side緑谷
「お!!いた緑谷!!結婚おめでとう!!式に招待してくれてサンキューな!!」
「ありがとう回原くん!!」
「……で!!なぁなぁ見てくれよ俺のインスタ!!ウチの可愛い可愛い子供達をよぉ!!マジで天使!!天使じゃね俺の子供達は!!いやー可愛いー!!可愛すぎる!!」
「あはは……相変わらずの親バカっぷりだね……」
「コラドリル!!式を控えた新郎を困らせてんじゃねえよ!!」
「かっちゃん!!」
「……それにどうせ見るならこっちのインスタだぜ出久!!どうだぁ!!
「くっ!!小さな子供とデカい犬のコラボ!!コレは確かに可愛い!!やるなトンガリ!!」
「はっ!!武術バカのテメエはいつまで経ってもバズってもんが理解出来ねえみたいだなぁ!!見ろよこの圧倒的なイイネ数を!!」
「くっそこの才能マンめ!!無駄な所でまでその才能マンっぷりを発揮しやがって!!」
「あはは……高校卒業してからもう5年も経ってるのに……ホント何時も何かしらで必ず張り合ってるよね2人って」
在学中は成績で。卒業しプロヒーローになってからはプロヒーローとして。
そしてこの2人は20歳になるとほぼ同時に結婚し……回原くんはお嫁さん3人というちょっと異色な感じだけど……結婚し、子供が出来たら揃ってすっかり親バカとなった。
……んで、僕の結婚式である今日もこうして自分達の子供自慢で張り合っていた。
ホント仲良いね君等さ。
……んで、こうして2人がギャースカギャースカといつものやり取りをしていると、
「……痛て!!」「……痛っ!!」
「……ほーら旋!!その辺にしな!!緑谷が困ってるだろ全く!!」
「……ホントにこの
旧姓・拳藤さんと旧姓・塩崎さんがそれぞれの旦那の頭をポカりと叩き、ヒートアップしていた2人の頭を冷ます。
「おめでとうございます緑谷さん。結婚式が人前式というのは私の立場としては少し複雑な所もあるのですが……いえ、こんな日に言うのはヤボでしたね。ウチの駄夫もやる気ですので、精々こき使って下さいね」
「あはは……無茶なお願いしちゃってゴメンね」
僕の返事を聞いて元塩崎さんはクスっと笑い、
「かまいませんよ。本人も頼られて嬉しそうでしたからね。才能だけが自慢の男ですから、こういう時くらいは多少の無茶振りでもしてこき使ってやればいいのです」
「うーん、相変わらずな感じの夫婦だね」
「夫婦の形なんてそれぞれだよ。ウチなんか相当だしね。……あ、アホ旦那の所為で言うのが遅くなったけどおめでとう緑谷」
「ありがとう拳藤さん……あ」
そんな僕の返事に彼女はクスクスと笑い、
「こういう時くらいは昔みたいに拳藤でいいよ。でもステキなアイデアだね緑谷。結婚式を人前式にして、会場を雄英高校にするだなんて……しかもA組B組問わず同級生全員招待したんでしょ?」
「はい。素晴らしいアイデアだと思います緑谷さん。結婚式でもあり、そして同窓会のようでもある。こんなステキな式に呼んで頂きありがとうございます」
「あはは!!ありがとう!!うん!!僕だけじゃなくて2人で相談して決めたんだけどね。僕たちの結婚式はこういう形がいいよね、ってさ!!」
僕の言葉を聞いて笑う2人。
その後ろでガンつけ合ってる回原くんとかっちゃん。頼むから第2ラウンドは式が終わってからにして欲しい。
……そう、今日は結婚式。
僕と彼女の結婚式なのだ。
会場はなんと雄英高校!!
オールマイト経由で相談してみたら、ノリノリで良い感じの式場を整えてくれた。ホントにありがとうセメントス先生!!差し入れはやっぱエナジードリンクが良いですかね!!
「……さ、皆会場に入って。なんか轟くんが差し入れとか言ってやたらと高そうなシャンパンを開けまくってるからさ。久しぶりに会う人とかもいるだろうし、式が始まるまでゆっくりしててね」
「……おう。つーて俺は役割あるからあまりゆっくりも出来ねえんだが……」
「あはは……引き受けてくれてありがとうねかっちゃん」
「おう」
「先に行っててくれ一佳。俺は唯とねじれを待って入るから」
「うん。さっき『吸血レディとペテン師の子育て日記』の新作動画がアップされたからね。うんうんと唸りながら2人でコメント考えてるんだろ。あまり遅くなりそうだったら適当に止めて会場に連れてきてね」
「おっけー」
「頼むよ」
「おう出久。皆の出迎えもいいけどよ。そろそろお前も中に入った方がいいんじゃねえか?」
「……うん、そうだね。そうするよ」
かっちゃんに促され、残り2人の奥さんを待つ回原くんを残し皆で会場に入った。
side回原
「おー!!なんか久しぶりのヤツも多いな!!久しぶりだな皆元気だったか!!まーそれはそれとして俺のインスタを見てくれよ!!どうだぁ!!俺の子供達は!!可愛い!!可愛いだろぉ!!」
「「「「いやそれはもういいから!!!!」」」」
「なん……だと……」
「ん」
「だねー。旋くん。そろそろクドいよ」
「……はい」
「「「「「相変わらず嫁達の尻に敷かれてる!!!!」」」」」
式場の中には見覚えのある連中がたくさんいた。
雄英高校ヒーロー科の同級生達だ。
皆それぞれ忙しいんだろうに……それでも、緑谷達を祝う為に今日ここに駆けつけたのだろう。
「久しぶりだな回原。そら、駆けつけシャンパンだ」
「おーお前も変わんねーなー轟……」
近くに来た轟から何か高そうなシャンパンの入ったオシャレなグラスを受け取る。ほんとコイツは……全く……
「変わりゆく日々の中、変わるものもあれば変わらないモノも確かにある。初めての六本木の夜……アレからいくらか六本木の街は変わった。だが俺は今もこうして変わらない。誰か……俺が本当の夜の六本木を教えてやる。だからその代わりに、俺に本当の愛を教えてくれ」
「「「「またあの辺の独身貴族達と付き合っててなんか恋愛絡みでトンデモな事でもあったのかよ轟ぃぃぃぃい!!!」」」」
悩めるイケメンの独身トップヒーロー。
そんな男が開ける高級シャンパンは何処かほろ苦い味がした。
いや知らんけどな。
しかし自由な感じだなー緑谷の結婚式は。
緑谷達が選んだのは人前式。
神様とかに認めてもらうのではなく、式に参加する人達に結婚の報告をし、そして認めてもらうという結婚式だ。
何となく緑谷らしいと思うし、そして俺達ヒーローらしいとも思う。
俺達の結婚の時も色々あったけど、緑谷は緑谷で大変だったからなー。
緑谷が持つワン・フォー・オールの個性。
その継承に関する問題。
それをクリアする為に緑谷は色々と苦労していた。
最終的には緑谷本人の精神的なコントロールが鍵だったのだが、その辺を心操含む精神に働きかける個性の使い手達の協力で何とかクリアしたのだ。
そんな大きな問題を乗り越えた緑谷の結婚式。
神様ではなく、支えてくれた人達を前にしての式。
ホント緑谷らしいと思う。
「やあ久しぶりだね回原」
「おー物間久しぶり」
シャンパンを飲みながら懐かしい顔を見回していると物間が話しかけて来た。
本人の宣言通りにフィクサーとなり、今も活躍し続けている男。
俺達の結婚の時もだいぶお世話になったものだ。
何せ嫁3人とのハーレム婚だ。そりゃあ世間を騒がせた。
女性人権団体からの追及やら世間の男達のやっかみの声……そういった全ての障害に表・裏の両面で働きかけて解決の道筋を整えたのがこの男だった。
ホントに感謝している。
なので嫁さん達とは、もしコイツが誰かと結婚すると決めた時は全面的に協力しようと決めていた。それぐらいの大恩が物間にはある。
まあ物間のファンクラブ運営も順調らしいから……いざそうなったら俺達の時以上に揉めるんだろうなあきっと……
「君・爆豪・黒色・骨抜……そして今日緑谷だ。段々と所帯持ちが増えてきたね僕らの世代も」
「だな。切島と芦戸もそろそろっぽいんだっけ?」
「うん。いつまでも煮え切らない切島に鉄哲が『お前それでも漢かよ!!らしくねえぞいい加減に決めろぉ!!』ってグーパンかましたらしいよ。それで切島も覚悟完了したらしいから次は切島と芦戸かな多分」
「鉄哲に殴られて踏ん切りつける辺り切島っぽいなあ。上鳴と耳郎は……あの感じだとまだ先かね?」
「……また上鳴が浮気でもしたんだろうね。そっぽ向く耳郎に上鳴が土下座してる」
「あそこも変わんねーなーホントに」
「だね」
そんな上鳴と耳郎から少し離れた所には八百万とエリちゃんがいた。エリちゃんはギターを、八百万はキーボードの調整をしている。この後余興で一曲披露するらしい。楽しみだ。
それ以外にも峰田が久しぶりに会う女性陣に囲まれて嬉しそうにしていたり、妊娠しお腹が少し大きくなってきた旧姓・小森を囲み歓談する元B組の輪もあったりした。
障子と口田、吹出と凡戸というクラスの垣根を超えて集まってる連中もいる。あの4人は異形差別関連の問題で頻繁にチームアップしており、普段から親交があるようだ。
他にもクラスを超えて交流してるヤツもいたりして……まあ賑やかであった。
「出久ー!!出久ー!!」
あちらで泣いてる年配の女性は緑谷のお母さんだったかな確か?それをオールマイトや相澤先生……新婦側のご両親がなだめていた。嬉し泣きなんだろうけどまだ早い気が……
「……って、思ったけどそんな事もないのかな」
「……どうやら時間みたいだね」
式場の奥の扉が開き、一人の男性が入って来た。
神父服姿のトンガリだ。
本来、人前式には神父は不要なのだが司会は必要。
ほな司会は神父姿のトンガリでええやん。
……ってな訳ではないのだろうが、新郎の緑谷たっての希望らしく、緑谷の結婚式の司会兼神父役をトンガリが務めることになったそうな。
トンガリは結婚証明書の置かれた台の前に立つと。
「……全員、静かに」
静かに、皆の耳にしっかりと響く声でそう言った。
「……定刻になりました。これより結婚式を始めます。まずは新郎新婦の入場です」
トンガリの宣言と同時に祝福の音楽が鳴り、再び奥の扉が開いた。そして、新郎新婦が式場に入って来る。
……緑谷と、そして麗日だ。
緑谷がウェディングドレス姿の麗日の手を取りゆっくりゆっくりと歩き、そしてトンガリの前に立った。
「これより、緑谷出久と麗日お茶子の結婚式を始めます。新郎新婦の要望で本日の結婚式は人前式となります。新郎新婦は永遠の愛を天にいる神では無くこの場にいる皆に誓います。そして皆にはその誓いを見届け、証人となって頂きます。では新郎新婦……誓いの言葉をお願いします」
「「はい」」
緑谷と麗日が、俺達に向かって一歩前へ進む。
「初めて僕たちが出会ったのは雄英高校ヒーロー科の入試の日です。あの時彼女が僕に向けてくれた最初の笑顔を、僕は今でもはっきり思い出す事が出来ます。そして一緒に合格し同じクラスになってからも、いつも彼女の暖かい笑顔に助けられて来ました。いつからか僕は高校を卒業してからも彼女とずっと一緒に生きて、そして僕の一番近い所で彼女にずっと笑っていて欲しいと思うようになっていました。新郎・緑谷出久は新婦・麗日お茶子を生涯愛し、いつまでも彼女が暖かく笑っていてくれる家庭を作っていくと誓います」
「初めて出会ったあの入試の日、少し話しただけの私を助ける為に駆け出したあの姿を私は今も鮮明に覚えています。一緒に入学してからも、いつも彼は名前も知らない誰かを助ける為に真っ先に駆け出していました。最初はそんな彼を少し離れた所で見守っていられればそれだけでいいと思っていました。でもいつしか私はそんな彼に寄り添い、後ろを見ずに走る彼の背中を守り支えて行きたいと考えるようになっていました。新婦・麗日お茶子は新郎・緑谷出久を生涯愛し、走り続ける彼の背中を支え寄り添っていける家庭を作っていくと誓います」
「……新郎新婦による誓いの言葉となります。この2人の誓いを認め、証人となっていただける方は盛大な拍手をお願いします」
トンガリ神父の言葉に、皆が盛大な拍手で応える。
そして長台詞が終わり、少しホッとした様子の新郎新婦。
「いいね。次は君たちだ……ってね」
いつかのオールマイトの言葉をふと思い出す。
当の本人も端っこで感極まって泣きそうになってるけど。
「ありがとうございます。続きまして指輪の交換となります」
アシスタント役の爆豪夫人が持ってきた指輪を2人が交換する。
緑谷から麗日へ。
麗日から緑谷へ。
それぞれの左手の人差し指へと指輪が嵌まる。
そして。
「続きまして。結婚証明書への署名となります」
2人が結婚証明書へと署名を終えた。
そして署名したばかりの結婚証明書を俺達参列者にみせる新郎新婦。
「ありがとうございます。この署名をもって新郎新婦は結婚し、麗日お茶子は緑谷お茶子となります。この結婚の証人となって頂ける方は盛大な拍手をお願いしたいのですが……ですがまあ、その前に……」
「……え?」
「……え?」
「「「「「「………え????」」」」」」
新郎新婦の戸惑いの声。
戸惑う俺達参列者。
そんな俺達が戸惑う様子を楽しそうに見回し、さっきまで大人しく神父やってたトンガリがニヤニヤと笑い、
「せっかくなので不良神父としてここでアドリブを一つ……本来は予定になかったのですが、ここで新郎新婦による誓いのキスをお願いしますぜコラァ!!」
「「ええええええ!!!!」」
「「「「爆豪のヤツやりやがった!!」」」」
「「「「新郎新婦の反応的に完全に予定になかったヤツだぞコレ!!!」」」」
「はっはっは……やーりやがったなこの才能マンめ」
神前式と違い、人前式は形式自由。
神に永遠の愛を誓うキスは本来不要で、代わりが結婚証明書らしいんだけど……
「……ま、こっちのが結婚式らしいわな」
「ん」
マジで慌ててる新郎新婦。トンガリはとても楽しそうに。
「幸せな結婚生活に向かってワンチャンダイブ!!ってな!!テメエたっての頼みで神父役なんて引き受けてやったんだ!!コレでガキの頃の貸し借りは無しって事で頼むぜ!!」
「かっちゃん!!もー!!」
「はっはっは!!ほら本来予定に無かったシャッターチャンスだ!!全員寄ってこいや!!盛大に祝い撮り殺してやれぇ!!」
楽しそうにそんな事を言ったトンガリに、楽しい事大好きな同級生達がワラワラと集まっていく。
まー当然俺達もね。
大切な嫁さん3人と近づきながら、色々な事が脳裏によぎる。
まあとりあえずは緑谷と麗日、結婚おめでとうという事。
心配していた問題が一つ、無事に片付いたのだ。
とても嬉しい。
世の中にはまだまだたくさんの問題がある。
あの日から今までNo.1ヒーローとして活躍し続けているホークスさんは、いつもグチグチ文句を言いながらその一つ一つに丁寧に対処していた。
俺達はそんなあの人に協力をして、ちょっとずつ世の中は良くなっていっていると思う。
誰か一人の背中に全てを押し付けるのでなく、皆で協力してあらゆる問題を解決していくヒーロー社会へと。
今日も式に参列してる俺達ヒーローは全員非番。シフトで代わりのヒーロー達が働いてくれている。
だからこうして俺達はニヤニヤ笑いながら……失礼、緑谷夫婦を祝福する為にそれぞれスマホを構え見守っていた。
「……全く……かっちゃんも、皆ももう……」
そんな俺達を困った顔をして緑谷は見回していた。
麗日……いや失礼、緑谷の奥さんはそんな旦那と俺達をクスクスって笑いながら見回して、そして……
「ねえデクくん……今、幸せ?」
そして、そう緑谷に問いかけた。
緑谷はその奥さんの言葉を聞いてようやく観念したのか、
「……うん。とっても幸せだよお茶子さん」
……そう笑った。そして緑谷が麗日に近づく、
「えへへ……気が合うね!!」
はにかみながら、笑い合う新郎新婦。
鳴り止まないスマホのシャッター音による祝福の雨の中。
「……ん」
「………」
緑谷が麗日にキスをした。
「………♫♫♫♫♫!!!!」
エリちゃんが疾走感のある祝福のギターをかき鳴らす。
皆の祝福の声が2人を包んだ。
本作をここまでお読み頂き、誠にありがとうございました。
誤字脱字報告頂いた皆様、御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
高評価・感想・ここ好きを頂いた皆様もありがとうございます。執筆の励みとなっております。
本作はこれにて完結となります。
落ち着いたらあとがきでも書けたらと思っております。
感想で書きにくい質問などありましたら活動報告に質問箱を作っていますのでそちらへお願い致します。
質問箱への質問はあとがきでまとめて回答させて頂ければと考えております。
最後に、もう一度最後まで読んで頂いた皆様へ感謝を!!