「さあ行こう!!これがラストバトルだ!!個性・扇動を使うよ!!」
物間の良く響く声が戦場に広がっていく。
「こちら新白連合所属ヒーロー事務所!!ファントムシーフだ!!これからこの場にいる全てのヒーロー達に最後のオーダーを告げる!!」
個性・扇動!!
それは周囲の仲間にバフを与えるというサポート系の強個性!!
エンデヴァーさんとホークスさんを筆頭に戦場に立つ多くのトップヒーローたち。そして俺達学生ヒーローたち。全員の力を高めていく。
「……フルボッコだ!!楽しい楽しいフルボッコタイムの時間だよ!!目の前の荼毘は随分とデカくなったねえ!!まるであの冬の泥花市で見たギガントマキアのようだね!!つまり!!過去に一度僕達が超えてきた壁でしかない!!だったら負ける理由なんて何処にもないのさ!!」
物間の言葉に導かれるようにして、皆の視線が荼毘へ……再生・錬金を続けて巨大なサイズに成長した荼毘を見る。
「自己再生や細胞増殖には体内のカロリーを大量に使う筈だ。そして錬金による巨大化にはお金が……それ相応の資産の消費が必要になる。当然だよね?この世は基本等価交換さ!!だからヤツにダメージを与え、回復&さらなる強化の為に錬金を使わせることは……AFOの金を、資産を、それを消費させる事につながるのさ!!はは!!どうだい皆!!これからのフルボッコタイムが楽しみになって来ただろう!!つまり僕らがこれから荼毘をフルボッコにすると!!ヤツの肉体だけじゃなくて!!タルタロスに幽閉されてる本体のAFOの総資産にもダメージを与える事が出来るんだよ!!楽しくなってきたんじゃないかな皆!?」
「……ふっ……なるほど」
「はは!!確かに!!なかなか面白い演目っすね!!」
「この前来たパチマイトは金貨とかを消費して強力な個性を使ったり、自分の肉体を強化してた……だから、アイツをボコってさらに個性を使わせてやれば肉体だけじゃなくて資産にもダメージ入るのか……はは!!そりゃ確かに傑作だぜ物間!!」
エンデヴァーさんホークスさん……そして他の皆にも物間の言葉と、その意味が伝わっていく。
「は!!面白え!!蹴り放題な上に得点までつくボーナスステージってことかよ!!」
ミルコさんの言葉に物間が笑い、
「ふふ!!そう言う事さ!!ここからはフルボッコタイムかつボーナスステージだ!!ただし!!荼毘からの反撃はあるしそれは致死量レベルだろうからそれだけ気をつけてね!!」
「「「「「当然!!!!」」」」」
『……オヤジィィ!!……ヨイチィィィ!!……ナンデソッチニイルンダヨダョォォォ!!!!』
悲しそうに叫ぶ巨人……
「すまないな燈矢……まずは、この戦いを終わらせよう……俺とお前の罪と罰の話はそれからだ」
『……オヤ!!ジィィィィィィ!!!!オオォォー!!!』
悲しそうに叫び、エンデヴァーさんの声を聞き、そして怒りに任せてこちらへ襲いかかってくる荼毘!!
それを正面から見据えて、
「……いつかの、福岡の時とは逆になったなスパイラル」
「エンデヴァーさん?」
その迫ってくる巨人の前にその大きな身体を晒し、皆の盾となろうとしている偉大なヒーロー。
「福岡ではお前がタンクを務め、俺がアタッカーだった……今日は逆だ。俺がタンク役をやってやる……だからお前が、いやお前達でアタッカー役をやってみせろ」
「エンデヴァーさん」
「はいはーい!!いつでもどこでも安定のサポーター兼オールラウンダーの俺もいるよー!!ホークスゥー!!俺ことホークスもよろしくぅー!!」
「ホークスさん」
「……華やかなラストバトルの後は、しめやかにシャンパンで祝勝会を始めるとしよう。今宵はデニムナイトだ。スパイラル……たまには君たちも付き合えよ」
「俺に任せろ!!祝勝会の会場は色々と考慮する!!ちゃんとな!!だから気にせず来い!!今日は!!今日はきっと大丈夫!!」
「ベストジーニストさん……そしてありがとう!!エッジショットさん!!」
そんな素敵なヒーローの先輩たち!!
そのヒーローたちを従え先頭に立つエンデヴァーさん!!
「行けスパイラル……道は先導する俺達が切り開く。お前達で天元を貫いてみせろ」
「はい!!」
彼の言葉に俺が応える。
エンデヴァーさんはフルアーマー化によって覆われて隠された表情の……そのわずかに露出している口元を緩めて笑い、
「……ふっ……行くぞ!!」
「「「「「「おう!!!!!」」」」」」
微かに笑った後、ヒーロー達の先陣を切り荼毘へと向けて飛び出した。その大きな背中にヒーロー達が続く。
そんなヒーローたちを見送る俺の背中に、
「……お待たせ回原くん」
「……けっ!!俺達も早く行こうぜ。じゃねえとアイツら俺達抜きで荼毘の野郎を倒しちまいかねない勢いだぜ」
「……親父の期待に応えたいと思ったのは、正直、産まれてから初めてかもしれねえ……だけど、ここはやるべき時だよな回原」
緑谷の声が、
トンガリの声が、
轟の声が、
その静かだが熱い3人の声が俺の背中に突き刺さり、そして3人が俺に並ぶ。
「…………ん」
(……頑張ってね、旋)
そんな俺達4人に近づいて来た唯は、持っていたドリルを巨大化し俺に渡してくれる。
「ありがとな、唯」
「ん」
その巨大化したドリルを受け取り!!そして俺は!!俺達は叫ぶ!!
「「「「個性合体!!!!」」」」
巨大化したドリルと俺の右手が繋がり!!緑谷からは黒鞭が放たれる!!その黒鞭が俺と緑谷を!!その両脇のトンガリと轟を結ぶ!!
「「「「個性合体・ワン・フォー・オールだぁ!!!!」」」」
緑谷の黒鞭から広がる緑色の閃光が俺たちを包み!!そしてスパークする!!緑色の稲光の姿を借りて溢れる圧倒的な力!!
「「「「行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!超ぉぉぉぉ!!!!ギガァァァ!!!!ドリィィイルゥゥウ!!!!ブゥレェェェイクゥゥゥゥ!!!!」」」」
ワン・フォー・オール。
一人は皆の為に。
皆が一つのドリルの為に。
この物語にケリをつけて、皆に平和をもたらすドリルの為に。
俺達は今、そんな一つのドリルとなった。
ワン・フォー・オール・フルカウル100%。
天元を貫き。
誰もが幸せになる為の未来を目指して突き進むドリルに。
side唯
「……頑張って、旋」
緑色のまばゆい閃光を放つドリルが、巨大な魔王・荼毘へと正面から超速で突っ込んだ!!
『ギャァァァァァァァァァ!!!!』
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
魔王・荼毘と呼ばれる巨大なヴィラン。
そんな史上最悪クラスのヴィランに、私の好きな人とその友達が突撃していた。四位一体の強力なドリルとなって。
迫りくるのは巨大な絶望。
瞬間、思わず死を覚悟してしまうような、そんな心を冷やす無慈悲な脅威。
……そして、それを貫こうとするのは……見た目だけは絶望の象徴よりも遥かに遥かに小さな人影。
……その光景は、昔見たあの瞬間を思い出させて……
「……頑張って……」
だから……
「頑張って……旋!!」
頑張って!!頑張れ!!頑張れ!!
「負けるな!!回原旋!!」
それは忘れもしない!!中学1年生の7月の思い出!!
あの時私を助けてくれた!!初恋のヒーローの思い出!!
私を助けてくれた!!ずっと心に焼き付いていたあの人の思い出!!
「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」
『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「負けるなぁぁぁぁ!!回原旋んんんん!!!」
巨体と拮抗していた小さなドリル。
そして!!ついに!!
「おおおおお!!!!」
そのドリルが!!魔王を貫いた!!
そして!!
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
貫き進んだ先でUターン!!超スピードで反転し今度は背中側から魔王へと突っ込んでいく!!
轟の炎、爆豪の爆破、緑谷の力と旋の竜巻。
4つの力が一つに交わり、緑色の極光を放ちながら物理法則を超越した超スピード+超鋭角で縦横無尽に飛び回る!!
『!!!!!!!!』
「おおおおおおおお!!!!」
荼毘はその迫りくる極光を炎で迎え撃とうとしたが、その炎をこの世の生物がなし得るとはとても思えない超スピード+超鋭角の軌道で躱し!!さらに極光を放つドリルが魔王に襲いかかる!!
……今度は、一瞬だった。
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
一瞬で、荼毘の巨体を貫く。
そして貫いた勢いのまま進み反転!!直角に右折!!直角に右折!!みたいなあり得ない動きで反転し!!さらに荼毘へと突撃!!突き進む!!貫いて反転!!さらに突撃!!突撃!!突撃突撃突撃突撃突撃突撃突撃突撃突撃!!!!
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
「やれやれ……真ゲッター1もびっくりだねあれは……」
「ん……」
状況が落ち着いたと判断したのか?物間がこちらに来てそう声をかけてきた。
目の間には無数の極光。
いや、無数という表現は正しくないだろう。
……正確には……途切れる事なく無限に続く……緑色の極光?
個性合体・ワン・フォー・オール。
4人が放つギガドリルブレイクは……まさに物間の言った通り、飛び回る真ゲッター1のようだった。永遠に繋がり続けるような緑色の極光を残像として残しながら、荼毘の周りを飛び抉り貫き反転し永遠に超速で無限の攻撃を仕掛けていた。
物理法則を明らかに超越した無限のギガドリルブレイク。
天元突破・ギガドリルブレイク
そのギガドリルブレイクが魔王・荼毘の肉体を抉り削り貫きすり潰し……やがて、再生も増殖も……錬金による巨大化も……その全てをねじ伏せて……
「おや……じ……よ……いち……俺は……ぼくは……」
「燈矢……」
……全ての力を使い尽くし、消耗し尽くしたのだろう。
弱く、細く……衰えた魔王・荼毘がそこに蹲っていた。
そして、
「……どうやら……ギリギリ間に合ったか?」
「……なかなか起こらない奇跡と違って、しょっちゅう起こるから陳腐っていうんだろ?コイツはそういうペテンの類さ」
「……どうでもいいんじゃが……一番苦労してるのワシじゃと思うのよねコレ……」
そんなタイミングで。
泥ワープだ。
コンプレスと、もう一人老人が戦場に現れた。
「……さぁて。最後のエンターテイメントだ。この物語を締まりのない茶番として片付ける為の最後のペテンを始めようか」
「……だから……頑張ったのワシ……ワシなんじゃが……何でこのロリコンが偉そうにしてるんじゃろ?」
……物語の、幕引きの時間が迫っていた。