回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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気が合うね!

「とりあえずデク!!テメエはこっち来い!!ツタ女は……」

「……はいはいわかってますよ駄犬……麗日さん。どうやら男の子達には先に内緒バナシの時間が必要みたいですよ。こっちで私と話ながら少し時間でもつぶしていましょうか」

 

「流れる様な美しい連携プレイ!!」

「これがホントの阿吽の呼吸!!」

 

麗日の相手をしばし塩崎に任せこちらにやって来た緑谷。その緑谷を加え俺、トンガリ、轟の4人はヤンキー座りをし地面に円を組んだ。

 

「かっ!!かっちゃん!!ねえ!!ねえどうしようかっちゃん!!なんか轟くんのおかげで急展開なんだけど!?」

 

「落ち着け……正直、俺も色々と突然過ぎて戸惑ってんだよボケ……」

 

マジ顔でトンガリに助けを求める緑谷。

塩崎に言われた事もあるのだろう。苦虫を噛み潰したような顔ながらも、必死で頭を回転させているトンガリ。

 

「なあ、緑谷よ……」

「……何だい回原くん?」

 

しかし……

 

「いいのか?ホントに助けを求めんのはコイツでいいのか?いくらトンガリが才能マンだからといって、流石にこのヴィラン(づら)で恋のキューピッド役が真っ当に出来るとは思えねえんだけどよ。や、俺も悪ぃよ。さっきラブラブダイナマイトとか弄っちまったしさ」

 

「うるっせえよ!!顔は関係ねーだろが極悪人顔はよぉ!!」

 

コイツが才能マンなのは周知の事実。

とは言え流石に幼馴染の恋のキューピッド役まで求めんのはやらせすぎだろう。顔的にもあってない気もするし。まあそれを言うなら神父もそうなんだけど……

 

多分、コイツが顔をしかめてるのはその辺も理由としてある。いくら才能マンの自分であったとしても、この役割は不向きだ……という自覚があるんだろうなトンガリとしては。

 

 

「……チッ!!まあ色々と考えてみたけどよ……結局、テメエがどうしたいか次第だよデク」

 

 

「……僕?」

 

ヤンキー座りしながら頭をガリガリとかき……?マークを頭上に浮かべる緑谷に、

 

 

 

「俺は自分で言うのもなんだが才能マンだからよぉ……だから、色々と本気で真面目にこの後のお前ら二人が辿るであろう未来を脳内シュミレーションしてみたんだが……その結果、ここでお前が日和って何も無いままでこのイベントを終わらせると、お前ら二人は互いにお互いの事が気になっていながらもズルズルズルズルと何も無いままの関係を10年くらい続け……続け、たまたまなんかの機会で集まった10年後くらいの同窓会……その解散後に運命的な感じにばったり街中で再会。もう少し2人で話したかった的な事を言うデクと、それに気が合うね的な返事をする麗日……そして10年越しにようやく2人の物語が動き出す……そんな、2人が辿っちまう未来が見えちまった訳だが」

 

 

「まるで直接その目で見て来たみたいに具体的に語るじゃねえかこの才能マン!!」

 

 

「ひ!!ヒドイよかっちゃん!!い!!いくらなんでも!!ここから10年間も!!何も無いままで10年も時が過ぎて行くだなんて!!さ!!流石にそれは無いでしょ!?いくら何でもヒドイよかっちゃん!!」

 

「……自分なりに脳を全力全開でグルグル回しまくった結果の結論だよボケ……俺だって流石にこんな未来予想図が出るのは予想外だったわクソが……」

 

「「コレ割とガチ目に本気の予想だった!?」」

 

戦慄する俺と緑谷。

 

「……結局、お前はそういうトコあんだよ多分。皆とか全部とか……何もかもが大切で……全部守ろうとしちまうから、自分にとって一番大切なものがわからなくなっちまう……多分だけどよ、お前はそーいうトコあんだよ出久。だからこそ大切なのは今……今、お前にとって何が一番大事で、今この瞬間お前がどうしたいか?それが一番大切なんじゃねえの?」

 

「かっちゃん……」

 

普段のコイツと違い、真面目に真剣なトンガリから緑谷への真摯な言葉。

 

「だから……別に俺は『今すぐアイツに告白してこいや!!』とか言いてえ訳じゃねーんだよ。それはお前的にもキャラじゃねえだろ?だけどよ、思ってる事は伝えねーと意味がねーんだわ。お前が今アイツとどうしたいとか……今後、どーしていきたいとか……そういうのだけでもいいからちゃんと伝えて来たらどーよ?って話だボケ。今の素直な気持ちとかよ、いい機会だし直接ぶつけて来たらどーだ?」

 

「……かっちゃん」

 

……ヤバい真面目に神父役とゆーか恋のキューピッド役を完全完璧に完遂してる極み才能マントンガリくんの巻でござる。

 

俺が茶化しをいれる隙間が欠片も無い。

 

でも……

 

「うん。そうだぜ。爆豪の言う通りだ緑谷」

 

「轟ぃぃぃ!!やめ!!やめとけ!!今ガチ目に良いとこなんだよ!!だからやめとけ!!やめろって轟ぃぃぃ!!」

 

ここまで沈黙を守っていた轟……その天然爆弾がカチカチと動き出し!!俺は思わず!!それを止めようとするのだが!!

 

「……いや、多分大丈夫だドリル」

「マジかよ才能マン!?」

 

……そんな俺をトンガリが止めた。

 

「……多分だがよ……この流れでの半分野郎なら……まあ、多分大丈夫だ……あえて、ここで天然爆弾を爆発させてみようぜ」

 

「お前確かに爆破のプロだけどよ!!マジでいいのかよ才能マン!?」

 

俺の心配!!まあ当然だよな!!

その心配など何処吹く風とばかりに轟が緑谷に語りかける。

 

「俺の家さ、知ってるだろ緑谷?」

「……うん」

 

先程、今回の件のキッカケとなった爆弾を爆発させた男とはまるで思えない程の穏やかな顔……大体コイツの所為なのだが……そんな事など何も無かった位の穏やかな顔で轟が言葉を続ける。

 

「今ならわかる。親父は親父で俺達を……家族を大事には思ってた。でも、それが俺達に上手く伝わらなくて……俺も母さんも、そして家族皆に上手く気持ちを伝えられなくて……それが、俺の家がああなっちまった一つの原因だと思うんだよ。だから、伝えられる時に、自分の伝えたい気持ちを正直に伝える……誤解が無いように早く伝えておくってスゲェ大切な事だと思うんだよ俺さ。だから緑谷が麗日に伝えておきたい思いがあるなら、ちゃんと伝えておいた方がいいと思うぞ」

 

「……轟くん」

 

……良かった。俺の心配が無用なくらいにいい事言ってくれた。

 

 

しかし……

 

 

 

(しかし何なんだろなコイツの……勝手なタイミングで天然爆弾を爆発させて周囲を混乱に巻き込んでおきながら……)

 

(……おきながら、その中でちょっと芯を食った良い事を言ってみたり、真面目に良い事を言ってみたりで……周囲を爆発させながらも、何故か自分一人だけちょっぴり株が上がる……何なんだよこの現象はよクソが……)

 

コソコソ話で愚痴りあう俺とトンガリ。

 

視線の先には轟と緑谷。なあ覚えてっか緑谷?ソイツがこのトラブルの原因だぜ……

 

ともあれ……

 

 

「……ま、大体こんな所じゃねえの?テメエが今すぐ告白したいってんならすればいいけどよ、とりあえずその前段階で今の正直な気持ちを伝えるって……まあ今日の所はそれで十分じゃねえのか?」

 

「かっちゃん」

 

そして、トンガリがまとめに入った。

 

「大体よ……ある程度相手の気持ちも確認し終わって、勝率高めきった後ならともかくよ……イキナリこんな感じでの突発的な告白だなんてのはある種のテロ行為みてえなもんだぞ……普通、2人だけで飯行ったり遊び行ったりとかそういうのを積み重ねて……積み重ねて、ある程度勝ち確信してから告白するってのが王道パターンなんだからな」

 

「それは確かに!!」

 

「……まあ、何だかんだで今告白しても付き合えそーな気はするけどよ」

 

「どっち!?一体どっちが正解なのさかっちゃん!?」

 

最後になって戸惑う緑谷。

「はっ!」

 

そんな緑谷を、トンガリは笑い飛ばし、

 

「だからどっちでも良いって事だよボケ!!テメエがしたいようにしろよ!!伝えたい事だけ伝えてこい!!まあ!!結論!!最初から最後までそーいうこった!!」

 

「ええええ!!!!」

 

そんなぁ……みたいな顔で緑谷はしばらく叫んで……そして、

 

「……うん、でもまあ……考えてみると君の言う通りだよねかっちゃん」

 

そして、ようやく覚悟を決めたのか?

 

「ありがとうかっちゃん……ありがとう2人共……うん。おかげで気持ちの整理がついたみたいだ。今の正直な気持ち……とりあえず、ちょっと麗日さんと話してくるよ」

 

ヒーローやってる時みたいに覚悟を決めた緑谷の顔。

 

「皆ありがとう……じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 

そして、そんな顔で緑谷は俺達にお礼を言うと……麗日と塩崎の方に向かって歩いていった。

2人と少し話し、そして麗日だけを連れて……周囲の輪から離れていった。

 

それを俺達3人は見送り、

 

「大したもんだ……恐れ入ったぜ才能マン……まさか不慣れと思ってた恋のキューピッド役まで見事にやってのけるとはな……正直脱帽ですわ」

 

「へっ!!ばーか!!何で俺に恋愛の才能ねーとか勘違いしてんだよボケ!!これでも俺はあのツタ女をオトシてんだぜ!!あんま舐めんなや!!」

 

「まあそれはそう!!」

 

 

へっ!はっ!

 

みたいにやんやとやり合う俺達の恒例のやり取り。

そこに……

 

「ふむ……流石だな爆豪」

 

「あ……ちょっとまて轟……なんか嫌な予感がする」

「……同感だわ……」

 

そこに、轟も乱入してきて……

 

「俺達はそれぞれオールマイトを超えるヒーローになる事を目指している……爆豪……お前はヒーローとしてだけでなく、自らの恋愛を成就させ……そして友達の恋愛まで応援する事が出来る……そんな素晴らしいヒーローだ」

 

「……黙れ……頼む………その辺で止まれ半分野郎……」

 

しかし……轟は止まらない!!

 

 

 

 

「オールマイトを超える愛のヒーロー・ラブラブダイナマイト……うん、そうだな、略して『ラブマイト』だ。うん。いいヒーローネームなんじゃないかこれは?あの『パチマイト』なんかよりも、よっぽど平和の象徴の後継として相応しいと思うぞ。これからお前はダイナマイトあらためラブマイトとして活動していったらどうだろうか?」

 

 

 

「「ぶほっ!!!!!」」

 

 

……その天然爆弾に……俺とトンガリの腹筋が破壊される……

 

「……クソが…自分がネタにされたにも関わらず思わず吹いちまったじゃねえかクソが……」

 

「……ぶほ……やめろ轟……ラブマイトは流石に俺の腹筋を焼く……くは……」

 

「……そうなのか?」

 

「「そうだよこの天然爆弾がぁ!!」」

 

 

コテンと小首を傾げる轟。

腹を抱える俺とトンガリ。

緑谷は今ごろ麗日と話しているんだろうな。

 

(どうなるか知らんが……まあ、頑張れよ緑谷)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side麗日

 

「うん。この辺なら他の人に話は聞かれないかな」

「そ!!そうだねデクくん!!」

 

轟くんの爆弾が爆発してからしばらく。

男の子達による内緒バナシが終わり、私達の所にデクくんが来た。

 

 

 

「ちょっとだけ2人で話がしたい」

 

 

 

……そう言われて、2人で話すことになったんやけど……

 

(……どうしよう)

 

コレって!!コレって!!

正直!!絶対にアレやん!?アレやんな!?

 

(告白!!これ絶対に告白の流れ!?)

 

それを嬉しいと思う正直な私の気持ち。

 

私は、デクくんが好きだ。

それはとっくの昔に自覚している。

だから、これが告白なのだとしたら……正直、凄く嬉しい。

 

(……でも)

 

だけど……だ、

 

私はデクくんが好きだ……でも、頑張ってる彼を見て……その邪魔を゙したくなくて……応援したいから、この気持ちを封印すると決めていた。

 

 

……うん、私は、この気持ちは秘めておくと決めたのだ。決めているのだ。

 

 

……まあでも私からじゃなくてデクくんの方から来てくれるのであれば気持ちの封印を解くのもやぶさかではないのだが!!うん!!封印即破棄でも構わないんやけど!!

 

……だけど。

 

(……でも、やけど……なんかちょっとモヤッとする……)

 

これは、贅沢な悩み。

気持ちを秘めておくと決めたのに……彼の方から告白してくれるのであれば付き合いたいな……なんて思ってしまう浅ましい考えと、正直嬉しいなという気持ち。

 

それは正直あるんだけど……

 

 

(……でも、これは……この流れはちょっと……なんか違う気がする……)

……それとは別の……何だろう?上手く言語化出来ない……そんなモヤッとした気持ち。それが胸の奥底に固まっていた。

 

 

……あ、あそこ鏡落ちてる!!私、今、前髪変になっとらんかなぁ?あ!!やっぱ変やん!!今のうちに直しとこ!!

 

んでちょちょいと前髪を整える。

……ここまでの回想……体感でほんの約2秒。

 

私は私なりに色々と準備を整えて……整えて、多分、向こうも準備が整ったのだろう。

 

 

「麗日さん」

「うん。どうしたんデクくん?」

 

私の目の前に……少しだけ離れて、デクくんが立った。

 

 

「僕口下手だからさ……正直、今の気持ちをちゃんと伝えられるか不安なんだけど……それでも聞いて欲しいんだ」

 

「……うん」

 

ありがとう……かすかに聞こえたそんな彼の言葉。そして、

 

「僕はずっと無個性として育って来ていて……そして幸運にもオールマイトに見出されて彼の個性を受け継いだ。そして雄英高校に入って皆と一緒に過ごす事が出来てる。僕ね、今凄く楽しいし、滅茶苦茶幸せなんだよ……こんな大変な時に言う事じゃないのかもしれないけど」

 

「…………」

 

「そりゃ時には大変な事もあるけど……雄英で皆と過ごし、学び、鍛え……そんな皆との生活がとてもとても大事で……全部が全部大切なんだ」

 

(……うん、わかってる)

 

だから、私はこの気持ちを胸に秘めておくと決めたんだから。

 

「そんな中でかっちゃんにはいつの間にか彼女が出来ていて、回原くんは彼女3人いるし……まあ、彼は避けておくとして……皆が皆大切で、尊敬してて、そして皆好きなんだけど……それだけじゃなくて、いつの間にか自分にとって『特別に特別な誰か』を周りの皆が見つけ出していた。何だかそれが僕には急に思えてしまって……正直、ちょっと戸惑っていた」

 

「……あ」

 

あ……それは……

 

「それで轟くんの天然爆弾が急に爆発して、今こうして話している訳なんだけど……うん、かっちゃんとも色々と話をしててやっぱそうだってわかった。周りの皆の声や流れに身を任せて、それでそんな流れやノリに流されてそういう事をするのって……なんか、自分らしくないな、って。そう思ったんだ」

 

(……ああ!!)

 

さっきから胸の奥底にあった言葉に出来ないままの『モヤモヤ』。

それを、デクくんが名前をつけて表に引っ張り出してくれた!!

 

(そう!!そうだよねデクくん!!)

 

梅雨ちゃん含め、皆が急に恋愛を意識しだしていて……多分、それは爆豪くんとか回原くんを見てての影響が大きいんだろうけど……

 

(……でも、だからって!!だからって!!そんな……熱とかノリとかに流されてそうなるのって!!何か違う!!私らしくないし!!デクくんらしくもない!!)

 

周りの皆が急にイチャイチャしだしてるじゃん!!え!!ウチらも!?じゃあ付き合っちゃう!?

 

(そんなの!!なんか私達らしくない!!)

 

それが!!私の抱いていたモヤモヤの正体!!

 

「んだけど……!」

「……え?」

 

デクくんが、一歩だけ前へと踏み出してくれる。

 

麗日さん(・・・・)ともっと、話したいって思った」

 

……自分の顔が、赤くなるのを自覚する。

 

「これからも、もっと」

 

目の前には真剣なデクくんの顔。

 

「2人だけで遊びに行ったりもしてみたい。遊園地とか一緒に行ってみたいし、クレープとか食べに行ってみたいんだ」

 

じっと私の目を見る彼が、今の正直な気持ちを真っすぐに伝えてくれる。

 

「君と」

 

「あ」

 

「どう、かな」

 

「うへ……おお……」

 

私は正直かなり嬉しくて……照れすぎて何だか変な顔をしてそうだし、何なら実際に変な声が出ちゃってた気がする!!

 

でも……

 

「うんっ」

 

周りに流されてこんな感じで告白して急に付き合うとかよりは……

 

「気が合うね!」

 

こうやって!!のんびりのんびりと私達のペースで!!ゆっくりゆっくりと距離を縮めていく方が!!絶対に私達らしい気がする!!

 

 

 

そうして一歩踏み出してくれたデクくんに、私はちょっとだけ手を伸ばした。

 

そして、そんなちょっとだけ前に伸ばした私の手を、彼はしっかりと握ってくれたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、そんな一日のお話。

 

ヒーローとヴィラン連合の最後の戦いが始まる、ほんの数日前のお話。

 

 

 

 

 

 




速報

本作のMVPはかっちゃんで確定!!


まあデクとお茶子の時計の針を10年分くらい前に進めた訳ですから妥当ですよね(白目)
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