでいて、しかしそうでもないドクターのすがるようなその言葉。

 

それは、リーダーとしてこの組織に属する人の未来へ責任を持つべき俺への言葉。

 

俺というリーダーへの、この後俺達はどうするべきか?と問いかける当たり前の言葉。

 

俺達は決して弱くない。

社会を混乱させるだけの力ならば十分にある。

それを使い、俺達はどう生きるのか?と。

 

死ぬまでヒーロー社会と戦い続けるのか?

それとも、それ以外の道があるのか?

 

ドクターはそれを聞いてきた。

そして「お前がリーダーなのだ。この問いから逃げる事は許さん」とプレッシャーもかけてきたのだ。

 

今日、決戦を控えたこの夜に。

 

そんな俺達の緊迫した空気。

それを、緩めるようにコイツらは、

 

「……なるほどな。つまり俺達は魔王・荼毘という戦術的に最強のカードを手に入れた。それを上手く使い、どう戦略的・政治的な勝利を手に入れるか?それが問題って事だよな?」

 

「……あーまたウザいこと言ってますねこのロリコンは……すみませんね。ウチのあっくん。この2日くらいで唐突に銀英伝にハマったらしく、昨日今日くらい言動が一々ウザいのです」

 

……そんな、コントをし始めた。

 

「例えば荼毘をトゥワイスの個性で増やして、1人を福岡、もう1人を札幌に配置する……それでその2つの大都市で大暴れさせてヒーロー達をおびき寄せて自害!!改めてトゥワイスの個性で2人増やして東京の大都市を襲撃!!社会的に大混乱!!大きな被害を出す事は可能!!可能なんだ!!ただしそれは戦術的な勝利であって戦略的な勝利じゃない!!今後の社会的!!政治的な勝利を見越すのであれば!!戦術的勝利に戦略的かつ政治的な勝利の意味も持たせなければならない!!ならばやはり四国!!四国と本州をつなぐ橋を落とし!!増やした荼毘を配置する事で本州と四国を孤立させ!!四国を俺達ヴィラン連合の支配下におくような戦術的かつ戦略的かつ政治的な勝利!!そう大勝利だ!!つまりそういうのを求められてるって事だよなぁ!なあおい!!そうイゼルローン!!四国こそが俺たちヴィラン連合のイゼルローン要塞なんだ!!」

 

 

「わー語りますねえこの三十路……急に『自認ヤン・ウェンリー』みたいな事語るじゃないですかマジキモいのですが……ええ……ちょっと自分で言っておいてホントに嫌ですねぇ……冷静に『自認ヤン・ウェンリーの三十路男性』とかって、自認シリーズ最強最悪レベルで特級呪物じゃないですか……え……これ私の彼氏なのかぁ……恥ずかしいですねえ……ちょっと死にたい」

 

「…………」

 

『なあ俺の彼女口悪すぎない!!ねえ!!』

 

……みたいな目でこっちを見てくる三十路自認ヤン・ウェンリーコンプレスに、

 

「「いや知らんわ。こっち巻き込むなバカップル」」

 

「おおい!!味方!!味方!!俺の味方イズ何処!?」

 

……そんな感じで荒ぶるコンプレスとトガに宥められた所はあるのだが。

 

(……俺たちの、未来……か……)

 

ドクターの言葉……それについては元より考えていた事でもある。

 

自分としても、この後こうしよう、こっちはどうだ?というイメージはあるのだが……

 

 

(……今は、まだ言えねえ)

 

ドクターに言われるまでもない。

それはタルタロスにいたころから考えていて、タルタロスから出ても考えていることだ。 

 

でも、まだ言えない。

 

(一つは……俺たちヴィラン連合が大勝利してから言える……もう一つは……俺たちヴィラン連合が大敗北しなけりゃ言えない……だ、なんて、この時点で言えないだろうが……)

 

リーダーとして思うことは、当然ある。

皆の未来の為にも考えている事は、ある、

 

 

俺たちが勝っても負けても……どっちでもいいように考えてはいる。上手くいくかは別だけど。

そんなそれぞれの思いや思惑、気持ちを抱えた夜が過ぎていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side????

 

「次は……俺だ!!!」

 

 

 

………そして、物語は血戦を迎える。

 

 

 

 




原作時系列的には多分間違ってない。
むしろここしかないお邪魔虫乱入!!
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