回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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それぞれの加速していく戦い

sideエンデヴァー

 

「雄英高校敷地内に荼毘の姿を確認したと連絡あり!!」

 

「飛んで火に入る春の(ヴィラン)デニム……と言いたいところ……いや、言いたいではなくそうするべきなのだな。そう、我々の力と行動で……」 

 

「ええ……ですね先輩。俺たち全員の力で、ここでこの戦いにケリをつけてやりましょう!!」

 

敵を油断させる為、ある程度雄英高校から離れたとある山中。

おそらくは雄英高校卒業式を襲撃に来るだろう燈矢……いや、荼毘……それに備えていた俺達は、雄英高校内のメンバーと連絡を取っていたバーニンの報告を聞き、一気に気を引き締めた。

 

「……先行します!!ついでに本体の荼毘が潜伏していないか周囲の偵察もしておきますね!!」

 

そう言ったなりホークスは翼を広げトップスピードで宙を翔ける。

 

一瞬で遠ざかっていくその背中。

……それに、

 

「はっ!!生意気だな!!追い抜いたる!!」

「あんま年寄りをこき使うんじゃねえよ!!」

 

追いつけ追い越せと全力で飛び出すミルコとグラントリノ。

 

そんな3人の背中。

 

それを……正直、羨ましい……と……そんな素晴らしい個性を持っている彼ら3人の事をとても羨ましい……と、そんなクソくだらない考えと共に見送って。

 

「行くぞ」

「ああ!!」「おう!!」

 

俺達は用意されていたヘリに乗り込む。

 

(……今更、無い物ねだりをしても仕方無いのだ)

 

……だから、焦るな轟炎司。

 

出来る事をやるのだ。

出来る事を全てやるのだ。

その上で、それが例えいかに困難な事だったとしても、それでも燈矢を止めると決めたのだろう?

 

そのために、例えどれだけ無様であろうとも。個性を失った弱いヒーローになったとしても。それでも、それでもヒーローを続けると決めたのはお前だろう轟炎司よ。

 

(……だから、今この一瞬、一秒、一分……その全てで出来る事を積み重ねろ。積み上げ続けるのだ)

 

 

 

今も昔も、常に目の前にはデカい壁。

過去はオールマイト。

そして今は魔王となった息子。

……そう、だからやる事などこれまでと全く変わらないのだ。

 

個性を失った事など、俺にとっては些細な問題だ。

 

そう、俺はエンデヴァー。

……この程度の苦境でやるべき事を投げ捨てられる程、諦めのいい男ではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side麗日

 

「雄英高校敷地内の各所に繋がるワープゲートを作ったよ!!さあ!!頼むよ索敵チーム!!」

 

物間くんが作ったゲートに索敵能力に優れたメンバーが次々と飛び込んでいく。

 

取蔭さん、障子くん、口田くん、そして。

 

「じゃあ物間、私も行ってくるわね。うらめしいけど」

 

「ああ、頼むよ柳」

 

(柳さん?)

 

B組生徒の柳レイ子さん。

個性はポルターガイスト。

 

(優秀な個性だけど……)

 

索敵?柳さんも?

 

ふと浮かんだ私の疑問。

しかしそれはすぐに解消する。

 

「……あ!!高性能の小型カメラ!!」

 

そう!!ワープゲートをくぐった先で柳さんが個性で飛ばした多くのモノ!!それは集音マイクも備えた高性能の無数の小型カメラだった!!

 

その無数の小型カメラを柳さんが完璧に制御し、四方八方へと飛ばしていく!!

そして私達の待機していた部屋に備えられたモニターの画面が分割。無数のカメラが映し出す無数の映像がモニターに広がっていく!!

 

(確かに!!単純にモノを飛ばしてぶつけるよりも!!これは柳さんの個性を有効に使う方法かもしれないけど!!)

 

攻撃ではなく索敵特化にさせた柳さん!!

今までのイメージを全て覆し、一気に索敵系最優秀クラスにまで上り詰めた彼女!!

 

でも!!しかし!!

 

「……物間ちゃん」

「何だい?梅雨ちゃん?」

 

そう!!しかしなのだ!!

私含む索敵チームではない待機チームのメンバー多くの人が思い浮かべたその疑問。

それに梅雨ちゃんがツッコむ。

 

「確かに、柳ちゃんの個性で無数の小型カメラを飛ばして索敵するのは素晴らしいアイデアだと思うのよ。でも、このモニターに映し出されては高速で流れていく映像……ポルターガイストの個性で高速で飛び回る無数の小型カメラの圧倒的な情報量……こんなとてつもない情報量……一体、誰が適切に捌くのかしら?」

 

(そう!!それなんよ!!)

 

梅雨ちゃんの言葉通り。

巨大モニターに分割して映し出され流れていく無数の映像群。

 

この有効ではあるが凄まじい情報量!!

一体!!誰が適切に処理出来るというのか!?

 

 

 

「それに関してはワタクシにお任せくださいませ」

 

 

 

「誰ぇ!?」「けろぉ!?」

 

 

そして突如現れた謎の女の子!!

 

私達と同級生?もしくは一個上くらいの女の子。

彼女はクラスメイトらしき女の子達がモニターの前に用意したテーブルセットに座り、そして流れるような流麗な動作で淹れられた紅茶を一口。そして。

 

 

 

「聖愛学院2年。印照才子(いんてりさいこ)と申します。個性はIQ。元々は紅茶を飲んで目を閉じている間だけIQを倍増させる個性だったのですが……」

 

「……けろ。仮免試験かしら?確か……戦ったような?」

 

「フロッピーですわね?あの時と一緒と思われては困ります。そこからワタクシは努力し……紅茶を飲んでいる間、目を開けていてもIQを倍増出来るようになったのです。今のワタクシの情報処理能力であれば、この情報過多なモニターの情報ですら全て漏れなく処理しきってみせましょう!!」

 

「「「「「おおおおお!!!!」」」」」

 

何かよくわからないけど凄そうやん!!

 

思わず、と言った感じで上がった皆の称賛の声。それに。

 

「そう!!全ては我が推しメン!!ファントムシーフ様の為に!!」

 

 

「「「「えええええぇぇぇぇ!!!!」」」」

 

 

そして!!感嘆の声はすぐ悲鳴に変わる!!

 

(何か雰囲気オカシクなってきたぁ!!)

 

「……けろ」

 

そして皆の視線が推しメン宣言された物間くんへと当然向かって。

 

「そんな訳で僕のファンクラブ所属の印照さんだよ。今回は新白連合への職場体験としてこの作戦に参加してもらってる。皆よろしくね♪」

 

そんなふざけたセリフを、ヘラっと笑いながら物間くんが言ってのける。

 

「「「「ファンクラブの女の子を無茶苦茶利用しまくってるんじゃねえか!!!!」」」」

 

「「「「その上で職場体験制度までも無茶苦茶に利用しまくりやがってる!!」」」」

 

「……ぴゅっ〜ぴゅっ〜」

 

私達全員のギャースカギャースカという非難の声!!その全てに背中を向けてピューピューと下手な口笛を吹く物間くん!!一体!!誰に似たのだろうか!?一説によると回原くんの師匠筋よりも遥かにタチが悪いと言われる物間くんの師匠なのだろうか!?

 

「皆さんありがとうございます……でも、我が愛しのファントムシーフ様をあまり責めないでくださいませ」

 

「「「「我が愛しの!?!?!?!?」」」」

「「「「ファントムシーフ様!?!?!?!?」」」」

 

「………けろけろ」

 

この場での大多数の絶対零度の視線を浴びる物間くん。そんな彼を庇うように印照さんは。

 

 

「例え多少無茶に思えても、それでもいざ実際に自分の推しメンに頼られたら応えてみせるのが推し活というものです!!むしろ!!数あるファンクラブ会員の中でも!!ワタクシを頼ってくれたというのが嬉しいのです!!」

 

 

「えええええぇぇぇぇ!!!!」

 

「むしろ!!ぶっちゃけ滅茶苦茶嬉しい!!今この瞬間にも!!他のファンクラブ会員達にマウント取りまくりたいくらいには嬉しいのです!!イェーイ!!皆見てますかー!?ワタクシ!!これから皆大好きファントムシーフ様と一緒に作戦参加しちゃいまーす!!って!!SNSとかでメッチャ書き込みたい煽りたい!!」

 

 

「「「ヤバい!!この人冷静そうに見えて実は滅茶苦茶厄介ファンだぞ!!」」」

 

 

「………けろけろけろ」

 

「……ぴゅっ〜……ぴゅっ〜びゅっ〜」

 

そして下手な口笛を吹き続ける物間くん。

 

そんな彼にモノクル越しにラブビームを送りまくる印照さんと、だんだん機嫌が悪くなってきてる感じがする我が親友!!梅雨ちゃん!!

 

 

(えっ!!ちょっと待って!!待って!!待ってくれないか!?)

 

詳しく……詳しく説明して下さい!!

 

(今、私は冷静さを欠こうとしています!!)

 

ひょっとして梅雨ちゃん!!そゆことなの!?

 

確かに!!あの臨時株主総会の後!!

 

 

『けろけろ……物間ちゃん最近頑張ってるわよね。一回、物間ちゃんのファンクラブ活動を見てみたいのだけど、私一人で見る勇気が無くて……一緒に見てくれないかしらお茶子ちゃん?』

 

 

……って言われて!!ファンクラブ向けのライブ一緒に見たりしたけれども!!

 

 

確かに!?今さらながら振り返って思い返してみると!!

 

 

『けろ……頑張ってるわね物間ちゃん……ちょっとスパチャしておくわ。話し続けて喉渇くでしょうし。これでお水でも買って欲しいわね』

 

 

とか言って!!梅雨ちゃん投げ銭してたけれども!!

メッチャ投げてたけど!!明らかに1年分くらいのお水代投げてたけれど!!アレ!?これ私が悪いんか!?

 

 

梅雨ちゃん!!親友の私にはハッキリとは言わず!!もしかしてもしかしてたん!?いや!!いいんやけど!?

 

 

いやいいんよ!?親友やけど!!親友やと思ってるけど!!好きな人出来るっていいよね!!いいよね?私もデクくんおるし!?まだ告白も付き合ってもないけど!!

 

 

口笛を吹く諸悪の根源と、上機嫌な印照さんに不機嫌な梅雨ちゃん。

 

あれ!?これ!?ひょっとして!!噂に聞いてはいたアレ!?来ちゃってるのアレェ!!

 

そう!!それは!!

 

 

『なぁ……気をつけろよ耳郎。荼毘の稲妻はヤバいぜ』

『へへへ……心配してくれるんだ上鳴……そっか……でも大丈夫でしょ?やばくなったらアンタの個性で守ってよね?』

『おう!!』

 

 

「ねえ……切島?」

「……大丈夫だぜ芦戸」

「………」

「……皆で力を合わせて、皆で勝つんだ……なあ、そうだろ芦戸?」

「……うん、そうだね……切島」

 

 

「こ、小森……俺は!!」

「……もう……そんな慌てちゃダメノコよ黒色」

「……小森」 

「落ち着くノコ……黒色の個性なら……落ち着いていさえすれば絶対大丈夫ノコよ……だから……偵察、大変だけどちゃんと帰ってきてノコね黒色……」

「……ああ……俺は必ず帰ってくるよ……小森……」

 

 

 

 

 

(うーん!!最終回発情期(ファイナルファンタジー)いいぃぃ!!)

 

 

え!?ちょっと待って!?本当に私は今冷静さを欠こうとしてるのですが!!

 

私はデクくんを応援したくて!!したくて!!

 

(……この気持ちを我慢したのだけど!!したのだが!?)

 

 

そんな私の秘めた想いの……その全てを無視して……そんな事に悩む事など全くないのだと……そんな感じで世界が動いていた。むしろ加速していた?加速してすらいないかコレ?

 

誰のせいだこれ……ホークス?

 

そうだ、あのナード爆豪も言っていた……「全てホークスが悪い」と………知らんけど。

 

 

 

 

 

『『死ねや!!クソガキ共がぁ!!』』

『『『『個性合体×4だあ!!!!超!!!!ギガドリルブレイク!!!!』』』』

 

 

 

 

 

地上では怪獣大決戦。

そして、地下ではそれに勝るとも劣らぬ様々な死闘……

 

……そんな全てを抱えて、物語は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideトガヒミコ

 

「わぁー……変態だけあって仁くんの覆面含む服を上手く着こなしましたね、変態だけに」

「ねえ待って……ねえ……今の2回言う理由あった?あったの?ねえ?」

 

雄英高校敷地内。

 

人目から隠れる場所がいくらでもある……それが広い敷地を持つ雄英高校の大きな欠点だ。

泥ワープなどで敷地内に入ればいくらでもやりようはある。 

あの可愛いエリちゃんを誘拐した時のように。

 

 

身長や体型の似たあっくん……私の彼氏は仁くんと全く同じ服装になり、そして同じマスクを被る。

身長も体型もさして変わらないのだ。服装とマスクを合わせれば遠目には仁くんとしか見えないだろう。 

そして、私は荼毘くんの血を飲み……荼毘くんの姿となる。

 

荼毘くんと、仁くん。

 

ヒーロー達が今最も探しているであろう、その姿に。

そう、つまりこれは囮だ。

 

 

……囮だった。

 

「……ヒーローにヒーローのチームワークがあって。ヴィランにはヴィランのチームワークがある。つまりそういう事さ。頑張って生き延びようぜヒミコちゃん」

 

「……ですね、あっくん」

 

彼氏の、そんな私の不安を宥めるようなそんな言葉に……私は曖昧に頷く。 

 

「……ふう。全く」

「……あっくん?」

 

 

そんな私の様子を見て何かを察したのか?あっくんは無言で私に近寄り、そして無言で私を抱き締める、

 

(……まあ、仁くんと荼毘くんの外見な訳ですが……)

 

……ま、そんな無粋な指摘はしないけど。

 

ぎゅ……

 

あっくんは無言で私を抱き締める。

だから私も無言で彼を抱き返す。

 

しばし、そんな時間が……穏やかな時間が続く。

そして、2人、不思議とタイミングが合う感じで離れる。

 

 

そして、互いに自分の顔でないけれど……笑い合う。

外見とかではなく、心で繋がっている……そんな実感に、こんな時にも関わらず心が少し温まる。

 

 

そうだ、これは絶望的な……そう、絶望的と言っていい戦いなのだ。

 

ヒーロー達が圧倒的有利で……私達ヴィランが、生き残りの為の戦いを挑んでいる……そんな、絶望的な戦い。

 

 

 

(ほんと、アニメとかマンガとかなら……今の立場ってきっと逆なんでしょうけどね……ままならないものなのです)

 

 

 

……例えば、これがマンガやアニメやゲームならば。

物語の最終局面。その場面で、絶望的な戦いに少数精鋭で挑み、死中に活を求めるような戦いをするべきなのは主人公側たるヒーローの筈なのに……今、何故か私達がこんな立場にいる。

 

 

(……まるで、私達ヴィラン側の方が主人公みたいですねえ)

 

そんな、しょうもない事をふと思った。

 

「さあ……最終決戦ですよ。頑張って生き延びましょうねあっくん」

 

「…………」

 

「……あっくん?」

 

そんな、私の覚悟を決めた言葉にあっくんは、

 

「あまり気張るなよヒミコちゃん」

「あっくん?」

 

あっくんは、とても落ち着いた声で。

 

「……これは最終決戦のようで最終決戦じゃない」

「あっくん?何を?」

 

とても、不思議な言葉を私に聞かせた。

 

 

 

 

「……多分、本当の意味での最終決戦はここじゃない。本当の意味での、誰もが、どの勢力であっても、絶対に勝たなければいけない戦いはもうすでに始まり、そしてもうすでに終わっていて……多分、それはあの泥花市の戦いだ。あの戦いこそが本当の意味での最終決戦だったんだ。そして、その戦いはすでに終わっている。だから……それ以降の戦いは最終決戦以降の戦いなんだよヒミコちゃん。多分、運命はあの日のあの戦いで決まった。決まってしまったんだよヒミコちゃん」

 

 

 

 

「……あっくん?」

 

 

あっくんは、マスク越しにふっと笑って。

「だから、気軽にやろうぜヒミコちゃん」

「あっくん……」

 

 

ビシッ!!と!仁くんぽい姿で、ちょっと違ったあっくんぽいサムズアップを決めて、あっくんは笑いながら宣言した。

 

 

「死柄木弔をもう少し信じようヒミコちゃん」

「……あっくん」

 

「アイツはいいリーダーだよ」

「………」

 

まだ、疑いの気持ちを捨てきれな私に、あっくんはさらに笑って、

 

「大丈夫。この後も何とかするさ。だから今は今出来る事を精一杯やろうぜヒミコちゃん。死柄木弔についてくにしても……こここらトンズラかますにしても……どっちにしろ、俺が上手くやってやるからさ」

 

そんな事を仁くんのマスク越しに言うあっくん。

だから、私も笑って。

 

「……はい」

 

笑って、笑ってこう言った。

 

「『私達』のこと、ちゃんと面倒見て下さいね、あっくん?」

 

「………へ?」

 

そう、言った。

 

 

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