回原のドリルは天を貫く   作:のりしー

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開発工房へ

side小大

 

「旋くん!旋くん!ねえねえ一緒に帰ろ!今日はスーパー特売だよ!あ!せっかくだからA組のお茶子ちゃんも誘お!特売特売!!」

 

6月も中旬を過ぎた頃の事。

帰りのホームルームが終わった放課後の教室。3年の波動先輩がクラスに飛び込んで来た。

 

最初の頃はクラスの皆も3年の先輩が飛び込んで来る度にドキッ!としていたものだが、入学から3ヶ月も経った今ではごくごく当たり前の光景として定着しつつある。

 

……つまり、あれだ。

それだけ波動先輩はこのクラスに良く来ているのである。

 

お目当ては……当然、回原。

 

ちくっ……と少し胸が痛む。

彼はこの可愛くてかつ美人という矛盾を両立している無敵の先輩に対し、今日はどんな返事をするのだろうか?

 

そういう事を考えてしまう自分が少し嫌になる。

 

「……あちゃあ……そう言えば今日は特売の日でしたっけ?すみません、実は放課後予定を少し入れてしまっていて……今日は一緒に帰れないんです、すみません……」

 

「ええー……そっかぁ、残念だなぁ……」

 

申し訳なさそうに誘いを断る回原と、がっくりと残念そうな波動先輩。そんな残念そうな顔ですら可愛く見えてしまう。

 

(ほっ……)

 

そして私は回原の回答を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「ん」

(放課後の予定?どこ行くの回原?)

 

「ああ、今日は開発工房に行く予定なんだよ。ブラキン先生経由でパワーローダー先生に約束して時間取ってもらっててさ」

 

「ん」

(パワーローダー先生ってサポート科だよね?私も一緒に行っても大丈夫かな?)

 

便乗するようで申し訳ないのだが、実は前々からサポート科には興味があった。

 

私の個性とサポート科。

実はスゴイ相性が良いのではないか?

そんな事を漠然と考えていたので、いいキッカケだ。

 

「多分大丈夫だと思うぞ。俺もとりあえず相談メインだしな」

 

「ん」

(相談?ちょっと意外。回原って道具とか頼るよりは体鍛えてズバーン!ってタイプだと思ってた)

 

「あまり人を脳筋キャラみたいにしないでくれよ……まあ否定出来ないのが辛いところなんだが」

憮然とした表情でそういう顔は、普段と違い少し可愛い。

 

「くすくす……ね」

(くすくす……自覚はあるんだね)

 

私が回原と話していると、波動先輩は残念そうにそれを見ながら、

 

「ぶー……でも先約あるなら仕方無いね!!じゃあまた今度ね旋くん!!私はお茶子ちゃんとタイムセール戦士してくるね!」

 

「あそこのタイムセール苛烈ですからねえ。お気をつけて。ご武運をお祈りしています」

 

「うん!またね!」

 

そう言うと波動先輩は教室を出ていった。

 

「さて、あまり先生待たすのもあれだし、俺達も行くか」

「ん」

 

そうして私達は帰り支度を整えカバンを持つと、パワーローダー先生のいる開発工房へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………小大、ストップ」

「ん」

(どうしたの?)

 

「いや……少し嫌な予感が……」

 

校内を移動し、私達は開発工房の入り口手前まで来た。

後はもう少しだけ歩き、扉を開けば開発工房の中に入る、という所での回原の突然の制止である。

 

何だろう?回原はあまり意味のない事はしないけど。

 

そんな事を軽く考えていると、すぐに正解が目の前で現象となって現れる。

 

BOMB!!!!

 

 

「ん!!!」

 

突然!開発工房内で爆発が起こった!!

入り口のドアがふっ飛び、中からモクモクと黒煙が広がっていく。

 

「ん」

(ナニコレ?)

 

私の問いに回原は、

 

「知らん」

 

「ん」

(でも、何か気づいたから私を止めたんじゃないの?)

 

「何かわからんが嫌な予感がした。それだけで何が起こってるかまでは流石にわからないかなあ」

 

何とも、カンだけでこの爆発を察して回避したのか回原は……

 

回原の理不尽ぶりには慣れてきたつもりだったが、どういう鍛え方したらこんな理不尽な芸当が出来るというのかホントに……

 

 

「ゴホ!ゴホ!!コラ発目オマエ!!いい加減その爆発グセ直さねえとここ出禁にすっぞ!!!」

 

中からはおそらくパワーローダー先生らしき人の声がする。

 

そして黒煙が晴れ、煙の中から1人の女の子が現れた。

 

「失敗は成功の母といいます!!つまりこれは私のドッ可愛いベイビー誕生の産声と言えるのではないでしょうか!!」

 

「失敗はいいんだよ!!失敗なら!!爆発すんなさせるなって言ってんの俺は!!!」

 

「さて、それでは今の問題点を整理して改善して完璧なベイビーに仕上げるとしましょう!!」

 

「聞いてねえ……聞いてねえよコイツ全然俺の話を……なんで俺はコイツの事指導してるんだろなホント……」

 

 

うーん………………

 

煙が晴れて現れた女の子。

体育祭で確かサポート科から1人だけ騎馬戦まで勝ち残った女の子だ。

確か名前は……

 

「おや?そこの方は確か体育祭で優勝した方では?」

 

今になってようやくこちらに気づいた少女。

「サポート科の発目明と申します。では私は忙しいのでこれで失礼します」

 

そう名乗るとすぐに扉の無くなった開発工房に入っていってしまった。

 

「……なんかスゴイ子だな……」

「ね」

 

色々呆気に取られて呆然とする私達。

そんな私達に部屋の中から、

 

「あ!ひょっとして外にもう回原くん来てるのかな?安心して……安心出来ねえかもしれないけど安心して入って来ていいよ!こら発目!!オマエは来客中くらい大人しくしてろ!!」

 

「……呼ばれたな……とりあえず行くか」

「ん」

 

正直ちょっと不安である。

何せ、今目の前で爆発事故を起こした部屋である。

逆に何故安心して入れるというのか……

 

そんな私の顔を見て、回原は、

 

「……とりあえず俺の後ろに隠れてろ。何かあっても何とかするからさ」

 

「……ん」

 

その言葉に甘えさせてもらう。

回原は優しい。

ナチュラルにこういう時に見せる優しさはズルいと思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラドから軽く話は聞いているよ。コスチュームの変更についての相談だったね」

「はい。職場体験などで色々思うところがありまして」

 

爆発事故直後の室内なのでさぞかし酷い室内だろうと想像していたが、意外にも開発工房の中は綺麗だった。

 

部屋が広いというのもあるのだろう。

 

その部屋の奥で私達はパワーローダー先生と話していた。

 

入り口近くのエリアでは今も怪しい動きを見せる発目さん。

どうも爆発がある程度起こる事を想定し、彼女に作業スペースを与えているのだろう。それだけで先生の苦労が偲ばれる。

教師って大変だなあ……

 

そんな事を考えながら、私は回原と先生の話を聞いていた。

 

 

回原は、自分の個性をよりドリルに近いものと捉え、それに沿った形でのコスチュームの一部変更を検討しているとの事。

 

「……なるほどね。手甲と脚甲をドリルに近い形状で新しく装備する事を検討していると。ブラドはなんて?」

 

「はい。将来的にはそれでいいと。ただ、まずは夏休みに個性伸ばしのトレーニングがあるから、それが終わるまでは今のままで行くようにとの事でした」

 

「妥当だね。今まで増強型と捉えていた個性の新しい一面に気づいたんだ。まずは自力で新しい面を鍛えて、その後に装備で更に強化する。いいと思うよ。」

 

「はい。同じ事を先生からも言われました。ただ、開発依頼は先にしておいても良い、との事でしたので。後は……」

 

「ふむ……アクセサリーにしているコアドリルのペンダントにつけられる追加パーツの作成と、靴の改良か」

 

「五本指靴下を参考に、地面と接する部分を靴底のように出来ないかな?と思いまして」

 

「足の指でもドリルで竜巻を起こして更にスピードアップって事か。まあこれは何とかなるね。コアドリルにつける追加パーツはどんなのを想定しているのかな?」

 

「大きく分けて2つです。竜巻の威力を強化出来るような追加パーツと、壁や地面に穴を掘る為に使う追加パーツ。この2つです」

 

「君の戦闘スタイル的に最初から大きいドリルをぶら下げると邪魔になるからね。アタッチメント方式でメインのコアドリルに必要な時に必要なパーツをつけて使い分けるのはいいアイデアだね。となると腰のベルトとかにつけられるような形状の追加パーツがいいかな」

 

「それだと助かります。あまり武術の妨げになるような身につけ方はしたくなかったので」

 

目の前でスラスラと先生と話しながら打ち合わせをする回原。

 

本当にこう言う所を見る度にスゴイなあと思ってしまう。 

 

体育祭で優勝して、更に更に上を、高みを目指すクラスメイト。

優勝したのに、これだけ強いのに全然満足していない男の子。

それが回原旋という男の子だった。

 

「おやおやおやおや!!コスチューム変更の話をしていますね!!楽しそうですね!!ぜひ私の可愛いベイビー達を!!」

 

「うーん……悪いんだけどそういうゴテゴテしたのをつけるタイプじゃ無いんだよなあ俺は……」

 

「発目。提案するのはいいが相手のニーズに合わせて提案するのもサポート科の大切な仕事だぞ」

 

「隠れたニーズがあるかもしれないじゃありませんか!!それは提案してみなければわかりません!!」

 

「くっそぉ!!たまに正論吐きやがる!!」

 

「さあさあさあさあ体育祭で優勝した貴方!!ぜひこちらに来て私の可愛いベイビー達を!!」

 

「ん」

(ダメ)

 

「おや?ダメでしょうか?どうしてですか?」

 

「ん」

(まだ2人の話が終わってない。先にそっちを終わらせてからでも遅くないでしょ。発目さんの話は先に私が聞く)

 

「そうですか!!では先に貴方に提案させてもらいます!」

 

「……なんか悪いな小大」

「あー……すまんね、ちょっと発目の相手頼むよ」

「ん」

 

そう言うと回原と先生は先ほどの話の続きを始めた。

 

「さあさあさあさあ!!見てください見てください!!私の作った可愛いベイビー達を!!」

 

それに好都合でもある。

元々サポート科には興味があった。

色々聞けるチャンスでもある。

……相手が少し苦手で不安だけども。

 

「ん」

(ドローンとか空を飛べるサポートアイテムで、安定していて操作簡単なものとかないかな?)

 

「おお素晴らしい!!お目が高いですね!!ではこれはどうでしょうか!!超大型のドローン!!出力と安定性を高めた結果!!サイズが大きくなり過ぎたのが唯一の欠点ですが!!それでも可愛いベイビーですよ」

 

「ん」

(そう、そういうの)

 

そうだ。

私はこういうのを探しにここに来たんだ。

 

私の個性はサイズ。

物を大きくしたり小さくしたりする個性。

 

通常、出力の大きいサポートアイテムは大型になる為、複数身につける事が出来ない。

 

でも、私なら。

私の個性なら。

 

必要な物を必要な時に大きくしたり、普段は小さくしたりでその負担を小さく出来る。

 

そう発目さんに説明すると、

 

「なんとなんと!!それは本当ですか!!素晴らしい!!素晴らしいですよ!!私の可愛いベイビー達を装備し放題なのですね!!サイコーです!!サイコーですよ貴方!!!」

 

「ん」

(良かったら色々見せてもらえるかな?)

 

「はいもちろんですもちろんですよ!!ふっふっふ……これは運命ですね!!これは運命の出会いと言ってもいいでしょう!!貴方と私のコンビであれば、サポートアイテムをたくさん持つ際のスペースや重量の問題をクリア出来ます!!さあ!!私達で協力し!!素晴らしいベイビー達を世に送りだしましょう!!!」

 

……………

 

大枠において、別に異存は無い。

無いのだが、その言い方はやだなあ……

 

素晴らしいベイビーを世に送り出す相方は、出来れば他の人にお願いしたい所である。

 

チラッと今も先生と話す回原を見る。

 

……多分、一佳も回原の事を意識しているんだろうなあ。

何となく見てるとわかってしまうのだ。

しかも乙女の勘的に、私の知らない所で盛大に一歩リードされている気がする。

根拠はない。

根拠は無いが、乙女の勘的にそんな気がするのだ。

 

 

波動先輩も何だかんだ多分ライバルなんだろうし……

 

 

テンション高く今も話し続ける発目さんを見る。

有能なのはわかるのだが、私の苦手なタイプ。物間と同じ。

 

 

でも、私は私で頑張らないと。

 

でないと、どんどん置いてけぼりにされてしまう。

今も高みを目指し努力を続ける回原。

 

私は彼の隣に居たいのだ。 

だから、私も努力し続ける。

 

回原と一緒に居られるように。

 

 

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