俺達の林間合宿は最高の形で始まり、最悪の形で終わった。
俺たちはこの日、ヒーローを目指す者として、ヴィランに完全敗北した。
ブラキン先生が通報しており、ヴィラン連合が去ってから救急や消防が合宿地に到着した。
ヴィランのガスによって意識不明者多数。
攻撃によって重傷者も多数。
生徒では爆豪が誘拐。
ラグドールさんも消息不明。
逮捕したヴィランもいるにはいたが、正直それがなんだって言うのだ。
……最低最悪だぜ、全く……
この日。間違いなくヒーローは……雄英高校はヴィラン連合に完全敗北した……
だから……俺はとある人に連絡を取った。
意識の無いクラスメイトのお見舞いなどをしながら。
俺の師匠の1人……その親友であり悪友であるその人に。
返信は思ったより早かった。ある程度予想されていたのだろう。
何せあの人だ。本当に不思議はない。
『宇宙人の皮を被った悪魔』
新白連合の総督である、あの方。
法人化はしているが上場はせず。
ただし上場している大企業の株を関連会社含め多数所有し『君臨すれども統治せず』を地でいく大組織のトップ。
決して表舞台には立たず、しかし陰からとてつもない影響力を持つ組織。そのトップの人。
師匠との友誼のおかげだろう。
総統は「貸1つ」と言って俺が欲しい情報を全て集めてくれた。
『世が世なら軍師として歴史に名を残す』
あの師匠達にそこまで言わしめた総統は、俺が必要としている情報を短期間の間に全て必要十分以上に集めてくれた。
『神奈川県横浜市神野区』
多くのトップヒーローが集まる作戦の存在を。
トンガリ救出。ヴィラン連合退治の作戦を。
……なんでそんな作戦を突き止めてるのこの人?とか聞いてはいけない。
師匠達曰く。
学生時代から異常な情報収集・分析・作戦立案などに優れていた人だ。
師匠が多くの苦難を越えて達人になったように、総統も別種の同レベルの超人となっていた。
『コイツはオレ様の独り言だ。よく聞いておけ』
スマホでの通話。
……最後に、その人は言った、
お前がこれからやる事は、多くのプロヒーローを信じないというクソみてえな行動だ。
結果によってはお前が尊敬する雄英高校教師の何人かがクビになるような最低の行為だ。
ヒーロー達も愚ではあるが鈍ではない。任せてもそれなりに上手くやるだろうよ、と。
『……それでもテメエは行くっていうんだな』
『はい』
『……今テメエがどんなツラしてどんな目をしてるか見るまでも無くわかっちまうぜ……ホント、お前はアイツの弟子だよな全く……覚悟ガンギマリ済みの声してやがる』
『それは俺にとっては最高の褒め言葉です』
俺のその答えにやれやれと言い……総統は最後に、
『なら行って来いよ〈現・史上最強の弟子〉!!個性だよりのクソヒーローとヴィラン共に!!本物の武術ってのがどんなに恐ろしくてトンデモナイものかって!その深淵と恐ろしさを叩き込んでこいや!!』
『はい!!!』
そうして俺は神奈川県横浜市神野区に向かった。
総統からは
『今日の夜、トップヒーローと警察達による爆豪救出・ヴィラン連合逮捕の作戦がある』
ヒーロー達に任せてもそこそこ上手くやるだろうよ、と、
『無事に終わるなら全部任せればいい。オールマイトも参加する作戦だしな』
だから、テメエのやる事……出番ってのは作戦が無事に終わらなかった時の話になる。
『個性は名刺みてえなもんだ。ヒーロー達と雄英高校に迷惑かけたくねえなら個性無しでの武術だけで行動しろ。テメエは名も知られない1人のヴィジランテとして顔を隠し神野区へ向かえ』
プロヒーローの免許もないのに個性を使って学生が作戦に参加したら大問題。
特に雄英高校への世間の当たりが強い今の時期。
バレれば大問題確定である。
……だから、行くならバレないようにやれよ、と。
個性を使わず、顔を隠し活動するのが最低条件だ、と。
つまり、身につけている武術だけで何とかしろ、と。
望む所だ!!!
俺はそれに頷いた。
顔を隠す為のお面。
長老から譲り受けたお面を持ち、現場に向かった。
『我流Z』
そう、これが今夜の俺の……ヴィジランテの名前である。
夜が更けていく。
夜の街。
繁華街の喧騒。
それとは別種の喧騒。
ヒーロー達と警察の起こす喧騒。
隠してはいるがわかる人にはわかる喧騒。
決して大きな声を上げる訳ではない喧騒。
しかし、訓練された大人が奏でる調教された協奏曲。
舞台が始まろうとしていた。
ヒーローとヴィランを主題とした、一大劇が。
目的の建物。
その近くにオールマイトさんとエンデヴァーさん……その他多くのプロヒーローと警察の人が集まっていた。
俺は少し離れた所からその様子を見る。
本当はもう少し近くに行きたいが、エンデヴァーさんに見つかりそうになり距離を取ったのだ。
……優秀過ぎるでしょエンデヴァーさん。
ナチュラルボーンヒーローなオールマイトさんと違い、この辺の索敵含む地味な能力高過ぎないかあの人……
これ以上近づくとヴィラン連合より先に俺が攻撃されそうだった。
だからこの辺がエンデヴァーさんの索敵に捕まらないギリギリの距離かな?
まあそう言っても目的の建物らへんが目視出来る距離だけど。
そこそこ隠行も仕込まれてるしね。
トップヒーローといえど、そんな簡単に見つかるつもりはない。
そうして、深夜になるかならないかという刻限。
作戦が始まる。
トンガリ救出・ヴィラン連合逮捕の作戦が。
『どうも。ピザーラ神野店ですぅ』
……そして、作戦が始まった。
ヒーロー達の突入。
順調そうに見えた作戦。
これは正直俺の出番はないかな?そう思った。
そしてしばらく時間が過ぎ。
……そうならなければ良かったと思う、異常が起こる。
何もない宙から溢れる黒い泥みたいなものから出現した怪物……確か名前は脳無。
それに対応するエンデヴァーさんと警察の人たち。
エンデヴァーさんと話し、何処かに飛び去るオールマイトさん。
……オールマイトさんは、トンガリを……爆豪を抱えていない。助けていないまま何処かに飛び去る。
おかしすぎる、
おかしいだろ?
本当はオールマイトさんはトンガリを助けてる筈。
警察とかにトンガリを預け、その上で何処かに飛び去る。
それが正しい流れの筈だ。
……今、正しくない流れとなっている。
……つまりそれは……
……俺の出番……起こらないで欲しかった出来事。
それが起こった、という事だった。
……俺はその場を飛び去るオールマイトを追いかける事にした。
この状況でトンガリを助けずに何処かへ飛び去るオールマイトさん。
……状況が良くないという証明が、空を飛んで何処かに向かった。文字通り目に見える形で。
……無事でいろよ、トンガリ……
はいそんな訳で師匠達は出ませんでしたね。
もっと濃い奴が出ましたけど……
頑張って薄めないと……(白目)