『さあ!!ついに準決勝!!大注目の好カード!!障害物競走はどちらも上位!!そして騎馬戦でパーフェクトを達成した最強チーム同士の対戦だあ!!!!ヒーロー科・轟焦凍VSヒーロー科・回原旋!!!』
『今大会屈指の好カードだな。近接に長けた回原。遠距離からの広範囲の面攻撃が可能な轟。相性的には轟有利だが、空も飛べて機動力に長けた回原ならば懐に飛び込めるかもしれん。面白い勝負になりそうだ』
時間が来て、闘技場に上がる。
準決勝のリング。
対するは轟。
騎馬戦では協力してパーフェクトを達成した仲間。
いいねこういうシチュエーション。
盛り上がる展開だ。
俺好みの。
実況の相澤先生の言う通り。
正直、対轟だと俺はかなり相性が悪い。
俺の切り札は2つ。
ギガドリルブレイクともう一つ。
そのもう一つが轟相手だと使えないのだ。
大質量での広範囲面攻撃を使える轟は俺の天敵と言っていいだろう。
だが、それだけに、上がる!!!
「よお轟!!騎馬戦では世話になったがここじゃ遠慮しないぜ!!」
「……ああ、そうだな……」
「轟?」
……どうも少し様子がおかしい気がする。
……が。
『スタート!!!』
そんなこんなを気にする間もなく勝負が始まる!!!
轟が右手を地面に置く!!!
開幕いきなりの全開氷壁攻撃!!!
左右への逃げ道は、無い!!!
『轟いきなりかましたあ!!!』
「ならば!!!!」
こちらも初手から全開で行く!!!
「ギガドリルブレイク!!!!」
『回原マジか!!!全身をドリルみたいに回転させて迫りくる氷の壁に飛び込んだぁ!!!!』
『リング目一杯の範囲攻撃。左右の逃げ道はない。ただ上に逃げず前に進むか!!!それも斜め前方上空へ!!』
舐めるなよ轟!!!
俺のドリルは天を貫くドリルだぜ!!
氷ぐらい貫けない訳がねーだろが!!!!
『回原!!すさまじい回転で氷壁に突っ込んだあ!!!』
『自分の体が凍っていくスピードより速く回転し氷を砕き続ける自信があるのだろうな。轟の氷は下から上に上がる。上は比較的氷の密度が薄い。前方上空に飛び込む事でまだ密度の薄い所を突破するつもりだ。判断が早かった。判断が遅くなればなるほど上方も氷の密度が上がり突破の困難度が跳ね上がる』
『回原!!ドリルで氷を砕きながら斜め上空に飛び出し轟の特大氷攻撃を凌いだあ!!!』
「次はこっちの番だ!!!」
『回原!!氷を飛び越えた勢いそのまま右前方!!轟の左側から超スピードで接近する!!!』
今までの大会を見ていると、轟は右で氷を、左で炎を扱う個性だ。当然炎に気をつけながら。
轟はまだ炎を出さない。
出さない。
出さ……
「…って出さねえのかよ!!!」
「ぐ!!!!」
俺の個性、旋回。
それを使い威力を強化したコークスクリューブローが轟の右足から出た氷の盾を直撃する!!!
瞬時に砕ける氷!!
一瞬の時を稼いだ轟はそのまま自分が出した氷に乗って後方へ高速で移動する。
「行かせるかよ!!」
正直轟相手に遠距離戦はマズイ!!
『回原逃げる轟を飛んで追いかける!!』
『先ほどは凌いだがやはり遠距離は轟有利だ。それがわかっているから回原は距離を詰める為に行くしかない。時間と距離を与えて大規模氷攻撃はもう撃たせたくないだろうしな』
『両手両足をフルに使っての回原最大スピード!!轟に追いつくぞお!!!』
「逃さねえ!!」
「ちぃ!!!」
逃げる轟が左手から炎を出した!!
それに警戒度を上げる!!
どうする?どうくる?
左手で炎を薙ぎ払っての広範囲攻撃か!?
距離と時間を稼ぎたいならその辺りだと思うが!!
しかし……
「って!!何なんだよ!!また止めるのかよ轟!!」
「…………」
轟が、何故か炎を消した。
何なんだよコイツ!!!
マジで意味がわからねえ!!!
「焦凍ぉ!!!!どうした!!何故炎を使わん!!!」
ほら意味わからんことしてるから観客席からも文句が飛んで来ただろーが。
誰だか知らんけど。
観客席見る余裕なんてない。
当たり前だ。
こっちは真剣勝負なんだぜ!!
目の前の轟だけに意識を集中する。
……けど。
「テメエ!!何勝負の最中に余計な事を考えてやがる轟!!」
「ぐ!!!」
とりあえず蹴り飛ばす!
……クソ!
何なんだよコイツ!!
『どうした回原?今のはアイツならラッシュで仕留め切れる距離だったはずだが、わざと蹴り飛ばした?』
ああそうさ!!
相澤先生の言う通りだ。
とりあえず納得が行かないので仕切り直しだ。
「轟……勝負の最中で悪いが一つだけ答えろ」
「……なんだ回原……」
「お前のそれ……炎をわざと使わねえのは俺に対する舐めプか?なあ轟?」
「!!!!!」
コイツ……まさか気づかれてないとでも思ってたのか?
普通気づくだろ。
そんなびっくりした顔してんなよ。
『なんだなんだ?あの2人勝負の最中なのに動き止めちまったぞ?なんか話してるのか?聞き取れねえけど』
『……みたいだな。あまり酷い内容なら審判が注意するだろうから任せるしかないか』
観客席からのざわざわした声が聞こえる。
だけど関係ない。
これだけは確かめたい。
「答えろ轟」
俺の問に、轟は少し考え……
「舐めプに取られたならすまねえ……そういうつもりは無かった」
轟は一言一言しっかりと考えながら、言葉を選びながら、
「舐めプじゃないって事だけは断言する。だが……だが、俺はこの炎の力を使わずに、自分の力を証明する為に雄英に入ったんだ。そして炎の力は一切使わずにこの体育祭も優勝するつもりでいた」
「……」
それを舐めプと言うんじゃないか?とは思ったが。
……思ったが、思ったがとりあえず最後まで話を聞こう。
「お前には悪いと思ってる回原。騎馬戦でもそうだったけど、お前は絶対こういうの嫌がるよな。その熱に浮かされて、俺も騎馬戦では引きずられちまったしな」
だけど……
轟はそう続ける。
「わかってくれとは言わねえ。理解してくれとも言えねえし事情も言えねえ。だが……俺は…俺にも譲れない、まだ消化しきれねぇ思いがある。それが精算されるまで、俺はこの力を思いっきり使えないんだ………」
「………」
結局、よくわからない。
でも一つだけわかる。
コイツはコイツなりに譲れない思いがあって、それで俺とは氷の力だけで戦うつもりだって事が。
それを轟は申し訳なく思ってる。
……ならば。
「……なら、とりあえず今日はそれでいいさ」
「……回原?何を?」
俺は、轟から距離を取るため後ろに飛んだ。
その距離は、おそらく試合開始直後の俺達の距離。
「ならば、今日はそれでいいよ轟。今日は氷の個性だけのお前と戦ってやる。でも……」
でも……
「……お前が色々悩んでるのはわかったし、あまり人に言えない事情もあるのはわかった。けど……」
そう、けれど
「それはやっぱ舐めプだよ轟…だから!!!」
そう、だから!!!
「もう一回最初から仕切り直しと行こうぜ轟!!お前の全力全開の氷!!俺の全力全開のドリルでぶち破ってお前を倒してやるよ!!!」
俺は轟に俺の想いをぶつける!!
「お前が氷だけみたいなクソ舐めプで来るなら、俺が何度でも何遍でも真正面からその氷だけの舐めプの全力全開をねじ伏せてやるよ!!!」
「回原……」
「さっさとその体の氷を炎で治せ。そして今度は全開で来いよ!!その全力全開を俺のドリルでぶち抜いてやる!お前が氷と炎の両方を使わないとどうしても倒せない敵に!どうしても越えられない壁に俺がなってやるよ!」
「回原……お前……」
「今日はこれでいい。また今度ちゃんとやろうぜ轟。お前が色々精算して、両方の個性を使いこなせるようになったらまたやろうや」
俺の言葉に、轟は…
「お前といい…緑谷といい……まったく!!」
そう言うと、左側の熱で一気に右の氷を溶かした!!
『……まだ話してるのかあの2人……おーい審判!!ちょっと中断長くね!!いいのかよ審判!!って鼻血出てるぞ審判!!』
『…ぶふ……ちょ、ちょっと特濃青春ビームを浴び過ぎて鼻血が……』
『特濃青春ビームとか辞めてくれよミッドナイト!!18禁が22禁くらいまでレーティング上がっちまうだろうが!!!』
『…とはいえ!これ以上の中断は審判として許せません!!私だけが聞いて上げるから最後に言いたいことは簡潔に言うように!!』
『私情ダダ漏れだなあの審判』
「回原……感謝する。が、氷だけでも俺は負けるつもりはねえからな。お前を凍らせて俺が勝つ!!そして優勝する!!」
「はっ!言ってろよ轟。凍える氷をこの身で受けりゃ、スゲェ寒いが我慢する。意地で支えて天まで貫くのがこの俺!回原旋の螺旋道だ!!お前の氷なんぞ一瞬でぶち抜いてやんよ!」
『ぐっぐほぁ!!!』
『審判!!審判!!ヤベえぜあの鼻血の量!!』
『えーリングサイドのセメントスです。私がここから審判やりますのでご安心ください』
『……マジであの2人何話してたんだ……』
俺は改めて向かい合う。
先ほどの初撃の氷。
そしてコークスクリューで砕いた氷。
その感覚から、俺は轟の全力全開の氷の巨大氷壁も貫ける自信は持てた。
……普段、俺はギガドリルブレイクは手をグーに……拳を握って放つ。
それは殺傷力を必要以上に高めないためだ。
だが、今回は。
俺も、全力で行く!!
右手をグーではなく、貫手に。
俺の鍛え抜いた指先。
その5指全てを全力全開で回転させる。
さらに右腕も全力全開でフル回転させる!!!
これが本来の俺のギガドリルブレイク!!
殺傷力の高さを気にしないで放つ、本来の全力ギガドリルブレイクだ!
グーよりも貫通力を更に高めた、ギガドリルブレイク!!
「回原ぁぁぁ!!!」
「轟ぃぃぃ!!!」
轟が、先ほどよりも更に更にすさまじい大きさとスピードの氷の壁を俺に向けて放つ!!!
俺はそれに先ほど以上の全力全開のスピードで飛び込んだ!!!
氷の先端と!俺の指先が接触する!!
「おおおおおおおおおおおお!!!!」
俺の指はかき氷機みたいに轟の氷を掘削し、轟の放った氷の壁の中に全身で飛び込んだ!!
寒い!!!寒い寒い寒い!!!
体が凍りそうだ!!
だが、体が凍る以上のスピードで!!俺は自分を一本矢のドリルとし回転し氷を掘り進んでいく!!
そして氷の中に入って気づく!!!
敵を凍らせるのは氷の発生直後の先頭付近の氷だけで!!一度凍ってしまった氷は敵を凍らせたりしないただの氷だ!!
ならば!!!
「掘って掘って、掘り抜けたなら!!俺の勝ちだぁ!!!!!!」
「回原ぁぁぁ!!!」
巨大な氷壁を掘り抜く!!
正面には轟の姿!!!
「おおおおお!!!」
瞬時、手をグーに…拳に戻す。
そして、その氷をぶち抜いた勢いのまま轟に突撃する!!
「ギガァドリルゥブレェェェイイクウウ!!!!!」
「!!!!」
轟の胸元に正面から高速で突撃!!!
声もなくすさまじい勢いで轟が吹っ飛んだ!!!
そして!!!
『轟くん!!場外!!!勝者!!回原くん!!!!』
観客席から歓声が降り注ぐ!!!!
それに俺は自然、手を上げて答えた。
更に膨れ上がる歓声。
それで勝利を実感する。
俺は、轟に勝った!!
……そしてもう一つの準決勝。
トンガリが常闇に勝利した。
決勝戦の相手が決まった。
次は、決勝戦だ。
俺とトンガリの勝負。
悪いが、圧勝させてもらうよトンガリ……