あの後の事を語ろう。
やって来た警察にステインを引き渡し、特に負傷など無かった俺はエンデヴァーさん達と警察への状況報告などを行った。
負傷していた轟や緑谷、飯田は病院へ直行。
んで明けて翌日。
俺はエンデヴァーさん達と共にさらなる活躍を現場で見せていたかというと、そんな事は全く無かったりする。
「スパイラル!書類出来たかー?」
「すんません!も少しです!!ここの書き方教えてください!」
「しゃーねえなー全く」
そう、事務仕事である!!
エンデヴァーさんは警察との相談や調整の為不在。
んで俺とバーニンさんの2人で、昨日のヒーロー活動に関する報告書などを作成していた。
いやいや色々大変ですよこれは……
エンデヴァー事務所の活動で壊したものへの保険の申請や補修依頼。どういう状況でどういう個性を使ったか等の報告。特に今回は悪質な怪物ヴィランも居たのでかなり事細かく記入を求められた。
避難誘導をどういう方法で行ったかなど、俺達だけでは書けない書類も多かった。
そんな初めてばかりの書類に四苦八苦する俺を見ながらバーニンさんが、
「……ま、大変だろうけどしっかりやれよ!どうせだったら自分の顔と名前もしっかり売ってこい!だとさ。脇臭オッサンより」
「え?」
言われたばかりはわからなかったが、その意味はすぐ後になってわかる。
「おお!!君は昨日避難手伝ってくれた子だね!!」
「いいなあ!!優秀な個性じゃないか!!」
「そらそうでしょ!この子この前の雄英体育祭の1年の優勝者だよ!優秀にきまってるじゃん!!」
「あ!そう言えばテレビで見てたよ!!そりゃ優秀な訳だ!」
「ありがとうございます!」
1人で書けない書類の記入欄を埋める為に、昨日協力してくれたヒーロー達と話す必要があった。
そこでそのヒーロー達と色々話す。
「将来有望だね!また将来何処かでチームアップとかお願いするかもしれないからよろしくな!!」
……なるほどこういう事か。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!!」
将来活動する時に、1人で全てが出来る訳では当然ない。
他のヒーローと協力する事もあるだろう。
だから、しっかり顔と名前を売ってこい、なのだ。
「……ほんと、色々考えてくれてるんだなあちゃんと」
口下手だとは思うけどさ。
「回原か。見舞いに来てくれたのか」
午後になって苦戦しまくりながらもようやく書類が一段落。
落ち着いたので轟達のお見舞いに病院へ。
「悪いけど私は書類やら調整やらで行けそうにない。金渡すからお見舞いの果物でも買って渡しといてくれ。余ったら残りは好きにしていーぞ」
というバーニンさんの分の見舞の果物買って病室を訪れた。
「回原くん!昨日は助かったよ!ありがとう!」
「回原くん!お見舞いに来てくれたのか!感謝するよ!」
病室には轟、緑谷、飯田の3人がいた。
「よ!お疲れ。全員何だかんだ無事で終われて何よりだったな」
3人ともケガはしているものの普通に歩いたり動いたり出来るようだ。良かった。
「これバーニンさんからの見舞だ。果物剥くぞー、食うだろ?皿とかナイフ借りてきてるし」
「悪いな」
「気にすんな」
ブドウなどそのまま食べれる物は皿に分け、リンゴなど剥く必要があるものを切り分けたりなどする。
「聞いたか?ステイン逮捕の件……?」
「ああ。無資格の学生が個性使ってヴィランに重症負わせたのは不味いから、最終エンデヴァーさんが捕まえた事にするってやつだろ。3人はそのサポートと市民の避難誘導してた、と。まあ妥当じゃないの?手柄取られたお前ら3人は面白くないだろうけどさ」
「すまない……君が僕達と違いしっかりと市民の避難誘導活動で活躍していたから、僕達もそれに便乗させてもらうような形になってしまった!申し訳ない!」
「気にすんなよ。それを言うなら俺もステイン逮捕のサポートもした事になってる。お互い様だ」
「そう言ってもらえると助かるけど……最後ステインを君が威圧して倒してたから、逮捕のサポートは間違いでもない気がするよ」
「俺がなんもしなくても向こうは限界だったさ。ほっといてもすぐぶっ倒れてただろうよ」
そんな話をしながら4人でお見舞いの果物を食べる。
ちゃっかりご相伴に預からせて頂く。
「回原。俺はこの後退院したら親父の事務所に戻る。お前はどうするんだ?」
「俺とバーニンさんはまだ居残り。出さなきゃいけない書類片付けて、明日の昼くらいまで街の復興作業とパトロールの手伝いの予定だな。その後は様子見ながらだけど、最後はエンデヴァーさんとこ戻って職場体験終わりの挨拶って感じ」
「そうか」
「うむ!現場で活動するだけがヒーローじゃないものな!書類作業も必要な事だ!」
「事務仕事得意そうだもんな飯田は……俺もう午前中だけでグロッキーだわ……書類はウンザリよホント……」
「あはは!!何だか回原くんって最強無敵ってイメージがあったけど、苦手なものもちゃんとあるんだね!」
「勘弁してくれ……」
4人で笑いながら話す。
クラスが違うのであまりちゃんと話す事は無かったが、まあ同年代の男4人で共通の話題もあるのだ。
話す事に困る事は無かった。
「んじゃお大事にな!」
しばらく4人で話して、キリがいいタイミングで帰る事にした。
「よーし帰ってきたな!!私と書類が待ってたぞ!!」
「バーニンさんだけで良かったのに!!」
「何だよ熱烈だな!でも私年下興味無いから悪いけど書類相手に頑張ってくれる?」
「クソー!!頑張ります!!!」
んでバーニンさんと仲良く書類仕事。
途中また保須市で活動するヒーローの人達と交流したり晩御飯一緒したりと、まあ充実した職場体験となった。
翌日からは保須のパトロールや街の復興作業の手伝い。
火事場泥棒狙いのヴィランによる治安の悪化が見られた為、結局俺とバーニンさんは職場体験を最後まで保須市で終える事となった。
んで、最終日。
職場体験終わりの挨拶をエンデヴァーさんにする為、俺はエンデヴァー事務所に戻って来た。
「スパイラル……お前は俺の期待以上の活躍をしてくれた」
エンデヴァーさんの個室。
そこで2人で話す。
「気づいていただろうが、俺は焦凍への当て馬役としてお前に職場体験の指名を入れた。焦凍にいい刺激となる事を期待しての事だったが、正直お前は俺の期待以上の事をしてくれた」
「…………」
まあ、それは少しそうかもな、とは思っていた。
「保須での活動も見事だった。バーニンから報告も受けている。よくやってくれた」
「ありがとうございます」
「お前の活躍と、勝手に当て馬にした詫びの意味も込めて、お前にプレゼントを用意しておいた。受け取れ」
「え!?」
そう言うと、エンデヴァーさんは1枚の紙を俺に渡して来た。
そこには、1人のトッププロヒーローの名前と、その連絡先が書かれていた。
「ベストジーニスト!!」
そう、そこに書かれていたのはベストジーニストの名前と、個人用の連絡先情報だった。
「俺の個性は生来強力な個性だった。そんな俺と違い、ヤツは元々はそこまで強力な個性では無かった力を、研究し、努力し、磨き上げトップヒーローとなった。それがベストジーニストというヒーローだ」
「…………」
「国内のヒーローの中で、個性の扱いに関しては間違いなくトップクラスだ。そしてアレは後進の育成にも一家言ある男。さらに雄英高校のOBでもある。お前の個性強化のヒントを得る手助けになるだろう」
「確かに…ですが、職場体験はもう終わりました。行く機会が……」
「ふん。それは職場体験での話だ。ヤツが職務中の休憩時間に後輩と会うのは勝手だろう。本人からもそう許可はもらっている。後はそこの連絡先から連絡し勝手に予定を決めればいい」
そ、そこまでしてくれてるのか!!
「ありがとうございます!!」
これは本当に嬉しい。
心からのお礼の言葉だ。
エンデヴァーさんがここまで言うベストジーニストさん。
その彼との会話や指導から、個性を更に強化する方法が見つかるかもしれない!!
「……感謝は不要だ。お前が今よりも更に強くなれば、焦凍も負けずと強くなる為に努力するだろう。そのために俺が勝手にやった事だ。気にするな」
エンデヴァーさんはそう言う。だけど…
「それでも、ありがとうございます!!」
改めてお礼を言う。そして。
「職場体験中!大変お世話になりました!ありがとうございます!失礼します!」
「ふ」
改めてお礼を伝え、エンデヴァーさんの執務室を出る。
部屋の外では、
「お!来やがったなスパイラル!!」
「バーニンさん、皆さんも!」
そこでは今事務所にいるサイドキックの皆さんが俺を待っていてくれた。
「どーだったよ?オッサン、何て言ってたよ?」
によによ楽しそうに笑いながら、バーニンさんが代表してそう聞いてくる。
エンデヴァーさんとの会話、ね。
ふむ……と、先ほどの会話について少し考える。
長々と色々と言ってくれていたが、簡単にまとめると。
「『お前根性あるし中々やるじゃん。応援してるからこれからも頑張れよ』って言ってもらいました」
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
一瞬の沈黙。そして…
「……ぷっ……くくく……」
「く……くく」
「くは……ダメ……俺もう限界……」
それが合図だった。
「「「「「「「「だあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」
事務所内にすさまじい笑い声が満ち溢れた。
「け!ケッサクだ!ケッサクだぞ!お前最高だスパイラル!!」
「ひー!ひー!!ダメだ笑い死ぬ!!死んじまう!」
「無理だって!こんなの我慢できっかよ!!ひー腹痛い!!」
「あ、あのコミュ障ツンデレ親父!!なに高校生に見透かされてんだ!!まじウケる!!!」
笑い転げるサイドキックの皆様方。
「ひー腹痛え腹痛え……さて、そんな我らが愛すべきボスより、本日この後のスパイラルお疲れ様の焼肉会を経費で落として良いとのありがたいお言葉を頂いている!改めて来るやつ手を挙げろー!!」
おおおお!!!
バーニンさんの言葉でさらに歓声が上がった。
バーニンさん達とこの後焼肉行く予定だったのだが、なんとそんな事もしてくれていたとは!
「はーい僕キャバクラも行きたいよー!」
「キャバクラも経費出ますかー!」
「わーい経費キャバクラサイコー!!」
特別騒ぐ3人をバーニンさんは冷たい目で見ながら、
「ん?今のは辞表のつもりで詠んだ辞世の句って事でいーんだよな?」
「「「ごめん!!!許して!!!」」」
平謝りする大の大人3人。
「全く……いい大人なんだから職場体験くらい最後まで威厳見せろよほんと……」
ヤレヤレと呆れるバーニンさん。
轟も声かけたけど来れないとのこと。
この後はお母さんのお見舞いだとか。
そうして場所を焼肉屋に移し、いい肉をたくさんご馳走になる!
「うま!めっちゃこの肉美味いです!!こんないい肉生まれて初めて食べました!!」
「ここの肉美味いだろスパイラル!!若いうちにたくさんいい肉食べとけよ!!」
「そうそう!!年取るといい肉を量食べれなくなるんだよな……」
「脂は美味い……だが脂が重いんだ……」
そんなこんなで楽しい時間が過ぎていく。
「そう言えば、この動画見たかスパイラル?」
その最中、とある動画を見せられた。
『喝ァァァーーーーーつ!!!!!!!!!!!!!!』
あの時のステインとのやり取りの動画だった。
誰かが撮影し動画サイトにあげていたのか?
「『ヒーロー殺しステイン、若きヒーロー見習いに喝を入れられ倒れる』だとさ。すげえなもう100万再生余裕で超えてるぞこれ」
「ええ……まじですか……」
「ほかステイン関連の動画も上がってたけど、再生数はコレがダンチだな。他は行っても千くらいだわ」
「高校生の見習いヒーローに喝入れられて倒れてんだ。そんなヤツの生き様とか誰も見ねーだろ」
「まあ、そりゃそうだな」
そんな事を話しながら楽しく焼肉を頂いた。
こうして俺の職場体験は無事終わった。