回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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僕たちに『ライジング』なんて必要無い

「アジト内の確認が終わったぜ」

 

「ああ。撃ち漏らしの心配はねえ。間違いなくトゥワイスはそこにいる本体だけで、増えたのは全部仕留め終わった」

 

「そっか。サンキューなトンガリに轟」

 

「けっ」「おう」

 

 

トゥワイス本体の救出に成功した俺達は、万が一が無いようにアジト内を隅々まで確認していた。当然、複製されたトゥワイスが残っていないかの確認の為である。

 

その確認が全て終わり、俺達はアジトの外に集まっていた。

 

崩壊の氷嵐が全てを薙ぎ払った後の山。埃とも砂ともいえない不吉な何かが一面に広がる寂しい光景。

 

 

 

「デクくん……」

 

「………………」

 

 

「仁君…………」

「………………」

 

 

地面に座り、それぞれ膝枕で緑谷とトゥワイスを介抱する麗日とトガヒミコ。

緑谷は変速の反動で、トゥワイスは暴走の影響でそれぞれ動けそうになかった。

 

 

 

「……さて、これでひとまずは共闘は終わりな訳だが……これからお前らはどうするつもりだヒーロー共?」

 

「これから?決まってんだろ。荼毘を止めに行くんだよ」

 

 

 

共闘の終わりを宣言しつつ、俺達のこれからを確認する死柄木弔。それに皆を代表して俺が答える。

 

当然!!とトンガリと轟は力強く頷く。

そして倒れたままの緑谷もまた「……………」声はまだ発さないものの、絶対に自分も行くのだ!!とその強い意志のこもった瞳で無言のままそう叫んでいた。

 

 

「………そうか」

 

 

死柄木弔は俺達のそんな様子を見て……そして、

 

「ならば……俺も連れて行け」

 

「死柄木……おまえ……」

 

俺達ヒーローを威風堂々正面からしっかりと見ながら言葉を続ける。

 

 

「勘違いするな。お前らヒーローに手を貸す訳じゃない。だが……俺はこのヴィラン連合のリーダーだ。だから、俺には荼毘の……アイツの終わりを見届ける義務があると、そう思う。だから俺も連れて行け。交通費の代金分くらいの助力はしてやる」

 

 

そのヴィランでありながらも強い漢の姿に、俺は、

 

 

 

 

「……っは!!上等!!じゃあ行こうぜ死柄木!!別に代金以上に活躍してくれてもいいんだぜ!?」

 

「はっ!!ぬかせ!!あんま調子のんなよヒーロー共!!」

 

 

そう強く応えた。

それこそが礼儀というものだ。

 

 

 

 

「……けっ!!ドリルの野郎……まーた勝手に決めやがって……」

 

「……別にいいんじゃねえか爆豪?今さらつまらない真似をするようなヤツじゃないって事だけは、もう十分過ぎるくらいにわかっただろう?」

 

「……けっ!!」

 

 

 

 

 

背後のトンガリと轟の声。そしてあちらでは、

 

 

「ふん……荼毘くんなんてもうホントのホントに知らないのです!!」

 

「まぁまぁヒミコちゃん……」

 

「…………」

 

「……トガはトゥワイスを連れて下がってろ。コンプレスは……」

 

「……わかってる。ペテンの種は蒔いている。後は時間次第だ」

 

「……『奇跡』と違ってしょっちゅう起こるから『陳腐』と呼ぶし、ペテンってのは案外間に合うもんだろう?その為にケツを叩くのがお前の仕事だ。頼むぞコンプレス」

 

「……ヤレヤレ……ジジイのケツとか触りたくもないんだけどね……」

 

 

 

あちらはあちらで何やらゴニョゴニョとやり取りをしていて、そして、

 

 

 

 

 

 

「……やあ、まさに宴もたけなわ、って所かな?どうやら僕は丁度いいタイミングで来たみたいだね」

 

 

 

 

 

 

 

……そして、このタイミングで黒いゲートが開き、物間がやって来た。

 

 

「いい加減な事を言いやがる!!テメエの事だ!!どうせどっかから状況把握しつつ一番いいタイミング見計らって登場してきたんだろうが!!この黒幕野郎!!」

 

 

「ふふふ♫解説ありがとう。どうも君が場にいると解説の手間が省けて助かるね!!今後もこの調子で頼むよ」

 

「ぬかしやがる!!知るか!!ボケェ!!」

 

 

挨拶代わりに会話のジャブを放ち物間はこの場を支配すると、

 

 

 

 

「さあて諸君、最後の決戦だ。そろそろこの物語に幕を引くとしようじゃないか」

 

 

 

まるでタキシードのようなヒーローコスチュームの物間。そんな彼が主人の為に扉を開く執事のように腰を折り一礼する。

 

 

そんな彼の後ろに、また新たなゲートが開く。

 

 

「あの先が最後のパーティー会場さ!!さあShall we danceと洒落込もうじゃないか!!」

 

 

最終決戦の場へのゲートが開く。

 

俺達は順次そのゲートへと進んでいき、

 

 

 

 

「お茶子ちゃん……唯ちゃん……」

 

「ん……」

 

「ヒミコちゃん……」

 

 

この場に残り、また別の場所へと移動するトガヒミコが、2人に声をかける。

 

彼女は本当は笑いたいのに、でも泣きそうで……何か言いたいことがあるんだけど言えない……そんな、複雑な感情によって極小時間の間に器用に百面相をやってのけて、そして、

 

 

 

 

「……またね。うん……またね!!お茶子ちゃん!!唯ちゃん!!またね!!またね!!」

 

 

 

 

「……うん!!またねヒミコちゃん!!」

「ん!!」

 

 

 

……そんな3人の声。

それに背中を押されながら、俺は物間の作ったゲートに入る。

 

さあ!!決戦の地へ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side物間

 

 

 

 

「……うん。勝ったね」

 

 

 

 

 

……まあ少し前から知っていたんだけどさ。

 

僕が作ったゲートを潜り、辿り着いた最終決戦の場。

 

そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンデヴァーさん!!うおカッケェ!!何ですかそのパワードスーツ!!ちょっとカッコよすぎるんですが!!ヤバ!!」

 

「……ふ。来たかスパイラル」

 

「やっほー念のため言うけど俺もいるからねースパイラルくーん!!くーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目かのヒーロー達の総攻撃を受けて、醜くて巨大な肉の塊となった魔王・荼毘。

 

今も再生を続けるその肉塊の前に立ち塞がるフルアーマー・エンデヴァーとホークス。

その2人を見て飛び出し合流する回原。

 

その光景を見て思わずこぼれた僕の言葉。

 

 

 

 

『うん。勝ったね』

 

 

 

 

その言葉に爆豪が反応する。

 

「おいおい黒幕野郎……ちぃとばかし気を緩めんのが早すぎるんじゃねえか?まだ決着はついてねえんだぜ」

 

その、もっともな彼の言葉。

 

「……ん、ああ……すまないね爆豪」

 

……そんなもっともな彼の言葉を聞いても、僕の……いや僕だけじゃないだろう。きっとあの場にいた多くのヒーロー達もきっと、今僕と同じ気持ちだと思う。

 

 

「でも心配はいらないさ、何せ……」

 

 

そう……何せ、

 

 

「エンデヴァーとホークスと……そしてスパイラル……回原の3人が揃ったんだよ。もう、僕達ヒーローの負けは無い。あれはそういうものなんだ。泥花市でのあの絶望的な戦いをひっくり返したあの3人。あの戦いを見ているからこそ僕は確信している。あの3人がああして同じ戦場に揃った以上、僕達の勝ちだ」

 

 

そう、きっと、

 

 

「平和の象徴だ……ああいうのを真の平和の象徴って呼ぶんだろう。かつてオールマイトがいたように。その場に存在するだけで味方全てに自分達の勝利を確信させるような理不尽な存在……あれが、あれこそが、あの3人こそが今代の平和の象徴なんだ」

 

 

 

エンデヴァーは一人では背負いきれなかった。

ホークスはそもそも役割として不向きだった。

回原は資質があるがいくらなんでも早すぎた。

 

 

それぞれが一人だけでは背負いきれなかった、余りにも重すぎるオールマイトという呪い。 

でも、あの3人が組み合わさる事によって、そのオールマイトの呪縛すら打ち砕ける程の強い新たな平和の象徴が産まれていたのだ。

 

……その新たなる希望は、一度は魔王の手によって完全に打ち砕かれて……もう二度と戻らないと思っていたけれど……

 

 

ホークスと回原の2人が懸命につなぎ、そしてエンデヴァーが帰って来たのだ!!

 

それは確かに前とは違う形だけれども!!

 

 

「僕達ヒーローは負けない。負けないんだよ。だって僕達は個でありながらもヒーローという名の群体なんだから。誰か一人が不調でちょっと休んだりする事があっても、その他の皆でカバーして支えあうんだ。オールマイトのような圧倒的な個の力で支えていた歪な時代が終わり、僕達は僕達それぞれが全員でそれなりの責任を背負って、皆でちゃんと平和を維持していく……そんな時代が来るんだよ。だから……」

 

 

そう、だから!!

 

 

 

 

 

 

 

「僕達に『ライジング』なんて必要無い!!極々少数の偉大な英雄の犠牲で成り立つような社会に意味なんて無いんだ!!」

 

 

 

 

 

誰かの犠牲の上に成り立つ平和?

それはタイヘンにケッコウな話だね。

それが、僕らが現実として生きている世界の話でなければ。

そういうのはリアルじゃない創作の物語上だけにしてくれないかな?

  

そんなのはまっぴらゴメンだよ僕はさ!!

 

僕は自分が大切だし、僕の友達、仲間もみんな幸せになって欲しい。

 

誰かが死にそうなくらい傷ついて、四肢欠損して、後遺症もあったりして、それでも進んでいく物語だなんて……僕は絶対にゴメンだ!!

 

そう!!だから!!僕は胸元のマイクを引きちぎる!!そして思いっきり叫ぶ!!

 

 

 

 

「この場にいる全ヒーローにファントムシーフこと物間寧人が告げる!!」

 

 

 

そう!!

だから!!

 

 

 

 

「これが本当の最後の決戦だ!!誰かが傷ついて!!トラウマを乗り越えたりして!!致死量の攻撃を食らったりしてからの逆転!!大勝利!!それは創作として見てれば楽しいよ!!美しいよ!!でも!!それで僕の友達や仲間が傷ついていくなんて僕はまっぴらゴメンだね!!なぁ!!みんなそうだろう!!」

 

 

誰かが死んでしまい成り立つような美談に興味は無い。

誰も死なずに終わるならそれが一番いいじゃないか。

 

だから僕はアイツに向けて叫ぶ。

 

かつて僕がそう叫んだあの日、泥花市で叫んだあの日。

 

 

 

 

 

「だから!!行けスパイラル!!回原ぁぁ!!」

 

 

 

 

 

その叫び!!期待の!!希望を願う叫びに応えて、天を貫くドリルを回し続けた僕の悪友に向けて叫ぶのだ!!

 

 

 

 

アイツは一人でも強いけど。

強いけど、そんなアイツの隣には常に誰かがいて、そんな全ての人達を巻き込んで前へ前へと希望の道を掘り進んでいくアイツへ向けて、僕は叫ぶ!!

 

 

 

 

 

 

「行け!!回原!!君のドリルで天を貫け!!」

 

 

 

 

 

 

そう、僕らの本当の敵はいつだってそういう『天元』だろう?

 

 

ヒーローは自己犠牲の果てに皆を救わなければならない?

クソくらえだよそんなものは!!

 

この腐ったミカンみたいな『ヒーロー飽和社会』ならば、きっともっと別の道がいくらでもある筈なんだ!!

 

だから行こう回原!!

 

 

 

僕らが本当に貫くべき『敵』は!!そういう僕らに楔をはめている目に見えない全てなのだから!!

 

限界を!!天元を!!全てを超えて!!

僕らの新しい未来に向かって!!

そのドリルで風穴を開けてくれ!!

 

 

 

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