「おーなんだなんだ真剣そーにスマホ見やがって!女か!女かスパイラル!!」
「いやまあ確かにクラスの女の子ですけど」
職場体験3日目。
夕刻、エンデヴァーさんに連れられ俺と轟、バーニンさんの4人は保須の繁華街のホテルにチェックインした。今日からここで二泊三日し、保須市内で職場体験の予定だ。
特にする事もなかったので手早く荷物を置くと、俺は集合場所のホテルのロビーにさっさと降りた。
んで拳藤からメッセージが来てたので返信を考えていたところ、同じくさっさと降りてきていたバーニンさんに見られこんな感じとなった。
「どうも職場体験が思ってたのとは大分違ったらしく、そっちはどう?って聞いて来ました」
「あーん?そんなの口実だろ口実!んな愚痴言うだけなら女友達に連絡するわ!!面白そうだから私に返信させろよ!な!な!」
「いや絶対嫌ですよ!なんで急にノリが男子学生みたいになるんですか!!」
「最近こーいう甘酸っぱいイベントが何も無い!むしゃくしゃしたので若者にイタズラしたい!」
「正直に言えば良いってもんじゃないですよ!!」
「『エロガキな自分は職場体験先の美人な年上のお姉さんに模擬戦でセクハラして楽しんでます!そっちはどう?』って送ってやるから早くスマホ貸せ」
「最悪だ!最悪だぞこの人!!」
まあ確かに今朝の模擬戦では師父直伝の
でもそれは昨日の模擬戦を踏まえて、バーニンさんの方から「こっちがミニスカの女だからって変に手加減すんじゃねえ!やれるもんならやってみろや!!」って挑発するからいけないんでしょ!!
一応言い訳すると下半身は俺の手持ちのタオルで縛り、上半身はバーニンさんの上着を利用して縛ってます。
まあ上着の下はTシャツかなんかインナー着てるだろうし、そんな問題なかろうと思っていたが実はとっても大問題であった。
結論肌色は少なかったがすんごいムチムチ。
えっちでした。
過度な露出はないのでセーフ!
ということでここは一つお願いしたいところである。
バーニンさんとロビーで楽しくぎゃあぎゃあと話しながら拳藤に返信を済ませた辺りで、エンデヴァーさんと轟がエレベーターで降りてきた。
それを見て2人、一気に意識を切り替える。
「揃ったな。では街に出る。俺と焦凍のチーム。バーニンとスパイラルのチーム。2名2チームで活動する。ヒーロー殺しを見つけ次第、サポートの2人はすぐもう1チームに連絡するように」
「よっし行くぞスパイラル!切り替えろよ!」
「いや切り替えるのはバーニンさんでは…」
そして軽く打ち合わせをすませ、それぞれ別々の方向に俺達は歩き始めた。
ある程度の事は事前に移動中に説明を受けている。
ヒーロー殺し ステイン
おそらくはまだ保須市内で活動するだろうと推察されるヴィラン。
そのステインを逮捕する為に俺達はこの街に来ていた。
夜が暗くなるまでバーニンさんとのパトロールは何事もなく、ただ時間だけが過ぎていった。
空気が変わったのはいつからだろう?
「バーニンさん!!」
「ああ!!建物の破砕音と人の悲鳴だな!!」
2人、その音の響く方向に走る!!
いくつかの区画を進み、そこには!!
「なんだ!あの化け物!!」
そう、そこには化け物がいた。
巨大な体に、脳みそがむき出しになっているようなおかしな頭部。見れば少し離れた所に翼の生えたヤツもいれば、巨大な爪や牙をもつヤツもいる。
そして!その全てが理性が無いような動きで暴れていた!!
「私がコイツラの相手をする!!近くの民間人の避難誘導をたのむ!!!」
「はい!!」
大人しく指示に従う。
正式な戦闘許可を俺はまだ貰っていないし、何より人命救助が最優先だからだ!!
「皆さん!!落ち着いて!!ヒーローが来ましたのでもう安心です!!落ち着いてあの化け物からゆっくりと離れてください!!俺の後ろに避難してください!!」
気持ち大きく声を張り上げて避難を誘導する。
避難する人達を誘導しながら、バーニンさんの戦いを見る。
俺が言うのも何だが、バーニンさんは強い。
今も余裕を持って敵の攻撃を避けながら注意を引きつけ、こちらに敵が向かってこないようにしている。
俺はその間に逃げ遅れた人がいないかとか?ケガして動けない人がいないかなど周囲を観察。特に問題は無さそうだ。
今のところ俺の後方からは建物の破壊音などが聞こえてこない。
現状俺の背後への誘導で正しいと思う。
バーニンさんはこちらに何も言ってはこない。
とりあえずはこれで良いって事だろう。
元々この街への土地勘が無いのだ2人とも。
出来ればここでこの街をメインに活動するヒーロー達に、避難を引き継ぎたいところだが。
「あれは!エンデヴァー事務所のバーニン!?何でこんなところに!!」
「あっちは若い!!もしかして学生じゃないか!!」
バーニンさんが時間を稼いでいると、ようやく周囲からヒーロー達がやってくる。
バーニンさんはそれを確認し、
「たまたまこの街で活動していた所!化け物と遭遇して交戦中だ!!こっちには土地勘が無い!街の人の避難を頼む!!」
そう駆けつけたヒーロー達に要請。
ヒーロー達はそれに頷き、街の人を安全な所に誘導していった。
「……これで動けるな!!スパイラル!!繋げ!!コイツめちゃくちゃタフだ!!個性合体で一気に戦闘不能にする!!」
「はい!!」
敵を牽制し、バーニンさんが大きく後退!
そこに俺が駆けつける!
バーニンさんはその燃える髪の一房を、その温度を人が触れるレベルまで下げて俺に「やれ!」と言って持たせた。
俺はその髪に個性の力を繋ぐ!!
「「個性合体!!螺旋炎髪!!」」
「行くぜぇ!!」
バーニンさんは個性合体でドリル属性を付与した炎髪を敵に投げつけた!!
「!!!!!!」
通常の炎髪と違い、貫通力を持ったそれは敵の肉体の内部に侵入!!内部から敵を焼いていく!!
少し、やり過ぎか、これは…
「……バーニンさん……これは……」
「お前が心配する事じゃない。こういうのは私が背負う事だ。それに、あの敵に関してはこちらも知っている事がある。今は詳しく説明出来ないけど、おそらくコイツは人の死体をベースに作られた怪物だ」
「…わかりました」
ここはバーニンさんの判断に従う。
この化け物に関しては、生死問わずのような強力な攻撃も必要とプロが判断したのだ。
俺はその判断に従う。
「よし!お前となら何とかアイツら行動不能に出来そうだ!アッチに行った残りの化け物を追うぞ!!」
「はい!!」
そうして俺とバーニンさんは2人、未だ激戦の音がする新たな戦場に向かった。
「スパイラル……最悪、私の全責任でお前の戦闘行動を許可する。それまではフォローに専念しろ」
「バーニンさん…」
「…お前は優秀だ。ここで変な前歴をつけさせる訳には行かないだろ」
「すみません」
「謝るな!急ぐぞ!!」
「はい!!」
そうして2人で走り、新たな戦場に到達。
そこでは複数の怪物と複数のヒーローの乱戦が行われていた!!
「やるぞスパイラル!!」
「はい!」
「「螺旋炎髪!!」」
近くにいた怪物へ螺旋炎髪で攻撃!!
「!!!!!」
その攻撃が怪物の背中を直撃!!
内部から敵を焼いていく!!
「あれは!バーニンか!!」
「一体敵を倒したぞ!!」
こちらとその戦果に気づき、他のヒーロー達が歓声を上げる!
が、戦況はぱっと見中々厳しい。
ヒーロー達は周囲の民間人の避難を行いながらの戦闘であり、かつ化け物連中が中々強い。
「まずは民間人の避難が最優先だ!!私達で敵を倒して避難ルート確保するよ!!」
「!!ありがたい!!頼んだ!!」
「あそこの敵を頼む!!あそこが通れれば避難区域に向かいやすい!!」
「わかった!!食らえ!!」
そうして螺旋炎髪を敵に投げつけ、その敵を倒す!
「今だ!さあ皆さん!!こちらへ!!ここから避難します!」
「バーニン!!君たちは避難民の護衛を頼む!!」
「わかった!行くぞスパイラル!」
「はい!」
避難経路を確保した事により、その場に残っていた避難民の誘導がスムーズになった。
ヒーロー達は自分達に敵の注意を引きつけ、そちらに敵が向かわないようにしていた。
敵はどうやら知能が低いらしく、ヒーロー達の陽動が上手くいっているようだった。
俺とバーニンさんは避難民の最後尾で護衛。
時折戦闘の影響でデカいコンクリの破片等が飛んでくるが、
「ダブルドリルハリケーン!!」
その辺りは俺の個性で吹き飛ばす。
敵がこちらに向かって来なければ無事避難は完了出来そうだった。
「バーニンと君!すまないが安全地帯まで護衛を頼むよ!」
「当然だ!!」
「わかりました!」
こうして民間人の避難を進める。
たまに人をケガさせそうな窓ガラスの破片など危険物が飛んでくるが、その度に俺の個性で吹き飛ばした。
そしてしばらく進み、
「!よし!ここまで来れば大丈夫だ!!」
こうして一般人の避難誘導が完了する。
「スパイラル!さっきの広場に戻るぞ!」
「わかりました!」
俺とバーニンさんは走り、さっきの広場に向かった。
到着すると。
「む、お前たちか」
「エンデヴァーさん!」
そこでは到着したエンデヴァーさんが化け物達をどんどん退治していた。その強力な炎の個性で躊躇なく敵を焼き尽くし殲滅していた。
「ケガは無いなスパイラル」
「はい!大丈夫です!」
「よし。バーニンも問題ないな」
「当然だろ!」
「よし、ならば2人はこれから俺の言うポイントに向かえ。ここは俺1人で大丈夫だ」
「私ら戻ってきたばかりだぞ。一体そこに何があるってんだよ?」
「わからん…だがそこに向かったはずの焦凍がまだ戻って来ていない。何か起こっている可能性がある」
「!わかった!行くぞスパイラル!」
「はい!!」
幸いそのポイントはここからそう離れていなかった。2人で急いで向かう!
しばらく2人で走っていると、
「あれは……何人かが集まってますね。轟もいます」
「……よく分からないけど確かに何かはあって、それが無事に解決したって所か」
確かにそんな感じだった。荒事の気配は感じないが、何人か負傷している様子。
「とりあえず合流すっか」
「ですね」
そうして2人その集団に向かう。
途中!
「バーニンさん!後ろ!!」
「何!!」
気配察知に引っかかった空を飛ぶ何か!!
それが俺達の背後から!俺達の上空を追い抜く!
空を飛べるさっきの化け物の仲間か!!
ソイツは俺達の上を飛び越え、前方の集団に突撃!!
おいおい!まじかよ!!
「バーニンさん!行きます!」
「行け!なんか文句言われたら私が人命救助の範囲です!で押し通してやる!!」
ソイツは前方の集団に飛び込むと、小柄な誰かを抱えて再度空に飛び上がる!!
俺の目の前で誘拐とはね!!させるかよ!!
「なんぼ化け物ヅラでもせめて攫うのはピーチ姫にしとけや!クッパでももう少し相手選ぶぜ!!!」
クアドラプル・ドリル・ハリケーン!!
俺の全力全開飛行!!
そのスピードは人1人抱えた怪物に容易く追いつく!
そこで、俺と同じように誰かが飛び上がる気配を感じる。
気配的に誰かは俺の更に上。
化け物倒すの優先か。
それならばそれで利用させてもらう!!
「数え貫手・旋!!!」
特殊な貫手!!
指の数を四本からドンドン減らして行き、最後の一本で全ての防御を貫く技!!
俺はそれを更に個性 旋回の力で強化して放つ!!
「四!三!二!一!オラァ!!!」
最後の一!!それで敵の手首を貫く!!
手首から下が切り離される!!
当然!その手首の先に掴まれていた誰かが宙に放たれる訳で!!
「わ!」
「よ!っと!!」
敵の手ごと落ちていく誰を脇に抱え、俺は背後に飛び下がる!
「か!回原くん!!」
「……って、A組の緑谷かよ。勘弁してくれ…お前俺のライバル候補なのに何ピーチ姫ムーブしてんだよ全く……」
「ふ!不穏だよ回原くん!あんまり助かった気がしない!!」
なんと!お姫様役は緑谷でした!ビックリ!
頼むぜしゃんとしろよホント……これじゃお前をライバル候補でマークしてる俺がバカみたいじゃないのよ……
「……何でだろ……助けられたハズなのに悪寒が止まらない…」
ボソボソ言い始めた緑谷を抱え、俺は地面に降りた。
俺の少し先では、先ほど敵を倒すのを優先した誰か。
その誰かが敵を倒し、空を飛ぶ敵と一緒に地面に着地?激突していた。
「ス!ステイン!!何で!!」
「……へえ、アレがステイン……ヒーロー殺しか…」
なるほど。
なるほどなるほど。
そう言われると結構雰囲気あるな。
改めて目の前のボロボロの男を見る。
脇腹含め数本骨を折ってるなこれ。
体表も服装も、そして体内もボロボロ。
だけど目だけがギラギラしている。
ただし、それはあまりいい種類の目の輝きではない。
そんな男。
それがステイン。
ヒーロー殺しだった。
「貴様は……本物か…?」
「ああん?」
ステインが俺を見て、そう問いかけてくる。
「貴様は……本物かと聞いている……」
狂気を宿したその瞳と心、そしてその問いかけ。
俺はそれに、
「本物だとか偽物だとか、人を殺しておいてテメエが語るな」
「何ぃ……」
「人を殺すような簡単な道に逃げたテメエ如きが、俺に本物だの偽物だの問いかけてくるんじゃねえよ。俺に言わせれば、誰かを殺すような簡単な道に逃げ出しただけで、テメエなんぞ三下オブ三下なんだよ」
「貴様ぁ……」
ステインから濃密な殺気が溢れ出す。
気当たりのように周囲を威圧するそれは、慣れない者にはかなりの負担だろうが………
傍の緑谷は怯えて、身動き一つ出来ない有様だ。
ヤレヤレ……
「喝ァァァーーーーーつ!!!!!!!!!!!!!!」
「「「「「「「「!!!!!!!!!!」」」」」」」」
その気当たりを、俺の気当たりで相殺する。
「ぐ!ぐ……!!き、貴様!!」
「おう聞けや殺人拳」
自らの気当たりを、それ以上の気当たりで返された男に、俺は告げる。
「俺は回原。回原旋。天を貫くドリルだ」
「…………」
「我が師、梁山泊より学びし活人拳。雄英高校と、指導頂くヒーロー達より学びしヒーロー道」
「…………」
「その2つが捻れて交わる。それこそが俺の進む螺旋道」
「…………」
「それが俺の進む道だ。テメエごときが俺の事を語れると思うな。黙って見てろ」
「きさ、ま……」
「我が道は全ての敵を倒し、殺さず、改心せし者は友とし、改心せぬ者は改心するまで挑んでくれば倒し続ける。故に全てを倒し、許し、守り、時には語り、競うために拳も交えよう」
「…………」
「もう一度言うぞ、殺人拳………」
俺はヒーロー殺しの目をしっかりと見て、もう一度言う。
「貴様如きが、俺を語るな」
その俺の言葉と、目から放たれる気を受け……
「見事なり活人拳……見事なりヒーロー道……そして見事なり螺旋道………もはや貴様を語るまい……地の底深き牢獄から、ただ……貴様を見させてもらうとしよう……」
そう言うと、ステインはその場に倒れた。
……こうして、俺の職場体験3日目が終わった。
作者「くそ!!何度
こ!こうなったら回原とステインはギリギリまで会わせないしかない!!
でもそうすると盛り上げ場所が減るから前半に何か山場を作るしかない!!」
……こうしてバーニンが犠牲になりました……
悪いのは全て曇らせた飯田……はっきりわかんだね。