side天喰環
「……天喰!!いっけええぇえ!!!」
「
波動さんの声に背中を押されるようにして僕の必殺技が空を駆ける!!
必殺技の名に相応しいだけの超威力を秘めた極太レーザーが荼毘に直撃!!その身を削るのだが!!
「……クソ!!」
削るが……削りきれない!!
突発的に始まったこの決戦。
出来るだけの準備はしたけれど……それでも時間が足りない!!全く足りなかった!!
その所為で本来ならば切り札となる筈だった『混成大夥・波動砲』は、当初皆が期待していた程の威力を発揮することが出来ず……それがこの戦いを長引かせる原因の一つとなっていた!!
(……くそ……クソ!!クソ!!)
ギリィィィ……
「天喰……」
皆に期待されながらも決定打を放てない……そんな情けない僕に僕自身が向ける激しい怒り。それを心配する波動さん。
「まだだ!!まだなんだよね!!もう一度なんだよね!!環!!」
「……ミリオ」
そんな情けない僕を叱咤する声……いつもいつも僕を助けてくれるヒーローの声が聞こえる。
通形ミリオ。ルミリオンだ。
鬼神ならぬ機神となり最前線で暴れ回るエンデヴァーと共に並び戦っている僕の親友。
その心からの叫び。
「もう一度なんだよね環!!時間は稼いでみせる!!だからもう一発!!さっきよりもスゴイのを頼むんだよね!!」
「ミリオ……うん!!」
その声に突き動かされるようにして背中のリュックに詰めて持ち出せるだけ持ってきた食料を取り出し、急いで食べ始める!!
誰もが一生懸命に戦っている。
エンデヴァーもミリオも波動さんもホークスもジーニストも、そして今ここにいない回原くんも緑谷くんも。
誰もが未来の為に戦っているのだ。
だから、
「お父さん……俺と一緒に死んでくれよお父さん……ああ与一がいない……寂しい……僕は寂しい……こんな寂しい思いをするくらいなら全部いらない……皆壊して皆殺して……だから俺と一緒に死んでくれよお父さん……」
「ただ失わせるためだけに!!滅ぼすためだけに戦うオマエなんかに!!絶対!!負けない!!」
その為に力を蓄える。
皆の為に。未来の為に。全てを守る為の力を!!
sideトガヒミコ
「……あっくん!!アレを!!」
「ああ!!死柄木とヒーロー達が手を組んでんのかアレ?ハデにやってんなアイツラ……でもおかげで見つけやすくて助かったぜ!!」
「ん!!」
「デクくん!!皆!!」
皆と空を飛ぶ事しばらく。
私達はついに決戦の舞台へと辿り着いた。
共に空を飛ぶ弔くんとヒーロー達。
この窮地において手を組んだヴィランとヒーローによる凶悪な個性合体……広域を殲滅する極悪な滅びの氷嵐が、増え過ぎた仁君を凄まじい勢いで減らしていた。
「ん!!」
「ですね唯ちゃん!!取り敢えず合流するのです!!」
「おーい!!デクくん!!皆ー!!」
誤爆であの恐ろしい力がこちらへ向くことが万一にも無いように大きな声で呼びかけながら、ゆっくりと5人に近づいていく。
「コンプレスにトガか!!間に合ったのか!?」
「ああ!!お待ちかねの品をお届けに来てやったぜ!!」
仁君を助ける為の切り札。
個性消失弾。
これを本体の仁君に撃ち込み、暴走状態の彼を救う。
その為に私達はここに来たのだ。
「死柄木……本体の場所は特定出来てんのかよ?」
「発信機はつけてある。問題ねえよ」
「なら……おい、ドリル?」
「……だな、トンガリ。ここが切り札の切りどころだ緑谷」
ヒーロー2人の声に、皆の視線がデクくんへと集中する。
「うん……そうだね2人とも!!」
初めて見た時の彼は、血だらけで何処かおどおどしてばかりのちょっと頼りない少年だった。
でも……今は、力強く前を向くヒーローへと成長していた。
「切り札を使う。ワン・フォー・オール2nd『変速』。5分間限定だけど、僕たちの動きを最大で5倍に加速させる事が出来る。周囲のトゥワイスを一気に殲滅し本体の所まで一気に行く!!」
「ええ……頼もしい事この上ないからまあ良いのですが……え?ただでさえ破壊の化身ムーブかましてるのに、これがさらに5倍速?正気?地球を滅ぼす気なのですか?これ考えた人絶対頭おかしいのです……」
「ヒミコちゃん!!感想としてはあってるけど加減!!加減して加減!!今は味方だから!!」
1キロを超える射程の滅びの氷嵐ぶちかましながら5倍速て……ちょっとゲキヤバ過ぎるのですが……
しかし……
「ん」
「わかってます……確かに……これくらいやらないと多分……仁君の所にはたどりつけないのです」
発信機の反応は少し前まで私達が使っていたアジトの中。
おそらく私達が逃げ出す直前に揉めていた場所。
そこに仁君がいる。
「準備はいいかな?……よし!!皆!!行くよ!!」
「「「「「「「「おう!!!!!!」」」」」」」」
「ワン・フォー・オール2nd!!『変速』!!」
……そして、破壊の化身が加速した。
この長かった物語。
その物語に終わりをもたらす為に。
side回原
「急げトンガリ!!」
「慌てんなや!!撃ち漏らしを出さねえのも大切だろがぁ!!」
「周囲に溢れかえってたトゥワイスの姿はもう見えねえぞ!!」
「1体でも残すと大変だよ!!そこからトゥワイスが増えてしまう!!」
「トゥワイスの本体はアジトの奥深い所にいる!!外の連中への遠慮は必要ねえ!!念入りにぶちかましてから行くぞ!!」
タイムリミットは5分。
5倍に加速した奇妙な感覚の中で、俺達はそれぞれがそれぞれに出来る全力を尽くしていた。
滅びのドリルブリザードを放つ俺と轟と死柄木。
周囲の索敵をしつつ、かつ移動と姿勢制御、撃ち漏らしの対応をするトンガリ。
そして変速を維持しつつ浮遊やフルカウルの分配など、さらに黒鞭まで使う大忙しの緑谷。
増え過ぎたトゥワイスを周囲の山ごと消し去る程の、本来ヒーローとしては使うべきでない破壊の力を使いながら、俺達は確実に前へ前へと進んでいた。
そして!!
「……よし!!周囲にトゥワイスの姿は確認できねえ!!後はアジトの中だけだぁ!!デク!!死柄木の分のフルカウルをこっちによこせ!!」
「だな!!俺の力がこのままだと本体のトゥワイスを巻き込んじまう恐れがある!!」
「突撃だな!!回原!!」
「ああ!!行くぜ緑谷ぁぁ!!」
「うん!!行こう!!皆!!」
両足のドリルを全開!!
トンガリの爆破の力と轟の炎もミックス!!
「オラァ!!!!」
さらに緑谷のフルカウルと変速の力も加わり、俺達は明らかに人の限界を超えた超速でヴィラン連合のアジトへと突っ込んだ!!
「フルカウル60%!!スパイラル・スマッシュ!!」
山をくり抜き作った洞窟のようなアジト。
その通路内に溢れるトゥワイス。視界を埋め尽くすそんな無数のトゥワイス達を俺のスマッシュでぶっ飛ばす!!
「両サイドは!!」
「俺達に任せろ!!」
全面に立ちふさがるトゥワイスの群れを俺が担当し、枝分かれした通路などの左右に別れた先のトゥワイス達をトンガリと轟が担当する!!
それぞれフルカウルで超強化された個性攻撃が凄まじい勢いでトゥワイスを消滅させていく!!
「このまま真っ直ぐだ!!突き進め!!」
発信機を見ながら俺達を誘導する死柄木弔。そのナビに従い俺達は超スピードで進んでいく!!
その俺達の後ろからは唯達後続のチームが、トゥワイスを殲滅し終えた通路を進んでいた。
サーチアンドデストロイを続けながら進む俺達。そりゃせっかくここまで減らしたんだ!!撃ち漏らしの所為でもう一回だなんてゴメンだぜ流石に!!
そして!!ついに!!
「ここだ!!ここに本体のトゥワイスがいる!!」
そこはそれまで通って来た通路と全く同じ、何の変哲もないただの通路だった。
それが今回のこの事態がヴィラン連合にとっても全くの想定外だったのだと、強く証明しているかのようだった。
「俺達の力じゃ本体にも被害が及ぶ!!ここはテメエだろドリル!!」
「おうよ!!」
「フルカウル100%を回原くんへ!!行けぇぇ!!」
「シャァァァァ!!!!」
突き蹴り肘打ち膝蹴り投げ……俺が身につけたありとあらゆる武術。その集大成をフルカウル100%&変速で超強化し目の前のトゥワイスの群れへと叩き込む!!
「その真ん中のヤツ!!ソイツ!!ソイツが本体だ!!ソイツだけ残して全部蹴散らせ!!」
「任せろ!!」
その死柄木の言葉にさらにさらに俺は加速!!本体がわかれば遠慮は必要ねえ!!これまでの人生で身につけた全ての武術を駆使し、俺は本体のトゥワイスめがけて突き進む!!
そして!!
「トゥワイス!!」
死柄木が、ついにトゥワイスに辿り着いた!!
5指で触れないよう慎重かつ大胆に!!
「悪い!!待たせた!!助けに来たぞトゥワイス!!」
「あ……う……あ……」
自分の元へと、死柄木が本体のトゥワイスを抱き寄せた!!
「……ドリル!!デク!!俺と半分野郎の個性合体を解除しろ!!」
「この場はお前らに任せる!!俺と爆豪でトゥワイスの撃ち漏らしがないか確認してくる!!行くぞ爆豪!!」
「テメエが仕切るんじゃねえよ!!俺のセリフだろが今のはよ!!」
「よし!!任せるぜ2人とも!!」
「「おう!!」」
まだトゥワイスの暴走は止まらないし、不測の事態に備える必要はある。だから2人は俺達から離れ、出来ることを全力でやりに行ったのだ。
「回原くん!!」
「ああ!!」
そして暴走が止まらない以上!!トゥワイスの両手からは今もコピーされたトゥワイスが生み出されて……それを俺が潰す必要があった!!
そんな時間がいくらか流れ!!そして!!
「仁君!!」
「ん!!」
「デクくん!!」
(……空気を読んで黙る男)
……そして、遅れて追いついた後続が合流!!そして!!
「……怖かったですね仁君……でも、もう大丈夫。安心なのです」
BANG!!
銃声が響く。
「……あ、……う……あ……」
「……ただいまかな?それともおかえりかな?……でも……仁君を救えて……良かった……良かったよぉ……」
ぎゅっ……
トガヒミコがトゥワイスを抱きしめた。
こうして、もしかしたらこの国を滅ぼしていたかもしれない災害……サッドマンズデス・パレードを俺達は止める事に成功した。