「死ねぇガキ共ぉぉぉ!!」
荼毘の叫びと共に轟雷が世界を埋め尽くす。
鼓膜がイカれてしまいそうな轟音。それよりも遥かに早く俺達に襲いかかってくる稲妻の嵐。
光速で襲いかかってくる稲妻の群れ。
その全てを躱すという理不尽極まりない行為。
「「フルカウル100%!!」」
その理不尽を、その奇跡を、緑谷が受け継いだワン・フォー・オールの力でねじ伏せ強引に成し遂げ成立させる!
俺は大地を強く蹴り!!皆を引き連れジグザグに跳ねて雷の弾幕を躱しながら超高速で地を駆け抜けた!!
「さあ!!こっちだよ与一ぃぃ!!もう絶対に逃さないよぉぉぉ!!」
致死の稲妻の乱舞をくぐり抜け、しかし息をつく暇など無い!!
そのキモい誰かの声と共に!!地を跳ね駆け巡る俺達の眼前全てを覆うような超巨大な炎の竜巻が産まれ!!そして俺達に襲いかかってくる!!
「俺に任せろ!!緑谷!!」
「うん!!轟くん!!」
その緑谷の言葉。それと同時に黒鞭で繋がった俺の身体から2割ほどの力が抜けていき、轟へと流れていく!!
「「フルカウル25%!!穿天氷壁!!」」
轟の個性を緑谷のワン・フォー・オールで超強化!!
超強化された氷の壁が凄まじい勢いで超巨大な炎の竜巻とぶつかり!!そして凍らせていく!!
「次は俺とドリルだぁ!!デク!!」
「うん!!かっちゃん!!」
そして今度は轟に流れていた力がトンガリへと流れていく!!
「やるぞぉ!!合わせろ!!ドリル!!」
「テメエが俺に合わせんだよトンガリ!!こっちもだ!!やるぞ緑谷ぁ!!」
「ちょっと待って!!なんか僕メッチャ忙しくない!?」
緑谷の悲鳴!!ぶっちゃけそのポジション冷静に考えると滅茶苦茶大変だよな!!でも頑張れよ緑谷!!きっとお前なら出来るぜ!!
緑谷からトンガリを巡った力が!!トンガリの力を取り込んだ緑谷のワン・フォー・オールの力が熱を高めて俺に流れ込んでくる!!
「俺の爆速ターボ!!使いこなしてみせろやクソがぁ!!やるぞぉ!!」
そして3人!!叫ぶ!!
「「「超ぉぉぉ!!ギガァァァ!!ドリルゥゥ!!ブレェェェイクウゥゥゥゥ!!」」」
荼毘の放った炎の竜巻を轟の氷壁が凍らせそれを更に俺達の超ギガドリルブレイクでブチ砕きブチ抜いていく!!
俺の竜巻だけでなくトンガリの爆破の力をも取り込み、緑谷の力で超強化された超エネルギーが俺達を凄まじいスピードで前へ前へと加速させていく!!
「「「「くたばれぇぇぇ!!!!」」」」
「ぐはぁぁ!!」
巨大な氷壁をブチ砕き、凍り切っていない炎の竜巻を蹴散らし、貫いた超ギガドリルブレイクが荼毘を直撃!!
巨大化した荼毘の身体を貫き後方に抜ける!!
消滅していく荼毘を横目に勢いを殺さず反転していく俺達。油断や慢心など欠片も無い。当然だ!!
何故ならば!!
「無駄な足掻きをご苦労さんだなあ!!諦めてさっさと死んどけや!!」
その俺達を追いかけるようにして、もう一人の荼毘が放つ雷の束が俺達に襲いかかってくる!!
「「「「おおおお!!!!」」」」
空中で更に更に加速しそれを置き去りにするようにして躱す俺達!!そんな俺達に!!
「鋲突+細胞増殖+細胞硬質化+瞬発力×4+膂力増強×3……ああ……後はこれもいれようかな?+でヘルフレイム……ふふふ……楽しいねえ……本当に楽しいねえ与一ぃぃ……お兄ちゃん嬉しいよ……こんなに全力を出してオマエと遊んだのは初めてじゃないかなぁ?ねえ……楽しいねえ……楽しいよなぁ!!なぁ!!オマエも楽しいだろぉ!!なぁ与一ぃぃ!!!」
稲妻を躱し続ける俺達の進行方向!!
そこに!!泥ワープの闇から新たに現れた新しい荼毘が待ち構えており!!そして!!更に俺達を追い詰める為の凶悪な攻撃が放たれた!!正直キモい!!
凶悪な炎を纏い硬質化して更に数まで増えた、悪夢のような無数の赤黒い線の走る爪のような攻撃。
一瞬で消える雷。それとは対象的なその場に留まり続けるトラップ的な要素を持つこの複合個性攻撃は稲妻の嵐との相性は抜群で、それが俺達の逃げ道を塞ぐようにして危険に!!そして怪しく広がっていく!!
驚異的な速度で炎を撒き散らしながら俺達の前方に広がる凶悪な爪!!
そして後方からは稲妻の嵐!!
前門の魔王!!後門の魔王!!
絶体絶命とすら思える絶望的な状況!!だけど!!
「緑谷ぁ!!俺に力を回せ!!」
だけど!!それでも俺達は諦める訳にはいかない!!
轟が吠える!!
「俺の強化した氷の個性で!!前方の炎の爪を全てブッ壊してやる!!」
力強い轟の言葉!!それに!!
「はっ!!調子のんなや半分野郎!!」
「トンガリ!?」
この才能マンも吠える!!
「あのブサイクな爪は個性で強度も上がってる!!テメエの力だけじゃ足りねえ!!俺も手を貸してやる!!」
「爆豪!!」
この極限の状態で放たれた2人の言葉!!
「……うん!!わかったよ2人とも!!」
その言葉に!!緑谷が応える!!
「「「ワン・フォー・オール!!!フルカウル!!!20%のおぉぉぉ!!!もぉぉぉお1ぉぉぉつぅぅう!!20%ぉぉぉ!!!」」」
緑谷を中心に!!ねじれて混ざりゆく3人の超個性!!
「「「AP穿天氷壁ショットォォォ!!!」」」
細分化された、轟の無数とすら表現出来る巨大な氷の壁!!
まるでロケットエンジンで加速された巨大な氷のミサイル群!!
無数の巨大な氷の塊がトンガリの強烈な爆破の力で宙をぶっ飛び!!眼前の炎を纏う赤黒い爪にぶつかり!!そして相互に砕けていく!!
「「「おおお!!!」」」
拮抗する最強の力と最凶の力!!
ぶつかり合う力と力!!
その苛烈な余波が氷片となり、火の粉となり、爆煙となり、爪の欠片に、衝撃波の残滓として空間に満ちていく!!
「そろそろ死ねぇぇぇえ!!」
それを塗りつぶすような稲妻の群れが背後からは迫り!!
「回原くん!!ごめん!!残り60%だけど!!何とかしのいでくれ!!」
「ああ!!当然だろうがぁぁぁ!!やあああぁぁぁってやるぜぇぇぇ!!」
雷・氷・炎・爆煙・そして様々な瓦礫が舞い散るこの世界。
その天国のようで地獄みたいな奇跡的でありかつ悪魔的な美しくも恐ろしいこの世界の中を!!俺を先頭に駆け抜けていく!!
「「「「おおおおおお!!!!」」」」
この広い雄英高校の敷地内!!
無数にある建造物!!
その全てが恐ろしい程の最大最速効率で滅んでいき破壊し尽くされていく!!
あの平和の象徴であった学び舎!!
この本来は目出度い日であった筈の卒業式の日に!!
この一瞬一秒にも満たない瞬間の連続すら!!それすらも飽和するような恐ろしい力の嵐!!その力に蹂躙され!!蹂躙され尽くし視界の全てが滅んでいく!!
それがこの地獄の黙示録の一幕!!
「出てきたばっかりでご苦労さんだがもっかい失せろやぁぁ!!フルカウル60%!!スパイラル・スマッシュ!!」
「与一ぃぃ!!ぁああ!!与ぉぉ一ぃぃ!!!」
その地獄を舗装するような雷の全てを避けながら接近!!
高速すら超越する超速で接近したその勢いその全て!!その全てを打撃力に変換した渾身の一発をお見舞い!!
「…………!??!!??!」
その一撃の威力の前に一言すら発する余裕すら無く!!
泥ワープから出てきたばかりの荼毘が消滅していく!!
「……ちぃぃ……クソが……」
消え行く片方の荼毘。遠方からそれを見送りながら、もう片方の荼毘が毒づく。
「……諦めが悪すぎんだろヒーロー見習いのガキ共が……これまで何体の俺達のコピーを倒してきたよ?気象操作含む凶悪な個性攻撃を避けつつな……いい加減、限界だろうが?攻撃は回避してても疲労の色は隠せねえ。荒い呼吸。止まらない汗。どんどん悪くなっていく顔色と疲労して硬直していく身体……テメエら4人ともとっくの昔に限界なんて超えてんだろうが……マジで諦めてそろそろ降参しろやボケ……こんなに辛いのに。こんなにキツイのに。なんでまだ戦おうとしてるんだよテメエらは?」
たまたまなんだろうけど、先ほどから生き延びてる所為で他のリポップし続ける魔王よりも、一回り大きくなった魔王・荼毘。
身体は大きくなったけれど、けれども結局小物極まりないそのセリフ。
それを、、
「……はっ!!」
「……けっ!!」
それを、俺達は笑い飛ばす!!
「僕達の今の辛さなんて関係無い」
緑谷が、
「ヒーローが辛い戦いに臨んで!!そして!!勝つなんて当たり前なんだわぁ!!当然なんだわ!!当たり前だわボケがぁ!!」
トンガリが、
「……ま、そういうこった。俺達はヒーローを目指してるんだ。俺達は、ヒーローってのは、ここにいない誰かの為に辛い事を肩代わりして、それで俺達以外の誰かを幸せにし続けるのさ。それがヒーローなんだ。今ココで、俺達ヒーロー見習いがそれから逃げる理由なんて無いだろ?」
そして、俺がそれを続ける。
「俺達ヒーローってのはな、今俺達が経験している辛いとかキツイとか、ひょっとしたら不幸かもしれない出来事と引き換えに、ほかの誰かのこれからの幸せや、明るい未来を作り出すお仕事をしてるんだよ!!だから今俺達が辛いだなんてのはとっくの昔から覚悟に織り込み済みなんだよ!!俺達はなぁ!!俺達は!!俺達も含む!!皆の幸せな未来の為に戦ってるんだ!!だからテメエがちょっと強くて厄介な魔王だからって!!それだけで諦めたり絶望なんかする訳ねえだろがボケがぁ!!!」
2人の言葉を引き継いだ俺の渾身の叫び。
そして。さらにそれを、
「……そういう事だよ燈矢兄」
「焦凍……」
……それを、更に轟が引き継いで。
「……俺達ヒーローは、未来の為に戦ってるんだ」
「………」
その言葉が、この滅び行く雄英高校敷地内に静かに、しかし、力強く響く。
「……この雄英に入学した直後は、俺も正直言ってこんな事を考えられなかったよ兄貴。でも……今は自然とそう思えるんだ。そう考えていられるんだ。そう、俺達は……俺達ヒーローは皆の未来のために……これから迎えられるかもしれない少しでもマシな未来の為に、その為に命をかける仕事なんだって」
「……焦凍」
「……だから、俺は折れないよ燈矢兄。今がどれだけ辛くても決して折れないよ。俺はこの1年で多くの人に多くの事を与えてもらえたんだ。それは、俺のこれまでの人生の長さと比較したら短い時間なんだけど……それでも、誰かが俺の為に頑張ってくれて、俺が少し幸せになれて……その、与えてくれた誰かの為に、そうでないかもしれない誰かの為に俺が頑張って、その俺の頑張りでその人達が少しでも幸せになれればいいな、って……そんな幸せの螺旋の中で。未来への道を皆で進んでいきたいと思ったんだ。だから、俺は辛くてもここで頑張るよ。頑張るのをやめないんだ。それが俺の選んだ道で、一緒にその道を進める友達と生きていきたい。燈矢兄。燈矢兄は強いけど……確かに強いけど、それで、それだけで俺の、俺達の心を砕くのは無理だよ。それこそ諦めた方がいい」
「………」
晴れやかな轟の顔。
曇る荼毘。
光と影。
希望と絶望。
未来と過去。
「俺は……俺達は……未来に向かっている。未来の為に戦っているんだ」
崩壊していく世界の中。
穏やかな轟の声。
校舎が燃えていく音よりも、はっきりとその声が響く。
「だから絶望で俺達の心を折りたいなら諦めなよ燈矢兄。俺は……俺達は決して折れないよ。だってヒーローは希望なんだ。皆の未来の為に戦っているんだ。だから、俺達は絶対に勝つ。勝ってみせる。それで皆の幸せを、未来を、希望を支えるんだ。それが俺の憧れたヒーローなんだから」
「………」
校舎が燃え、木々も燃え、地形は崩れ平和の学び舎とはとても言えないようなこんな世界の中で。
轟が、はっきりと魔王に宣言した。
俺達は。
ヒーロー見習いとは。
ヒーローとは何か、と。
そして、それを、受けて……
「……くっ……くくく……くは……」
魔王は……魔王・荼毘は……
「くは……か……かかかかかか……くは…け……ギャァァァハッハッハハッハハッハハッハハッハハッハハッハ!!!」
それすらも聞いて、笑い、そして狂う。
「……随分とご立派な事を言うじゃんよ焦凍ぉ……」
「……燈矢兄ぃ……」
そして未来ではなく過去に生きる魔王の、希望でなく絶望を求める荼毘の……その言葉が、この世界に響く。
「未来なんていらねえよ。絶望だけでいい。過去に囚われて前を向こうとしてもどうしても前を見れないヤツだってこの世にはいるんだよ!!復讐だとか仕返しだとかやり返すとかそんなありふれていてチープでどうしようもない浅ましい考えから逃げられないヤツだってこの世にはいるのさ……テメエら光に生きてる奴はそれでもいいさ。でもな。世の中にはそうじゃない奴もいる。そしてお前の不詳の兄貴はまさにそれだ。小物中の小物だよ俺は!!俺は未来には生きられねえよ!!この胸の奥底に宿るぐつぐつとマグマ以上の高温で煮えたぎる悪感情に出口を見つけてやらないと気が収まらねえ!!殴りたいんだよアイツの顔を!!地面に叩きつけて上からツバはいてザマァー!って、大声で罵ってやりてえんだ!!そんな暗い欲望から俺は逃げられねえ!!ああ!想像するだけでスカッとするぜ!!お前はそうじゃねえのかよ!!スカッとしねえのか!?自分を傷つけた奴に復讐する!!そんな甘美な想像を!!俺はするぜ!!スカッとするよ!!想像だけでザマァー!!ってなってテンション上がるわ!!復讐って、そんな甘美な妄想から俺は逃げられねえんだ!!」
「燈矢……兄ぃぃ……」
この絶望的な世界ですらも隠しきれない程の闇。
それを、荼毘が、吐き出す。
「だからもうどうでもいいんだ。未来とか希望とかそういう前向きなエネルギーの全てを破壊し尽くしたいんだよ俺は。不幸の再生産をしたいんだよ。俺は不幸で。不幸な俺がやった何かでまた新しく不幸なヤツが産まれたら……それは、俺が生きた証にならないか?……そういうチープで暗い欲望の世界が欲しいんだ。いや、違う……僕は……俺は……与一さえいれば……ああ……くそ出てくんなブラコンロートル魔王が……俺は……僕は……暗い感情の連鎖の中で生きていたいんだ。そこにしか俺の、僕の居場所はないんだ……ああ……クソ……親父……親父ぃ……今、何処にいるんだよ親父ぃ……何で……何で、今ここに……いっつも大事な時にいないんだよクソ親父……」
「……轟くん?様子が?」
「……ドリル」
「ああ……」
「燈矢兄……」
荼毘が精神を汚染されている、だ、なんてことはすでにみんな知っている。
その荼毘の、格別トチ狂ったこのセリフ。
「ああ……俺は……親父……与一……僕は……与一……親父……ああ……」
不思議と、俺達4人の耳にだけ、苦しそうで狂いきった声が、届いた。
『何でここに今来てくれないんだよ。何で今ここにいないんだよ』
と
そして、
『……助けてくれよ、親父……』
……と
助けを求めるその声が、空虚なこの世界に、虚しく響いた。