side緑谷
「……よっし、俺達もぼちぼち行くか」
「うん!!行こう回原くん!!ジュリオさん!!」
作戦会議兼休息が終わり、エンデヴァーの指揮する本隊が出発してしばらく。
合流直後から同じ姿のままの、小大さんの個性で巨大化したドリルとボディアーマーと合体した姿の回原くんが口を開いた。
その言葉に僕が、そしてジュリオさんも頷く。
オールマイトのニセモノであるパチマイトを強襲・撃破し、アンナさんの救出を役割とする僕達のチーム!
これより行動開始だ!!
「……頼みますよヒーローのガキ様方」
ジュリオさんの言葉。それに無言で僕達は頷く!!
そして僕は黒鞭を伸ばし、それを回原くんと繋げる。
「「個性合体!!OFAスパイラル!!」」
繋がった黒鞭から回原くんの力が流れ込んでくる!!
そして!!それに負けないように僕も自分の力を彼に流し込む!!
そして僕達2人の身体からあふれる緑の閃光!!
「……くっ!!」
まるで稲妻のようにスパークする力の余波!!
そのエネルギーから顔を守るようジュリオさんが顔を背ける。しかし!!
「まだまだここからだぜ!!最初っからフルスロットルで行くぞ緑谷ぁぁ!!」
「うん!!」
しかし!!僕達の全力はまだまだこんなもんじゃない!!
「「ワン・フォー・オール!!フルカウル100%!!」」
あふれる光!!稲妻!!僕達の闘志に呼応するようにしてどんどんどんどんとエネルギーが高まっていく!!
「ジュリオさん!!」
「これは!!」
そして僕は黒鞭をもう一本伸ばしジュリオさんの身体と結ぶ。
「舌を噛まないでくださいね!!このまま一気に回原くんのドリルで最上階まで貫き登ります!!回原くん!!」
全ての準備が整った事を伝える僕の言葉!!
「おう!!いっくぜぇぇ!!!」
それに回原くんが応える!!
背中のブースター!!足からの竜巻!!ワン・フォー・オールの力で超強化された双方!!その双方を一気に最大出力まで高めて!!
「「フルカウル100%!!ギガドリルブレイク!!」」
そして頭上に巨大化したドリル!!
これもワン・フォー・オールの力で強化され他ドリルを全開で回転!!
「「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」「……ぐぅ!!」
そして一気に超スピードで空へと飛び上がる!!
音を置き去りにする程のスピード!!
「「おおおおぉぉ!!!!」」
そのスピードのままこの空間の天井に到達!!
そしてその天井を一気にギガドリルブレイクでぶち破り!!
「「おおおおぉぉぉ!!!!」」
更に高く高く舞い上がる!!
フルカウル100%!!ギガドリルブレイク!!
その圧倒的なパワーとスピード!!
一瞬でまた次の新しい天井へと到達し!!その新しい天井を紙みたいにあっさりブチ抜いてまた新しい空間へ!!また次の天井!!その天井も一瞬でブチ抜き!!また次の天井をブチ抜き!!次の天井をブチ抜き!!さらに次の天井をブチ抜いた!!
ここまでが瞬き程の数瞬!!
絶大なパワーとスピード!!それによって成し遂げられた奇跡のような現象!!
そして!!
「……お?」
「……あれ?」
そして!!その結果として!!僕達は最上階の天井すらブチ抜いてしまい!!3人で仲良く!!この城の外の空まで飛び出してしまっていた!!
そこは夕焼けが終わり星々が輝く夜空!!
「か!!回原くん!!行き過ぎちゃったよ!!」
「みたいね……」
ポリポリこめかみをかいてちょっと反省の様子を見せる回原くん。
「やっぱフルカウル100%はやべーなー……意識はしてたつもりだけど思ってたよりパワーもスピードも出ちまった……ブースターの出力が予想よりも上がってたぜ」
……まあそういう事らしい。
「…………」
そしてジュリオさんは顔面蒼白……かなり鍛えてはいるみたいだけど、それでもこのフルカウル100%ギガドリルブレイクはかなり堪えたみたいだった。
「……ふむ」
そして、そんなジュリオさんの様子を見て回原くんは、
「ジュリオさん。後1回の突撃だけ頑張ってくれ。さっき最後の天井をブチ抜く前にあのマヌケ面を確認した。だからコレで最後。最後に後1回壁を貫きゃあ後はあのパチマイトを俺達がぶちのめすまで休んでくれてればいい」
そう話しかけ、ジュリオさんは青い顔をしながら、無言で確かに頷いた。
それを僕達2人確かに見届けて、そして!!
「よっしゃ!!いっくぜぇぇぇ!!!!」
「……!!」
そして!!再度回原くんを先頭に飛翔!!
空中で反転!!そしておそらく回原くんがパチマイトを見かけたという方角へと全力全開で突撃を開始する!!
「おおおおお!!!!!」
その先頭には回原くんが突き出す右手の巨大なドリル!!
ギガドリルブレイクが最上階の天井に外部から突き刺さった!!
ドガァァァァァ!!!!
そして!!轟音とともに一瞬でブチ抜いた!!
「フルボッコの時間だ!!コラァ!!」
「回原くん!!それだと完全に芸風がヤンキー漫画のアレだよ回原くん!!」
アッチは蹴りで!!こっちはドリルだけど!!
砕いた天井の破片が舞う中、驚愕した様子のパチマイトと洗脳状態で無表情なアンナさん。
そんな2人に向けた回原くんの怒号はまさにヤンキーのアレ過ぎて……いや、正直似合い過ぎてしまってるんだよなぁ!!僕達ヒーローの筈なのに!!
「……よっと……良く頑張ったっすね、ジュリオさん」
「……」
そしてスピードを落としながら飛翔し、僕達3人はパチマイトの目の前に降り立つ。
同時にジュリオさんと繋がっていた黒鞭を解除。フォローの意識は残しつつ、まずは休ませる事を優先する。
同時に回原くんはドリルとボディアーマーとの個性合体を解除!!ここまで来たらもう不要だからね!!
「……は、は、はは……ハァーッハッハッハ!!!」
しばらくは驚きっぱなしだったパチマイト……そのパチマイトが少しして落ち着いたのか?何とも軽薄で重みも威厳もまるで感じられない、声だけ大きな空虚な笑い声を上げて、
「君は確かアレだね!!確か私の作ったこの城に飛び込んで来たドリルの少年ヒーローだったね!?いやいや驚いたよ!!この次の平和の象徴であるこの俺の元に最初に辿り着くのは大人のヒーローに間違いないと思って……」
「黙れよオッサン耳が腐るぜ。聞く価値の欠片もなさそーな空虚な言葉で俺達の脳のリソース持ってくんじゃねえよボケ」
「って……て、は?」
それを遮る回原くんの苛烈な言葉……一瞬、その苛烈さが理解出来なかったのか?ボケ〜……っとした様子で呆然とし、しかし少ししてようやく回原くんの言葉を理解したのか、
「……日本人は皆礼儀正しいって聞いてたけど、どうやら間違いだったみたいだねえ!!君ぃ!!今のは大人に向ける言葉としても!!そして俺という平和の象徴へと向ける言葉としても!!あまりにも礼節を欠いた言葉だとは思わないのかい!?」
パチマイトの怒りの声。
それをどこ吹く風とばかりに涼しい顔で受け流しながら、
「日本人が基本的に皆礼儀正しいってのは間違ってないぜ。だがまぁそれには但し書きがついててな。自分達が礼儀を払うに値しない相手と判断した、その限界の我慢ラインを一歩でも超えた瞬間、即ぶった斬りにかかるのが日本人だぜ。覚えとけ」
「おおう……サムライ……クレイジー……」
「回原くん!?回原くん!?決して言ってる事は間違ってはないんだけど誤解を生んでるよ回原くん!?」
(聞こえてるけどとりあえずは知りまへん)
バリバリにそんな顔してるぅ!!
「……は!!ならば俺は敬意を受けるに値するだろう!?どうだ!?見たかこの城を!!そしてその城を一瞬で作り上げた俺の力を!!どうだ!?俺は示したぞ力を!?次代の平和の象徴としての敬意を受けるに値する力を!!」
そんな事をのたまうパチマイト。
「……は」
……そんなパチマイトを回原くんは冷笑し、
「女一人の力にすがらなけりゃ平和の象徴を目指せないような男の言葉に、何か俺達が敬意を払うべき理由があるのかよ?」
……冷笑し、今も無表情でパチマイトのそばに控えるアンナさん。そのアンナさんを一瞥。そして、
「平和に暮らしていた人達の人生を無理矢理奪って得た力で!!そんな借り物の力で平和の象徴を目指すようなチンケな男の言葉に!!俺達が耳を傾ける価値なんてある訳ねえだろうがぁ!!!」
「……ぬぅぅ……」
……回原くんが、吠える。
その気勢に押されて、パチマイトが無意識なんだろうが一歩下がった。
「テメエごときが天を……俺達の平和の象徴を語るなよ道化!!テメエごときが天を語るなど烏滸がましい……今から俺達がブチのめしてやるから地に這いつくばっって土でも舐めてろ!!パチモンのテメエには似合いの末路だ!!」
「ぬぅぅぅぅ!!!」
回原くんの熱い叫びに、呻く事しか出来なかったパチモンのパチマイト。
僕はそれを見て「よし!!僕もやってやるぜ!!」と心が熱くなると同時に……
(……こういうとこ、正直、敵わないなあ……)
……なんて、ちょっと思ってしまう。
ヒーローっぽくない回原くんの強い言葉……うん、ちょっとばかし強すぎる言葉が多いものの、熱い言葉で皆の心を奮い立たせて「よし!!これから皆の力であのヴィランをブチのめしてやろうぜ!!」と鼓舞する回原くん。
その圧倒的な熱量は皆を巻き込み、前へ前へと押し出し進めていく圧倒的なパワーで……自分には無いそれをこうして目の当たりにしてしまうと、僕はそれをとても羨ましく思ってしまうのだけど……
(……いや、それは無い物ねだりっていうか……隣の田んぼが青く見える的なヤツじゃ……って、ああ、いやうん……まあ、何でもねえよ。うん)
……後日、そんな自分の悩みを回原くんに打ち明けた時には、彼は困ったような、なんて言ったらいいものか?……という彼には珍しい困った顔をしてこめかみをポリポリとかいていたっけ。
……それはまた、少し先の話……
「行くぞ緑谷ぁぁ!!……あ、でもよ……ブチのめすのは確定だけど、ヴィランとして公的に逮捕するには何かしら理由が必要だよな?……コイツ、結局何したんだっけ?」
「今ココでそれ言うかな回原くん!!」
思わずズッコケてしまいそうな!!そんな事をこのタイミングで言う回原くん!!そんな僕の相棒!!
まあでも確かにそうなんだよね!!
このパチマイト!!
なんか良くわからない理由で突然日本に来て!!突撃最終決戦をやらかして!!何故か雄英高校敷地内に城を作っただけといえばだけなんだよね!!
そんなパチマイト御一行様!!
……そんな連中を公的に逮捕するための罪状はなんだろうか?
……そんな事を考えているうちに、素晴らしいアイデアが僕の脳裏を雷鳴のように走り抜けた!!
「……じゃあ、こんなのはどうかな回原くん?」
「ん?」
……これはさ、正直、僕の元々の芸風じゃない。
完全に回原くんの影響を゙受けてる、ちょっと僕らしくない芸風なんだけど……
「静岡県内での『個性利用による迷惑行為等防止条例違反』による逮捕……なんてのはどうかな?」
「………」
僕の言葉に回原くんは一瞬、キョトンとした顔でこちらを見て、
「……は!ははは!!ははははは!!!」
そして!!笑った!!
「そいつぁケッサクだ!!最高だぜ!!相棒!!」
「はは!!お気に召してくれて何よりだよ!!」
『オールマイトの後継者を気取ってわざわざヨーロッパから日本まで来た大馬鹿者。迷惑行為等防止条例違反にて日本で逮捕!!』
うん!!これは実に僕の相棒好みの展開だ!!
背後のジュリオさんも『くっくっ……』と笑っているようで何より!!
そして……
「……もう許さん……余りにも非礼……そして俺に対して無礼すぎる……子供だからといって大目に見ていたがもう許せん……殺す!!殺すぞこのクソガキ共がぁぁぁ!!」
どうも怒りの頂点を迎えたらしきパチマイトがついにブチキレた!!着ていた仕立てのいいスーツが弾け!!中からオールマイトのコスチュームと!!おそらくはその不思議な個性で強化したのであろう!!筋骨隆々の肉体が現れた!!見た目だけならば全盛期のオールマイトのような!!そんは虚仮威しの姿!!
でも……
「……もう、遅い……」
そう、もう遅い。
何故なら、僕の相棒の準備は、とっくの昔に終わっている!!
第一段階
本来自分の間合いを覆っている制空圏を、自分の体から薄皮一枚まで範囲を絞る。
これにより反射能力を強化。相手の動きの流れに逆らわず合わせる。
第二段階
相手の目を見て、相手の立場に立って相手の心と同調し、相手と一つになる。
そして、第三段階へ……
体育祭の時の時点で相澤先生は「プロアマ問わず近距離・中距離を得手とするヒーローは誰もアイツには勝てない」と断言した回原くんの切り札。
……それを、
「「ワン・フォー・オール……フルカウル100%……」」
それを、さらに……
かっちゃん曰く
『考え得る限りで最低最悪の組み合わせすぎるぜクソが……』
と、あの負けず嫌い王のかっちゃんに天を仰がせ。
『……今日ほど親父を尊敬した日はねえ……《コレ》を目標として、マジのマジで、本気の本気で越えようと諦めずに20年位頑張り続けてきたんだろ……よく心折れなかったな……マジ尊敬するぜ親父……』
……あの轟くんの親子仲改善にも図らずも協力してしまった切り札。
「「フルカウル100%……
回原くんの切り札。流水制空圏。
それを僕の力で!!ワン・フォー・オールで更に強化する!!
模擬戦でかっちゃんと轟くんを絶望のどん底に叩き落した僕達の最強の切り札!!
ワン・フォー・オール・フルカウル100%・流水制空圏
対人戦最強の奥義とも評しても間違いでない圧倒的な力!!
「行くぞパチマイト……これが!!僕達の!!オールマイトを超えて行こうとする者達の力だ!!」
ニセモノの象徴と、本物を゙越えようとする有精卵の戦いがこうして始まった!!