回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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曇りのち晴れ……ところにより雨

sideエンデヴァー

 

深夜に始まった過酷な戦い。

ヴィラン連合……いや、燈矢との最終決戦。

 

過酷を極めた決戦……その決着がついた時刻は夜明け……地平の果てから太陽が顔を覗かせ始める、そんな時間となっていた。

 

 

俺の眼の前には全ての力を出し尽くし、地面に蹲る燈矢。

 

 

「………燈矢」

 

生きてはいる。それは間違いない。 

だが体力気力その他のありとあらゆる力を出し尽くし振り絞って……抜け殻となり弱りきった息子。俺はそんな息子を見下ろしていた。

 

 

……そんな俺に、一人の老人が近づいて来る。

ヴィラン連合のメンバーからドクターと呼ばれる老人。

 

氏子達磨。

 

AFOの古くからの協力者であるマッドサイエンティスト。

恐るべき脳無を作り出し、世に混乱をもたらした恐るべきヴィラン。

そんな男が、何かとてつもない難行を自分はやりきったのだ!!という感じの満足気な笑顔を浮かべながら無防備に歩いて近づいて来た。

 

 

 

「……おお!!すまんすまん!!そりゃ警戒するわな!!当然じゃ!!じゃがワシも滅茶苦茶頑張って超特急でコレを作って来たんじゃ!!まずはワシの話を聞いてくれんかの?」

 

 

「……それはご苦労な事だ。だが正直……こちらも少々(・・)取り込み中でな……手短に要件を話してもらえれば助かる」

 

 

「ほほ!!そりゃそうじゃな!!では勿体ぶらずに手短に話すとしようかの!!」

 

そう言うとドクターは白衣から薬剤の入った容器2つと、それを空気圧で打ち出す器具を取り出した。

 

 

 

 

 

「『個性消失弾』と『肉体年齢を赤子まで巻き戻す薬』じゃ」

 

 

 

「………なっ!!!!」

 

 

……その言葉の意味を一瞬理解出来ず……思わず、間抜けな驚きの声が出てしまった。

 

そんな俺の様子を満足そうにドクターは見ると、続けて、

  

 

「荼毘の精神汚染の主要因は個性・オール・フォー・ワン……その個性と紐付いた死柄木全の精神が原因じゃ。じゃから先ずは個性消失弾で個性を消滅させる」

 

 

「……あ……う……あ……」

 

 

「……とはいえ、もうすでに大分2人の精神は溶け合っておる。個性を消しただけでは何処まで轟燈矢の精神が復元出来るかわからん。じゃからもう一つの薬で赤子まで強引に肉体年齢を巻き戻す。ようは脳を強制的に小さくし、記憶や精神を強引にリセットする訳じゃな」

 

 

「そんな……事が……」

 

そんな……夢のような事が……本当に?

 

 

 

俺のそんな視線……疑い、すがり……心の底からそうであって欲しいと願うけれど、いやまさかそんな……と、そのあまりにも俺に対して都合の良すぎる夢を信じきれない俺。

 

そんな混乱の極致にいる俺に、ドクターはニヤリと笑い。

 

 

 

 

「あるんじゃなーそんな事も!!何せワシ!!悪の天才マッドサイエンティストじゃからのう\(^o^)/!!」

 

 

 

「……そうか」

 

「ノリが悪いのー!!」

 

「……すまんな、正直……色々と余裕が無い」

 

「……そうか」

 

 

そう言うと、ドクターは無言で俺に近づいて2つの薬を゙渡す。

  

 

 

「……一応、言っておく」

 

「……ああ」

 

 

薬を゙受け取る俺。その俺の目をじっと正面から見ながらドクターが告げる。

 

 

「……結果の保証は出来ん。間違いなくコレでヤツの個性は消滅する。間違いなくヤツの肉体年齢は赤子まで戻る。だがそれだけじゃ。こんな状態に一度なった荼毘(・・)の精神が、赤子の時の轟燈矢(・・・)の精神に綺麗に戻る保証は無い。ひょっとしたら死柄木全の中途半端な精神と、轟燈矢の精神が混ざり合った……全く別の人格となる可能性もある」

 

「……ああ」

 

……ああ……そうだな……それはその通りだ。 

そこまで何もかもが俺にとって都合の良い奇跡……そんなものは過去をいくら振り返って見たところで、一度たりとも俺には無かっただろう轟炎司よ。

 

 

「……ありがたく……使わせてもらう」

 

「……そうか」

 

 

薬を受け取り、視線をドクターから燈矢へと向ける。

 

 

「…………ぁ……う……ぁ………」

 

 

 

地面に蹲り、弱々しく呻く燈矢。

 

 

 

 

 

……そんな姿になってしまった俺の息子。

 

 

 

「いつもいつも……遅くなってすまないな……燈矢……」

 

 

俺も地面に膝をつき、そんな息子を抱きしめた。

 

 

 

 

 

「……ぁ……ぉ…………じ………」

 

「……瀬古杜岳……行かなくて……ごめんな……!!」

 

 

……プシュ!!

……俺は、個性を消滅させる薬を息子へと打ち込んだ。

 

 

 

「ぁ!!……ぅ……」

 

「お前とちゃんと……向き合えなくて……ごめんな……!!」

 

 

……プシュ!!

「……ぉ……や……じ……」

 

……そして、時間を巻き戻す薬を……息子へと打ち込んだ。

 

 

「……情けない父親でごめんなァ……こんな父親でごめんな……ずっと放ったらかしにして……ごめんなァ……!!」

 

 

 

薬の効果でどんどん小さくなっていく息子。

俺の腕の中でどんどん……どんどんと小さくなっていく息子。

 

 

「今さら父親ヅラなんてするなよ、とか……全部お前の自己満じゃねえか俺を巻き込むな、とか……今さら反省なんかしてももう遅いよとか……きっと!!色々とお前は思ってるよな!!ごめんな……ごめんなァ……!!燈矢!!燈矢!!ああ!!……でも!!」

  

 

ああ!!でも!!でも!!

 

……打ち込んだ最初は確かに大人の身体だった。

それがやがて青年の身体となり。少年となり、幼年となり、そして……

 

 

「……でも!!今度は!!何があっても絶対にお前のそばにいるから!!今度こそ!!お前をちゃんと見てるから!!だから!!」

 

 

……やがて、俺の腕の中の息子が……赤子にまで巻き戻る。

 

 

 

(……ああ…………)

 

 

 

……これは、情けない男の妄想だ。

……そう……妄念……だった。

 

口に出すのも恥ずかしい。

 

恥ずかし過ぎて誰にも打ち明けたことの無い……俺の心の奥の奥の底の底にしまい込んでいる……そんなとびきり情けなくてカッコ悪い俺の妄想。

 

……そんな、女々しくてとても情けない……一人の男の妄想。

それは。

 

 

 

(何度、心の中で考えた事だろうか……)

 

ああ……自分が情けない。

だが……

 

それでも。

ああそれでも。

そのあまりにも甘美な妄想が。その妄想が!!

これまで何度も何回も何年も俺の心をかき乱してきた!!

 

 

 

(……言える訳が無いだろう!!)

 

 

 

ああ!!燈矢!!

お前がこの世に産まれ落ちたあの瞬間!! 

あの瞬間に舞い戻り!!そして!!もう一度そこから全てをやり直させて欲しいだなんて!!

 

一からもう一度やり直させて欲しいだなんて!!

 

そんな!!余りにも情けのない妄想を!!

こんな醜い願いを!!

言える訳が無いだろう!!

 

だが!!

 

 

「……あ……う……あぁ!!キャッキャッ!!」

 

「……お……おぉぉ………」

 

……だが、今……俺の腕の中で……現実として赤子となった燈矢がいて……

 

 

(だから……もしかしたら……俺は……ここから……もう……一度……)

 

 

……そんな俺の情けのない妄想……誰にも言えない、言う事などとても出来なかったこんな醜い妄想。妄念。 

 

それが……今……

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side回原

 

 

……エンデヴァーさんの慟哭が響いていた。

 

 

登ったばかりの新鮮な朝日に照らされながら、息子を抱きしめるエンデヴァーさん。

 

 

誰もそれを咎める事などしない。

当然だ。

 

 

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………!!!!!!」

 

 

個性を失い。 

傷だらけになり。

 

それでも息子を止める為に戦い続けたヒーローの、魂の叫び。  

 

……それを一体、誰が咎められるというのだろうか?

 

 

 

 

 

「……曇りのち晴れ……ですかね、ホークスさん?」

 

 

 

いつの間にか俺の隣に来ていたホークスさんへ俺はそう問いかける。

 

 

 

「……うん。でも……ところにより雨……かな?」

 

 

 

ホークスさんは俺の肩を抱き……そして2人で並び、息子を抱きしめるエンデヴァーさんを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、協力はこの辺で終いとしよう。俺達はもう行くぜ」

 

「死柄木……」

 

少し経ち、死柄木を゙中心に集まったヴィラン連合が俺達ヒーローに向けて律儀に別れの挨拶を告げる。

 

 

 

 

「んじゃーまたなー!!良い感じのペテンだったろ!?これぞエンターテイナー!!」

 

 

 

「……だから、何でこの何もしてないロリコンは偉そうにしてるんじゃろなぁ?」

 

 

「けっ!!テメエら!!俺たちに協力したから今日だけは見逃してやるぜ!!次に会ったら全員とっ捕まえてやっからな!!」

 

 

 

「はは!!ソイツはおっかねえな!!そん時を楽しみにしてるぜ!!」  

 

 

トンガリの悪態を楽しそうに受け流す死柄木。

 

そしてヴィラン連合が泥ワープの中に溶けて消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、この日を最後にヴィラン連合は日本での活動を終了。海外へと脱出した。

 

 

あのエンターテイナーとやらが本当の本当に通したかった最後のペテン。

それが俺たちヒーローとヴィラン連合の最後の決戦……を匂わせておいてからの海外逃亡だったと気づいた時には全てが遅かった。

 

 

「あんの!!ペテン師があ!!!」

 

 

トンガリが吠えたが完全に後の祭り。

最後の最後で上手いこと俺たちヒーローはヴィラン連合にしてやられたのであった。

 

 

 

 

 

 

……そして、俺の人生史上最も慌ただしかった3月が終わり……4月となった。

 

 

 

 




ようやく長かった決戦が終了!!

この長かった物語もようやく終わりを迎えます。
後2.3話かな?
それが終わったらあとがきとかも書いてみたいとか考えております。

ハーメルンって、感想でリクエストぽいの書くと削除されるんでしたっけ?それでも良ければ聞いてみたい事とか何かありましたら書いてもらえれば出来るだけ回答したいとか考えております。

「ぶっちゃけ大変じゃなかった?B組メインにしてワン・フォー・オールを終盤まで温存するのって?」

……とか、何かありましたら削除されるかも条件で感想お待ちしております。
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