そんなこんなで6月下旬。
もうすぐ7月。
期末テストの何日か前というクラスでの様子。
期末テスト前に皆焦ってるかと思えばそうでも無かった。
「……まあ、赤点と言ってもヒーロー科、普通科、サポート科、経営科の4つの学科の平均を見てからだからね。僕らが焦る必要はないさ」
そういう物間の一言で俺たちは極々普通の日々を過ごしていた。
まあ言わんとする事はわかる。
そもそも雄英高校のヒーロー科というだけで諸々学力などは全国トップクラスなのだ。
ちゃんと普段から予習復習してれば焦る必要はない、というのは最もである。
……ちなみにこんな偉そうな事を言いながら物間は中間テストでクラス17位の成績。
どうも普段の授業から学年平均点と赤点を予測し、ギリギリそれを回避する点数を最短努力で取りにいったそうな。
……そこまでやるなら普通に勉強せいや、と言うべきなのだがその辺りが物間というキャラクター。
正攻法ではなく、常に裏道を探し、使い最短の攻略手を探す男。
それが物間なのである。
割と好きなのよねこういうタイプ。
ちなみにB組の中間1位は庄田。2位が拳藤。3位は骨抜で4位が俺。
「回原が勉強出来るのが意外な気がしないんだよな……」
「……どうせコイツの事だ。『勉強してる間は修行しなくていいから勉強楽しい』とか言うんだぜどうせ……」
「え……なんでわかったの……」
「「「わからないわけ無いだろ……」」」
泡瀬、円場、鱗の合唱。
そして俺は合掌。
南無………
何故わかったのか……
勉強サイコー。
特にテスト勉強中は修行しなくていいだもん。
点数悪いとメニュー激化するのでこちらも必死である。
点数良くてもメニューは軽くならないので結論絶望するのだが。
ちなみに吹出が最下位で下からの次点が円場。
角取も英語は得意だけど国語が弱くて順位は低めなど色々特徴のある結果となった。
補足するなら全員学年平均点よりは上。
この辺りがヒーロー科に受かったメンバーの底力だろう。学科で赤点は多分ないだろうな。
「……まあ、とりあえず皆目先の期末テストに向けて勉強頑張ろうよ!!わからない所とかあったら私も手伝いするよ!」
拳藤のその一声で期末間近の勉強会などが決まったりもする。
小大は最近は放課後いつも開発工房に……サポート科という魔境に出入りしている。入り浸りとも言う。
中間は7位と学科は問題なかったし、演習に力を入れているのだろう。
そう、雄英高校の期末テストは学科以外にも演習での試験がある。皆、それに備えても色々努力をしていた。
拳藤は先輩から「入試の時のロボ相手の試験だよ」と聞いたそうだけど、本当に今年もそうなのか?
まあどうなっても対応出来るように備えておけばいいだけだ。
皆色々考えながら、7月の期末試験を迎える事になる。
んで筆記は無事終了した。
焦ってる顔を見えなかった。
まあ皆ちゃんと学科はクリアしたんだろうな。
そこは心配していない。
そして演習試験の日がやってくる。
午前はA組の演習試験。
それが終わり、午後から俺たちの演習試験。
当然AB間で情報交換は出来ないようにはされている。
集まった俺達B組。
そんな俺達に告げられた試験内容は……
『雄英高校教師達相手の演習試験!!!!』
生徒は2人一組となり先生との演習試験を行うそうな。
勝利条件は2つ。
対戦する教師から逃げるか?
もしくはハンドカフスを教師にかけるか。
制限時間は30分。
教師には約体重半分の重りをハンデとしてつける。
でもオールマイトとか意味あるんかこれ……とは思う。
体重の半分でしょ?オールマイトに……
『私はちゃんと手加減が出来る教師です』
と首から札をかけたオールマイトを見る。
……この人午前のA組の試験で何やらかしたのよ……
何かあったんだろうなあきっと……
…まあ言っても仕方無い。
実戦で対戦するヴィランにハンデが足らんとか文句つけるのはナンセンスだものなあ。
まあ妥当だろう。
ブラキン先生が説明を続ける。
B組のチーム分けと、対戦する教師について。
回原・小大VSセメントス
鉄哲・物間VSオールマイト
拳藤・骨抜VSイレイザーヘッド(重量ハンデ無し)
などなど……
「……オールマイトの担当は回原じゃないのかい?」
物間の言葉。
それにクラスメイト達が「うんうん」と頷く。
……わからないでもない。
……でも個人的には妥当なのよねこれ。
「……試験としては妥当だろう。回原の一対一の能力はもう試験で試す必要はない。むしろセメントス先生みたいな回原の苦手な状況での対応を見たいって事だろ」
それに対する骨抜の言葉。
それに100%同意。
そもそもオールマイトに対人戦で勝てないからヒーローになれないなんて状況設定が無茶である。
そんな事したら今の大半のプロヒーローが落第の烙印を押されるだろう。
つまり、この試験はそれ以外の色々な要素を見る試験なのだろう。生徒の得意分野も、苦手な分野も。
個性無しで重量ハンデ無しのイレイザーヘッドVS拳藤・骨抜は面白い。市街地戦で捕縛布使う先生を骨抜単独で捕らえるのは難しいし、拳藤だけでも難しいだろう。
そう言う意味ではよく考えられた試験だ。協力しないとクリア出来ないし、協力すればクリア出来るレベルの。
そういう意味ではセメントス先生は俺の天敵である。
大質量の面制圧が出来る個性は俺が最も苦手な分野。
マジでチートだよなセメントス先生……
「わかってるよそんな事は……でも言わずにはいられないだろ……期末試験の相手がオールマイトなんて……」
「が……頑張ろうぜ物間!!俺も頑張るぜ!!」
懸命に盛り上げる鉄哲。
……まあ気持ちはわかる。
何で期末試験でオールマイト持ち出すかな……
ハンデつきとはいってもなあ……
まあ、そういう観点ではセメントス先生と13号先生もチートなんだけど……
雄英高校の教師だけあって皆様優秀である。
「ん」
「……ああ、そうだな。でも先生だからって負けてられないよな」
コンビを組む小大にそう答える。
「ん」
「ん?……足手まといになるつもりはないよ。この試験は私だけで勝つくらいのつもりで行くね……ってか!はは!んじゃ俺も負けないように頑張るさ!!」
こうして、俺と小大のチームVSセメントス先生の演習試験が始まった。
sideセメントス
(さて……試験スタートしましたね)
ここは市街地を想定した模擬戦の会場。
私の個性としては相性がいい。
私の個性はセメント。
触れたコンクリートを操り壁などを作る。
市街地戦ではトップクラスの優秀な個性。
市街地は普通コンクリート道路で舗装されている。つまり私の武器が溢れている状況なのだ。
ここはどうしたって私有利の戦域である。
早速逃走ルートを個性で塞ぎつつ、様子を伺う。
想定するのはまず回原くんの突撃。
彼はおそらくは対人戦で最強クラス。
その最強クラスというのは現役トップヒーローも含めて。
現雄英高校のビッグ3……3年の通形くんとどちらが勝つか想像がつかない程の接近戦最強格。
故に試験では私が対戦相手として選ばれた。
接近戦最強ならば、そもそも接近させなければいい。
このコンクリートの壁に対し、回原くんはどう動くか?
それを見るのがメインの試験だった。
小大さんはフォロー役。
物を大きくしたり小さく出来る個性。
優秀な個性だ。
今後の伸び代に期待出来る個性。
近接最強格の回原くんと、面制圧の素質を持つ小大さん。
この組み合わせで私にどう対応するか?
それを見るのがブラド先生の方針だったのだろう。
……だが、その方針は開始早々に崩された。
『ごめん!!今日は一杯おごる!!!』
本日の組み合わせが決まり、試験開始前の、パワーローダー先生のその言葉を思い出す……
「は……ははは……これは駄目でしょ……ははは……」
…………ブラド先生も予想外だろうこれは。
まさかこんな事になるだなんて……
個性で作ったコンクリートの壁。
その遥か頭上。
空を飛ぶ、2人の影。
1人は回原くん。
これは想定通り。彼が空を飛べるのは事前にわかっていた。
……そして、もう一つの影……
巨大なドローン……
人を乗せて自由に空を飛べるように強度や出力を調整したドローン。
本来は持ち運びが困難な、その特大サイズのドローン。
その上に立つ、1人の少女。
「……小大さんに単独での飛行能力与えたら駄目でしょ!!恨みます!!恨みますよパワーローダー先生!!これは駄目でしょ!!」
小大さんは地味だが強力な個性を持っている。
物の大きさを調整する個性。
そんな彼女に、単独での飛行能力を与えるだなんて!!
「恨みますよ!!恨みますよ!!パワーローダー先生!!」
そんな彼女に!!こんな絶好のシチュエーション与えたら駄目でしょ!!
制空権を握った小大さんは!!
「トップクラスのヒーロー並みの面制圧能力持ちになりますよ!!!!」
その上空の小大さんが、軽い手つきで「ぽい」と何かを投げる。
(それがとてつもなく恐ろしい!!!!!)
嫌な予感はすぐ現実となる。
軽い手つきで投げた何かはすぐに巨大な何かになる。
巨大な質量。重量を秘めた何か。
………そんな物を上空から投げるのだ。
控えめに言っても受ける側からすると悪夢である。
「うおおおおおおお!!!!」
急いでコンクリートの壁を上空に伸ばす!!
小大さんは軽い感じで何かを投げる。
それが石でもなんでも関係ない。
あの高さから何かを投げるだけで危険!!
しかもそれを大質量に個性で変化可能!!
最悪だ!!!
私のようにスピードの遅いヒーローやヴィランからすると最悪の!!悪夢のような個性!!
彼女は空にいる。
空から、その辺で拾っただけの普通の小石を巨大な石にして、一方的に大質量攻撃をしてくるのだ!!!
「パワーローダー先生!!これは先に報告しておくべき事案ですよ!!!」
これを一杯奢るですませちゃ駄目でしょ!!
懸命にコンクリートの壁を作る。
だがそれも空から落ちてくる大きな岩……元は小石の雨にどんどん砕かれていく……
あかんこれは……
わかっている。
わかっているのだ。
……こんな、上空に専念する隙を、彼が見逃す訳はないと……
「だよな……恨みますよパワーローダー先生……」
ボコッ!!!
と!!!上空に専念していた隙に、目の前のコンクリートの壁が砕かれ、回原くんが突撃してくる。
言い訳はさせてもらいたい。
………………………
「……ここまで私があっさり負けたのは、間違いなくパワーローダー先生……貴方の所為ですよ………」
そうしてカフスがつけられ、この試験はあっさりと私の負けで終わった。
期末試験
回原・小大VSセメントス
回原・小大チームの勝利!!