回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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そして……

side死柄木弔

 

雄英高校での決戦……あれから数日……

 

「……駄目だ。こんなプランじゃ雄英襲撃の許可は出せねえぞ荼毘」

 

決戦の翌日は流石に休息のために大人しくしていたものの、その次の日から荼毘は精力的に俺へと雄英高校襲撃の作戦を提案し続けていた。毎日毎日何度も何度も……

 

そして……俺はその全てを否定し続けている。

今もこうしてアジトの共有スペースで、他のヴィラン連合全員の前で荼毘が俺に新たな作戦を説明し……俺によってその作戦を却下されていた。

 

 

「またかよ!!」

 

 

 

毎度毎度の同じやり取りに荼毘のフラストレーションが溜まっていくのがよくわかる。

 

 

「ホントにやる気あんのかよ死柄木ぃぃ!!大勢殺せる!!社会は大混乱!!ノコノコやって来たヒーロー達も皆殺しだ!!何が悪ぃ!!何が気に食わねえんだよ死柄木ぃぃ!!」

 

 

今も憤怒の炎をその身から漏らしつつ荼毘が叫ぶ。

そんな荼毘に、

 

「……だから、何度も言ってるだろう。結局は同じ事だ、荼毘」

 

俺が、告げる。

 

「……人を大勢殺しました、良かったですね。街もたくさん破壊しました、良かったですね。ああ素晴らしい!!ヴィラン連合はこの歪みきったヒーロー社会に大混乱をもたらしました!!そして……その過酷な戦いの果てに、ヴィラン連合は全員戦死し……人々は失ってしまったモノを嘆き悲しみながらも……懸命に立ち上がり社会を復活させて行くのでした……メデタシメデタシ……そんな先の見えちまった作戦に、仲間の命なんかかけられる訳がねえだろーが」

 

「そんな未来!!まだ決まってなんていねーだろが!!」

 

「……そうか、なら聞くけどな荼毘……?」

 

「ああ!!何だよ!?」

 

俺は荼毘の目を正面からじっと見て、そして……

 

「……フルカウル100%流水制空圏……」

 

「……!?!?!?」

 

俺の放った言葉に、荼毘の顔が引き攣った。

 

「……『アレ』に、お前……勝てんのかよ?」

 

「…………(ギリィィィ……)」

 

……歯軋りの音が直接聞こえてきそうな程の……そんな、苦々しい顔をした荼毘。

 

……それが、全ての答えだった。

 

そんな悔しそうな荼毘の顔……それを見てふと思ってしまう。

 

(……俺なら……どうだったんだろうな?)

本来魔王となる筈だった俺……そのサブプランである荼毘。

だが……もしも本来のマスタープランである俺が……あのフルカウル100%流水制空圏と対峙したのならば……

 

 

(……未練だな、情けねえ……)

 

……そんな、埒のあかないくだらない考えを頭から振り払う。

 

実現しなかったドリームマッチに想いを馳せる余裕なんて無いだろう?なあ死柄木弔。お前はヴィラン連合のリーダーなんだぞ。

いくら泥花市での勝敗に悔いが残っているからといって……そもそも、俺があそこで負けてなければこんな事になってはいなかったと悔やんでいるからといって……そんな、本当はあったかもしれない夢の頂上決戦の事だなんて想像しても仕方が無いだろう?

 

 

 

真の破壊の化身となった俺 VS 平和の象徴の後継であるあの2人。

 

……その、死力を尽くした戦い。

俺だって男だ……正直、負けっぱなしは気に食わねえ……だが……

 

(……未練、だな……)

 

……そんな、実現しなかったリベンジマッチ……空想・妄想……その全ての想いを振り払って……

 

 

……俺は告げる。

 

「厳しい事を言うが……最後に『アレ』とタイマンでやり合っても勝てるような作戦ってのが実行する最低ラインだ。荼毘……これまでお前が提案した作戦ってのは、結局雄英高校襲撃のアレンジでしかねーだろ。そのアレンジで社会の混乱は大きくなるだろうが……この前みたいに最後の最後でお前本体が見つかって、そして倒される……そんな先が見えちまってる作戦に、仲間の命は預けられねえよ」

 

 

……結局、そこなのだ。

人を殺し、街を壊し、社会を゙混乱させ……その果てに俺達が全員倒される……

 

 

……そんな未来は、リーダーとして決して認められない。

 

あのフルカウル100%流水制空圏というとてつもない障害をクリアし……ワン・フォー・オールを荼毘が奪うという確信が持てるのであれば、荼毘の作戦に乗っても構わない……

 

しかし……正直、現実は厳しい。

 

……ゴリィ……

 

 

……奥歯でも噛み砕いたような音が、した。

 

「…………」

 

「「「「「……………」」」」」

 

この部屋にいるヴィラン連合全員……正確には荼毘を除く全員と、荼毘……

 

 

その重苦しい沈黙が煮詰められ、最高潮にまで高まり……そして……

 

 

 

「……けっ!!ウゼエ!!つまらねえ!!結局!!お前らはやる気ねえのかよ!?なあどうなんだよ死柄木ぃ!?」

 

 

 

そして、荼毘が狂気に踊らされて叫ぶ。

 

一人だけ頑張っている自分が否定された怒り。

そんな自分に誰もついてきてくれない、応援してくれない怒り。

……それでも、その目的を……目標を諦められない……そんな怒り。そんな荼毘の姿を見て……

 

(……まるで、話に聞いた昔のエンデヴァーみたいだ……結局、お前は……今も、轟家の呪縛から逃げられてねえんだな……)

 

 

……哀れだ。

素直にそんな事を思ってしまう。

ああ……コイツ……本当に、似ている。そっくりだ。

 

エンデヴァーに。轟炎司に。

 

結局荼毘は……お前は、自分が一番憎んでいて、そして否定したかったあの男に……その写し身になっちまったんだな……

 

 

 

(……なんてヒデェ寓話だよコイツは……)

 

 

 

……そんな、俺がふと抱いてしまった憐れみのような感情……

 

 

「……じゃあ……テメエはどうなんだよ……死柄木?」

 

「……あん?」

 

……そんな感情に、荼毘が気づいてしまう。

 

「俺の考えをブッチしまくりやがって!!どうなんだ!どうなんだよ!?逆にテメエはどうなんだ!?俺の考えを全て否定するような!!そんな!!ヴィラン連合全員を納得させられるようなスゲェプランでもあんのかよ!?なあ!!どうなんだ!?言ってみろよ死柄木!?弔ぁぁ!?!?!?」

 

 

「…………」

「…………」

 

「……?あっくん?」

 

……その荼毘の言葉……思わず、トイレで連れションしてた時にポロッとその考えを漏らしてしまったコンプレスの方を見てしまい……そしてかち合ったその視線にトガが気づく。

 

 

(……どうするんだ、死柄木?)

(……………)

 

 

俺の考えをすでに知っているコンプレス。

そのコンプレスが未だに黙っているという事は……事は、この考えを下手に話してしまう事が、俺達ヴィラン連合にとっての決定的な亀裂になってしまうのではないか?と、コイツが予測している証明なのだろう。

 

だからコンプレスは知っていて黙っている。だが……

 

(……どの道、限界、か……)

 

ハイエンド脳無も2体を残し前回の戦いで倒されてしまった。

荼毘+トゥワイスのコンボにも限界が見えてしまった。

 

それが原因で、正直荼毘以外の俺達全員の心に厭戦気分が蔓延しきっていた。

 

先への希望が見えないのに……死地には向かえない。

 

だから、俺にはリーダーとしての責任があった。

 

「……わかった。俺のプランを教える」

 

決断する責任と……

 

「俺のプランはこうだ……ヴィラン連合全員で日本を脱出し、海外へと活動の拠点を移す」

 

「……は?」

 

……その決断によって生まれた結果に、責任を持つという覚悟だ。

 

「ふむ……興味深いのお」

 

俺の言葉にキョトンと……まるで、今俺が何を言ったのか理解出来ない様子の荼毘。

そんな荼毘とは違い、ドクターは興味深そうに反応した。

 

「何だかんだで日本って良い国なんだろうな。各国のヴィランによる犯罪発生率とか比較すりゃそれはすぐわかる。だけど、そうじゃない国や地域もたくさんある。東南アジア、中南米……そして、今回バカが来たヨーロッパ……ヴィランがヒーローと、政府や公権力と癒着して好き勝手やってるのなんてザラだ。だからよ、俺達にとって堅苦しい日本から脱出して、もっと好き勝手に生きてける場所に行こうぜ、って。つまりはそんなアイデアだ」

 

「……私がもっと好き勝手に生きていける場所……ですか?」

「………」

 

俺の言葉に食いつくトガ。

そんなトガを見ながらも荼毘への注意を絶やさないコンプレス。

 

 

「そうだトガ……俺達が好き勝手に生きられる世界は、日本以外に目を向ければ色々あるかもしれねえ……それによ……あの雄英高校での決戦に乱入して来たバカ共がいるだろ?実はアイツらアレでも欧州最大のヴィラン組織のトップらしいぜ。あんな連中が欧州最大のヴィラン組織のトップ張ってたんだぜ?正直……俺達がマジで頑張ればもっと上手くやれそうじゃねえか?」

 

 

「「それは確かに!!」」

「説得力が激ヤバなのです!!」

 

俺の言葉に、俺の見せた希望に皆が反応する。

そうだ。日本にさえこだわらなければいくらでもやりようはあるのだ。

 

 

……特に、いつの間にやらよくわからん理由で自分達の組織のリーダーが急に日本で捕まってたりして……今、欧州の犯罪組織はさぞかし混乱している事だろう……そんな混乱に付け込んで、俺達の地盤を作り上げる……正直、俺達ヴィラン連合ならマジでイケると思う。勝算はこのまま日本で戦い続けるよりも遥かにあると思ってる。これはわりとガチ。

 

 

「だから……俺と一緒にいかねえか?俺達が俺達らしく生きていく為に……死ぬ為でなく、生きる為に……日本を、この国から脱出しよう」

 

 

……そう、結んだ俺の言葉。

 

「……は……は、は、は……おい……おい……死柄木……テメエ……テメエ……」

「……いいじゃねえの。俺は賛成だぜ、死柄木」

 

「……コンプレス」

「テメエ!!」

 

……俺の全ての考えを聞き終わり……聞いてから、じっくりとキレて俺へ掴みかかろうとする荼毘……そんな俺と荼毘の間に、ゆっくりとコンプレスが割ってはいった。

 

(……すまん、コンプレス)

 

確実に俺へと向かうヘイトを軽減させる為だろう。

そんなコンプレスに俺は感謝を、荼毘はヘイトを向ける。

そしてそんな俺達の感情……それを何処吹く風とばかりにこの男は。

 

「素晴らしいアイデアだと思うぜ死柄木弔……俺達は……俺とヒミコちゃんはそのアイデアに乗る。乗らせてくれ。俺達は死に向かっていく過去でなく、これからの幸せがあるかもしれない未来へと進んでいきたいからな……なんせ……」

 

「……あっくん」

 

そこで、一拍。そして。

 

 

 

 

 

「ヒミコちゃんが妊娠した。当然、俺の子だ」

 

 

 

 

 

「……は?」

「……は?」

「……ひょっ?」

「……(脳の焼けたトゥワイス)」

 

 

 

……爆弾が、落ちた。

 

「……だから俺達2人は死柄木弔のアイデアに乗る。俺達は生きていく希望が欲しい。産まれてくる子供の為に、未来へ繋がる道が欲しいんだ。そして、こんな絶望的な状況でもそんな道を示してくれたリーダー……そう、死柄木弔……俺達は、そんなお前についていく。そう決めた」

 

仮面越しのアツい言葉。

一見するとクールそうで捻くれてそうなコンプレス……その内側にある熱を知らしめるようなそんな言葉だった。

 

しかし……

 

チラッ……と俺はドクターに目を向ける。ドクターも同じく俺に目を向けていた。

 

 

そして、互いに『うん……』と頷き確かめあってから……

 

 

 

 

 

「コンプレス……お前……三十路過ぎたいい大人なのに……マジで未成年孕ませたのかよ……」

 

「ワシらは確かにヴィランじゃが……それは流石にガチのガチでマジの犯罪ではなかろうか……」

 

 

 

「……はぁぁーーーーーん!?!?!?」

 

 

 

 

いやまぁ……俺のアイデアとか荼毘のあれこれとかは別として……これは言わなければなのでは……と……

 

 

俺とドクターのツッコミ……それにコンプレスはアワアワとしながら!!

 

「ちっ!!違いますぅ!!こ!!これは犯罪じゃありませんんんん!!愛ですぅぅう!!真実の愛が俺達の間にはあるんですぅぅぅう!!そういう性欲に負けた邪な何かと俺達の純愛を一緒にしないで欲しいですうぅぅう!!」

 

 

 

「……完全に、未成年に手を出して孕ませたクズな大人が言いそうな……そんなお手本の様な自己防衛の為だけのセリフじゃな」

 

 

 

「ちっ!!違いますぅぅ!!愛ですぅ!!こっちはちゃんとした愛ですぅぅ!!ちゃんと!!ちゃんと何かあったら責任取る気でしたぁ!!ちゃんと籍も入れますぅぅぅ!!だからそういうのと俺達のは一緒にしないでくれませんかぁぁぁ!!!」

 

 

 

「……完全に、未成年に手を出して孕ませたクズな大人が言いそうな……そんなお手本の様な自己防衛の為だけのセリフだな」

 

 

「ギャァァァ!!俺!!俺フォロー入っただけなのに!!ヒドイ!!酷くない!?酷すぎる!!俺には人権とかないの!?ねえ!?」

 

そんな感じで叫ぶコンプレス!!

 

そして!!そんなコンプレスに!!

 

 

「おや……こんな危機的状況にも関わらず、いい年した大人が未成年を孕ませておきながら……まだ自分には人権があると……あっくんはそうおっしゃる?」

 

「……あ……無いですね自分には人権……わかりました……貝……そう、貝です……貝になりますね自分……」

 

トガが!!トドメを刺した!!

 

 

ちーんと凹むコンプレス。やってやったぜとしてやったり顔のトガ。

ドクターは笑い、トゥワイスはまだ脳が焼かれてる。

 

そして……

 

 

「……んだよ……何だよ何だよ……何だよテメエら……」

 

「……荼毘」

 

……そして、荼毘。

 

「……何だよ……何なんだよ君たち……何で僕と与一を置いて未来に進もうとしてるんだよ……まだ親父も殺せて無いんだぜ……認め……認められるかよ……なんで俺を、僕を置いて勝手に未来へと進もうとしてるんだよ……認め……認められるもんか……絶対に認めなんてられるもんか!!許さない!!大好きだ!!逃さない!!許さない!!全部!!全部僕の!!俺のもんだ!!」

 

……荼毘が。

そして、その奥に潜む何かが、叫ぶ。

 

 

……そして。

そして、決定的な決裂が……

 

誰もが予想していた決定的な決裂が……この後に来る……そう、誰もが確信してしまった。

 

 

……そして

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